山武市埴谷 放棄住宅地 (2)
 北総の分譲地は空地が目立つものが多いが、中には、地価狂乱のバブル期にすら見向きもされず今日までに僅かに1~2戸しか住宅が建設されず、残りの空き地は荒れるに任せているような分譲地がある。「人口減」とか「都心回帰」とかそんなことは一切関係なく最初から限界集落としてデビューしたこの手の分譲地は、往々にして辛うじて車一台が通れるような田んぼや畑の中の農道を抜けなければ辿り着けないような立地で、街灯もなく、夜間の運転には不安を覚えるような立地にある。

 そのアクセス道路も、住人がほとんどいないために通行車両もなく荒れ放題であり、ひどいものになると、土地の分筆時に宅地内の街路(私道)が各宅地所有者の共有持ち分として登記されていなかったために今日では建築基準法上の接道条件を満たせず建築不可となっている分譲地すらある。建築不可のニュータウン。そんな住宅地の定義を根底から覆す分譲地にも、ほとんど売主に対してのアリバイ作りの役目しか果たしていない「売地」の看板が立てられ、物件広告には「畑に!」「資材置き場に!」などと仲介業者がその場で適当に思いついただけの苦し紛れのキャッチコピーが打たれ、いつ現れるかもわからぬ買い手を待ち続けている。
山武市埴谷 放棄住宅地 (6)
こんな道を進んだ先にも分譲地が存在する。
山武市埴谷 放棄住宅地 (7)
街灯もなく、夜間は漆黒の闇に包まれるアクセス道路。

 山武市埴谷のはずれに、そんな、ほぼ放棄住宅地に近い状態の分譲地が2か所隣接している場所がある。ここは建築不可ではなさそうではあるが、両者とも全く適切に管理されておらず、1つの分譲地には、普通の平屋住宅と、居住者が居ると思われる小屋がそれぞれ1棟ずつ建てられていたが(他にいくつか小屋が残されていたが使用されている形跡はなし)、もう一つの分譲地にはまともな住宅は一つも確認できなかった。
山武市埴谷 放棄住宅地 (5)
山武市埴谷 放棄住宅地 (4)
かなりの急斜面に造成されている分譲地。

 こちらの分譲地は、画像を見てもお分かりの通り、結構な急斜面上に造成されているため宅地内の街路の勾配がきつく、最上部の宅地まで徒歩でたどり着くにはちょっとした登山気分になれる分譲地である。これほどのひな壇であれば、さぞかし眺望は素晴らしいだろうと思われるかもしれないが、それは甘い。あろうことかこの分譲地は北向きの斜面であり、南側には隣地の擁壁が目前に迫る糞の如き住宅地だ。万が一隣地に住宅が建てられようものなら、ご自慢の明るいリビングはたちまち暗室に様変わり。逆にあなたの住宅が隣家の日照を遮ろうものなら、この隔絶された限界集落でご近所ファイトの勃発不可避。唯一最上段の区画だけは南側からの日照が確保されるが既に成約済み。残る下段の宅地はただ原野に還る日を待つのみとなっている。
山武市埴谷 放棄住宅地 (1)
最上段の区画は成約済み。ニュータウン終了のお知らせ。
山武市埴谷 放棄住宅地 (3)
それでも管理された宅地が存在する。

 さすがにこの場所では人家もないだけに、雑草や樹木が繁茂してもクレームが来ないのかほとんどの宅地が荒れ放題であるが、中にはきれいに管理された宅地もあることにはある。この分譲地を含め、北向きの斜面に造成されたひな壇住宅地は他にもいくつか存在するが、さすがにこれほどまでではないにしろやはり建築の進んでいないところが多い。当然と言えば当然の話である。



北向き急傾斜分譲地へのアクセス

山武市埴谷
・圏央道山武成東インターより車で12分
・総武本線八街駅・成東駅よりちばフラワーバス八街線 「井の上」バス停下車徒歩10分



追記;
 ところで千葉県の放棄住宅地に関しては、立命館大学の吉田友彦教授が平成16年に国土交通省土地関係者育成支援事業として助成金を受給し詳細な調査を行っている。報告書の記載のみでは、土地勘がないとその住宅地を特定することはなかなか難しいが、いくつかの分譲地に関しては街路の形状を参考にすればグーグルマップで見つからないこともない(僕もそれで特定している)。ただしこの報告書で紹介された分譲地のほとんどは建築許可の下りる可能性が低く、また売地として販売されている場所もない。また、10年以上前の調査のため、報告書内で挙げられている住宅地のうち、唯一芝山町と富里市にまたがって開発されていた放棄住宅地は、現在では「バルールド成田」という団地名で再整備、再利用が進んでいる。
 報告書は公開されており、吉田教授のサイトもありいずれも非常に参考になるためリンクを貼っておきます。

平成16年度土地関係研究者育成支援事業研究成果報告書 首都圏郊外部における放棄住宅地の環境管理に関する基礎的研究』
立命館大学政策科学部住環境政策研究室 吉田友彦研究室