第169回:情熱と客観の両立-2第171回:真のブランディング

2010年07月15日

第170回:情熱と客観の両立-3

皆さんこんにちは、IT・情報戦略コンサルタントの辻井康孝です。

連続して取り上げてきたテーマ「情熱と客観性のバランス」の、今回は第3回目、最終回になります。
前々回の記事では、ビジネスの現場において「情熱」が勝ち過ぎているとどういう事になるか、について考えてみました。そして前回は、「客観性」に過ぎてしまうと、どんな問題が発生するかを考察しました。
結局のところ、情熱と客観性をバランス良く両立する事が優秀なビジネスマンの条件になるわけですが、今回の記事では、僕がかつて見聞きしてきた中で、この両方の資質を見事に兼ね備えていた人の事について、書いてみたいと思います。いわば実例を挙げてのケーススタディですね。

僕が今コンサルタントとして携わっている取引先の中で、かつて偉大なリーダーに率いられていた組織があります。
そのリーダーは、その業界では誰一人知らない人はいないようなカリスマで、その業界全体の発展に大きく寄与した、いわゆる偉人です。しかし残念ながら、何年も前に物故されてしまいました。
その組織は、現在はそのリーダーによって育てられ、遺訓を受けた人達によって構成され、運営されています。

そのリーダーは、非常に情熱的な人でした。
崇高な理想と理念を掲げ、いわば「職人」の集団ともいえる数百人のその組織を見事にまとめ上げ、絶対的な権威によって統率していました。
職人たちがそのリーダーを信奉していたのは、もちろんその圧倒的なカリスマ性によるものが大だったのですが、その根底には、人間としてのそのリーダーの温かさ、そして理想に向けてひた走る情熱に、共に同じ夢を見て突っ走っていたようなところが大きかったのではないかと思います。
古くからそのリーダーに仕えてきた人達が思い出深く語るのは、いずれも人間としてのその温かさを偲ばせる逸話です。
つまり、多くの職人たちは、そのリーダーの「アツさ」に対する情緒的な面でのシンパシーが非常に強く、多くの人々は、そのリーダーのそういう面だけを見て来たようなきらいがあるように思います。

ところがそのリーダーは、情熱と同時に、やはり冷静で客観的な眼を、持っていました。であるがゆえに、その組織は驚異的な発展を遂げたのです。

現在、その組織のトップは、物故されたリーダーのご子息が務めておられますが、トップの部屋は、かつてのリーダーが生きていた頃のまま、保たれています。壁面を埋め尽くす書架の蔵書も、そのままです。
僕はコンサルタントとしてその組織の顧問となり、度々その部屋を訪れていますが、その書架に並んだ蔵書の中で、真っ先に目についた物がありました。

それは・・・・・「作戦要務令」。

ご存じの方もおられると思いますが、作戦要務令とは、かつての大日本帝国陸軍の一般将校に対する教科書です。
日本の戦略・戦術書は、往古は中国の「孫子」に始まり、後にナポレオンと数々の戦いを演じたプロシアの軍人であるクラウゼウィッツの「戦争論」で体系的な流れを得て、それが日清・日露戦争、第一次世界大戦を経てそこで得た教訓を活かしながら、徐々にそのカタチを整えていきました。
その成果が、参謀のための指導書である「統帥綱領」であり、「師団以下の指揮」のための指南書である、この「作戦要務令」です。
ここには、冷静で客観的で、透徹された「戦い方」のノウハウが収録されています。
孫子などは、まず「戦うべきか戦わざるべきか」というところから入っている大局的な戦略書であるのに対して、作戦要務令は「戦う事を前提とした」モノなので、非常に具体的でリアリティのある物、という事がその最大の特徴となっています。
そういう性質を持つ物であるがゆえに、そのノウハウはそのまま企業経営に役立つ事が多く、現代でも経営者に多く愛読されている優れた良書です。
かくいう僕も、自社の経営のために昔から愛読してきました。

そのリーダーの部屋で作戦要務令を見つけた時、僕はそれが物故されたその人の物だという事を知りませんでした。その組織にいる僕の仲間からそれを聞かされ、その本を手に取ってページをめくった時、僕は思わず唸ってしまいました。

そこには赤鉛筆で多くのラインが引かれ、亡くなられたそのリーダーの肉筆で、数々の書き込みがなされていました。
いずれも作戦要務令に書かれている事をその組織の運営のために応用した時にどういう事をなすべきか、という事について書かれた書き込みです。
その一つひとつは実に緻密かつ具体的で、それが徹底的に客観的かつ合理的で、冷静に透徹した思考で考え抜かれたモノである事は、一目瞭然でした。
その時に初めて、僕はその物故されたリーダーの奥深さに改めて感銘を受けました。

「う〜む・・・さすがだなぁ・・・」

現在、その組織で頑張っておられる子飼いの人達は、そのリーダーのこういう部分はあまり見ていなかったかも知れません。情熱的で圧倒的なリーダーシップ、そして何より人間としての温かさに、より傾斜していたのではないかと思います。
けれどもその後ろには、こういう絶対的な客観性に基づいた、透徹した分析があったのです。

後で聞いた話ですが、そのリーダーは戦争にも従軍しておられ、軍隊では兵站を担当しておられたそうです。兵站とは、言うまでもなく前線で戦う兵士たちのために食料や物資などを補給する、後方支援部隊ですよね。
つまりその任務には、いつ、どこに、どれくらいの物資を、どう配分・補給すべきか、という正確無比な計算が必要で、徹底的に客観的な状勢分析が、不可欠なのです。
僕は、「さもありなん」と思いました。

長くなりましたが、あらゆるビジネスマンには、情熱と客観性の、絶妙なバランスが必要です。アツくなり過ぎてもダメ、冷静に徹し過ぎてもダメ、です。
気持ちが前に出過ぎている人は、ちょっとクールダウンして下さい。
逆に主体的に仕事に携わっていない人は、もっと情熱を持って、「自分ごと」として、仕事に取り組んで下さい。
ビジネスを成功させるためには、情熱をモチベーションに変えてアツい気持ちを持ちながら、常に現況を客観的に把握してその場その場で最適な決断を下して迅速に実行していく、計算を忘れないクールなアタマが、共に必要なのです。

という事で、3回にわたってこのテーマで書いて来ました。
どちらかに自分が偏っているという心当たりのある方は、この機会に自分自身の仕事への取り組み方を、もう一度、見直してみて下さい。

それでは次回は、また全く違うテーマである、「ブランディング」について、書いていきたいと思います。
最近はツイッターが全盛で、ブログやSNSなども含めて、インターネットを駆使してブランディングを図ろうと考えておられる企業が多く出て来ましたよね。
けれども「真のブランディングとは、何なのか?」、「それは、何によってもたらされるのか?」という事を考えた場合に、必ずしもその本道に立脚していない人も、多く見受けられます。次回はその辺りの事について、考えていきましょう。

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