ボボンゴ・武蔵が【ザオ】の情報を求めて戦場を渡り歩くようになって十と幾年かが過ぎ去った。
 戦闘中であろうと死に貧していようと夜のプロレス中であろうと時間も場所も空気もいっさい読まぬボボンゴの情報収集は、いつしか『死神の質問』と呼ばれ恐れられた。質問を受けて生き延びた者が独りとしていないという噂すら流れた。

 その日もボボンゴはグレン東で大規模に行われる会戦の最中にあった。
 突撃の号令を緊張した面もちで待つ馬上の戦槍兵に、敵軍の騎馬隊の突撃を迎撃せんと長槍を据えて待ち構える兵士達に、軍隊長に衛生兵に敵に味方にモンスターに手当たり次第に質問を投げかける。たった一つの短い問いを投げかける。

「ザオ?」

 これほど単純で明快な質問はあろうか? なかろうとボボンゴは思う。確信を持って思うのだけれど、質問の意図をしっかりと理解してくれる者にボボンゴは会った事がない。
 兵士や傭兵をやっている人種というのはどこまで頭が悪いのだろう。それとも頭が悪いから兵士や傭兵をやっているのか?
 彼らを見ていると、日本人として暮らしていた時分、落ちこぼれに落ちこぼれて馬鹿だ阿呆だといいように罵られ続けていた自分が賢人のように思えてきてしまう。
 それは決して悪い気分ではなかったが、それでは10年以上追いかけている目的が果たせない。夢にまで見る女の子のパンツ姿を見ることができない。
 そいつは困ってしまう。
 ボボンゴは誰に向けるでもなく肩をすくめると苦い笑みを浮かべた。
 そんなボボンゴの背後から、いや、背後からと言うか耳元から、

「兄さんかい? 戦士の分際で、死んで5分どころか十余年も経ってるギャングスター小次郎を蘇らせようとしているっていう天然記念物ものの阿呆な生き物は?」

 不意に、それはもう飛び上がらんばかりに驚いてしまうほど出し抜けに、思わず「ひゃん!」なんて声が出てしまうほど唐突に声がかけられた。