目を覚ますと外はまだ暗かった。
もう一度眠りにつこうと思ったが不思議なくらい目が冴えてしまい眠る事が出来なかった。

外に出よう、ベッドから降り、窓を開けそこから飛び出る。
城の側には大きな岩があり、そこへ登り座る。

上を見上げる、物語りの世界なら大体こんな時は満天の星空が広がっているんだが、現実はそうじゃ無く、星一つ見えないほど曇っていた。

お母さんとお父さんはちゃんと村へ帰れただろうか。
ふとそんな事が頭をよぎる。
いや、そんな事より明日の戦いをどうするか考えなければ、インフェルノタワーが引っかかる。一体なんなんだろう、動く原理もわかってないから止め方もわからない。
まあいい、なんとかなるだろう。







「おい、起きろ準備をするんだ」
目を開けるとキングが居た。岩の上でそのまま寝てたらしい。
「お前の部屋に行っても居ないから怖くて逃げ出したのかと思ったよ」
「逃げる訳無いじゃないですか」
岩から降りて兵舎に向かう。
鼓動が高まる。
初陣の時と同じだ、手も震えている。
無意識のうちに恐怖に襲われているのかもしれない。
インフェルノタワー...
いや、なんとかなるはず。


兵舎にて準備を終え馬車に乗り込む。
馬車の中は緊張に包まれ、雑談をしようとする者は1人もいない。
会話も無いまま馬車に揺られ、2時間ほど経っただろうか、馬の足が止まる。

ウィザードが口を開く。
「着いたか」

ぞろぞろと馬車から戦士たちが降りていく。
約100メートルほど先に敵の国が見える。

「なんだあれ...」

壁の奥に微かに見える赤く燃え上がる塔。
あれがインフェルノタワーか。

キングが肩を叩いてくる。
「インフェルノタワーに初めは近づくな、射程がわからないからなるべくインフェルノタワーから離れたところから無力化して行ってくれ、もし攻撃されたらすぐ離れろ」
「わかりました」

もうあれから100戦以上してきた。
ただ、インフェルノとは1戦もしてない。
初めてがこれほど怖いとは思わなかった、そういえば初陣の時もこんな感じだったのかな。


全員が作戦の位置に着く。
あとはキングの号令を待つだけ。
僕の目の前には見張り台の上で弓を構えるアーチャーの姿が見える、まずは弓を奪う、その次は...まあいい奪ってから考えよう、いつもしてるように。
まだ敵には気付かれてない。
キングの号令はまだか。


行くぞ


号令とともに戦士達の雄叫びが響く。
僕はすぐさま見張り台の方へ向かう。弓を3つ、次、大砲が見えた、大砲の弾を全て抜く、次、次、次。
僕はただ無我夢中だった。勝利のためだけに。

熱っ

インフェルノタワーだ。
すぐさま逃げる。炎が僕から遠のく。
良かった。1度狙われても射程から離れれば炎が消えるのか。

「おいゴブリン!」
ジャイアントの叫ぶ声が聞こえた。

え、何これ、お腹が熱い

背中からお腹を貫通するように矢が刺さり、赤くて生温かい液体が僕の体から出てくる。

地面に横たわる。

また矢が飛んでくる。避けようともがくが体が動かない。

音を立てることもなく体に刺さる。
痛い、熱い。

撤退だ、引け、引け

キングの声が聞こえるが姿は見えない。
そうか、僕は見捨てられたのか。

近くの壁に穴が空いていたから、その壁まで這って行き外に出た。

体に刺さっていた矢を無理やり抜く。
血が止まらない。

そうか、僕は死ぬのか。

そういえば、両親とは結局喧嘩したままだったなあ。昨日はなんであんなに酷い事を言ってしまったんだろう。
会いたいよ。せめてごめんねって伝えたい。
急に家を飛び出してごめんね。
2人に何もしてあげられなくてごめんね。
2人を笑顔にしてあげられなくてごめんね。
こんな出来損ないの息子でごめんね。
一緒に居れなくてごめんね。
先に逝っちゃってごめんね。
僕をこの世界に産んでくれてありがとう。
英雄になれたんだよ。
こんなに強くなったんだよ。
伝えたいけどもう何も伝えられないのか。
戦ってる姿も見せたかったなあ。



目の前が暗くなってくる。
息もまともに出来ない。

死にたくないよ。

まだ、死にたくない。

優しい足音が聞こえる。

ぼんやりと女の姿が目に映る。

そうかこれが天使か。

迎えが来たんだ。

天使には翼が生えてるって思ってたけど生えてないんだね。




もう何も見えなくなった。




僕は天国に行けるのかなあ。