日豊しもふさ緑が丘団地 (1)
 日豊しもふさ緑が丘団地は、以前紹介した成田市成井のビバランド団地の少し西に位置する、総区画数200~300程度の住宅団地である。造成時期もビバランドとほぼ同時期で、分譲後しばらくは住宅建築がまったく進まなかった点も同様だ。団地の読み方は鉄道の日豊本線同様「にっぽう」であるが、正式名称は長ったらしいためか団地の入口の看板には「日豊団地」と略称が記載されており、バス停もそれに準じている。

 団地は県道79号線を挟んで南北に展開されており、南側の方が区画数が多い。周辺の他の団地が幹線道路から少し奥まった位置に切り開かれているのに対し、ここは広く県道と面しているため、交通量は多くないものの車両の走行音が結構聞こえる。
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団地に面する県道79号線。交通量は多くない。

 県道からはいくつかの進入路があるが、団地名を記した看板の進入路から入ると、いきなり「告」と記された、物々しい雰囲気の看板が3つも設置されている。いずれも自治会や汚水管理組合(同じじゃないのか?)が設置したもので、要はこの団地へ新規に住宅を建築する移入者に対し、集中浄化槽施設の施設負担金と基金の納入を求める注意書きで、それ自体は共有設備のある住宅団地ならどこでも見かけるものであるが、それにしても文体が堅苦しく、読み手に威圧的な印象を与える看板である。同時に建築業者に対しても、建築の際は「建設保証金【迷惑料として】の納入を前提と致しております。返金はありません」などと、カッコ書きで余計な一言を添えたうえで重ねて要求していて、読んでるだけでマイホームの夢が色褪せてくる。別にウェルカムとまで書く必要もないが、もう少しソフトな表現は出来なかったのだろうか。

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やや威圧的な印象を受ける団地の看板。
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問題の集中浄化槽。さすがにきっちりと管理はされているようだが、住民の負担は果たして。

 しかもその納入金が結構な金額だ。施設負担金が20万円、管理基金が10万円で合計30万円。そして前述の「迷惑料」で更に5万円。合計35万円也。ここの団地は建物を見る限りビバランド同様、1区画あたりはせいぜい30~40坪程度の狭い宅地が多く、仮に30坪の宅地に家を建てようとした場合、納入金だけで坪単価が1万円に達してしまい、近隣に点在する共有設備のない宅地の地価そのものと変わらなくなる。さらに別のデメリットとして、通常、成田市を含めた多くの自治体では、公共の下水道が配備されていない地域に自己居住用の住宅を建築する場合、合併浄化槽の設置に補助金を出しているのだが、少なくとも成田市の場合は集中浄化槽に接続する際の工事は補助の対象外となり、施工費は全額自己負担となってしまう。これでは一体この日豊団地の土地はいくらで買えばよいのか。負の遺産の香りがプンプン漂う先行き不安な団地だ。

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空地は目立つが売地の看板が少ない。
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区画の狭さも流動性の低さの遠因と思われる。

 そのためであろうか、団地内はかなりの数の空き地が目立つものの、他の分譲地によくある草刈り業者の売地の看板をほとんど見かけない。ちなみに近隣の他の住宅団地では、未だにわずかながら新築住宅の建築が行われている光景を時折見るが、こことビバランドはその光景をついぞ見掛けたことがない。実際にはひっそりと宅地の販売は行われているのであるが、やはり最初の負担金がネックとなっているようだ。地元の仲介業者の広告にも施設負担金の納入義務に関して記載がある。

 団地は南向きの傾斜地に造成されたひな壇で、基本的にはどこも日当たりが良いものの、団地の周囲は森林に囲まれ、残念ながらビバランドや外記林団地のように谷津田を見下ろす広い眺望は望めないためやや面白みに欠ける点はあるが、この団地内の街路の多くは公道のため整備は行き届いており、空き家も少なく大半の空き地も適切に管理され、一見すると荒れた印象はまったくない。

 だが一部、見るからにがけ条例に抵触しそうな古い擁壁上の宅地もあり、さすがにただでさえ高額な納入金の存在で不利な条件にあるこの団地で、更にがけ条例などというオマケまでついてきてしまってはもはや売り物にならないのか、擁壁上の宅地だけはまるで放棄住宅地のような荒れっぷりであった。
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ついに資産価値が0を下回った擁壁上の宅地。
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笹薮に埋もれ、再利用の見込みがまったくない宅地。
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団地内の街路は公道のため傷みもなく、メンテナンスは行き届いている。
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大部分の街区は良好な状態であり、一見すると平凡な印象だ。

 団地内をしばらく歩いてみても、ほとんどの街区は、ただ空地が多いだけで別段どうということのない住宅街で(これが普通だと感じるのは感覚が麻痺し始めているのかもしれないが)、限界ニュータウンとしては及第点の管理状態が保たれているにもかかわらず、この団地は最南部のある一画だけがなぜか異常に荒れたまま放置されている。そこだけは街路も未舗装で、建ち並ぶ数件の家屋はどれも空き家を通り越して完全に廃屋の状態だ。家屋の合間に軽自動車が一台駐車されていたが、住宅は蔦が絡まり窓ガラスも割れ、どう見ても人の住める状態ではなく、単に近隣住民が駐車場所として利用しているだけであろう。
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部分的に荒れ果てた一画がある。
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建ち並ぶ家屋はすべて蔦に覆われ、廃屋と化している。

 日豊団地の家屋は外観から判断してそのほとんどが80年代後半~2000年頃の建築と思われるが、ここに並ぶ廃屋は明らかにそれより一世代前の建築である。1979年に撮影された上空写真にはこれらの家屋は写っていないので、80年代初頭の建築と思われるが、それにしても建ち並ぶ5棟の家屋がすべて廃屋になるという事態は珍しい。北総ではバブル期の戸建てが格安で流通しているためか、70年代~80年代前半の古い家屋は売りに出されることもなく放棄されていることはあるが、いくら空き地だらけの北総といえども、5棟も家屋が並んでいれば少なくともそのうち1,2棟くらいは居住者が残っているのが普通である。

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古い水準の建築で、再利用は難しい状態にある。
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建ち並ぶ家屋はいずれも似たような様式だ。

 よく見ると、並ぶ家屋はどれも似たり寄ったりの外観・構造で、敷地も狭くあまり高級な造りでもなさそうなことから考えて、おそらく古い建売住宅か、あるいは貸家として建築されたものだと思われるが、しかし前述のように住宅は一旦市場に出されてしまえば、役目を終える時期は各居住者の個人的事情に左右されてばらつきがあり(それが近年のスプロールの原因の一つでもある)、ここの一角のようにすべての家屋が同時進行的に空き家となり荒れ果てていくという偶然は起こり得ないので、この家屋は実際に住宅として利用される機会もなくそのまま放置されたか、利用されていたとしても何かの都合で短期間のうちに市場に流通しなくなったのであろう(貸家であればその可能性は高い)。当ブログでも、これまで建築途上で放棄された建売住宅と言うものはいくつか紹介している。
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今後、共有設備の負担を続けることができるか。設備完備の超郊外住宅団地は岐路に立たされている。

 さて2017年12月現在、某仲介業者のサイトにて、「申し込み」との記載はあるもののこの日豊団地内の築27年の3LDK(約72㎡)の中古住宅が255万円で広告に出されている。価格は確かに安めの金額となるが、冒頭でも述べたように、この日豊団地を始め、近隣のいくつかの分譲地は、開発後40年を経た今日においてもなお多くの空き地を抱え、分譲当初の想定よりも大幅に少ない居住者の負担によって、集中井戸や集中浄化槽などの共有設備が維持されている。郊外の衰退が指摘される昨今、この先同様に共有設備の維持費を負担し続けることが果たして可能なのか、正念場はすぐ目の前に迫っている。


日豊しもふさ緑が丘団地へのアクセス 



成田市名古屋
・圏央道下総インターより車で4分
・成田線滑河駅より成田市コミュニティバス「しもふさ循環ルート」日豊団地入口下車
・京成成田駅より成田市コミュニティバス「津富浦ルート」成井回転場バス停より徒歩19分(片道1日1本。ダイヤ要確認)