「日々の生活に全くゆとりがない。子供が熱でも出したら回っていかない」

 都心に勤務する太田敬子さん(36)=仮名=は育児休業から復職し、短時間勤務制度を活用する。勤務は午後5時半までだが残業もしばしば。保育所へ迎えに行く間、上の子供は空腹のままだ。時計は午後11時を指すが夫は帰らない。翌朝5時、弁当作りからの一日がまた始まる。

 「出産」と「仕事」の二者択一からの脱却は、少子化歯止めに向けたキーポイントの一つだ。育児休業や短時間勤務制度は普及してきたが、いまだ両立に不安を抱く女性は少なくない。少子化社会白書は、仕事をしていた女性の約7割が出産を機に退職している事実を伝える。

 北海道大の宮本太郎教授は「子供を産むために仕事を辞めて30代でパートに出た場合の生涯賃金と、ずっと働き続けた場合の差が2億3千万とか4千万円とかいわれる。みんな直感的に分かっており出産をためらう。雇用を支える公共サービスが決定的に重要だ」と分析する。

 出産後の不安払拭(ふっしょく)を課題として挙げるのは、東京大の佐藤博樹教授だ。

 「産前、産後の休業をとって育児休業にいく前に辞めてしまう。育児休業後、復職しても子育てにはまだその先がある。問題は復職した後も両立ができる働き方なのかということだ」

 多くの会社で復職後の女性のキャリアに十分な配慮はなされていない。

 「子育てしながら仕事を続けるのは大変だ。将来のキャリアが開けていかなければ頑張れない。長く勤め続けられるだけではダメだ。制度や働き方だけでなく女性に責任ある仕事がないといけない」。責任ある仕事をするためには夫の協力も必要だが、佐藤氏は「多くは夫が別の会社にいるため、自分の会社だけが変わってもダメだ。ワーク・ライフ・バランスは日本全体でやらないと意味を持たない」と語る。

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 「キャリアダウンやキャリアストップでなく、キャリアキープできる仕組みを作ることだ」。バースセンス研究所の大葉ナナコ所長は、こう提言する。

 「『子供を持つのは個人的なこと』という尺度が社会にある。子供の発熱で休むと仕事人として失格という評価が待っている。女性にとっても働くことは喜び。子供がいることで低く評価されるのはおかしい」

 一方、日本総合研究所の池本美香主任研究員は働く女性のイメージの固定化に疑問を抱く。

 「バリバリ働いて子供も育てる人もいるが、多くはほどほどに働き、ほどほどに家族のこともやりたいのではないか。こういう人が主流なのに対応できていない。そこを考えないと、女性を労働力として活用したり、子供を産んでもらおうというのは難しい」

 少子化対策に成功した国では価値観の多様性に配慮がなされている。池本氏はこう続けた。

 「働き方はこうでなくてはいけないとの考えを取っ払わないと少子化が止まるイメージは描けない」

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 社会の意識を変えていくには、企業トップの考え方が変わることが大きい。

 三菱総合研究所の小宮山宏理事長は「『産まない方がとりあえず楽だ』ということを若い人は知っている。来年の利益にしか興味がない社長が悪い。社員がどれぐらい子供をつくっているかなんて興味がない」と苦言を呈する。

 どうすればよいのか。恵泉女学園大の大日向雅美教授は「子育て期の社員の能力を生かし、ワーク・ライフ・バランスを実現することが企業の成長戦略だとトップが理解することだ」とヒントを挙げる。

 大日向氏はワーク・ライフ・バランスが新時代に入ったことに注目する。「最初は社員を早く帰すとか、ゆっくり休ませることが福利厚生だった。第2ステージになると、ワーク・ライフ・バランスを行うことが『新しい企業』という企業ブランドイメージとなり人材が集まった。今後の第3ステージは、それをやった結果、企業の成長や利潤につなげること。すでに利潤を上げている企業がある」

 少子化対策と経済成長は車の両輪である。労働力人口も大きく減っていく。佐藤氏は「少子化対策を行うことで女性の就業率を下げてはダメだが、働き手を増やして子供が減るのも困る」と語り、2つの命題を同時に実現しなければならない難しさを強調する。

 そしてトップが変わるだけでは解決しない。大葉氏は「職能、職種はそれぞれだから、それぞれの職場であなたがフロンティアワーカーとしてやっていくしかない」と呼びかける。われわれが一歩踏み出さなければ日本の未来は見えない。

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