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 八街は、農地も多く残る田舎町であるのは確かだが、明治時代の開墾地である旧八街村エリアにしろ、江戸時代からの散村が点在する旧川上村にしろ、大方の平坦地は農地として切り開かれており、あとは雑木林などが残るのみで、元々台地上に位置するため山や河川もなく、雄大な大自然に包まれた秘境という雰囲気はない。あくまで都市近郊農業の町であり、市としてもそんなアピールはしていないし、本格的なアウトドア派の嗜好を満たすようなスポットは一切ないのだが、そんな八街にも「八街市営キャンプ場」なる、全然アウトドア精神をくすぐらない武骨な名前のキャンプ場がある。
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キャンプ場への入口案内。分譲地もこの案内に沿って向かう。

 市営であるので無料なのは結構なことだが、その代わり利用の際には市役所で申請申込書を記入するという面倒な手続きが必要で、それはまだいいとしても、八街の市街地からこのキャンプ場に向かうと、キャンプ場のほど近くのクリーンセンターの建物が否応なしに目に入り、早くもアウトドア気分が減退してくる。肝心のキャンプ場も、近くに河川や遊歩道があるわけでもなく、ただ雑木林に囲まれているだけで広くもない。

 「無料」の2文字に目が眩み、こんな中途半端なキャンプ場に、都会育ちの子供に大自然の素晴らしさを体感させようと、渋る虫嫌いの嫁を説得し、ホームセンターのコーナンで安物のキャンプ用品を一通り揃えて喜び勇んでやって来ようものなら、子供は時間を持て余し、嫁は雑木林に生息する無数の謎の昆虫に襲われ、ただでさえ最近下落気味のパパの株価が致命的に暴落する危険性がある。キャンプ場と言うよりは、緑に囲まれたバーベキュー場程度のつもりで利用した方が多分楽しいと思われるような立地なのであるが、なによりこのキャンプ場の雰囲気を一番台無しにしていると思われるのが、そのキャンプ場に隣接するように分譲地が切り開かれていることだ。
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八街市営キャンプ場に向かう雑木林の道。だが、キャンプ場より先に分譲地が見えてくる。
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雑木林には街灯も設けられていたが、既に朽ち果て、機能していない。

 分譲地とキャンプ場の進入路は共通で、キャンプ場は雑木林のどん詰まりに位置するため、この分譲地の脇を抜けていく以外に、キャンプ場へアクセスする道路はない。知らずにやって来たら、思わずカーナビを見直すことであろう。分譲地へ近づくにつれて道路は未舗装となり、街路は一切舗装されていない。

 キャンプ場の様子も撮影したかったのだが、訪問日が土曜日であったためか、利用者が何組かいて、ノコノコ入り込んで写真を撮影するのも不審者丸出しなので、とりあえずキャンプ場までの進入路も併せて掲載しておくが、このキャンプ場へ至る進入路は幅員が狭く、路盤も柔らかいので進入には注意が必要だ。

 ちなみにこのキャンプ場が気になる方は、市のホームページでは利用方法の説明しかないので、グーグルで検索すれば、実際に利用した方のブログがいくつか出てくるので参考にしていただきたい。手前の分譲地にツッコんでいるひねくれたブログもなくどれも明るくさわやかな記事で、気の合う仲間同士や愛犬連れのキャンパーなら、別にロケーションなどあまり関係なく楽しめるようだが、繰り返すが雄大な大自然を求める情操教育パパには別のキャンプ場をお勧めする。
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キャンプ場の看板の案内に沿って進むと分譲地が見えてくる。キャンプ場はこの奥。
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画像奥、直進方向がキャンプ場への進入路。分譲地の脇を通らなければアクセスできない。
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分譲地の先は再び雑木林となり、キャンプ場へ至る。
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ややピンボケだが、画像中央、少し明るいところがキャンプ場。分譲地から徒歩3分ほど。

 ところで八街は、これまで紹介してきたように、墓場に隣接していたり、ラブホテルに隣接していたり、クリーンセンターと目と鼻の先にあったりと、自ら資産価値を下げていくスタイルの分譲地が目白押しなのだが、このキャンプ場の隣の分譲地に関しては、千葉市や佐倉市寄りのエリアにあるためかそれなりの数の家屋がある。現状、キャンプ場へ徒歩3分という立地がその資産価値に好影響を与えるとは決して思えないが、元々旧川上村エリアであるこの近辺には分譲地自体多くなく、こんな常識外れの立地条件でも一定の需要があったのだろう。

 分譲地に入ると、さっそく目に付くのは「火気厳禁」「少量危険物貯蔵取扱所」の看板が掲げられた、住宅地にあるまじき謎の施設で、こんなものが平然と住宅地に造られてしまうところに限界ミニ分譲地の計り知れないリスクがある。いくら空地の活用方法が限られているとは言え、近隣住民はたまったものではなかろう。
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住宅街に平然と設けられている危険物貯蔵所。

 空き地も目立つが、管理不全で雑草が伸び放題の区画はごく一部に残るのみで、草刈り業者の手が入る区画の他は、菜園として転用している区画が多い。周囲を雑木林に囲まれた環境であるこの分譲地は、元々家庭菜園を好む人たちのニーズにマッチしていたのだろうか。中には朽ち果てた作業小屋もありちょっとうらびれた雰囲気は隠せないが、梅の木が植えられている区画もあり、周辺道路も交通量は少ないため非常に静かで、入口に危険物貯蔵所がある点を除けば、未舗装でも思ったほどは悪くないかもしれない。
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多くの区画が菜園に転用されている。
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ところどころに梅の木が植生され、彩を添えている。

 分譲地の奥には、おなじみの給水塔の残骸があった。明らかに使用されている形跡はなく既に蔦が絡みつき、夏になれば藪に埋もれてしまいそうな状態だ。どちらかと言えばキャンプ場よりも、この給水塔を見た方が自然の生命力を感じられる気がする。周囲の雑木林も足を踏み入れられる状態にはなく、ここは八街名物である春の砂嵐に巻き込まれる恐れもなさそうではあるが、その分風通しが悪く、夏場は湿気が少しきつい可能性はある。
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分譲地に残る給水塔の残骸。
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分譲地の周囲は鬱蒼とした雑木林だ。

 惜しいと思うのは、ここは農村集落ではなく業者によって造成・分譲販売された分譲地なので仕方ないことなのかもしれないが、菜園にしろ空地にしろ、柵でキッチリ区切られているところが多く、なんとなく殺伐とした印象があることだ。菜園や樹木の植生で分譲地内に彩を添えられている光景は印象も良く、家屋の増加が望めないこれからの限界ニュータウンでは有効な手段の一つであると思うのだが、もう少し開放的な印象を作れば、森の中の小さな分譲地として、一つのスタイルを築くことが可能なのではと思う。予約の手続きさえ厭わなければ、すぐ近くのキャンプ場もバーベキュー用の庭のようなものだ。

 そしてもう一つ、この分譲地の大きなマイナス要素が、火災で半焼した家屋が放置されていることだ。当ブログの開設当初でも、火災で半焼した家屋の隣の売地を紹介していて、その記事でも述べているように、北総では、よほどその土地に思い入れがない限り、家屋を取り壊すより更地を新たに買った方が安上がりであるために使用不能な状態の家屋でも取り壊す人が少ない。火災は不幸な出来事であり、僕としてもこの半焼した家屋の所有者を責める気にはなれないが、しかし黒焦げとなって半壊した家屋がそのまま放置されている光景は異様と言わざるを得ない。
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火災で半焼した家屋が放置されている。

 しかしその半焼した家屋に、何事もなかったかのようにシレッと駐車している車両が目に入るが、元の所有者は今でもこの分譲地の別の家屋で暮らしているのだろうか。そうでなければ、おそらく近隣住民が駐車場として利用しているのだろうが、どちらにせよなかなか図太いというか、そんなんでいいのかと少し思わなくもない。

 ちなみにこの半焼した家屋を除き、分譲地内に、あからさまに空き家と分かる家屋は1棟もなかったが、限界分譲地のお約束として、居住感のない、控えめに言ってあまりモノが片付いていないお宅は存在した。半焼家屋にしろその手の屋敷にしろ、個人の居住スペースまであまり他者がとやかく口出しできるものでもないが、これだけ土地余り、家余りが叫ばれる昨今、北総の限界ニュータウンに限らず、多くの郊外都市では、自分の家の敷地も含めた、地域全体の居住環境が問われていくはずだ。せっかく植生した梅の木が映えるような、緑豊かな分譲地として歩んでいってほしいと思う。森の中の分譲地としてふさわしい住環境が完成された時こそ、初めて近隣のキャンプ場も、他にはない独自の付加価値として生きてくるものではないだろうか。
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現状はうらびれた雰囲気だが、このひっそりとした環境を良い形で維持するのも一つの手かもしれない。



キャンプ場に隣接した分譲地へのアクセス



八街市用草
・東関東自動車道佐倉インターより車で17分
・総武本線八街駅より八街市ふれあいバス「西コース」 「希望ヶ丘入口」バス停下車 徒歩11分