アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)/マメ科/ヌスビトハギ属
北米原産。1年草。1mほど。花期は7〜9月 1965年に大阪で帰化を確認。以来全国へ分布を広げる。

追記&訂正(2016.9.29):今まで「1940年に大阪で帰化を確認」としてきましたが、「1965年」の誤りです。お詫びして訂正いたします。

名前の由来は、在来種の「ヌスビトハギ」と比較すると荒れた土地でもよく繁殖するからだ。生育環境が悪くても対応できるのである。ヌスビトハギ属はマメ科に属しているが、そのマメ科の大きな特徴の一つに根粒菌との共生がある。自分の持っている栄養を分け与えるのと引き換えに、成長に不可欠な窒素を利用しやすい形で貰うことができる。そのため栄養分の乏しい土地でもマメ科は繁殖できる。すべてのマメ科の植物が根粒菌を持っているわけではないが、この共生のおかげで植物界においてマメ科は大成功をおさめている。「アレチヌスビトハギ」が根粒菌を持っているかどうかは確認できなかった。名前に「ハギ」とついているが秋の七草の「萩(ヤマハギ)」とはだいぶ違う。同じマメ科だが「萩」はハギ属の木である。
それにしても「ヌスビト=盗人」という名前がどうして付いたのか。牧野富太郎博士によれば「古来の盗人が足音を立てないように足裏の外側を地面につけて歩いた足跡からきている(訳)」と主張されている。ここで足跡と言っているのは種(豆)が入っている「さや」の形のことである。「さや」の形は図を見ていただきたい。実際に自分の足跡で確認をしてみたが、はっきり「そのとうり」とは言えない感じだ。盗みを本業としていないせいなのか、それとも足袋でも履かないと結果が出ないのかは判断できない。

もう一つの説を紹介する。「ヌスビト」とは「知らないうちに種を衣服にくっつける植物の名前に付ける接頭語である(訳)」という説だ。しかしこの説では「勝手に種をプレゼントされた」のに、その行為をもって「ヌスビト」呼ばわりする理由がわからない。しばらく考えた結果、ある仮説にたどりついたので聞いてほしい。ほとんどの場合において、種(くっつき虫)を付けられた者は直ぐには気づかない。少し経ってから衣類に点々とくっ付いている種に気づくのだ。いつ何処でつけられたのかも記憶に定かではない。これが転じて、泥棒が侵入したと気づくのは家の中に点々と残る足跡を見つけたからである。当然、泥棒(植物本体)はそこにはいない。残っているのは足跡(種)だけである。

この2つの説はいずれも弱点がある。足が濡れたままの状態で普通に歩くと跡が残る。その形は土踏まずが爪先と踵の間に入るので、2つに分かれているようだと表現してもいい。また牧野説のような体勢で歩くと爪先側と踵側では厚みが違うので、やはり2つを区別できる。「ヌスビトハギ」の種は半月が2つ連なった形なので、足跡と称してもいいだろう。ところが「アレチヌスビトハギ」の場合は図のように2〜5連と数が多い。つまり種の形を足跡に模しているのなら該当するのは「ヌスビトハギ」のように2連の種を持つものに限られる。なので「アレチヌスビトハギ」が残したものは足跡ではないという結論に達する。ただ種をプレゼントしてくれただけなのだ。もちろん、いらないけど。


イラスト:zassouneko

追記:2015年8月25日、昔の記述を読み返していて重大な誤りに気付いたので訂正した。最初の方の根粒菌の説明で「不可欠なリン」と書いてあるが、当然これは「不可欠な窒素」である。お詫びして訂正します。