2006年05月08日

■オウムのような「組織的犯罪集団」を潰すためには「共謀罪」を新設するしか無い!?■

このエントリーは「■「共謀罪」法案は廃案しか無い!■〜「越境性」を犯罪構成要件に加えようとする民主党「修正案」への疑問」と題したエントリーのコメント欄に投稿した私の文章を一部修正の上、再アップしたものです。




●オウム真理教(現・アーレフ)のような凶悪犯罪集団を潰すために「共謀罪」を新設するしか無いという主張があります。

そもそも、「オウム神仙の会」と自称していた設立当初、オウムは「変なおっさん(=麻原)が主宰する風変わりなヨガ・グループ」に過ぎませんでした。その「風変わりなヨガ・グループ」が何時から無差別大量殺人を是とする集団へと変質したのか−。「オウム神仙の会」から「オウム真理教」へと改名した後からだと指摘する人もいれば、いや坂本弁護士一家「拉致」事件以後だ等々、様々な説がありますが、「真実」は未だ定かではありません。

●ところで、この日本社会において「風変わりな集団」はオウムに限ったことではありません。そして、中には「ハルマゲドン」の実現等、怪しげな「理想」を仲間内で語り合っている集団も存在するでしょう。

では、それら「風変わりな集団」が須らくオウムのような凶悪犯罪を起こすのかと言えば、そうではありません。寧ろ大多数の「集団」は、例え世間から見れば胡散臭い、あるいは「危険」と思われる「理想」であっても、仲間内の「妄想」を語り合う(=「共謀」?)だけで自己完結しているケースが大半でしょう。

結局、「怪しげな集団」は須らく権力機関が盗聴・監視等を行って逐次動向を掴まなければべきという「思想」に行き着くのでは無いでしょうか。そうでもしなければ単なる「妄想」集団から「犯罪」集団へと変質する「共謀」過程を精緻に把握することは出来ないでしょうしね。

それは、ザミャーチンの「われら」が描くような監視社会では無いでしょうか。

●では、監視体制を敷いて徹底的に「共謀」しているか否かを聞き耳を立てなければ犯罪を抑止出来ないのか?私は必ずしもそうは思えません。

例えばオウムの場合、彼らが何時から凶悪犯罪肯定集団へと変質したかという過程は掴めなくても、その過程の中で彼らは社会で様々なトラブルを起こしている訳です。例えば、「お布施」や脱会を巡るトラブルなどは「オウム真理教」初期の時代にも起きています。そして何よりも坂本事件、神奈川県警が「もし」あの事件を真摯に捜査して事件の全容を解明していれば、サリン事件のような無差別殺人が起きる前に麻原らを「法の裁き」に掛けることだって叶っていたかもしれません。

オウムはある日突然「反社会的集団」として世に登場した訳ではありません。サリン事件の前にも「反社会的予兆」は幾らでもあったのです。そして、それを軽視していたのが神奈川県警などの捜査機関であり、そして私達の社会だったのです。

●さて、私は「共謀罪」法案について議論するにおいては、まずこの法案が提起されている政治的状況へのリアリズムへの認識を認識する必要があるのではないかと考えます。

現行の刑事法制では現状の犯罪状況には対応できない、オウムのような集団に対応するためにも「共謀罪」を制定すべきだと主張する人がいます。しかし、法務省も2003年の時点では法制審議会で「国連組織犯罪防止条約」の批准においては「共謀罪」など新たな犯罪類型を導入するための立法は必要無いとの意向を示しています。現行法でも犯罪には対応可能という姿勢ですね。

●では、何故政府が姿勢を変えたのか?

これは2004年以降に続発する市民運動等への不当弾圧という状況を抜きにして語れないでしょうね。公安警察は2004年春の立川自衛隊監視テント村の活動家の逮捕など、家宅侵入罪や公正証書等原本不実記載罪などの犯罪類型を用いて、かなり強硬な姿勢で反戦市民運動への弾圧を繰り返しています。

政府の方針転換はかような状況下で行われ、しかも数百もの犯罪類型に「共謀罪」の網を掛けようとしている訳です。「共謀罪」法案が政府・与党の言明通り単なる刑事犯罪対策のために提起されたと捉えるのはナイーブだと思いますし、かような政治的状況を的確に踏まえずに、観念論的に「共謀罪」を議論しても余り意味が無いのでは無いかと思います。

私は現下の情勢下で、権力機関に「共謀罪」という「武器」を与えることは、政府の政策に異を唱える市民の運動の萎縮に繋がるものだと考えるものです。

●私は組織的な凶悪犯罪への対策自体を否定するものではありません。しかしながら、「共謀罪」のような公安的「調査」手法を乱発させる可能性を内在している犯罪類型に安易に手を出す前に、まずは反社会的違法行為を地道に捜査・適宜摘発していく「捜査力」、そして私達の社会がかような行為を告発する人達の声に敏感になることこそ求められているのではないでしょうか。




(5月10日 0:30追記)

「自由と生存のメーデー06」における警察のデモ参加者弾圧に関する小倉利丸さんの分析を紹介します。小倉さんはメーデー弾圧を「共謀罪」法案成立後の状況を警察が先取りしたものでは無いかとみているようです。

『30日の「自由と生存のメーデー06」のデモを弾圧した警察当局は「共謀罪が成立したらデモを計画段階でつぶしてやれたのに」と思っていたに違いない。

この日のデモに対して動員された警察官の数も尋常ではないことから、警察側は、あらかじめ検挙を目的とした露骨な弾圧を意図していたとみることができる。

この弾圧は、次の三つの点で、たいへん大きな問題をはらんでいると思う。
第一に、。デモ出発にあたって、警察は、音楽を流すことを禁じた。これは、明らかに、憲法が保障している言論・表現の自由へのあからさまな侵害行為だ。たかが音楽がそんなに「恐い」のだろうか?
第二に、昨年12月の天皇誕生日に、おなじ渋谷区で行われた反天皇制運動連絡会の集会への右翼の抗議では、街宣車が大音量の音で会場周辺を練り歩いていたが、警察はこうした大音量を規制していない。私は、規制しろといいたいのではない。右翼に対しては寛容な警察というあからさまな不公正を身を持って実感したということである。
第三に、尋常ではない事後の弾圧だ。ガサ入れや逮捕者の交通権を認めない態度がますます露骨になっている。

警察の過剰反応には一体どのような「心理」が働いているのだろうか。警察は、今回の集会、デモの主催者を、ワールドピースナウなどの大手反戦運動とは一線を画す周辺的な存在とみなして、暴力的な弾圧を行っても大きな批判や反発はないとみなしているふしがある。他方で、渋谷の若者ウケするDJとサウンドシステムは、多くの若者の飛び入り参加を生み出した「実績」があるために、その可能性にビビッている側面もある。

立川テント村のビラ入れ弾圧や厚木基地監視活動への弾圧にもいえることなのだが、警察の対応は、アクティブで影響力のある周辺的な運動をつぶすことにかなり大きなエネルギーを割いている。運動内部の分断をはかり、徐々に弾圧の輪を狭めようというわけだから、現在の弾圧は、広範な大衆運動全体への弾圧なのだという視点をもたなければいけない。運動のスタイルや考え方が違っていたとしても、その違いは、警察の弾圧を正当化しないし、警察の弾圧に無言であっていいということでもない。警察の行動が不当であるかぎりは、はっきりと抗議の意思を示すことがたいへん大切なことなのだ。

令状無しの逮捕は、それだけの緊急性がなければ認められない例外的な警察権力の行使であるというのが建前であるが、デモ、ビラ入れなど人々の政治活動や市民運動、労働運動への警察の対応は、この建前をすっかり捨て去り、いつでも好き勝手に逮捕勾留できるかのようだ。何の緊急性もなくやみくもに逮捕勾留し、しかも勾留期間は勾留期限ぎりぎりまで引きのばされ、異常に長い。欧米の反戦デモなどで、警官隊と衝突して逮捕されても、即日釈放か、長くても翌日には解放される。逮捕も、警官隊との衝突という混乱を回避する緊急手段以外の意味はない。しかし、日本の場合の長期にわたる逮捕・勾留の意図は違うところにある。裁判もなく、長期の勾留を課す意図は、その結果として職を失うなどの損失を与えて、事実上の精神的物質的な苦痛を与えるある種の拷問であり、デモなどの反政府的な言論、表現行為そのものを抑圧しようという意図を持っている。
「二度とデモをするな」というわけだ。これほど明白な人権侵害がまかりとおっている国はめずらしい。これは、明確な思想信条の自由の侵害であるが、外形上はなんらの市民的自由の侵害もなされていないかのように装う詐術に警察は長けている。

現在、国会では共謀罪が審議中だ。今回のような弾圧体制が日常化しつつあるなかで、共謀罪が成立すれば、確実にデモを計画する段階で共謀罪で検挙される可能性がある。共謀罪容疑で検挙して、ガサ入れをし、勾留期限ぎりぎりまで勾留して釈放する。こうしたことが、600以上の犯罪を対象に、共謀だけで日常的に繰り返される確率は非常に高い。共謀罪が成立したら合法的なデモすらできないくなるのだ。』


以上、http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-May/006603.htmlより。

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コメント一欄

1. Posted by じゅん   2006年05月08日 09:10
TBありがとうございました。
 誰にもすぐ網がかかる。どうしてもそうした言い方に傾きがちなのですが、それはまず違う、それを注意しないとオオカミ少年・・と、なじられかねない、そんな事があるかと思います。
2. Posted by 華氏451度   2006年05月09日 01:27
TBありがとうございました。

> 現下の情勢下で、権力機関に「共謀罪」という「武器」を与えることは(以下略)

本当に言われる通りですね。武器、それも危険きわまりない武器になります。私達は丸腰なのですから、これ以上、国家に私達を脅し、縛る道具を与えるわけにはいきません。TB送らせていただきます(既に送ったかも知れないのですが……もし二重になったら申し訳ありません)。
3. Posted by 華氏451度   2006年05月09日 01:34
すみません、コメントの方が二重になりました(汗)。コメント、なぜかなかなかうまく入らず(TBもですが……)、同じこと書いたら二重に入りました。お手数ですがひとつ消してください。
4. Posted by まこと   2006年05月09日 08:39
じゅんさん、おはようございます。

確かに、"サラリーマンがただ単に飲み屋で一杯引っ掛けている時に吐いた放言も共謀罪の対象になるぞ〜"といった類の言説は聊か煽りすぎの感は否めませんよね。

「オオカミ少年」にならぬよう、私も自戒せねばなりませんね。

華氏451度さん、おはようございます。

日本は警察の摘発行為において「転び公妨」といった類のイカサマが横行している国。おまけに「代用監獄」なんてのもありますよね。

そんなお寒い状況で、更に「共謀罪」なんてのを導入したらどうなるか・・・私達は「想像力」をたくましくせねばならないと思いますね。
5. Posted by 共謀罪反対運動にオウム真理教の影   2006年05月09日 19:29
 共謀罪に対する反対運動が一部で起こっているようだが、世間一般においては、いまいち盛り上がりに欠けるといった感は否めない。

この法律は確かに潜在的危険性をはらんでいる。 しかし、この法律は通常の社会的活動を行っている一般人にとっては、ほとんど危険性のない法律だからだ。

だが、共謀罪成立に反対しなければならない連中がいる。 オウム真理教等の反社会的勢力である。 すでに隠れオウム信者のNや、革マル派の残党Tが共謀罪反対運動に参加していることは判明している。

http://www.rondan.co.jp/html/mail/0605/060508-47.html
6. Posted by まこと   2006年05月10日 12:58
「共謀罪反対運動にオウム真理教の影」さんへ。

根拠のない「"怪文書"的情報」を流すのは止めてください。
7. Posted by 愚樵   2006年05月11日 12:01
まことさん、はじめまして。
本記事を読ませ頂いて触発されたところがあり、私も共謀罪についてひとつ記事を書きました。TBさせていただいたので、よろしければご覧なってください。
これからもよろしくお願いします。
8. Posted by まこと   2006年05月12日 08:25
愚樵さん、はじめまして。

貴ブログ、拝読しました。
ここに来てブログ界でも「共謀罪反対!」の声が大きくなっていますが、この声をますます広めていきたいですよね。

ちなみに、「どのように書いたらよいかわからずに途中で放り出したりしつつ」(「愚樵空論」より)という点に関しては、私も五十歩百歩です(汗)。
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