山武市埴谷 放棄住宅地 (11)
 先に紹介した「山武市埴谷 北向き急斜面上の分譲地」からほど近いところに、もう一つ、全く住宅の建設が進んでいない、ほぼ無住の分譲地がある。藪に覆われた細い急坂を登り切ると、山林に囲まれた区画数60ほどの分譲地が現れるが、不可解なことに進入路が封鎖されている。バリケードには「不法投棄禁止!」の文字とともに、「山武町」と合併以前の自治体名が記されていることから、少なくとも10年以上前から封鎖されていることになる。「立ち入り禁止」とは書かれていないので、進入を制限するものではないと思うが、しかし内部の分譲地は区画ごとに別の所有者で現在も整備・販売は続けられており、街路も私道であるのに、例え無住に近い状態であるとは言え行政の権限で封鎖ができるものなのだろうか。
山武市埴谷 放棄住宅地 (9)
バリケードで封鎖された分譲地の入口。
 
 宅地の中には、トラック用のコンテナが放棄された区画もあることから、おそらく過去に不法投棄が繰り返され、業を煮やした役場か土地の関係者が設置したのだと思われるが、それ以外にこの看板には、この分譲地への居住を抑制しようという思惑が含まれている気がしてならない。
 一例を挙げると、先に紹介した急斜面の分譲地とこの分譲地には、居住者が皆無に近いから当然かもしれないが、ゴミの集積場がない。そのため仮にここに住宅を構えた場合、居住者は最寄りの集落のゴミ集積場を利用することになるが、田舎のゴミ集積場は集落単位で自主管理されていることが多く、時折町会に加入していない住民が自治会から集積場の利用を拒否されて問題となることがある。今の時代、こんな訳の分からない分譲地をあえて選んで住む者が変り者でない筈がなく、古くからの農村集落の住民とは決定的に異なる感性であることは明白である。
 何事もなければやがて原野に還るだけだが、一人でも移住したらたちまち限界集落の出来上がり。役場にとって面倒な事故や揉め事が発生する危険性が多々あり、そのような事態を回避するために新たに集積場を構えたとしたら、今度は軽自動車での通行も難儀するような藪の小道をパッカー車で侵入しなければならなくなる。
 昨今の行政関係者の間でのトレンドであるコンパクトシティの構想にも逆行することになるし、こんな所に住まれるのは自治体にとって迷惑でしかないのだ。
 (実際、僕は若いころ信州の村に暮らしたことがあるが、役場の担当者から「できれば山奥には住まないでほしい」と言われたことがある)
山武市埴谷 放棄住宅地 (17)
密林に還りつつある街路。
山武市埴谷 放棄住宅地 (8)
尚も往生際の悪い抵抗を続ける不在地主の売地。

 宅地内は鬱蒼とした林に包まれているが、宅地の管理や草刈りは依然として続けられている。こんな場所に掲示した「売地」の看板に、いったいどれほどの宣伝効果があるというのだろうか。仮に土地購入希望者が物件サイトで閲覧して興味を持ったとしても、よほどの物好きでなければ進入路を一目見ただけで候補から外れ、見学に来ることもないだろう。しかもよく見ればここには電柱すらないし、そもそもこんなロケーションの場所に住みたいのなら、こんな狭苦しい分譲地など買わずとも、普通に山林を買って住めば済む話ではないか。
山武市埴谷 放棄住宅地 (16)山武市埴谷 放棄住宅地 (10)
誰がこんな電気も来ていない分譲地に住宅を建てて住むというのだろう。

 ところが実はこの分譲地、人家として利用されているかは不明だが、トレーラーハウスが一つだけ設置され、馬が飼育されている区画がある。業務で飼育しているのか、それともペットなのか、人の姿を見かけなかったので詳細は不明だが、なるほど、小動物ならともかく、馬を飼育するとなればこのような人気のない分譲地の方が都合が良い。しかし唯一活用されている区画が人ではなく馬の寝床という点から鑑みても、やはりそもそもここは人の住むような住宅地ではないのかもしれない。
山武市埴谷 放棄住宅地 (14)
馬の飼育場となっている区画もある。だが人の姿がまったくなく、馬しか見かけない分譲地が住宅地と言えるのか。


封鎖された密林のニュータウンへのアクセス

山武市埴谷
・圏央道山武成東インターより車で13分
・総武本線八街駅・成東駅よりちばフラワーバス八街線 「井の上」バス停下車徒歩12分