この世界はどうしよも無く狂っている。
救いようの無いほど。


そう思ったのは15歳の時。
当時私は東京の荻窪に両親と3人で暮らしていた。
表面上は仲の良い家族
心の通わない家族

特別不自由無く学校にも行っていて勉強も出来たし、友達も居たし、家に帰れば母親の夕飯が待っていた。
テレビを付ければどうでも良いバラエティー番組もやっていたし、普通に面白かった。

そう・・・

何もかもが普通だった。


私の名前は伊左凪ナギサ(イサナギナギサ)周りからはナギナギと呼ばれていた。

普通すぎる至って平穏な日々。
しかしながら突然にその平穏な日々は何の前触れも無く壊された。

ードラゴンクエスター
東西を割る残虐無比な生死を天秤にかけるゲーム。

私は嬉しかった。
私が望んでいた世界がそこにはあった。
この腐敗臭漂いモルヒネまみれで生き永らえている日本は根底から創り直さなければいけない。
政府は徴兵制を設けドラゴンクラスターに志願する者を集め、私は志願兵となった。


このゲームのミッションは相手兵士を全滅する事。
政府公認の残虐ゲーム。
どうしようも無い殺戮ゲーム。
どうしようも無い殺人ゲーム。




私は主にソロで行動していた。
周りが団結してパーティーを組み力を合わせて戦っているのを横目に孤独を愛した。
どんなゲームも仲間と力を合わせて戦うのが定石であり有利に戦える戦術の基本。
しかし私には孤独で居られる理由があった。
ドラゴンクエスターにログインするプレイヤーは、ほぼ裸同然の状態からスタートする。どんなロープレも大概そうだ。
しかし何故か分からないが私にはログインと同時に<菊一文字>という刀が装備袋にあった。
例えば、どうの剣が攻撃力5に対し、菊一文字の攻撃力は85。
少しぐらい強いモンスターでも、ほぼ一撃で倒す事が出来た。

何故私だけが始めから強い武器を持っているのかは分からない。
考えていても分からないし、私は選ばれたのだと思った。
この戦争にピリオドを打てる選ばれた戦士なんだと思った。

この圧倒的な力を持ち強いモンスターとも戦え、私は急速にレベルアップして強くなった。
『過信』
そんな言葉しかその時の私には無いのだろう。

私は意気揚々と絶対防衛線に足を踏み入れ一騎当千をかけた。

殺した。
何人も何人も何人も殺した。


その強さの優越感に浸り戦い続ける事が出来たが、ある一組のパーティーとの戦闘で、その完璧なコンビネーションの前に私は追い詰められた。
自らの絶対的な過信がいとも簡単に崩れた。

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・・・これで良いと思った。

日本の領土奪還の為の戦争なんて私には興味が無い
思うのは
ただ
普通の生活を変えたくて
上辺だけでは無い心からの親友が欲しくて
ドラゴンクエスターの中で私は私の本当の気持ちを誰かに伝えたくて
誰かと共有したくて
寂しくて・・・

でも

自らの過信でそんなものは無くなって
居場所を求めてもそんなモノは無くて
孤独で
何かが変わるはずのドラゴンクエスターの中で
何も変わらない普通のドラゴンクエスターで

私は
死を望んでいたのかもしれない




地面に横たわり喉元に剣を突き立てられ死を覚悟した瞬間
「うおおおおおおおお!!!」
という雄叫びと共に大柄な男が私を助けに来た
この絶対防衛線に自らの死を覚悟して助けに来た。

仲間内でも私は毛嫌いされていた。私も誰ともコンタクトを取っていなかったし取る必要も無かった。
絶対防衛線に入る時も誰も付いてきてくれなかった。
そんな中、
唯一一人だけ、絶対防衛線に入るのを止めようとしてくれたのがこの男だった。
その男の名はボボンゴ・武蔵。


私はボボンゴと組むようになり、いくつもの死線を潜り抜けいくつもの夢を語り合い、そして別れた。

数年が経ち



とあるミッションで立ち寄ったグレン東で

私の足元にはボボンゴが数年前と変わらない笑顔で居た。