ーーザオ・・・・・・。


いったい何故その時その言葉に辿り着いたのか分からない。

博愛、敬愛、執拗、羞恥、憧れ、絶望、消失、愉悦、時間・・・。
一口では到底表す事の出来ない凝縮されたその言葉には魂が宿り言霊となった。

このドラゴンクエスターに置いて失われた蘇生術
封印されし蘇生術
在ってはならない蘇生術。

ボボンゴ・武蔵が10年もの歳月を費やして、
いや
全てのプレイヤーの人生、その全てを費やしても現状たどり着けない禁術。


皮肉にも

追い求めれば追い求めるほど遠く離れ
それを求めない時
命が涸れる時
決して失ってはいけない命が途絶える時
その全てがトリガーとなり発動された。



それは一瞬の出来事

剣の打ち付けられる音さえもかき消すほど
轟々とした風が吹き荒れるグレン領の乱戦の最中
ザオを追い求めていたボボンゴとスミス勇は
国谷から発せられたザオという言葉の振動は涸れた大地に吸い込まれる雨水が如く
過剰に、急速に二人の聴覚に吸収された。

反応するかの様に駆け寄るボボンゴとスミス



横たわる小町とオガミ一刃

その中央に涙を流す国谷。


国谷から発っせられる圧倒的な眩い光に、
その場にいた誰しもが一瞬目を奪われた。












刹那









誰も何が起きたか理解出来なかった。













国谷は膝を地面に着き胴体を起こした状態のまま
その胴体には在るはずの首が無く
大量な血が溢れ流れていた。







ザオを唱えたはずの国谷が死んでいた。








再び剣が打ち付けられる乱戦が始まる。
いや
始めから乱戦なんて治まっていない
極限まで凝縮された時間から聴覚が戻るのにタイムラグが起きたのかも知れない。


ボボンゴ「こりゃ・・・いったい・・・・?」


スミス勇とボボンゴは駆け寄る足を止め立ち尽くし、
伊佐凪ナギサも何が起こっているのか分からなかった。













その夜はボボンゴ武蔵、スミス勇、伊佐凪ナギサの3人で宿を取る事になった。

ボボンゴ「いやしかし・・・」


宿屋の火を囲みボボンゴは話しだす

「あの一瞬で首が無くなったお釈迦様は・・いったい何だったかのお」


スミス勇「・・・あの光と、その直前に確かに聞いたザオ・・・」

「結局・・・何も分からずに終わってしまったな。」

スミスは外人がやるような肩を竦めるジェスチャーで苦笑いをした




真夜中の宿屋は昼間の賑わった様子とは裏腹に静まりかえっている
時折バチッと炎の中で木が音をたてる。


窓辺に立てかけてあるナギナギの菊一文字が月夜に照らされキラリと光る



スミス勇「ずいぶん良い刀を持っているみたいだな」

「見せてもらっても宜しいかな?」


スミスは紳士的にナギナギに聞いた


伊佐凪「どうぞ」



スミスは窓際へ行き菊一文字の鞘を途中まで抜き、夜月を映す美しい刀身を見つめる

「伊佐凪サン・・・」

「今日は誰か切りましたかな・・・?」



伊佐凪「いや、人は元より、モンスターさえ今日は斬っていないが・・なにか?」


スミス「いやそうでしたか」

チンッと響きの良い音をたて鞘に収めた。








次の日
ボボンゴと伊佐凪と別れたスミス勇は何か腑に落ちなかった。


「昨夜見た菊一文字には血痕が残っていた」

「しかも新しい血痕だ・・・」


スミスは他プレイヤーと大きく異なる点は、持っている情報量もその一つ。
ベータテスト時のノウハウを活かし
開発側しか知る事のできない電脳ページに裏コードを使いアクセスをし
名刀<菊一文字>の事を調べた。












~菊一文字~


長月の花びらが六枚落ちる時

その者を一文字に斬り捨てる重陽の刃



別名

蘇生者ころし