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 千葉の限界ニュータウンの不動産を、買うのではなく、借りて住む場合、地方の農村のように人づてを頼らないと物件が見つからないということはなく、基本的には都市部のそれと変わらない。仲介業者に物件を案内してもらい、入居費用を支払って借りる、という流れだ。昨今は北総でも多くの自治体で「空き家バンク」を開設する流れが出てきているが、たとえば八街の場合などは、正直なところ物件数は豊富でもないし、物件の質にしろ価格にしろ一般の不動産業者が扱うものと大差なく、役場が仲介するということもなく、結局仲介は宅地建物取引業協会が行うので、利用するメリットがあまり感じられない。 

 ただ売り地や売り家などの売買物件と異なり、賃貸物件の市場規模や相場は北総の中でも自治体やエリアによって事情がかなり異なる。と言うのも、70年代に大規模な宅地の造成・分譲が行われたものの、結局バブルの時代も需要が発生せずほとんど住宅建設が進まなかったエリアは、そもそも賃貸に回せる戸建の絶対数が少ないうえ、その後のアパート建設ラッシュも起こらなかったので、ごく平均的な地方の小都市レベルの物件数しかないからだ。アパートは、社宅用としての企業の借り上げがメインと思われる、工業団地の近くに建てられているものも多く、田舎暮らし派の嗜好を満たすものはほとんどない。需要も少ないが供給も少ないので、賃貸相場も、利便性の悪さの割にはお値打ち感はない。
  
 対して、八街や富里、東金といった、辛うじて都心まで通勤可能で、バブル期に人口が激増したようなエリアでは、80年代末期から90年代半ば頃にかけて、市内に多数の建売住宅が建設され、さらに駅や商業施設周辺に数多くのアパートが建築された。そして近年には、報道でも話題になった大東建託やレオパレスなどのいわゆる「サブリース」のアパートがこれまた猛烈に建てられ、おかげで賃貸物件が山ほどある。こういった町では、賃貸は賃貸で、売買物件とはまた異なる深刻な問題が起きている。これは限界ニュータウンだけでなく郊外全般に起きている問題なのかもしれないが、今回は、僕が暮らす八街の賃貸物件を例に挙げて紹介したい。
勢田貸家
典型的な八街の貸家の広告。家賃も平均的だ。(アットホームの物件広告より)

 僕自身が貸家暮らしなので、私事であるが僕の家を例に挙げると、3LDKで床面積は75㎡、築26年の戸建で、駐車場は敷地内に1台分と、駐車場用地として近所の空き地が1区画付いて家賃は58000円。初期費用は、敷金礼金はなく、仲介手数料は貸主負担、前家賃1ヶ月サービスで、僕の負担分は保証会社の保証料と保険で合計で約70000円だった。初期費用は安くなっているが特約があり、1年未満に解約すると違約金として家賃の2か月分を支払う。ちなみに貸主は元の居住者や近所の農家、というのではなく、うちの近所のエリアを専門に取り扱う投資家の方だ。

 初期費用はともかく、家賃は八街市内で、駅から比較的近いエリアでは大体どこもこの程度の価格であり(もちろん例外もあるが)、駐車場が1台分であれば55000円程度、敷地内に2台以上駐車場を確保できれば60000円以上、便所が簡易水洗(汲取。意外と多い)であれば50000円前後、駅も遠く近所に商業施設がまったくないエリアはこの相場からマイナス5000円程度、といったところだ。

 僕の家の近所で、同じスペックの中古住宅の売買物件は、大体300万円~600万円程度の価格で広告に出ていることが多く、その価格を考えるとこの家賃はひどく割高に見えるが、だが家賃相場というものはもともと変動が少ないうえ、300万の戸建であれ1000万の戸建であれ、固定資産税等の税金関係を除けば、修繕やリフォームなどの維持費用は同じなので、れっきとした賃貸事業として経営されている貸家を借りる場合は、これより家賃が下がることはあまり期待できないのではないかと思う。それどころか、床面積70平米以上の一棟の建物を丸ごと貸して月の収益が58000円となると、不動産投資に関してはまるで素人の僕の目から見ても、これは仕入れ値や維持費用を相当シビアに見積もらなければ難しい気がする。

 実際、僕の家のリビングには、入居時から1台のエアコンが据え付けられているが、それは説明書やリモコンがまだビニールに入ったままの状態の、どう見ても新品のエアコンであるにもかかわらず、契約上は「残置物」扱いであった。エアコンを「設備品」扱いにしたら、故障時に貸主負担で交換する必要が生じ、それだけで軽く1か月分の家賃収入が飛んでしまうのだ。20170705_111535
築年数が経過したアパートは入居者の確保に悩む。

 一方のアパートと言えば、これもまたどこの物件も似たり寄ったりの家賃で、元々同時期に建てられた同じような規格のアパートばかりなので、何も差別化を図れず横並び状態だ。まれに激安家賃かと思えば、風呂とトイレが同室にもかかわらずトイレが汲取というアヴァンギャルドな構造だったりして、基本的にはよほどの駅近物件を除きどこも同じと思って差し支えない。ただ困ったことにアパートに関しては、前述のように近年、サブリースのアパートが市内に激増しているため、築20年以上経過した古いアパートは敬遠される方向にあり、オーナーは入居者の確保に苦労している。

 先に述べたように、僕の住む貸家の入居費用は、敷金礼金ゼロは近年よくあるとして、仲介手数料や前家賃を貸主負担とする契約となっているが、本来借主が負担する分まで貸主負担となり初期費用が安くなっているのは、こうした賃貸市場の競争激化が原因である。すなわち、家賃は一度相場を下げてしまうとなかなか上げるのが難しく、収益性も下がってしまうので、入居者を呼び込むには初期費用を下げざるを得ない面があるのだ。

 これがアパートの場合はもっと露骨で、家賃4万円前後のアパート(2DK程度)であれば、入居費用が3万円~5万円程度なのは珍しくもなく、少し条件の悪いアパートであれば入居費用が0円、と言うものもある。おそらくどこも1年程度の縛りがあると思うので、それだけの期間入居してもらえばトータルではプラスになる、という算段なのだろう。

 ちなみに僕が契約した不動産会社の営業マンは、この入居費用のダンピングについて、「市内にこれだけアパートが増えているのだから、もう初期費用を下げなければ絶対に入居者なんて決まらないのに、なかなかそれを理解してくれない大家さんがいるので困る」とこぼしていた。20170705_111645
アパート市場を破壊した大東建託のサブリース物件。


 ということで長々と能書きを垂れてきたが、実際問題、借り手の立場としては何もこんな話はそれほど気にすることでもなく、敷金がゼロということは退去時に原状回復費用を請求される可能性があるということだけ頭に置いておけばいいのであるが、もうひとつ、借主も貸主も共通して頭を悩ます問題が、駐車場の問題である。

 近年、八街市内ではバス路線の減少、廃止が著しく、市内のほとんどの地域では、主要駅である八街駅へ向かうバス便ですらコミュニティバスが一日数本、最も運行本数の多い千葉交通のバスですら日中は一時間に平均1本程度と、公共交通の便が極めて悪くなっている。そのため、多くの地方都市同様、自家用車は一家に一台ではなく一人一台、というほど移動手段は自家用車に依存している状態であるが、困ったことに80年代から90年代初頭にかけて建築された住宅は、戸建であれアパートであれ、敷地内に1台分の駐車場しか確保していないものが多い。当時は八街市内のバス網もまだ豊富で、専業主婦が多かった時代だからだ。

 では、敷地内に置けなければ2台目以降は外部の月極駐車場で、と考えるのが普通だが、限界ニュータウンの場合、駅周辺を除けば、近隣にそう都合よく駐車場が見つかる保証がまったくない。そもそも地価そのものが安いので駐車場など経営しても収入はたかが知れており、それ以前に八街の場合、軽自動車は車両保管場所の届出義務がないうえ、空き地への駐車や私道の路上駐車が横行していて、わざわざ金を払って借りる者などめったにいないからだ。20170716_121813
空き地が駐車場として利用されている光景はいたるところで見かける。(写真はイメージであり、この車両が無断駐車をしているという意味ではありません)
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たまに月極駐車場を見かけることもあるが、一方では不足しているのに、あったらあったで借り手がほとんどいないという奇妙な現象が起きている。


 僕の家に駐車場用地としての更地が1区画付いているのもオーナーの苦肉の策で、元々僕の貸家は敷地内1台分の駐車場付きの貸家として55000円で広告が出されていたのだが、スペースの問題から小型車しか置けず、これでは借り手が付かないので、近隣の空き地をオーナーが貸家の駐車場用地として買い上げたのだ。

 ところが実は僕の住んでいる分譲地も、1区画、もう10年以上地主が顔を見せておらず、草刈業者も入っていない空き地があり、その土地は近隣住民共用の、主に来客用の駐車場として使われている。最初、不動産業者から、各地の分譲地で空き地の無断駐車が横行していると聞いたときは、そんなんでいいのか、と思ったものだが、実はこれもやむをえない事情があり、地主が放置し雑草が伸び切っていたその土地では、一度冬場に枯れ草に火が付いて小火騒ぎが起きており、それ以降、近所の方が草刈をするついでに、土を踏み固める目的もあって駐車をしているという事情があったのだ。

 だがこういった事情は、地域住民の暗黙の了解で成立していることなので仲介業者もほとんど実態を把握しておらず、仮に把握していても、まさか物件広告に「空地に無断駐車可」などと書くわけにもいかずおおっぴらに宣伝はできない。そのため、他所から来た人間が物件を借りる場合、最初から空き地の無断駐車や路上駐車を想定して物件選びをするわけにもいかない(仲介業者もおそらく立場上、薦めはしない)。場合によっては、たとえ空き地や路上であれ、その駐車場所の場所取りをめぐって近隣住民とトラブルになるケースもあるからだ。こればかりはその場所によってケースバイケースであり、どこなら大丈夫とか一概には言えない。

 そうなると、2台以上の駐車スペースが必要な世帯は、一見物件数が豊富なように見えて、実はその選択肢が極端に狭まってしまう。こういった事情は業者や貸主も十分承知しているので、2台以上の確保が可能な物件は総じて賃料も強気の設定だ。大東建託のアパートなども、敷地内の駐車場は、フザケンナというくらい高い。

 共有設備を備えており自治会運営の基盤がしっかりしている分譲地などでは、団地内の空き地を自治会管理の駐車場として確保していることもあるが、そうでないところは路上駐車だらけで、緊急時に消防車の通行が困難になりそうなところもある。


 以上のことから、自家用車を2台以上保有する予定のある人は、なるべく賃料を抑えようとするならば、物件そのものよりもおそらく駐車場の有無で選ばざるを得なくなる可能性があることは覚えておきたい。2台以上駐車可能な物件であれば、必ずその旨広告に記載されている。