パレスガーデン成田は、圏央道下総インターからもほど近い距離にある、旧下総町の中ではおそらくもっとも遅い時期に造成された分譲地である。前回紹介した芙蓉邸街は80年代後半、ちょうどバブル期にあたる時期に造成が行われているが、パレスガーデン成田はそれよりもさらに数年遅い。成田市役所の都市計画課に、パレスガーデン成田の開発申請の概要の記録が残されており、それを見ると、東京の神田に本社を置く中堅ゼネコンの鉄建建設のグループ会社「テッケン興産」が平成3年(1991年)12月に開発許可の確認を受け、平成6年(1994年)12月に造成が完了している。

 この開発時期を見てもお分かりの通り、パレスガーデン成田は地価高騰・人件費高騰の絶頂期に開発申請が出され、そしてバブルの崩壊の進行ともに造成工事が進められ、住宅市場が一気に冷え込んだ時代に分譲が開始されたものだ。宅地開発としてはこれ以上あり得ないくらい最悪のタイミングであり、今となってはテッケン興産の黒歴史そのものと言ってもよく、もちろん造成完了後もしばらく住宅建設はまったく進まなかった。2005年の航空写真でも、家屋が一棟も確認できないことから、70年代に分譲され、80年代後半まで利用されなかった北総の分譲地の定番のパターンを、ここは20年遅れで再現していたことになる。立地の選定に関しても過去の教訓を生かした形跡がひとかけらも見られず、言っては何だが、これは会社の信頼性をも根幹から揺るがすほどの先見性のなさではなかろうか。まあ、歴史の結末を知る後の時代の人間が過去の過ちをあれこれ腐すのは容易いことなのだけれども。
パレスガーデン成田 koukuu
2005年に撮影されたパレスガーデン成田の上空写真。住宅は全く見当たらない(国土地理院航空写真より引用)。

 ところが現実にはパレスガーデン成田の歴史はそこで結末を迎えたわけではなく、どういう訳かここ10年ほどの間にポツポツと住宅建設が進んでいる。ただでさえ限界ニュータウンの聖地とも言える旧下総町エリアにおいて、このご時世になってまた新たな限界ニュータウンが誕生してしまうとは、吸収合併した成田市にとっても頭の痛い問題であろうが、2005年と言えば、廃止バス路線の代替交通手段として成田市のコミュニティバスが運行を開始した年であり(翌2006年の3月には下総町そのものが消滅している)、つまり住宅建設が進んだ時期には既にこの辺りは、ほぼ現在と同様の交通アクセス手段しか確保されていないエリアだったということになる。
下総町役場 (2)
旧下総町役場庁舎と成田市のコミュニティバス。現在、旧下総町域を走る民間の路線バスはひとつもない。

 となれば、このパレスガーデン成田が、都心方面の勤務者のベッドタウンとしての地位など確立できるはずもなく(もともと旧下総町の分譲地は周辺に生活基盤がある人向けのものだが)、では一体どのような住宅地になっているのか、今回は、バブル期の開発で勝ち組となった芙蓉邸街に対し、ビッグウェーブに乗り損なった非業の分譲地であるパレスガーデン成田の共有設備に焦点を当てて紹介していきたい。
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パレスガーデン成田分譲地内。すべてが築浅の住宅だ。

 団地内は、前述したように築浅の住宅しかない。今の時代は、いくら土地が格安で余っていようとも、下総町のような交通も不便で商業施設もほとんどないエリアに建売住宅を建設・販売する地元業者は皆無に近く、僅かに建てられた住宅は外観も形状も各戸バラバラで、注文住宅であることが一目で分かる。数区画をまたいで建築された豪奢な住宅もあれば、総二階の箱状のシンプルな家屋もある。変わったところでは、昨今流行のミニハウスや、宅地を畑として利用し、その畑作業用の小屋が建てられた区画もある。訪問時も、真冬でありながら初老の夫婦がその畑の手入れを行っていた。 
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家屋は外観も形状も大きさもバラバラで、建売住宅と思われる家屋は一つもない。
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別荘風のミニハウスもある。
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家庭菜園用の作業小屋もいくつかみられる。

 また、建築途上の家屋も数棟あり、ハウスメーカーの住友不動産とタマホームが工事を行っている光景も見られた。今日の時点でもパレスガーデン成田は微増ながら住民の流入が続いており、都会の人にはにわかに信じがたい光景かもしれないが、旧下総町エリアにある分譲地はどこも空地ばかり無駄に豊富で肝心の中古住宅の供給が非常に少ない。下総町は「下総みどり学園」という、公立では珍しい小中一貫校が存在し、自家用車があれば十分成田市内や空港周辺へ通勤できるエリアであるためか(そして地価は成田ニュータウンの数分の一にまで下がる)、もともとこの近辺に生活基盤を持つファミリー層の間で住宅需要が少ないながらも存在する。既に建売住宅が販売されるエリアではなくなっている以上、どうしても分譲地が再利用されてしまう状況なのだ。
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有名ハウスメーカーによる新築工事。

 しかしそんな家屋の真新しさに対し、分譲地自体は荒れている。売地の看板はいくつか見かけるものの、ほとんどの宅地は全く管理もなされず、生育した樹木が街路上まで伸び出し、路肩の側溝とアスファルトの継ぎ目からも雑草が生えてしまっている。宅地の管理が放棄されてしまうのは住民の責任でもないが、それにしてもほとんどの区画が放棄住宅地に近い状態のまま虫食い状に真新しい家屋が並ぶ光景は、他の北総の分譲地では見られない、ある意味では異様なものだ。
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管理を放棄され、荒れ果てた宅地。
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駐車スペースに野太い樹木が生えてしまっている。
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全体的に荒れた分譲地の中に、築浅の住宅が点在するアンバランスな状態にある。

 団地の管理という点では、このパレスガーデン成田より、周辺にある70年代の古い分譲地の方が、共有部の管理はよほど行き届いているのだが、70年代の分譲地はバス利用を前提とした古い規格で1区画当たりの面積が非常に狭いので複数台分の駐車場の確保が難しく、今となっては新規の移入者の需要に応えられないがゆえに、こんな荒れた分譲地であろうとも利用されているのである。北総の限界分譲地は元々首都圏のベッドタウンというよりも、空港特需を見込んで開発されたという固有の事情があるとは言え、その開発手法はどの時代においても潮流に一歩乗り遅れた、有り体に言えば時代遅れの開発であり、リアルタイムのニーズに応えることが出来ていない。前回紹介した芙蓉邸街は例外なのだ。
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歩道の舗装は既にひび割れてしまっている。

 だが現時点でのパレスガーデンの家屋数を考えれば、この団地のすべての共有部の適切な管理を求めるのは酷な話とも言える。パレスガーデン成田は芙蓉邸街と同様、集中井戸、集中浄化槽、そして集中プロパンガスを備えた分譲地なのだが、現時点ではどう考えても、それ以上の共有設備をまともに維持できるような世帯数ではないからだ。外観の印象のみで語っていることであるという前置きをしたうえであえて書かせていただくが、団地のインフラ設備は、特に集中井戸の配水場はとりあえず利用可能な状態を維持しているのみという雰囲気であり、機能面に直結しない管理などは後回しにされている様子がある。芙蓉邸街のそれと比較すると明白なのだ。

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集中井戸の配水場。芙蓉邸街よりも新しい分譲地のはずだが、かなり汚れており、敷地の管理もされていない。ちなみに指定管理業者は近隣の建築会社だ。
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集中プロパンガスの供給施設。
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集中浄化槽。
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調整池。芙蓉邸街のように、周辺の草刈りや樹木の伐採などは行われていない。

 パレスガーデン成田は、調査時点においても、一般の居住用の家屋数はおそらく50棟にも満たないと思うが、たったそれだけの世帯数で、これだけの規模の共有設備の維持管理など並大抵のことではない。そもそも200以上の世帯の利用を想定して造られた共有設備なのだから、あまりにオーバースペックすぎるのだ。

 団地内には公園が2か所あるが、公園は適切に管理されている。水道や排水といったインフラ設備と比べて後回しにされがちな公園の管理も行っているのだから、管理不全のボロボロのミニ分譲地を多く見てきた者からすれば、それは超人的であるとも言える。しかも芙蓉邸街とは違い、パレスガーデン成田の街路はすべて私道だ。まったく気の遠くなるような話で、本当にこの団地でよかったのか、と部外者ながら思わず心配になるほどだ。しかし逆の言い方をすれば、それでもインフラを維持し続けているからこそ、団地の第一印象はかなり悪いにもかかわらず現在も新規の居住者を呼び込めているというのも否定できない事実であろう。
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団地の公園。

 団地の共有インフラは諸刃の剣だ。それがあれば僕の家のような自力インフラのミニ分譲地よりは快適な生活が送れることには違いないが、時にはその維持管理が住民に重くのしかかるケースもあり、万が一管理不全に陥ろうものなら、その住宅地は宅地としての市場価値が著しく損なわれてしまい、何もインフラのない更地よりもさらに市場性が劣る結果となる。パレスガーデン成田はインフラを維持し続けることにより新規住民を呼び込めている一例であるが、次回は逆に、居住が進まなかったゆえに共有インフラが事実上放棄されてしまい、市場価値を完全に失ってしまった旧大栄町の分譲地を紹介する。



パレスガーデン成田へのアクセス


成田市倉水
・圏央道下総インターより車で2分
・成田線滑河駅より成田市コミュニティバス「しもふさ循環ルート」 「倉水」バス停下車 徒歩1分