「木漏れ日が・・・泣いているようだな」

テクスチャーマインドを求め詩歌の遺跡に向かったギャングスターは、ざわめく森の音に抱かれて、今まさにその命を終えようとしていた。

「テクスチャーマインドが無いなんて・・・全て俺の妄想だったってわけか」

 ブーナー熱帯雨林を単身抜けようとした小次郎は、運悪くもグリーンシザーの群れに遭遇してしまった。レベル1である彼に勝ち目は無かった。全速力で逃げながらも、後背部に浴びせられた酸性の吐瀉物により、重傷を負った。もう、長くは無いだろう。

「このまま、ここで死んだら、本当に俺は死んでしまうんだろうか。母さん、もう一度会いたかった」

現実世界では2年目の浪人生活を迎え始めていた彼も、アストルティアの中ではギャングスターとして一部有名な男だった。レベルこそ1であったが、転売、合成と商才に恵まれ、アストルティアの金融界を動かす男の1人であったのだ。

そんな中、急に訪れた戦争の始まり。
ベッドの上で少年マガジンを読んでいた彼は、窓から侵入してきた黒塗りの男達に連れ去られ、気づいたらアストルティアにいたのだ。 ドラキーの格好をした冗談のように醜い男の説明は、彼の頭には届かなかった。いや、届く事を拒否していたのだ。

各地で始まる残虐なープレイヤー対プレイヤーの殺戮。
それは小次郎にとって到底受け入れることの出来ない現実であった。
恐怖と混乱のあまり、彼は現実を捨て、妄想の世界に入った。
おぼつく足取りで、戦火舞うヴェリナードから脱出できたのは奇跡といっても良かった。
しかし、それもここまで。

小次郎は、はぁ、と大きなため息をついた。
そして、そのまま死んだ。
5分間は蘇生のチャンスがある。しかし、戦争が始まったばかりのこのアストルティアで、ブーナーに足を踏み入れるプレイヤーは今のところいなかった。

無情なカウントの5分ののち、小次郎の姿は、空気に溶けるように消えたのだった。