目を開けると、そこには真っ白な景色が広がっていた。

天井だ。そうだ、僕はジャイアントに殴られたんだ。
「おい貧弱ゴブリン、ジャイアントに殴られたくらいで気絶してんじゃねーよ」
そう言ってくるのはヴァルキリーだった。

ヴァルキリーはこの国の女戦士一族の中で最も強い、いつも斧を振り回して驚異的なスピードで敵をなぎ倒して行く。男にも引けを取らない強さだ。

「ヴァルキリーがここに運んでくれたの?」
そう言うとヴァルキリーは顔を赤らめながら、うるせーよって言って去っていった。優しくて強い戦士ヴァルキリー、僕の1番の憧れの存在だ。

僕が部屋から出るとヒーラーに呼ばれた。
「ねえ、やっぱジャイアントのお金を盗ったのあんたじゃないの。でもジャイアントにお金を返したんだって?本当にあんたゴブリンなの?」
そうだ僕はゴブリンだ。
「う、うん。ごめんなさい」
あんたゴブリンなの?ってどういう意味なんだろう、僕にはまだよくわからない。

とりあえず家に帰ろうと歩く。
家に帰ればゴブリンの仲間達が待っている。
僕等ゴブリンだけ村のはずれに住んでいて、村の回りはたくさんの武器に囲まれてる。

そう、ゴブリンは嫌われ者だから

家に帰ると緑色の拳が飛んできた、ドンっと鈍い音を立てると同時に怒鳴り声も聞こえる。

「おいお前、なんてことしたんだ。ふざけるなよ」
お父さんだった。ジャイアントのお金を盗ったのはここまで広まっていたのか。
「お父さんごめんなさい。もう2度と人のお金は盗らないから許して」
僕が泣きながら訴えると、もう1発殴られ、また怒鳴られる。
「お前はわかってない。違うんだ、何故返したんだ俺たちはゴブリンなんだぞ。お前は本当にゴブリンなのか?」

まただ。
また言われた。
ゴブリンって何?俺たちはゴブリン?それがなに?ゴブリンってなんなの?ゴブリンだからってどうすればいいの?わからない。わからない。なにもわからない。

僕は泣きながらひたすら謝り続けた。

「次は無いからな。メシ、食うぞ」

そう言いながら食卓につく。
お父さんとお母さんと僕とお兄ちゃんの4人暮らしだ。

「お兄ちゃんは立派なゴブリンに育って私、嬉しいわ」
「お兄ちゃんは素晴らしいゴブリンになるぞ。戦士として戦争に行ける日も近いかもな」
お父さんとお母さんはお兄ちゃんを褒めていた。
立派なゴブリンってなんなんだろう。
もしも盗人が立派なゴブリンなら僕は立派ゴブリンになんかなりたくない。

僕は僕

それ以外の何者でも無いはずなんだ。

「僕はゴブリンになんかなりたく無い」

気付いたらそう叫び、席を立っていた。
扉を開けて外に出る、走っていた、無我夢中で走っていた。
もうどれくらい走っただろう、気付いたらそこはドラゴンの巣だった。

ここだけは近付いたらダメだってずっと言われて育てられてきた、怖い。今すぐ立ち去ろう。

すると、火の玉が飛んできた。
「ゴブリン風情がわしらの巣に近寄るな焼き殺すぞ」
またここでもゴブリン。

また僕は走る、逃げる事しか出来無いから、ゴブリンは無力だ。

小さな小屋を見つけた。
もう疲れたからここで寝よう、お願いしたら寝かせてくれないだろうか。
そう思いながらドアを開けると誰もいなかった。
ラッキーだ、床に敷きっぱなしにされた布団に潜り込み僕は眠りにつく。