2007年02月02日

究極のオレサマ

唐沢蜷川幸雄の演出、唐沢寿明の主演でシェークスピアの「コリオレイナス」をやっているらしい。彩の国さいたま芸術劇場...2月8日まで...

...

チョー観てみてぇぞぉ〜〜〜!!!

「コリオレイナス」は日本ではあまり知られていないシェークスピアの歴史劇・悲劇かもしれない。

舞台は共和制時代の古代ローマ。コリオリにおけるヴォルサイ人との戦いで英雄となったカイアス・マーシアスはローマ市民より「コリオレイナス」の称号を贈られ、執政官選挙に立候補する。しかし持ち前のプライドが仇となり、反対派の護民官の罠にはまりローマを追放されてしまう。

追放されたカイアスはかつての敵であったヴォルサイ人をたより、ヴォルサイ人の兵を率いてローマに復讐の戦争を図るが、さしもの英雄も和議を請うために差し向けられた母親の涙ながらの懇願に負けて兵を収めて引き上げる。

兵を引いて戻ってきたカイアスは、ヴォルサイ人から勝手に和議を結んだと糾弾され、処刑されてしまう...。

この劇の「ツボ」はメチャクチャにオレサマなカイアスが、護民官の汚い手口とアホなローマ市民にうんざりとなり、ローマに別れを告げる場面(第4幕3場):−

Despising,
For you, the city, thus I turn my back:
There is a world elsewhere.

(個人的ハチャメチャ意訳)

「バカヤロー、オマエらなんか、この町なんか...もう出てってやる。あばよ。世界が俺をまってるさ。」

和議の為に出てきて平和を請う母親を前にして、突然ただのオボッチャマになってしまう場面(第5幕3場):−

O mother, mother!
What have you done? Behold, the heavens do ope,
The gods look down, and this unnatural scene
They laugh at.

(個人的ハチャメチャ意訳)

「ママ〜、ママ〜...なんてことをしてくれるんだ...これで何もかもおわりだ〜...」

そしてヴォルサイ人に糾弾されつつ、こんな場面でそんなこといっちゃ殺されると分かっているのに、プライドが邪魔して「いかにもオレサマがあのコリオリの英雄じゃ...」といってしまう場面(第5幕6場):−

If you have writ your annals true, 'tis there
That, like an eagle in a dove-cote, I
Flutter'd your Volscians in Corioli:
Alone I did it.

(個人的ハチャメチャ意訳)

「おまえらの歴史教科書がちゃんとしていればそこに書いてあるはずだ。鳩の巣に紛れ込んだ鷹のように、コリオリでおれは貴様らヴォルサイ人をなぶり殺しにしてやったんだ。おれ一人でだ!」

ま、こんなところだと思います。

もっとも私は「シェークスピア研究」なんて膨大で深遠な世界の完全なる門外漢ですから、みなさんそれぞれ

「イヨッ!成田屋!」

な、シーンがおありでしょう。

Toby Stephens君Toby Stephens個人的に「コリオレイナス」との出会いはロンドンにいた1994年。デビューしたばかりだったToby Stephens(イギリスのベテラン女優Maggie Smithとすでに故人となったこれまた俳優の前夫Robert Stephensの息子)がロイヤル・シェークスピア・カンパニーでコリオレイナスを演じて、ものすごい評判だった。あの時は、

「みたいな〜、みたいな〜...」

と思っていても金欠病とチケット売り切れで思いが果たせなかった。ちなみにToby君はあの年にイギリスで優秀な新人アクターに送られるイアン・チャールソン賞を受賞している。(イアン・チャールソンはエイズで若くして亡くなったイギリスの俳優。「炎のランナー」で主人公の一人、スコットランド人の宣教師ランナーの役をやっていた人。)

その後、2000年に日本に戻ってきたら、なんと「あの」レイフ様ことRalph Fiennsが劇団を率いて「コリオレイナス」来日公演しにやってきた。

チャーンス!

もちろんいってきました。レイフ君の繊細な容貌と、ヒロイックな演技が見事に融合していて、主人公の不安定な性格をうまく演じきっていた。

あの赤坂TBS劇場でのパフォーマンスは私の人生史上ベスト3に入ります。

Ralph as Coriolanusレイフ様






唐沢選手はどんな演技しているのかな〜。観てみたいな〜。4月にはロンドン公演だって?いってみたいな〜...。

もっともカイアス・マーシアス役はToby君のような新人・若手向けの役。唐沢選手、もう「ベテラン」といわれてもおかしくないキャリアがあるから、どうなんだろう。だから頭丸刈りにしてるのかな?でもそれ以外は絶対にはまり役だと思う。

そして...カイアス・マーシアスのライバル、ヴォルサイ人の将軍オーディファス役が...勝村政信さん...う〜ん、オレこのひとテレビの「ロッカーの花子さん」で吹石一恵さんの上司をやっていたところしか見てないんだよね...。大丈夫だろうか...唐沢選手の迫力に負けないでがんばってほしい。

シェークスピアの悲劇には共通するテーマがある。それは主人公の性格のいかんともしがたい重要な部分が、本人を悲劇的結末に追い立てるということ。

「ハムレット」はハムレット王子の優柔不断。

「マクベス」はマクベスの野心。

「オセロー」ではオセローの劣等感と猜疑心。

「リア王」はリアの「愛されたい」という気持ち。

そして「コリオレイナス」のカイアス・マーシアスはその傲慢と独善。

「コリオレイナス」の最後の台詞は、カイアス・マーシアスの死体を運ぶためにかつての好敵手オーディファスがまわりの兵士にいう次の言葉で終わっている。

「Assist」

(手伝ってくれ)

結局人間一人じゃ何もできないということさ...とウィル・シェークスピア君はいいたかったのだろう。

追記

リンカーン大統領は「マクベス」が好きだった。これはアメリカの議会図書館に保存されているリンカーンのシェークスピア俳優宛ての私信に書いてあるらしい。

歴史小説「リンカーン」を執筆中だったアメリカの作家ゴア・ヴィダルはこの事実にものすごいインスピレーションを感じたらしい。

「『マクベス』のテーマとは?それは『王の原罪』だ。王の原罪とは、王の野心によって多大な犠牲が支払われるということに他ならない。リンカーンは、自らの政治的野心の代償として数多くの命を南北戦争の犠牲とした自分自身をマクベスに投影していたのだ...。」

作家っていろいろ考えるもんなんですな。

なにはともあれシェークスピアは面白い。

yutethebeaute999 at 13:49│Comments(0)TrackBack(0)やわらかめ 

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