先日(株)構造機能科学研究所 の鈴木正夫先生の講演会を聞かせていただき、これまで疑問に思いつつもメカニズムが解らずに放置していた事への解答が見つけられたのかもしれないという仮説を立てることが出来ました。

 それが住環境とアレルギーとの関係であり、簡単に言うのであれば、アトピーから花粉症に至るまで、その原因は住環境にあり、現在義務化となっている24時間換気、そして防湿型断熱自体の問題があるのではないかということに繋がっていく話となります。

 まだまだ仮説段階ではありますがもしこれが正解であるのであれば、住宅業界に激震が走ることにもなるのではないかと思っております。


 それではその内容なのですが、遠回りに感じられるかもしれませんがまずは前提として鈴木先生らが提唱しておられる「経皮感作」について述べさせていただきましょう。
 簡単に言えば、
①アレルギー発症経路の主経路が食物等の経口摂取からのみではなく皮膚等からの経皮吸収にも有るのではないか、
②それならばその経皮吸収を防ぐことでアレルギーの発症を抑えられるのではないか、
③そのためには皮膚本来のバリア機能を高めてやるのが良いのではないか、
という事を提唱されておられます。つまりアレルギー、アトピー性皮膚炎から花粉症に至るまで全てにおいて、これまでは食べ物にその主たる原因が有るのではと言われていた物の見方をひっくり返して、皮膚にも原因が有るのだという全く新しい視点からのアプローチとなります。

 ここだけ聞いても何のことかわからないと思いますので順に説明して行きましょう。

 まず①の皮膚からの経皮吸収でアレルギーが始まるということですが、多くの方は首を傾げるかもしれません。多くの方が「アレルギーは食物や遺伝的な原因で起こる」と考えておられるでしょう。もちろんそこにも原因は有るのでしょうが、それだけではない、皮膚からの経路もあり得るのだというのが要旨となります。
 ほんの少し前まで医学界でもアレルギーは食物や遺伝学的なものが主であると考えられており、30年以上前から経皮感作を唱えていた鈴木先生らは異端視されておられました。言ってみれば「皮膚は単なる防御機構であり、皮膚から何らかのものを吸収したりはしない」、という意見が大半を占めていたような時代でありました。
 その流れに変化がもたらされたのがいわゆる「茶のしずく石鹸」事件です。

 一応この事件のあらましを簡単にまとめますと、「茶のしずく石鹸」に泡立ちを良くするために用いられていた小麦加水分解物(グルパール19S)によって小麦アレルギーを発症した方が多数出てきたというものです。


 今も治療を続けておられるこの事件の被害者の方々には大変身勝手な物言いとなってしまいますが、京都大学皮膚科の宮地良樹教授(現在は滋賀県立成人病センター総長)は次のように述べられました。
「患者さんには申し訳ないが、言わば壮大な社会実験となって、経皮感作の重要性を確固たるものとしたと言える」
 実際この言葉通りにこの経皮感作の重要性の高さから疫学調査や医学的追求が集中して行われ、乾燥肌等でバリア機構が弱くなった皮膚からアレルゲンが体内に侵入してアレルギーを引き起こしている、という実態が明らかになってきております。

 そこで鈴木先生が提唱しているのが、②の「この経皮吸収を抑えることが出来るのであればアレルギーの発症抑制に効果的である」、という考え方です。解説のためにもう少しこの経皮感作のメカニズムを説明致しましょう。

肌の状態

 まずは前提として皮膚の構造から話をします。少しややこしいですが、上に模式図が有るのでそれを見ながら説明を追っていただければ幸いです。
まず皮膚は基本的に真皮と表皮からなっておりますが、この表皮は更に細分化され、真皮に近いところから基底層、有棘層、顆粒層、角質層となっております。更に角質層の表面には皮脂膜が覆っており、この皮脂膜が生体防御機構、つまりバリア機構を持っております。
 この皮脂膜がなかった場合、異物、例えば雑菌や花粉などもこれに含まれるのですが、こういったものが容易に角質層まで達し、ものによっては角質層内部にまで到達してしまいます。
 その一方で皮脂膜は体内の水分が蒸発するのを抑える働きも持っております。よってこの皮脂膜が失われた場合は容易に乾燥肌となってしまうのですが、その乾燥肌となる際に皮膚内部ではランゲルハンス細胞と呼ばれている抗原提示細胞、つまり異物に対しての見張り機能を持った細胞が普段常駐している有棘層から更に前線である角質層までその監視の手を伸ばします。
 皮脂膜という城壁がない分を見張りの数を増やして補い、外敵に対処している、というイメージでほぼ合っております。これにより普段は角質を通らないと考えられてきた分子量の大きなタンパク質、それこそ花粉のようなものに対してまで抗原提示細胞が反応してしまうようになったものと考えられます。
 この反応こそがアレルギー反応であり、花粉症などを引き起こす事となっていると言えるでしょう。元々アレルギーとは異物に対する過剰反応と言えるのですが、生体にとってはダメージを避けるための当たり前の防衛機構が逆に生体にとってのダメージとなっている、ということです。
 この流れを断ち切るのはやはり原因となっているところを正し、生体機構を正常な状態に戻してやるのが一番の近道であり、もっとも効率的と言えるのではないでしょうか?つまりこの場合ですと、皮脂膜をきちんと保ち、城壁としての役割を果たさせることが先ほど説明した一連の流れを食い止める役目を果たしてくれるのだと言えます。


 それが鈴木先生の提唱されておられる③の、「皮膚本来のバリア機能を高めてやる」ということです。簡単に一言で「バリア機能を高める」と言っても具体的にどうすればいいか惑われることと思われますが、これについても既に鈴木先生が開発された商品がございます。
 それが「RIMソープ」&「RIMエモール」であり、二〇〇四年から販売開始され、現在ではAmazonや楽天の部門内で上位常連の人気商品となっております。細かい商品説明をここで行うことまでは致しませんが、皮脂膜と同様の成分をもとにしており、洗うことで皮脂膜の補充ができる物、とお考え下さい。何故これが画期的かといいますと、従来の洗剤との比較が一番良く分かるでしょう。従来の洗顔料などは総じて「汚れとともに皮脂膜まで全部落としてしまえ!」という考えで開発されており、実際に洗浄後の汚れはたしかに無いものの、皮脂膜も全てなくなっておりました。皮膚上のものを全部キレイに洗い流す。言葉上ではいいことのように思えますが、結果としてもたらされたのは外部に対する大事な鎧を剥ぎ取ることだったのです。

 また日本特有と言えるのかもしれませんが、最近の洗剤では殺菌力を謳ったものも多く、たしかにそれらは殺菌効果を発揮して皮膚上の菌を除去してくれます。ただしこの殺菌や除菌というのがまた問題のある行為であり、我々に悪さを起こす悪玉菌のみならず、ずっと共生していた善玉菌までも全て除去することになったのです。このことについてはもう少し説明させていただきましょう。
 近年健康のために腸内フローラを大事にしましょう、ということが認知度を高めてきました。ビフィズス菌などが善玉菌として有名ですね。これら善玉菌と悪玉菌が上手くバランスをとることで人によって快適な環境が保たれているという話です。
 これと同様に皮膚上にも「皮膚フローラ」というべき人と菌との共生環境が作り出されており、それによってウイルスや各種病原菌が悪影響を与えることがないのです。ですが先の殺菌効果を持った洗剤、洗顔料やボディソープはこれら皮膚フローラの破壊にも繋がり、清潔にして病気から身を守っているつもりが逆に病原菌を入り込みやすくさせていると言えるのです。
 手や顔、身体を洗うことは大事なことです。汗や老廃物、汚れなどをきちんと落とさなくては不衛生ですし、変な匂いがしたりベタベタとした不快感も生み出します。ですがそういった汚れを落とす一方で、皮脂膜や皮膚フローラまで落としてしまうのは不都合も多いということをご理解下さい。
 この皮膚フローラがどこに形成されるかと言うと主として皮脂膜中であり、このフローラを守るという観点からも皮脂膜をしっかりと維持させてやる必要があるといえるでしょう。
 なお、この「RIMソープ」&「RIMエモール」は汚れは落とし、皮脂膜は守るようにというコンセプトで開発されており、皮膚の健康を考える上では大変有効なものと言えるでしょう。それを証明するように、実際に医学分野でも応用されております。基本的には膜形成による予防といえるのですが、薬剤と併用しながらそれ以上の悪化を防ぎ自己回復力を促すという形での臨床治療の際にも用いられているようです。余談ですが鈴木先生と面識をもたせていただいた後に私も使用させていただいているのですが、長年悩んでおりました手のかさつきが驚くほど改善いたしました。今では全く別人の手のようになっております。明らかに肌にうるおいと張りが出てきており、これこそが正常な肌なのだという実感を持つことが出来ました。こればかりは体験した方でないとその良さがわからないかもしれませんが、逆に言わせていただくならば、一度でも体験すればこの皮脂膜の有無がいかに重要なのか、一発でご理解いただけるものと言えるでしょう。

 さて、皮脂膜の重要性はここまでで充分にお分かり頂けたかと思います。先ほども書かせていただいたように、一連のアレルギー反応の抑制に対してはこの皮脂膜の再形成こそが一番の近道であり効率的だと言えるでしょう。ですがここでもう一度経皮感作によるアレルギー発症のメカニズムを見ていただきましょう。
 先程乾燥肌になった場合、抗原の見張りをしているランゲルハンス細胞が有棘層から角質層にまでその監視の目を伸ばす、というように書きました。この事は言い換えるならば容易に乾燥するような環境がアレルギー、つまりアトピーや花粉症などを促している、というようにも取れるのです。


 ここからは完全に私個人の仮説であり、間違っていたとしても鈴木先生には一切関係がないと言うようにあらかじめ断ってから話をさせていただきますが、乾燥しやすい環境であるほうが花粉症になりやすいと言えるのではないでしょうか?
 傍証と言えるか分かりませんが、こちらのグラフをご覧ください。

スギ花粉症有病率
(資料)宇田川勝司「数学が語る現代日本のウラ・オモテ」より
細かくて見えにくいかもしれませんが、上記は各都道府県別のスギ花粉症の有病率を示したものです。このままでは少々解りにくいので昇順に並べ替えましょう。それか下のグラフになります。
スギ花粉症有病率(並び替え)

 杉の植林度合いなども有るので例外もあるのですが、大まかな傾向としては日本海側の湿度が高いところのほうが有病率が少いように見えます。病化粧品会社さんがやっておられる二〇一七年の美肌県ランキングがちょうどこれと同様な傾向を示しており、日本海側の湿度の高さが美肌をもたらしたのではないかというような考察がなされておられました。美肌と経皮感作、同じ肌の状態の事を言うのであれば、大いに関連があると考えるのは決して論理の飛躍ではないと思われます。
 日本国内で皮脂膜の環境的に大きな差はないと考えられますので、実際の花粉症の発症にも周りの湿度環境が大きな影響を与えてくるのではないでしょうか?
 そのような視点で私達の周りの環境というものを考えた際、住居の環境というものが我々の健康に与える影響は大きなものであると言えるでしょう。住宅というものは「第3の皮膚」と呼ばれるように私達の生活にとって大変重要なものです。その環境が悪ければ私達の身体にも影響を与えることは考えてみれば有る種当然と言っても良いでしょう。

 さて、ではいま日本で現在主流となっている防湿型断熱について考えてみましょう。防湿層という名のビニールで家の周りを覆い、それでは湿気がこもるので24時間換気で排出する。当然ながら24時間換気により部屋の中は過乾燥状態になります。現在日本中で4人に1人が花粉症にかかり国民病と呼ばれるようになっております。既に御存知だと思われますが、花粉症はアレルギー疾患の一つです。その原因の一つはひょっとするとこの24時間換気にあるのではないでしょうか?

 元々24時間換気自体が場当たり的に、言わば応急処置として出てきたものなのですが、それが現在あたかも当たり前の処置として居座っているのが現在の状況です。そろそろ一度根本から見直すべき時が来たのではないでしょうか?これについてもう少し詳しく解説致しましょう。

①元々断熱材が施工されるようになったのは一九七三年のオイルショックの際に省エネ対策としてでした。
②ですがナミダダケ事件で象徴されるようにそのままではあっという間に結露してしまい早急な対策が必要とされ、その流れで出来たのが室内側にビニールを貼る防湿型の住宅です。その後透湿防水シートが出たときが今から見ればターニングポイントであったのですが、防湿型断熱はそのまま現在まで至っております。
③さて、ビニールで住宅を囲うことで何が起こったかといいますと、合板や集積材、ビニールクロスといった新建材から出る化学物質や、室内での結露によって大量に発生したダニのフンなどによると思われるシックハウス症候群です。通常であれば大気中に拡散してしまうものなのですが、ビニールで覆われることにより行き場がなくなり住人に悪影響を与えることになりました。
④そこで出てきたのが24時間換気であり、更にこの換気を勝手に切られないように24時間換気が義務化となりました。現在はこの状態です。
⑤?さて、まだまだ仮説ですので何とも言えないのですが、もしこの24時間換気で花粉症になっていると言うことが明らかになった場合、次はどのような場当たり的対策を取るつもりなのでしょうか?24時間加湿機義務化でしょうか?それよりもより根本的な解決策として透湿型断熱という手段があるのですが、いかがでしょうか?

 以前私はとある食品会社で働いており、自社のみならず他社の工場もよく見ておりました。そこでよく言われていたことですが、「工場を動かしている限り不具合というのは必ず出てくる。その時その場では応急処置が必要となるが、その応急処置をそのままで使い続けるのは二流の工場。一流の工場はその根本原因を追求し、その原因から問題点を直していく」と言われていたことを思い出します。
 この事は現在の住環境にも当てはまりうるのではないでしょうか?その都度その都度で場当たり的に対症療法を繰り返してきたのがここまでの住環境の流れであり、もちろんそれらの対症療法はその時点では早急な対応ということで必要な処置ではありました。しかし結露対策にせよシックハウス対策にせよ、じっくりと落ち着いて時間の取れる現状ではより良い対策、そして根本的な対策というものを考えてゆく必要があるのではないでしょうか?

 もちろん今回の仮説が正しいと決まったわけでもありませんのでまだ何とも言えないところなのではありますが、それも含めて24時間換気ひいては防湿型断熱の意義について一度きちんと見直しをしたほうが良い時期に来ているのではないでしょうか?
 仮説を立てた私自身も本当の所は分かりません。ただ、ここまでに書いてきたような事柄から、もしかすると現在の住環境こそが国民病、現代病と言われて多くの人が苦しんでいる花粉症などの原因になっているのではないかという大きな疑惑が浮上してきたために急遽こうして発議しているのです。私個人は一介の断熱屋さんに過ぎませんし普段の仕事を行いながらこちらの究明を致すにはいささか手に余ります。時間も知識も資金も足りておりませんので、手助けはできても究明自体はこれを見た誰かに託すしかありません。それでもこうした発議が今現在そして未来において花粉症やアトピーで苦しむ方々のための一助となるのであれば幸いというものでしょう。
 補足させていただくのであれば、このアトピーや花粉症、一説によると現在の経済的損失は五千億だとか言われており、将来的に患者数が増加すれば一兆に迫る可能性も示唆されております。もちろん毎年のことですので経年で見た場合の経済的損失は計りしれず、そういった経済面からも今のうちに抜本的な対策を見出しておくことが重要であると言えるでしょう。



 今現在山形県の川田建築設計事務所 の川田季彦先生、そして冒頭にもあげました(株)構造機能科学研究所 の鈴木正夫先生らが音頭を取り「アレルギーと住宅を考える会」を立ち上げられました。私自身もそこの富山支部長をやらせていただいておりますが、その会自体は現在主としてFacebook上にてその活動を行っております。メンバーも建築や医療関係に留まらず多種多様な分野の方々が知恵を出し合いこの問題に対処していこうとしております。私以外にも全国各地で支部が作られ、今後はその各支部を基準に色々とした動きを起こして行くことになるでしょう。
 まだまだ立ち上げたばかりの会であり、試行錯誤を重ねている段階ではありますが、そこから日本の住環境、そして多くの人が苦しんでいるこの状況を大きく変える動きにもなるのではないかと期待をしております。何よりこれまでアトピーや花粉症と住宅との関連性という視点で物事を考える視点がなかった所ですので、その会での議論等を含め、ここから何かが変わってゆくのではないでしょうか?現在「アレルギーと住宅を考える会」では会員を募集中です。肯定的な意見だけではなく否定的な意見も含め議論して行ければと考えております。ご興味の有る方は一度ご参加ください。

「アレルギーと住宅を考える会」
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