製作記録や作成物の解説ばかりでは面白くない。たまには,作ったライブラリを使って,Debug以外の目的でモデルを組み,計算を愉しもう。で,SF作品に登場したメカを考証してみることにした。
zplus_001
Fig.1 

zplus_004
Fig.2 



 (*登場メカの肖像権を犯さないように配慮して顔や名にモザイクかけます。)
某有名アニメに登場する、この人型/航空機型可変戦闘機の発動機(エンジン)をお題にする。

A1型(M〇Z-006A1)の発動機スペック:
 推力= 101,000 [kgf]
 = 990,810 [N]
発動機を脚内に1機づつ搭載してるので、単発推力はその半分。
 単発推力= 495,405 [N]
 
ジェット発動機の推力は通過空気流量と排気流速で決まる。
ここで、通過空気流量はほぼ発動機の大きさ(径)と等価である。そして、Zeta-plusの推進機の径を脚の太さより大きくすることなど出来ないので,通過空気流量に自由度は皆無となる。通過流量を決めるために,実在する発動機のデータとZeta-plus の脚寸法を参照しよう。
こちらの記事で述べたように、概念設計フェーズでは特性値の1つである通過空気流量を人が決める。)

名機F-16の発動機、F110のスペックを調べると、
 通過空気流量= 275 [lb/s]
                       = 124.7 [kg/s]
 発動機最大径= 46.5 [in]
     = 1.18 [m]
 発動機推力= 32,500 [lbf]
      = 144,567 [N]
(GE aviation 公式Webページでの公開値)
*本当はF110はターボファンで、これからZeta-plus用に作ろうとしているターボジェットと形態が違うエンジンだけど、通過空気流量を大雑把に決めたいだけなので今は気にしないでおく。
F16_SCANG_InFlight
Fig.3 (from Wikipedia)

1920px-F110-GE_Turbofan_Engine
Fig.4 (from Wikipedia)

Zeta-Plusは脚は結構太いが足幅は細く,プラモデルで測ったところ,
 足幅= 2.16 [m]
これより太い発動機は積めないので,この値が発動機最大径であるとしよう。
(実際にはもう少し小さくないと搭載出来ないが,細かいことは無視。)
通過空気流量は発動機最大径の2乗に比例(流路断面積に比例)するとみなして,
 通過空気流量= 124.7 * (2.16^2/1.18^2)
 = 417.8 [kg/s]

 おや?,改めて書き出すと,Zeta-Plusの発動機スペックはそこまで荒唐無稽ではないのかもしれない。大きな発動機で大推力を実現してて,全うな数値を設定している可能性が高い。
 通過空気流量:3.35 [倍]
 推力:3.43 [倍]

 推力を決めるもう一つのファクターは排気流速で,これは発動機内のコンポーネント特性・作動状態から決まる。挙げだすときりが無いが,明らかに強く効くであろうものは圧縮機圧力比と燃焼器出口温度。これらをどれ位の値に設定すると公式値の推力を達成できるのかを作ったモデルを使って推算してみる。
 SFアニメで現実的・全うなスペックが設定されているかもしれないというのは興味深いが,一方で驚くべき計算結果が出なさそうというのは面白みに欠けてもいる。。。

既に結構長くなってしまったので,続きは次回以降に記す。
今回は以上。


<文献紹介>

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文献紹介

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