司法書士大原秀のblog

司法書士試験合格者の成長日記および無料法律相談・受験対策です。

カテゴリ:法律解釈 > 改正相続法

民法相続編の条文構成が様変わりしているので、新旧の対比をします。

第五編 相続
第一章 総則
第882条(相続開始の原因) 不変
第883条(相続開始の場所) 不変
第884条(相続回復請求権) 不変
第885条(相続財産に関する費用) 2項削除・・・遺留分権者が相続財産を取得しないため
第二章 相続人
第886条(相続に関する胎児の権利能力)~第895条(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理) 不変
第三章 相続の効力
第一節 総則
第896条(相続の一般的効力)~第899条 不変
第899条の2(共同相続における権利の対抗要件) 追加
第二節 相続分
第900条(法定相続分)~第901条(代襲相続人の相続分) 不変
第902条(遺言による相続分の指定) 遺留分規定違反禁止条項削除
第902条の2(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使) 追加
第903条(特別受益者の相続分)(配偶者への特別受益に関する持ち戻し免除推定追加)
第904条~第905条(相続分の取戻権) 不変
第三節 遺産の分割
第906条(遺産の分割の基準) 不変
第906条の2(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲) 追加
第907条(遺産の分割の協議又は審判等)~第909条(遺産の分割の効力) 不変
第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使) 追加
第910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)~第914条(遺言による担保責任の定め) 不変
第四節 相続の承認及び放棄
第一節 総則
第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)~第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消)
不変
第二節 相続の承認
第一款 単純承認
第920条(単純承認の効力)~第921条(法定単純承認) 不変
第二款 限定承認
第922条(限定承認)~第937条(法定単純承認の事由がある場合の相続債権者) 不変
第三節 相続の放棄
第938条(相続の放棄の方式)~第940条(相続の放棄をした者による財産の管理) 不変
第五章 財産分離
第941条(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)~第950条(相続人の債権者の請求による財産分離) 不変
第六章 相続人の不存在
第951条(相続財産法人の成立)~第959条(残余財産の国庫への帰属) 不変
第七章 遺言
第960条(遺言の方式)~第963条 不変
第964条(包括遺贈及び特定遺贈) 遺留分規定違反禁止条項削除
第965条(相続人に関する規定の準用)~第966条(被後見人の遺言の制限) 不変
第二節 遺言の方式
第一款 普通の方式
第967条(普通の方式による遺言の種類) 不変
第968条(自筆証書遺言) 財産目録に関する自筆要件緩和
第969条(公正証書遺言)~第975条(共同遺言の禁止) 不変
第二款 特別の方式
第976(死亡の危急に迫った者の遺言)~第984(外国に在る日本人の遺言の方式) 不変
第三節 遺言の効力
第985条(遺言の効力の発生時期)~第997条 不変
第998条(不特定物の遺贈義務者の担保責任) (遺贈義務者の引渡義務)として内容改正

第999条(遺贈の物上代位) 不変
第1000条(第三者の権利の目的である財産の遺贈) 削除
第1001条(債権の遺贈の物上代位)~第1003条(負担付遺贈の受遺者の免責) 不変
第四節 遺言の執行
第1004条(遺言書の検認)~第1006条(遺言執行者の指定) 不変
ただし、遺言書保管法で、法務局保管の遺言書については検認不要
第1007条(遺言執行者の任務の開始) 遺言内容通知義務の明文化
第1008条(遺言執行者に対する就職の催告)~第1011条(相続財産の目録の作成) 不変
第1012条(遺言執行者の権利義務) 遺言執行者権限明確化
第1013条(遺言の執行の妨害行為の禁止)禁止行為の無効明確化
第1014条(特定財産に関する遺言の執行)「特定財産承継遺言」として権限明確化
第1015条(遺言執行者の地位)効力が相続人に及ぶ旨を明確化
第1016条(遺言執行者の復任権)自己責任での復任権付与
第1017条(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)~第1021条(遺言の執行に関する費用の負担) 不変
第五節 遺言の撤回及び取消し
第1022条(遺言の撤回)~第1027条(負担付遺贈に係る遺言の取消し) 不変

ここまでは、条文構成に変動はなく、個々の条文の内容変更や心情分の追加のみです。

第八章から様相が一変します。
第八章 遺留分            ⇒ 第八章配偶者の居住の権利
                     第一節 配偶者居住権
第1028条(遺留分の帰属及びその割合) 第1028条(配偶者居住権)
第1029条(遺留分の算定)       第1029条(審判による配偶者居住権の取得)
第1030条               第1030条(配偶者居住権の存続期間)
第1031条(遺贈又は贈与の減殺請求)  第1031条(配偶者居住権の登記等)
第1032条(条件付権利等の贈与又は遺贈 第1032条(配偶者による使用及び収益)
の一部の減殺)
第1033条(贈与と遺贈の減殺の順序)  第1033条(居住建物の修繕等)
第1034条               第1034条(居住建物の費用の負担)
第1035条(贈与の減殺の順序)     第1035条(居住建物の返還等)
第1036条(受贈者による果実の返還)  第1036条(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
                     第二節 配偶者短期居住権
第1037条(受遺者の無資力による損失  第1037条(配偶者短期居住権)
の分担)
第1038条(負担付贈与の減殺請求)   第1038条(配偶者による使用)
第1039条(不相当な対価による有償行為)第1039条(配偶者居住権の取得による配偶者短期
                     居住権の消滅)
第1040条(受贈者が贈与の目的を譲渡  第1040条(居住建物の返還等)
した場合等)
第1041条(遺留分権利者に対する価額  第1041条(使用貸借等の規定の準用)
による弁償)

すなわち、遺留分に関しての1028条~1041条までの規定を削除して、そこに新設された配偶者居住権の規定が挿入されています。

であれば、遺留分に関する規定は1042条以降にそのままずれ込んだかというと、遺留分の位置づけが物的請求権から金銭支払い請求権に代わったので、こちらも条文の整理が行われました。
第1028条(遺留分の帰属及びその割合) 内容不変で第1042条へ
第1029条(遺留分の算定) 見出しを遺留分を算定するための財産の価額として第1043条へ
第1030条 内容不変で1044条へ
旧1031条(遺贈又は贈与の減殺請求)~旧1038条(負担付贈与の減殺請求) 削除
物的請求権ではなくなったため、「減殺請求」の規定は一律削除されました。

第1039条(不相当な対価による有償行為) 見出しを削除し負担付贈与の規定に変更のうえ、第1045条へ
第1040条(受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等)~第1041条(遺留分権利者に対する価額による弁償) 削除
そもそも金銭支払い請求権の位置づけとなったため、物的請求権の代替としての弁償の規定は削除
第1042条(減殺請求権の期間の制限) 見出しの減殺請求権を遺留分侵害額請求権に改め、第1048条へ
第1043条(遺留分の放棄) 内容不変で第1049条へ
第1044条(代襲相続及び相続分の規定の準用) 1043条に吸収して削除
第1046条(遺留分侵害額の請求)~第1047条(受遺者又は受贈者の負担額)
金銭支払請求権として位置づけられたのでその旨を明文化   
第1050条(特別の寄与) 追加

遺留分の位置づけが金銭支払い請求権となったことで、大幅な条文改正が行われたことがわかります。

新条文で整理しなおすと 
第八章 配偶者の居住の権利
第一節 配偶者居住権
第1028条(配偶者居住権)
第1029条(審判による配偶者居住権の取得)
第1030条(配偶者居住権の存続期間)
第1031条(配偶者居住権の登記等)
第1032条(配偶者による使用及び収益)
第1033条(居住建物の修繕等)
第1034条(居住建物の費用の負担)
第1035条(居住建物の返還等)
第1036条(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
第二節 配偶者短期居住権
第1037条(配偶者短期居住権)
第1038条(配偶者による使用)
第1039条(配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅)
第1040条(居住建物の返還等)
第1041条(使用貸借等の規定の準用)
第九章 遺留分
第1042条(遺留分の帰属及びその割合)
第1043条(遺留分を算定するための財産の価額)
第1044条
第1045条
第1046条(遺留分侵害額の請求)
第1047条(受遺者又は受贈者の負担額)
第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第1049条(遺留分の放棄)
第十章 特別の寄与
第1050条(特別の寄与)

となっています。

改正相続法の解釈はここまでです。次は、不動産登記法に 入ります。

法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)

第一条 この法律は、法務局(法務局の支局及び出張所、法務局の支局の出張所並びに地方法務局及びその支局並びにこれらの出張所を含む。次条第一項において同じ。)における遺言書(民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百六十八条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう。以下同じ。)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。

法務局が自筆証書遺言の保管場所となり、遺言の公証機能を持つということです。
国家機関が保管しているので、証拠保全手続きとしての遺言書検認手続きは不要になります。

第二条 遺言書の保管に関する事務は、法務大臣の指定する法務局が、遺言書保管所としてつかさどる。

指定法務局が遺言書保管所の機能を持ちます。

2.前項の指定は、告示して行わなければならない。

国民の利用するものなので、告示によります。

第三条 遺言書保管所における事務は、遺言書保管官(遺言書保管場所に勤務する法務事務官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう、以下同じ。)が取り扱う。

遺言書の保管を担当する法務事務官を、遺言書保管官といいます。

第四条 遺言者は、遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請をすることができる。

遺言者は、法務局で遺言書の保管を申請できます。

2.前項の遺言書は、法眼省令に定める様式に従って作成した無封のものでなければならない。

民法968条の要件の他に、法務省令に従い、かつ封をしてはならないとされています。
内容を確認できるようにするためです。

3.第一項の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が保有する不動産の所有地を管轄する遺言書保管所(遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合にあっては、当該他の遺言書保管所)の遺言保管官に対してしなければならない。

遺言者は、住所地、本籍地、不動産所在地を管轄する遺言書保管所を選択できますが、既に遺言書を保管している場合はその保管所に申請する必要があります。

4.第一項の申請をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、遺言書に添えて、次に掲げる事項を記載した申請書を遺言書保管官に提出しなければならない。
一 遺言書に記載されている作成の年月日
二 遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
三 遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
 イ 受遺者
 ロ 民法第千六条第二項の規定により指定された遺言執行者
四 前三号に掲げるものの他、法務省令で定める事項

遺言書保管の申請に際しては、申請書に遺言内容のh概略を記載する必要があり、特に受遺者や遺言執行者については氏名・名称と住所の記載を要します。

5.前項の申請書には、同項第二号に掲げる事項を証明する書類その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。

つまり、遺言者の戸籍謄本、住民票の写しなどを、保管申請の段階で添付しなければなりません。

6.遺言者が第一項の申請をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。

遺言者の本人確認のために、出頭主義をとっています。

第五条 遺言書保管官は、前条第一項の申請があった場合において、申請人に対し、法務省令で定めるところにより、当該申請人が本人であるかどうかの確認をするため、当該申請人を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す書類の提示若しくは提出又はこれらの事項についての説明を求めることができる。

保管申請をした者が遺言者本人であるかどうかの確認をする、ということです。
遺言書の公証機能を負うことになり、家裁での検認すら省略されるので、慎重を期しています。

第六条 遺言書の保管は、遺言書保管官が遺言書保管所の施設内において行う。

遺言書保管所内に保管しなければなりません。

2.遺言者は、その申請に係る遺言書が保管されている遺言書保管所(第四項及び第八条において「特定遺言書保管所」という。)の遺言書保管官に対し、いつでも当該遺言書の閲覧を請求することができる。

遺言者本人はいつでも閲覧請求できます。

3.前項の請求をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。

遺言者本人であることが確認できる書類の添付を要します。

4.遺言者が第二項の請求をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない、この場合においては、前条の規定を準用する。

閲覧請求に際しても厳格な本人確認を行うため、出頭主義とされています。

5.遺言書保管官は、第一項の規定による遺言書の保管をする場合において、遺言者の死亡の日(遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、これに相当する日として政令で定める日)から相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として法務省令で定める期間が経過した後は、これを廃棄することができる。

遺言書保管の目的は、遺産相続に関する紛争の防止にあるため、これらの必要がなくなったと認定できる期間が経過した後は、遺言書保管官が廃棄することができます。

第七条 遺言書保管官は、前条第一項の規定により保管する遺言書について、次項に定めるところにより、当該遺言書に係る情報の管理をしなければならない。

遺言書について、情報管理が必要となります。極めてナーバスな個人情報なので、厳格な管理が求められます。

2.遺言書に係る情報の管理は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)を持って調製する遺言書保管ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。
一 遺言書の画像情報
二 第四条第四項第一号から第三号までに掲げる事項
三 遺言書の保管を開始した年月日
四 遺言書の保管がされている遺言書保管所の名称及び保管番号

遺言書保管ファイルに、遺言書画像、遺言者の氏名住所本籍生年月日等、受遺者や遺言執行者の氏名名称。住所などが記録されます。

3.前条第五項の規定は、前項の規定による遺言書に係る情報の管理について準用する。この場合において同条第五項中「廃棄する」とあるのは、「消去する」と読み替えるものとする。

必要のなくなった遺言書保管ファイルは消去されます。

第八条 遺言者は、特定遺言書保管所の遺言書保管官に対し、いつでも、第四条第一項の申請を撤回することができる。

法務局での遺言書保管に強制力はないので、いつでも保管の撤回ができます。

2.前項の撤回をしようとする遺言者は、法務省令でさだめるところにより、その旨を記載した撤回書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。

虚偽の撤回が起きないようにするためです。

3.遺言者が第一項の撤回をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、第五条の規定を準用する。

ここでも出頭主義が貫かれ、本人確認を要します。

4.遺言書保管官は、遺言者が第一項の撤回をしたときは、遅滞なく、当該遺言者に第六条代以降の規定により保管している遺言書を返還するとともに、前条第二項の規定により管理している当該遺言書に係る情報を消去しなければならない。

保管撤回があったら、遺言書の返還と遺言書保管ファイルの記録抹消を要します。

第九条 次に掲げる者(以下この条において「関係相続人等」という。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている遺言(その遺言者が死亡している場合に限る。)について、遺言書保管ファイルに記載されている事項を証明した書面(第五項及び第十二条第一項第三号において「遺言書情報証明書」という。)の交付を請求することができる。
一 当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人(民法第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。以下この条において同じ。)
二 前号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者又はその相続人(ロに規定する母の相続人にあっては、ロに規定する胎内に在る子に限る、)
イ 第四条第四項第三号イに掲げる者
ロ 民法第七百八十一条第二項の規定により認知するものとされた子(胎内にある子にあっては、その母)
ハ 民法第八百九十三条の規定により廃除する意思を表示された推定相続人(同法第八百九十二条に規定する推定相続人をいう。以下このハにおいて同じ。)又は同法第八百九十四条第二項において準用する同法第八百九十三条の規定により廃除を取り消す意思を表示された推定相続人
ニ 民法第八百九十七条第一項ただし書きの規定により指定された祖先の祭祀を主催すべき者
ホ 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十二号)第十七条の五第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者又は地方公務員災害補償法(昭和四十三年法律第百二十一号)第三十七条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる意足のうち特に指定された者
ヘ 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受益者となるべき者として指定された者若しくは残余財産の帰属すべき者となるべき者として指定された者又は同法第八十九条第二項の規定による受益者指定権等の行使により受益者となるべき者「
ト 保険法(平成二十年法律第五十六号)第四十四条第一項又は第七十三条第一項の規定による保険金受取人となるべき者
チ イからトまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
三 前二号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者
イ 第四条第四項ロに掲げる者
ロ 民法第八百三十条第一項の財産について指定された管理者
ハ 民法第八百三十九条第一項の規定により指定された未成年後見人又は同法第八百四十八条の規定により指定された未成年後見監督人
ニ 民法第九百二条の規定により共同相続人の相続分を定めることを委託された第三者、同法第九百八条の規定により遺産の分割の方法を定めることを委託された第三者又は同法第千六条第一項の規定により遺言執行者の指定を委託された第三者
ホ 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第七十五条第二項の規定により同条第一項の登録について指定を受けた者又は同法第百十六条第三項の規定により同条第一項の請求について指定を受けた者
ヘ 信託法第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受託者となるべき者、信託管理人となるべき者、信託監督人となるべき者又は受益者代理人となるべき者として指定された者
ト イからヘまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者

遺言者が死亡した後であれば、次の者は遺言書保管証明書の発行を請求できます。
① 遺言者の相続人(相続欠格者、被廃除者、相続放棄者を含みます)
② 受遺者、認知された胎児の母及び出生した胎児、廃除意思を表示された推定相続人・廃除取り消しを受けた推定相続人、祖先の祭祀を主宰すべき者、遺族補償一時金を受けることのできる公務員遺族、信託受益者、保険金受取人その他政令で認められるもの
③ 遺言執行者、第三者が与えた無償財産の管理者、未成年後見人・未成年後見監督人、相続分指定・遺産分割方法指定・遺言執行者指定を委託された第三者、著作権法上の権利行使者として指定された者、信託受託者・信託管理人・信託監督人・受益者代理人として指定された者その他政令で認められる者

広範な範囲で利害関係人に遺言書情報証明書の発行請求が認められます。

2.前項の請求は、自己が関係相続人等に該当する遺言書(以下この条及び次条第一項において「関係遺言書」という。)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。

遺言書情報証明書については、どこの遺言書保管官に対しても請求できる、ということです。
ネットワーク処理が可能という事ですね。

3.関係相続人等は、関係遺言書を保管する遺言書保管官に対し、当該関係遺言書の閲覧を請求することができる。

閲覧請求は現物を保管している遺言書保管所を特定の上ですることになります。

4.第一項又は前項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。

そもそも請求権があるのかどうかを添付書類によって確認することになります。

5.遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書情報保管証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人並びに当該関係遺言書に係る第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

遺言書保管官が請求に応じた場合は、遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者にその旨の通知を要します。

第十条 何人も、遺言書保管官に対し、遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無並びに当該関係遺言書が保管されている場合には遺言書保管ファイルに記載されている第七条第二項第二号(第四条第四項第一号に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる事項を証明した書面(第十二条第二項第三号において「遺言書保管事実証明書」という。)の交付を請求することができる。

関係遺言書が保管されているかどうか、ある場合には遺言書の作成年月日と保管所名称・保管番号については、その事実の証明書を交付請求できます。

2.前条第二項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。

どこの遺言書保管所でも請求できる点、請求書に添付書類を要する点は、遺言書情報証明書と同様です。

第十一条 民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

自筆証書遺言に関する検認の規定は、保管所に保管されている遺言書には適用されません。
改めて証拠保全措置を要さないからです。

第十二条 次の各号に掲げる者は、物価の状況のほか、当該各号に定める事務に要する実費を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
一 遺言書の保管の申請をする者 遺言書の保管及び遺言書に係る情報の管理に関する事務
二 遺言書の閲覧を請求する者 遺言書の閲覧及びそのための体制の整備に関する事務
三 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する者 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付及びそのための体制の整備に関する事務

各種請求をするには手数料の納付を要します。

2.前項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。

印紙納付になります。

第十三条 遺言書保管の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章の規定は、適用しない。

遺言書保管の処分については、行政手続法の対象外です。

第十四条 遺言書保管所に保管されている遺言書及び遺言書保管ファイルについては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。

個人情報であり重大な機密を含んだ情報なので、情報公開法の適用外です。

第十五条 遺言書保管所に保管されている遺言書及び遺言書保管ファイルに記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第五項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。

個人情報保護法第四章の個人情報取扱事業者の規定は、個人情報として取り扱うのが法務局なので適用はありません。

第十六条 遺言書保管官の処分に不服がある者又は遺言書保管官の不作為に係る処分を申請した者は、監督法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができる。

遺言書保管官の処分・不作為については独自に審査請求ができます。

2.審査請求をするには、遺言書保管官に審査請求書を提出しなければならない。

審査請求書は遺言書保管官を経由して提出します。

3.遺言書保管官は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、相当の処分をしなければならない。

遺言書保管官の段階で誤りが認められれば相当の処分をします。

4.遺言書保管官は、前項に規定する場合を除き、三日以内に、意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。この場合において、監督法務局又は地方法務局の長は、当該意見を行政不服審査(平成二十八年法律第六十八号)第十一条第二項に規定する審理員に送付するものとする。

遺言書保管官が誤りを認めない場合は3日以内に審査請求先に送付します。この場合、遺言書保管官の意見は行政不服審査法に定める審理員に送られます。

5.法務局又は地方法務局の長は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、遺言書保管官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか利害関係人に通知しなければならない。

審査請求先の長が審査請求に理由があると認めれば、遺言書保管官に相当の処分を命じ、審査請求人と利害関係人にその旨を通知します。

6.法務局又は地方法務局の長は、審査請求に係る不作為に係る処分についての申請を却下すべきものと認めるときは、遺言書保管官に当該申請を却下する処分を命じなければならない。

審査請求に理由がないと認められた場合は、審査請求先の長は、不作為に係る申請についての却下処分を命じます。

7.第一項の審査請求に関する行政不服審査法の規定の適用については、同法第二十九条第五項中「処分庁等」とあるのは「審査庁」と、「弁明書の提出」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)第十六条第四項に規定する意見の送付」と、同法第三十条第一項中「弁明書」とあうるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律代十六条第四項の意見」とする。

行政不服審査法上の読み替え規定です。

第十七条 行政不服審査法第十三条、第十五条第六項、第十八条、第二十一条、第二十五条第二項から第七項まで、第二十九条第一項から第四項まで、第三十一条、第三十七条、第四十五条第三項、第四十六条、第四十七条、第四十九条第三項(審査請求に係る不作為が違法または不当である旨の宣言に係る部分を除く。)から第五項まで及び第五十二条の規定は、前条第一項の審査請求については、適用しない。

行政不服審査法の適用除外規定です。

第十八条 この法律に定めるもののほか、遺言書保管所における遺言書の保管及び情報の管理に関し必要な事項は、政令で定める。

ここまでが、遺言書保管に関する法律です。次は、相続編の条文番号の変更を整理します。

 第三条 家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。
 目次中「第十八節 遺留分に関する審判事件(第二百十六条)を
「第十八節 遺留分に関する審判事件(第二百十六条)
 第十八節の二 特別の寄与に関する審判事件(第二百十六条の二ー第二百十六条の五)に改める。

特別の寄与、が民法に創設されたことに伴う改正です。
 
 第三条の十一第一項中「十四の項」を「十五の項」に改め、同条第四項中「同じ。)」の下に「及び特別の寄与に関する処分の審判事件(同表の十五の項の事項についての審判事件をいう。第三の十四及び第二百十六条の二において同じ。)を加える。

特別の寄与に関する審判が加わったことによる改正です。

 第三条の十四中「審判事件」の下に「又は特別の寄与に関する処分の審判事件」を加える。

特別の寄与に関する審判が加わったことによる改正です。

 第二百条第一項中「次項」の下に「及び第三項」を加え、同条第三項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3.前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立があった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部または一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

預貯金債権について、遺産分割調停又は審判の際の申立により仮取得を認めるものです。

 第二百十五条第一項中「相続人の利益」を「遺言の内容の実現」に改める。

遺言執行者の解任に関する審判の要件として、相続人に利益になるかどうかではなく、遺言内容の実現に役立つかどうかを判断基準とする旨が明記されました。

 第二百十六条第一項第一号中「算定する」の下に「ための財産の価額を定める」を加える。

遺留分算定に関して、財産価額を定める旨を明確化しました。

 第二編第二章第十八節の次に次の一節を加える。
 第十八節の二 特別の寄与に関する審判事件
第二百十六条の二 特別の寄与に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

被相続人の住所地である相続開始地が管轄裁判所になります。

第二百十六条の三 家庭裁判所は、特別の寄与に関する処分の審判において、当事者に対し、金銭の支払を命ずることができる。

特別寄与料が金銭支払請求権だからです。

第二百十六条の四 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。
一 特別の寄与に関する処分の審判 申立人及び相手方
二 特別の寄与に関する処分の申立を却下する審判 申立人

特別の寄与に関しての審判結果に対しては、申立人・相手方のいずれも即時抗告できます。
却下審判に対しては、申立人が即時抗告できます。

第二百十六条の五 家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所)は、特別の寄与に関する処分についての審判又は調停の申立があった場合において、強制執行を保全し、又は申立人の急迫の危険を防止するために必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、特別の寄与に関する処分の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分をすることができる。

特別の寄与に関する審判をしている最中に財産が散逸してしまうことを防ぐ等のため、保全処分をすることができます。

 第二百三十三条第一項中「別表第二の十五の項」を「別表第二の十六の項」に改める。
 第二百四十条第二項中「別表第二の十六の項」を「別表第二の十七の項」に改める。
 別表第一の百九の項中「算定する」の下に「ための財産の価額を定める」を加え、「第千二十九条第   二項」を「第千四十三条第二項」に改める。
 別表第一の百十の項中「第千四十三条第一項」を「第千四十九条第一項」に改める。
 別表第二の生活保護法等の部中十六の項を十七の項とし、同表の厚生年金保険法の部中十五の項を十六の項とし、同表の遺産の分割の部の次に次の一部を加える。
 特別の寄与 十五 特別の寄与に関する処分 民法第千五十条第二項

 いずれも特別の寄与の追加や条文番号の変更に伴う形式的な改正です。

家事事件手続法についてはここまでです。次は、遺言書の保管に関する法律に入ります。

第二条 民法の一部を次のように改正する。
 目次中「第千四十一条」を「第千二十七条」に、
「第八章 遺留分(第千四十二条ー第千四十九条)第九章 特別の寄与(第千五十条)」を
「第八章 配偶者の居住の権利 第一節 配偶者居住権(第千二十八条ー第千三十六条)
 第二節 配偶者短期居住権(第千三十七条ー第千四十一条)
 第九章 遺留分(第千四十二条ー第千四十九条)
 第十章 特別の寄与(第千五十条)」に改める。

配偶者居住権の創設による条文番号の組み換えです。

 第千二十八条から第千四十一条までを削り、第五編中第九章を第十章とし、第八章を第九章とし、第七章の次に次の一章を加える。
第八章 配偶者の居住の権利
第一節 配偶者居住権
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

配偶者居住権という新たな権利を創設する規定です、無償で使用収益する権利なので使用貸借権に該当します。

2.居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は消滅しない。

配偶者が相続や贈与、売買で居住建物の所有権を単独で取得した場合は、配偶者居住権は混同消滅しますが、共有の場合は混同の例外として消滅しません。

3.第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

903条4項は今回の改正で付加された条文で、婚姻期間20年以上の場合には遺贈については持ち戻し免除が推定されるというものです。配偶者居住権の遺贈にもこの規定が準用されます。

第千二十九条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く)

遺産分割請求が家庭裁判所に対してなされた場合に、家庭裁判所が配偶者居住権を認めることができるのは、共同相続人間での合意があるか、あるいは特に必要がある場合に限られます。

第千三十条 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

配偶者居住権は原則として終身権です。

第千三十一条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者所有権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。

配偶者居住権は登記事項になり、所有者は登記義務を負います。

2.第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合に準用する。

605条は不動産賃借権の対抗力の規定、605条の4は対抗力を備えた不動産賃借権者による妨害排除請求権の規定です。無償の使用貸借権でありながら不動産賃借権と同様の物権化が図られています。

第千三十二条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。

配偶者居住権であっても、使用貸借なので、自己固有財産ではないため、善管注意義務を要します。
ただし書きは、配偶者の死亡による生活官許の変化を考慮したものです。

2.配偶者居住権は、譲渡することができない。

配偶者の一審専属権です。

3.配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。

賃貸借と同様の考え方です。

4.配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の勧告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。

法令違反が生じた場合は、一定の是正期間を与えたうえで、居住建物所有者の意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができます。

第千三十三条 配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。

たとえば雨漏りがあれば配偶者が修繕できます。

2.居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

たとえば台風の暴風で屋根瓦が大きく飛んだような場合、あるいは先取特権を主張する者がある場合には、本来の権利者である所有者への通知が必要です。

第千三十四条 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。

居住権があるので、居住に伴う費用は当然に負担します。

2.第五百八十三条の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

買戻特約が付いている場合、売主の費用償還義務には前項の通常の必要費は含まれません。

第千三十五条 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。

配偶者居住権が消滅すれば返還義務が生じますが、共有持分を有する場合は返還義務は生じません。

2.第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十条の規定は、前項本文の規定により配偶者が0

居住建物に附属させた物があったり、居住建物が損傷したりした場合には、使用貸借借主の収去権の規定や賃貸借の解除の規定が準用されます。

第千三十六条 第五百九十七条第一項及び第三項、第六百条、第六百十三条並びに第六百十六条の二の規定は、配偶者居住権について準用する。

期間満了等による使用貸借の終了、契約の本旨に反する使用収益に対する損害賠償請求権、適法な転貸の効果、使用収益不可能となった場合の終了の規定は、配偶者居住権についても準用されます。
要は、無償の使用貸借の位置づけであり、権限強化の意味で賃貸借の規定も準用されています。

第二節 配偶者短期居住権
第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日

配偶者居住権を得られない場合であっても、相続欠格や廃除に該当しない限り、配偶者は遺産分割で帰属が確定するまではそのまま居住でき、これを配偶者短期居住権といいます。
たとえば、配偶者が相続放棄をして遺産分割協議に参加できない場合や、長男に相続させる遺言があって遺産分割協議を要さない場合も、最低6カ月は居住できることになります。
一般的な相続では見られませんが、たとえば後妻のような場合に生ずるトラブルを防ぐ趣旨です。

2.前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。

1項1号の場合は遺産分割協議中なのであまり起きませんが2号の場合には、配偶者には居住建物に対する所有権や共有持分がないため、居住建物取得者が第三者に売却してしまうことは想定できます。あらかじめそれを封じた規定です。

3.居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

1項2号の場合は、配偶者には所有権も共有持分も、配偶者居住権もないので、消滅の申入れができあます。この申し入れがあっても、6か月間は猶予があります。

第千三十八条 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。

自己所有物ではないので、固有財産としての管理ではなく善管注意義務を負います。

2.配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。

使用貸借、賃貸借と同様です。

3.配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。

規定違反をすれば、遺産分割協議前でも配偶者短期居住権は消滅します。

第千三十九条 配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は消滅します。

遺産分割協議をしていて、他の共同相続人が配偶者居住権に合意した場合は、短期居住権は消滅します。より強い権利となるので弱い権利は混同消滅します。

第千四十条 配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。

配偶者短期居住権が消滅したときは居住建物から立ち退く必要がありますが、共有持分を有するときはその必要はありません。

2.第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。

この点は配偶者居住権の消滅の場合と同様です。

第千四十一条 第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権に準用する。

基本的に同様の権利なので、配偶者居住権の規定が準用されますが、短期的性質から転貸の規定の準用はありません。

ここまでが、配偶者居住権の規定です。次は、第三条 家事事件手続法の改正に入ります。






 第千七条に次の一項を加える。
2.遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

遺言執行者の相続人への通知義務が明文化されました。

 第千十二条第一項中「遺言執行者は」の下に「、遺言の内容を実現するため」を加え、同条第二項を同条第四項とし、同条第一項の次に次の二項を加える。
2.前項の規定に違反してした行為は無効とする、ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3.前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

まず、遺言者の遺言執行権に反してなされた行為が無効であることが明文化されました。
ついで、相続人らがなした遺言執行権抵触行為であっても、その無効は善意の第三者には対抗できないことも規定されました。
ただし、遺言執行権があったとしても、相続人の債権者らが相続財産に権利行使することは、遺言執行権の抵触にはならない旨も明文化されました。

 千十四条に次の三項を加える。

2.遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3.前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4.前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

特定財産承継遺言があった場合には、遺言執行者は対抗要件を備えるための登記登録等ができます。
これは、今回の改正で法定相続分と異なる相続の場合にも、登記登録などがないと善意の第三者に対抗できない旨の条文が追加されたことによるものです。
次に、特定財産承継遺言があれば、遺言執行者が預貯金の払い戻しや解約もできる旨が明文化されました。

 第千五十条及び第千五十一条を次のように改める。

第千五十条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

旧の規定は
第千十五条 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
としていますが、権限内の行為であることと、遺言執行者であることを示すこと、という要件が追加されています。

第千五十一条 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2.前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

遺言執行者の復任権が明文化されました。
旧規定では、やむを得ない事情がなければ復任できませんでした。
法律専門家でなくても遺言執行者になり得る実情を踏まえた規定です。

 第千二十五条ただし書き中「その行為が」の下に「錯誤、」を加える。

民法総則の改正に合わせて、錯誤を詐欺や強迫と同列としたものです。

 第五編第八章中第千四十四条を削り、第千四十三条を第千四十九条とする。

1044条は遺留分に関して相続分や代襲相続分の規定を準用することを定めた規定ですが、別途の規定(1028条2項)でカバーされるため削除されました。

 第千四十二条の見出し中「減殺請求権」を「遺留分侵害額請求権」に改め、同条中「減殺の」を「遺留分侵害額の」に、「減殺すべき」を「遺留分を侵害する」に改め、同条を第千四十八条とする。

遺留分減殺請求権、という術語が一般人になじみがなくわかりにくいため、遺留分侵害額請求権と改めています。


 第千四十条及び第千四十一条を削る。

旧1040条は、遺留分請求権が物的請求権であることを前提に、義務者がその物を第三者に譲渡した場合の弁償義務を定めています。旧1041条も同様に、その物的請求に対する返還義務を金銭弁償で免れることを規定しています。
改正法は遺留分侵害額請求権を金銭請求権として位置づけたため、これらの規定は削除されました。

 第千三十九条の見出しを削り、同条中「これを贈与」を「当該対価を負担の価額とする負担付贈与」に改め、同条後段を削り、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除したものとする。

旧1039条は、不相当な対価をもってした有償行為を贈与とみなしていたのですが、負担付贈与として整理され、対価の返還義務は削除されました。

 第千三十九条を第千四十五条とし、同条の次に次の二条を加える。
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる。

まず、遺留分権利者から請求を受ける者として、受遺者の範囲に遺言によって特定財産の承継を受けたり相続分の指定を受けた相続人を含むことが明文化されました。また、抜本的な改正として、従来は遺産に対する物権的請求権であったものを、金銭支払い請求権として位置づけています。これは、たとえば不動産の遺贈や相続があった場合に、遺留分を請求した結果、共有状態が生じ、その後の共有物分割などで法律関係が煩雑となっていたものを、金銭支払い請求権に一本化したものです。

2.遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という、)の額

遺留分侵害額の計算方法を明文化しています。

第千四十七条 受遺者または受贈者は、次の各号に定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

遺留分侵害額請求権の負担のルールが明文化されました。

2.第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。

贈与後の価額の増減があっても原状で計算すること、条件付き権利等の算定方法、負担付贈与に関する規定については、遺留分侵害額算定ルールにも準用されます。

3.前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示にて第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。

遺留分権利者が承継した債務を受遺者や受贈者が弁済した場合は、その求償権と遺留分侵害額請求債務とを、相殺することができます。

4.受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。

遺留分侵害請求を受けても、受遺者や受贈者が無資力であれば、権利は充足されません。

5.裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

受遺者や受贈者が不動産等現物資産を承継している場合、資金化に期間を要する場合もあることから、期限の許与を認めたものです。物的請求権から金銭支払い請求権へと改正されたための措置です。

 第千三十一条から第千三十八条までを削る。
旧法の遺留分減殺請求に関する条文は一斉に削除されました。

 第千三十条に次の二項を加える。
2.第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。

特別受益を算定する際の規定である贈与の価額について、受贈者の責任で滅失したり、価額の象嵌があった場合も、原状のまま算定する規定は、遺留分計算でも準用されます。

3.相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻又は養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

相続人に対する贈与は、原則として定められた1年ではなく10年前まで遡って対象となります。
むろん、他の相続人を害することを知っての贈与はさらに制限なく対象となります。
また、贈与の範囲は特別受益と同様の贈与に限られます。

 第千三十条を第千四十四条とする。

条文番号の変更です。法律改正で条文番号を変えることは極めて珍しいので、後で新旧対照表を整理します。

 第千二十九条の前の見出しを削り、同条第一項中「遺留分」を「遺留分を算定するための財産の価額」に、「控除して、これを算定する」を「控除した額とする」に改め、同条を千四十三条とし、同条の前に見出しとして「(遺留分を算定するための財産の価額)」を付する。

わかりやすくするための改定です。ここでも条文番号が変わっています。

 第千二十八条中「として」の下に、「、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に」を加え、「に相当する」を「を乗じた」に改め、同条各号中「被相続人の財産の」を削り、同条に次の一項を加える。
2.相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

遺留分算定基礎となる財産価額の算定方法、相続人複数時の取り扱いを明文化しています。

 第千二十八条を第千四十二条とし、第五編第七章第五節中第千二十七条の次に次の十四条を加える。

条文番号の変更とともに、配偶者居住権の規定が編入されます。

 第千二十八条から第千四十一条まで 削除

配偶者居住権編入のため、条文構成が変わります。

本則に次の一章を加える。
第九章 特別の寄与
第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百級十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

たとえば、長男夫婦と老父が同居していて長男が先に死んだあと、長男の嫁が引き続き老母の介護に努める、という光景はよく目にするところですが、既に独立した次男や嫁に行った長女は介護をすることなしに老父の遺産を相続できるにもかかわらず、長男の嫁には相続権がなく、遺産分割協議にも参加できないところから社会的に不公平感があります。これを救済するためにこの規定が制定されました。

2.前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が整わないとき、又は協議することができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ってから六箇月を経過したとき、又は相続開始から一年を経過したときは、この限りでない。

特別寄与料の支払いについて協議がまとまらなければ、特別寄与者は相続開始を知ってから半年、または相続開始から1年の間は家庭裁判所に対して、処分の申立ができます。

3.前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

家庭裁判所は特別寄与料の決定ができます。

4.相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

特別寄与料支払債務は、各人の相続分で各相続人に帰属します。

ここまでが第一条です。次は、第二条 配偶者居住権に入ります。

 

↑このページのトップヘ