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  東金市の極楽寺は、八街駅から南におよそ4㎞。八街市と東金市、山武市の境界に位置する古くからの農村地帯である。この辺りは3市の市境が複雑に入り組み、飛び地もいくつか見られるが、東金の市街地からは遠く、住民の多くは日常の買い物などは八街市内で済ませていると思われる。そして例によって、市境付近には辺境の分譲地が展開されている。東金市でありながら、分譲地は八街市側からしか進入できない道路構造で、八街での生活を想定した住宅地であるのは明白だ。
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八街駅から極楽寺を経由して東金駅に向かう九十九里鉄道バスの車内。
 
 公共交通も、九十九里鉄道の、今時珍しい木床バスが1日3本、八街駅から極楽寺を経由して東金駅まで結んでいるものの、これを利用するよりは八街のコミュニティバスの方がまだ便利で本数も多い。市域は東金市でも、極楽寺は事実上、八街の住宅地の1つである。

 極楽寺は、分譲地は大した規模でもないにもかかわらず物件サイトにおいて、貸家や中古物件がどこかしら常に掲載されている地域なのだが、それは市域の外れという地理的な制約面の他に、八街駅から極楽寺方面へ向かう国道409号は恒常的に交通量が多く、特に極楽寺までの間には、右折待ちで車両が滞りがちな交差点がいくつもあり渋滞しやすい上、八街市南部は商業施設が乏しいことから、その不便さが敬遠されているのかもしれない。地価も、八街駅周辺ではもっとも安いエリアの1つとなる(坪単価1~2万程度)。

 ただし極楽寺を通学区域に抱える源小学校は、農村の学校であるためか地域社会の支援は厚く、自治会によって通学バスが運行されているので、地価の安さもあって若い夫婦もそれなりにいるようで、限界ニュータウンとしては、子供の姿を見掛ける機会の多いところでもあり、今では絶滅危惧種と化しつつあるプヒャラ系改造バイクもチラホラ見掛ける。ちなみに旧来の農村集落である極楽寺に対し、近年開発された分譲地は「新極楽寺」とも呼ばれている。
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極楽寺のメイン道路。すべての街路がこの道に接続されている。

 団地内は、団地の中央部を狭いメイン通りとして、すべての街路がそこから横枝状に伸びていて、そしてその街路がすべて袋小路という奇妙な構造であり、お陰でメイン通りは幅員が狭いにもかかわらず頻繁に車両が通行する。恐らく開発許可が不要な範囲でその都度少しずつ宅地造成を進めた結果で、あまり計画的とは言えない都市構造だ。

 家屋は、ほとんど更地のみの街区もあれば、同じような外観の建売住宅が10数棟もズラリと並ぶ街区もあり、空き地が多いにもかかわらず、既存の住宅は日当たりに難のある家も少なくない。駐車場も不足しているのか、路上駐車も目立つ。
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極楽寺は建売住宅と思われる、同一規格の家屋が多い。
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雑木林もまだ残る極楽寺の街路。  

 そんな極楽寺の、雑木林の合間に切り開かれた街路を進むと、周囲が木々に囲まれた小さな分譲地が現れる。ここも似たような外観の家屋が並ぶ、建売分譲が行われたとおぼしき一画なのであるが、よく見ると更地に、家屋の基礎だけが残されている区画がいくつか見受けられる。

 基礎は泥や落ち葉が溜まり、色も変色していて、明らかに放置されて長い年月が経過している。先日、山武市沖渡の、建築途上で放棄された家屋を紹介したが、ここも沖渡同様、数棟分の家屋の基礎が放置されていることから、業者が何らかの理由で建築を途中で放棄し、今日に至っているものと思われる。
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雑木林の奥に切り開かれた小さな分譲地。
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家屋の基礎だけが残された空き地。
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基礎には泥や落ち葉が溜まり、放置からの長い年月をうかがわせる。

 分譲地の最奥部には、外壁の色が違うだけのほぼ同規格の家屋が数棟並んでいて、居住者もいるようである。以前ここの住宅が一棟、中古物件として販売されていたことがあり、築年が1996年であったので、同時に建築されたのであれば築21年ということになる。しかし、手前の、隣地に基礎が残されている家屋がどうもおかしい。窓にカーテンも何も取り付けられてない上、2階の天井から断熱材が垂れ下がっている。

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写真では見えないが。2階の天井から断熱材が垂れ下がっているのが確認できる。
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問題の家屋。外壁は薄汚れている。
  
 他の家屋はすべて居住者がいるが、どうもこの家だけ空き家のようだ。一見すると外観は完成しているように見えるが、外壁は薄汚れて生活感がなく、部屋に家財道具などが置かれている様子もない。そこで、何となく覗きみたいで(覗き以外の何者でもない)イヤな感じはしたものの、ちょっと敷地内に失礼して窓から中を覗いてみると、内装工事はほとんど手付かずの状態で、建材などが放置されたままであった。
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問題の家屋の内部。内装工事は中断したままだ。
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建築資材はそのまま置き去りにされている。

 1996年の建築となると、バブルもとっくに崩壊し、世はまさに不景気真っ只中の時代であり、就職氷河期などと言われたのもこの時代だ。憶測でしかないが、恐らくこの建築業者は廃業し、すでに完成していた数戸の住宅だけが市場に出回ったのだろう。数棟分の基礎と、外装工事まで完了していたこの家屋は、工事を引き継ぐものもいないまま、今日まで放置されているようだ。

 周知のように木造家屋というものは居住者もなく放置されると傷みが早い。しかもこれを言っては何だが、居室内に放置された建築資材を見る限り、ベニヤ板を多用しているようで、何だかあまり高級そうな建材には見えない。すでにかなり劣化は進んでいるのではないだろうか。現在の所有者は調べていないが、再利用する予定はあるのだろうか。

 分譲地内では、1区画が小規模な公園になっており、いくつかの遊具が設置されていた。ここは仮に放置された基礎の分まですべて家屋が建てられていたとしても、合計で十数棟程度の小規模な分譲地であり、通常この規模のミニ分譲地では、住民用の共有スペースが設けられることは(少なくとも八街近辺では)まずないのだが、区画を1つ潰して造られたこの小さな公園は、開発業者の良心であったのだろうか。遊具は錆が目立ち、子供が遊ぶ姿は見られなかった。森の中に築かれた、子育て世代のための小さな分譲地は、ついに完成する日を迎えることもないまま、ゆっくりと、静かにその役目を終えていく。
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小規模な分譲地では珍しい児童公園。
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分譲地は未完のまま、森の奥深くで静かに風化が進んでいく。


建築途上で放棄された建売住宅のある分譲地へのアクセス



東金市極楽寺
・総武本線八街駅より八街市ふれあいバス「南コース」 笹引団地入口バス停下車 徒歩8分
・総武本線八街駅より九十九里鉄道バス「八街線」 笹引バス停下車 徒歩13分