2006年05月12日

市民弾圧のための道具としての「共謀罪」−米国での歴史と現状

そもそも「共謀罪」(コンスピラシー)とは英米法の刑罰概念であり、マスコミ等では「米国等では顕示行為(オーバート・アクト)が共謀罪の構成要件とされており、市民運動などへの濫用に歯止めが掛けられている」と解説されていますが、実際にはどうなのでしょうか?

レイバーネット日本のサイトに掲載されているコラム「アメリカにおける共謀罪と社会運動のお話」は、米国において共謀罪が市民弾圧に利用されてきた事実を私達に伝えています。以下、同コラムより一部引用します。


『共謀罪はそもそも労働組合つぶしの原点だった。まだ労働組合の法的権利が全く認められていなかった19世紀のアメリカで、労働者の初期の組織化をたたきつぶしたのが共謀罪だ(この時代は判例法)。1806年、フィラデルフィアの靴職工たちがクローズドショップの組合 (Philadelphia Journeymen Cordwainers) を作ったとき、賃金を人為的に引き上げて市場の競争原理を妨害しようとしたとして、組合リーダーたちは独房にぶち込まれた。まさに労働組合自体が共謀罪に問われていたわけだ。そして19世紀後半は独占禁止法の適用を論拠に、共謀罪は形を変えて労働運動を苦しめた。

20世紀には共謀罪の法制化が進む。アメリカの共謀罪の適用例を知ろうとネットサーフィンしてみたら、いろいろ見つかった。偽造通貨を手に入れた友人に一カ所でまとめて使わない方がいいよと示唆しただけの人への適用から、共産主義者への国家的弾圧まで、共謀罪に関するエピソードは実にバラエティに富んでいる。

中でも興味深かった話が、1968年シカゴセブン事件(またはシカゴエイト事件)だ。この年、シカゴの民主党大会に抗議しようと他州からやってきたヒッピー、ブラック・パンサー、ベトナム反戦組織、ラディカル学生組織(SDS)のメンバーらが、暴動の共謀容疑で逮捕された。無論、彼らは実際に暴動行為に及んだわけではない。この時期南部のレイシストたちは、公民権活動家が南部にやってきて黒人労働者を組織化したりすることにむちゃくちゃ苛立っていて、そうした活動家をターゲットにした共謀罪を法制化していた。

被告達(Chicago 7)の弁護人ウィリアム・カンスターは、別の州に行くときに彼らが抱いていた「思考」およびその実現に向けた言論行為(話し合ったり書いたり、あくまで暴動そのものではない)を取り締まる法律は違憲であると訴え、全米のラディカルな若者達のヒーローとなった。この裁判で被告の一人の若者が権威的な裁判官にドラッグの使用を勧めたのは、カウンターカルチャー界では英雄的なエピソードだ。

またこのケースは、共謀罪というものが国家による盗聴・通信傍受の濫用とセットでなければ成り立たないという事実を暴露している。このケースでも原告である政府は、「国家の安全」にかかわる事態だったから盗聴は合法だと主張した。国家は盗聴を実に簡単に正当化できるわけだ。しかし盗聴のターゲットを決める段階で権力者は政治的に中立ではない。したがって共謀罪も中立な運用はありえない。

多くの人々が抗議したこの裁判では、最終的に共謀罪は適用されなかった。暴動示唆という同様に問題のある有罪理由も上訴で覆され、最終的に法定侮辱罪のみが被告の一部およびカンスターに下された。1969年から72年まで争われたこのシカゴ共謀裁判 (Chicago Conspiracy Trial) は、不当な共謀罪適用に対する人々の勝利の記憶となった。』



このように、米国では共謀罪が労働運動や社会運動へ弾圧を加えるための格好の道具として機能してきた歴史があります。
そして、「9.11」以降、愛国者法の制定など治安強化が強まりつつある米国では、こうした「弾圧法としての共謀罪」の側面がますます強化されつつあります。以下は、05年10月16日付「東京新聞」記事からの引用です。


『先月二十六日、米国はニューヨーク州のビンガムトン地裁。「本件起訴の罪状のうち、共謀罪は適用されない」。判事のこの判断に被告、弁護側は沸いた。

連邦政府・司法当局から訴えられていたのは「カトリック労働者運動」の反戦活動家四人。四人はイラク戦争直前の二〇〇三年三月十七日、同州内の徴兵センターのロビーで壁や星条旗に自分たちの血液をまき、戦争反対を訴えた。

被告らは「劣化ウランなどにさらされる戦場とかけ離れたセンターの宣伝に対し、血によって戦争の現実を訴えたかった」と動機を語った。だが、司法当局は四人を不法侵入、器物損壊、さらにその双方の共謀罪で起訴していた。

米誌によると、反戦活動家に共謀罪が適用されたのはベトナム反戦運動以来。問題は共謀罪を除けば最高刑で懲役十八月だが、共謀罪が認められれば、懲役六年と量刑が一気にはね上がる点だった。最終判決は来年一月に言い渡されるが、今回の地裁の判断で重罪は免れた形だ。』(略)

『このほかにも、先月二十八日に起訴された共和党院内総務(辞任)のディレイ氏にも政治資金違法流用罪とその共謀罪を適用。〇一年に経営破たんした米エネルギー大手エンロン社の不正会計事件、人気歌手マイケル・ジャクソンさんの性的虐待事件、日本人医師に嫌疑が掛けられた遺伝子スパイ事件、アブグレイブ刑務所のイラク人虐待事件、さらにはクリントン前大統領の弾劾でも司法妨害の共謀罪が問われた。

先月、米国シカゴで司法の実情を視察した山下幸夫弁護士は「米国では日常的に行使されている。共謀罪をセットで適用させることで、刑を重くすることが狙いだ」と指摘する。

米国の共謀罪について、関東学院大法学部の足立昌勝教授(刑事法学)は「話し合っただけではなく、何らかの行為(顕示行為)が伴う場合、適用される。しかし、それは何らかの行為であって、犯罪行為そのものではない」と説明する。

米国では、この刑法の共謀罪とは別に、盗聴などもできるリコ(RICO)法という特別法の共謀罪もある。こちらは「組織犯罪にしか適用しない」と、日本の法務省が説明しているのと同様に、当初、マフィアの組織犯罪のみに、と導入された。

弁護士らでつくる米国の人権擁護団体「憲法上の権利センター」代表マイケル・ラトナー氏は問題点を次のように語る。

「RICO法の導入時点では、誰もが組織犯罪の摘発のみのためと考えていたが、実際には他の犯罪、人権運動の街頭行動などについても適用されていった」

なぜ、そうなったのか。この点をラトナー氏は「法律というものは中立な形で書かれているため、政府は導入時点でこう言ったと反論しても、できてしまえばなし崩しに使われてしまうのが実情だ」と説明する。』(略)

『米国の事情から日本が学ぶべきことは何か。前出の足立教授は「日本も米国と同じ状況になるだろう」と予測する。「RICO法はマフィア対策で導入されたが、実際に摘発されているのは公務員が圧倒的に多く、拡大解釈が横行している。日本でも政府関係者は、適用対象は暴力団などによる国際的な組織犯罪と答弁、運用の問題だから警察を信用してくれ、と言っているが、本当に信用できるのか、と言いたい」』



米国の現状は、共謀罪が一度導入されれば歯止めが利かなくなる可能性を内包している犯罪類型であることを私達に教えてくれているように思います。共謀罪は絶対反対、「共謀罪」法案は廃案に追い込むべきであると私は考えます。

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1. 『共謀罪』、国際的な犯罪に限定すべし  [ オギノフの肖像 ]   2006年05月12日 14:54
Kiel vi fartas? そうそう、最近のタイトルだけみてたら誤解されるかもしれないけど、私は『共謀罪』の成立そのものに反対の立場ですからね(笑) 私の意見を代弁してくれる政党がいない以上、「より近い」意見を応援せざるをえない心情を分かっていただきたい。 強行採決...
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