2005年04月28日

ナザレノ

 第十六信

 紳士録

1984年の3  0   

朝日新聞の記者から「つくばでの科学万博」

が来年の316日から始まるので一年前

の話を聞きたい、ということで取材にこら

れました。私は広報・宣伝担当ですから、

快く応じ無事終了。≪ひと≫欄に掲載する

というのでビックリ。実際、3月18日に

掲載されました。

ここまではかったのですが、その月末の朝

のこと。電話があり、取り次いだ者にも名

を言わず、ただ電話口へと。そのヤリトリ

を聞いていたので電話口へ出ると、低く沈

んだ声で「お会いしたい。用件はその時に」

と言うばかりで要領を得ない。「会議の予定

もあるので別の日に」と断ると、今度は別の

人と替り、「内(ウチ)の若い者が会いたい

と言っているのだから会ってやってほしい。

11時に行かせる」と、当方の返事も待たず、

一方的に言って電話を切ってしまいまいまし

た。困った私はスグに、総務・建設・輸送

などの担当部長(各省庁よりの出向者)を

呼んで、この経緯を話し「何処かに不正など

で突っ込まれるところはないのか?」と聞く

と、一同全員が「ありません。心配しないで

会って下さって結構です」と言う。その内に

時間が来て本人が受付に現れた。保険の集金

人みたいな恰好で、草臥れた黒のスーツ姿で、

顔を下に向けたままの中年の男だった。部屋

に招き入れると入口で立ったまま内部を見回

して「ここではお話が出来ない。別の応接間

にして下さい」と言うので、地下の喫茶店に

行く。開店早々の時間でお客は少なかったの

で、店の一番奥にと希望し、その通りの席に

する。「今は忙しいので・・何の話ですか?」

と聞いたら、こちらの負けで、先方から

用件を言い出させなければならない。今は

開会の一年前で忙しい、など雑談をしてい

ると、鞄の中からパンフレットを取り出し

て「当社が出版している紳士録です」と。

それを聞いてハハーンと用件が読めました。

説明で、カラーで50万円。白黒で20万円

が掲載料だと言う。そして「先日の朝日新

聞に出ていましたので来ました」と言うで

はないか。「私よりモット偉い人が上に2人

いる。通産省と科学技術庁から博覧会協会

に来ているから、その人に会ったら良いで

しょう」と返事をし「今、急に50万とか

20万とか言われてもダメ。そんなお金は

持っていない」と、話の合間を見ては腕

時計を見て「もう時間も経ったし忙しい

ので今日はこれ迄にします。今後は来られ

てもお会いをしません」と言って席を立ち

ました。先方はこちらが頼んだコーヒーに

は口を付けず、私は自分で頼んだ牛乳を

全部飲みました。会社であれば急にお金が

いる時は「仮払い」制度がありますが、

特殊法人である博覧会協会には、そんな

規定はなく役所と同じで、前以って予算を

組んで置かないと、お金は一円も出ない

のです。結局、博覧会が終るまで、その

人は二度と現れず、イヤな思い出だけが、

心の中に残りました。そんなことがあって

からはは朝日新聞でこの紹介欄を見る度に

「この人もやられているのかな?」と、思

ったりしたものです。

 

19858月  61

「つくば」での科学万博は「映像博」とも言

われる程、各パビリオンでは一度に大勢の、

お客さんを喜ばせるには大型の映像に限ると

ばかり、様式と内容は様々でしたが面白い

ものを見せ期間中は事故もなく2,000万人

からの人を集めて無事に終了しましたが、

期間中の8月のある日、朝日新聞の部長

クラスの方々が見物に来られ「終って一杯」

(猛暑でしたから)と宴席をこちらで設け

ました。

 

19858月 62歳

この席で≪紳士録≫でひどい目に会ったこと

を思い出し広報担当役員のA氏に、この話を

して『朝日はヤーさんの肩を持っていると、

しか思えない。電話が掛かって来て本人が

来るまでは心理的に追い詰められた。慰謝料

とまでは言わないが、何かしてくれても良い

のでは?』と。

『毎日新聞(51.5.3)「ひと」欄と、ヨミウリ

新聞(55.10.2)「人間模様」欄に掲載された

時には何もなかったのに、なぜ朝日だけが

身元不明の方が来るのか?』と酒の勢いも

あって強い口調で糾弾しました。先方は

「賀田さん。何かお車代とかを差し上げた

のですか」と聞くので「博覧会協会は役所

みたいなところですから『仮払い』は出来

ないし、自分はお金も持ってないので、

手ぶらで帰って貰いましたよ」と答えたら

「本当ですか。一般には『お車代』として

幾らかを包んで済ますのが常識で、当社は

ヤーさんに肩入れなんかしていませんよ。

先方に新聞を取るのも、読むのも止めろ、

と言う訳にはゆきません。一円も支払わな

かったとは初耳です。ご立派です。それを

祝して今日は美味しく戴くことにします」

と笑いながら杯を上げるのを見て、何か

誤魔化されたようでした。流石に大新聞社

ともなると、相手を怒らさずに上手く丸め

込むノーハウを持っているものだな。しかも

相手の奢りで会食しながらなんて、私なんか

到底足元に及ばないと、シミジミ世の中の

仕組みが分りました。 


斎藤 さま
  未掲載と思われるので、再送信します。
  重複の時はお許しを。 
  あと、二つ残ってます。
Posted by yyy211kkk212121 at 16:03│Comments(0)TrackBack(0)

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