2006年11月21日

「北朝鮮が核放棄すれば朝鮮戦争の終了宣言を検討」米国ブッシュ大統領が公言

●『米国「北朝鮮核放棄なら朝鮮戦争終了宣言検討」』(韓国聯合ニュース−06年11月20日)

【ワシントン18日聯合】ブッシュ大統領が韓米首脳会談で「北朝鮮が核兵器と核に対する野望を放棄した場合は、安保協力とこれに応じた誘引策を提供する」と述べたことで、米ホワイトハウスは18日、米国が構想するその具体的リストの中に、停戦状態にある朝鮮戦争の正式終了宣言が含まれると明らかにした。スノー報道官が同日の定例会見で伝えた。また、経済協力や文化・教育などの分野でのつながりを強化することも含むとしている。

1950年に勃発した朝鮮戦争は1953年に停戦し、正式な平和協定が締結されないまま、事実上終結している。

これに先立ちブッシュ大統領は、ベトナム・ハノイで行った盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領との韓米首脳会談で、「われわれの意志は北朝鮮問題を平和的に解決すること」と述べ、北朝鮮に対する条件付きの誘引策提供構想の一端を明らかにしている。

一方、青瓦台(大統領府)の宋旻淳(ソン・ミンスン)統一外交安保政策室長は、首脳会談後「両首脳は北朝鮮に対する経済支援と安全保障、平和体制問題について、可能な措置について協議した」と説明している。経済的支援には、南北共同宣言でのエネルギー支援が含まれているほか、安全保障問題についても、米朝関係正常化、朝鮮半島平和体制の構築過程で当然提起される問題だとしている。しかし、いかなる内容であれ具体的に公開されることは時期尚早だと指摘し、6カ国協議の場で内容が討議されるとの見方を示している。


『朝鮮戦争の「終戦」宣言、与野党が歓迎の意向』(韓国聯合ニュース−06年11月20日)

【ソウル20日聯合】与野党は20日、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領とブッシュ米大統領が先の首脳会談で、北朝鮮が核兵器を破棄する場合には朝鮮半島の平和体制構築に向け、休戦状態となっている朝鮮戦争の終了を公式に宣言することを協議したことについて、一斉に歓迎する意向を示した。

与党開かれたウリ党は、「朝鮮戦争の終戦宣言が実現されれば、朝鮮半島に恒久的な平和体制を定着させるきっかけになる」と強調し、野党ハンナラ党も、朝鮮半島平和の新たな地平を開くことになると高く評価した。

ウリ党の金槿泰(キム・グンテ)議長は同日、国会で開かれた非常対策委員会の会議で、韓米首脳会談とともに北朝鮮も前向きな立場を示すことが期待されるが、朝鮮半島問題で韓国政府が影響力を失わないことが何よりも重要なだけに、韓国も南北対話に積極的に乗り出す必要があり、人道的支援を通じた北朝鮮支援事業を慎重かつ積極的に検討しなければならないと述べた。

金ハンギル院内代表も、朝鮮戦争が正式に終了すれば休戦協定を平和協定に変え、米朝の国交正常化が可能となり、朝鮮半島に本当の春をもたらす意味のある宣言になるはずと話した。

一方、ハンナラ党の姜在渉(カン・ジェソプ)代表は、最高委員会議で、朝鮮戦争の終了は朝鮮半島の恒久的平和定着に向け必要不可欠な措置だが、完全で検証可能な核兵器の撤廃が優先されなければならないと慎重な見方を示した。

民主党の柳鍾ピル(ユ・ジョンピル)報道官は、今回の発言を機に米国の対北朝鮮政策の実質的な変化と、これを通じて朝鮮半島の非核化実現につながることを期待するとし、民主労働党の朴用鎮(パク・ヨンジン)報道官は、何よりも大切なことは米国の実践意思だと指摘している。


これはビッグニュースですね。
北朝鮮から核問題での「大幅な譲歩」を引き出すための「リップサービス」かもしれませんけど、いずれにせよ、今後の行方に注視する必要がありそうです。

なお、このブッシュ発言について、韓国「中央日報」が興味深い解説をしています。

『韓国戦終了宣言検討「米国どうして取りあげたか」』(韓国中央日報−06.11.21)

(略)どうしてこの時点に取りあげたか=韓国戦公式終了宣言は米国が北朝鮮に与えることができる最上のインセンティブと言える。たとえ「北核放棄」という前堤があるが、米国が北朝鮮にビッグカードの可能性を示してくれたのだ。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)体制がこれまで最も神経を使ってきたのは米国の攻撃による体制崩壊だ。ブッシュ大統領と米行政府官僚らが「対北軍事措置を取る考えはない」と何度も明らかにしたが、金正日政権は米国の攻撃可能性に対し、不安をなくすことできなかった。

彼らが核実験をして立てた名分も米国の攻撃の可能性に備えるというものだった。米国が韓国戦公式終了というカードを見せたのは6カ国協議再開を控えて北朝鮮政権の不安を解消するという意図だ。この問題を解決しなくては北朝鮮とまともな交渉ができないとホワイトハウスは判断したものとみられる。名分上をもっては北朝鮮が要求して来た「海外口座凍結解除」に劣らない大きなカードを投げたわけだ。

これはブッシュ大統領の悩みを反映したものと見られる。イラク戦の泥沼に落ちて中間選挙で惨敗した共和党のブッシュとしてはレームダックを阻むためにも、何かを示さなければならない立場だ。イラクではまだ希望が見えないが、そんな中、北朝鮮がひとまず6カ国協議のテーブルにつくと言ったことは幸いに違いない。ブッシュ大統領が6カ国協議再開を控えている時点で北朝鮮がいちばん望むカードを見せてくれたのはこうした脈絡からだ。

昨年の6カ国協議で発表された「9.19共同声明」は第4項で6カ国は東北アジアの恒久的な平和と安定のために共同努力することを公約した。直接関連当事国は別途フォーラムで韓半島の永久的平和体制に関する交渉をすると明らかにしている。

米国は北朝鮮の核放棄が実現すればこれを具体的に実践に移すことができるという意思を今回に明確にしたのだ。今回の言及が金正日国防委員長が核を断念するように名分を与えたという見方も可能だ。またブッシュ行政府の対北圧迫に対する韓国内一部の否定的世論を考慮したという側面もある。

スノースポークスマンがこの提案を「韓国の人々にも適切な安堵感を提供する」と強調したことからこうした点がうかがえる。(略)



(*11/21 22:40追記)

ところで、「拉致事件」関連の掲示板をつい先程3ヶ所ほど覗いたのですが、このニュースの事は殆ど話題にもなっていなようです。日本人の「拉致事件」の捉え方が自国中心主義的であることを改めて感じさせられました。

日本人は「拉致」が南北朝鮮の分断状況の中で起きた「悲劇」であるという視点をもう少し持つべきでは無いかと言う気がしますね。この日本国は半世紀以上に渡る南北分断の形成過程に深く関与し、朝鮮戦争では事実上の日本人「戦死者」も出しているのですから。


・・・「いいじゃないか。そこには私の至純な歳月があったのだから。」

かつて日本共産党の党員として吹田事件を闘った在日朝鮮人の金時鐘氏の言葉です。
元々はクロポトキンの残したものですけどね。
「大阪で闘った朝鮮戦争」(西村秀樹著・岩波書店)という本にこの一句が載っていました。

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1. 「拉致」ー南北朝鮮の分断状況の中で起きた「悲劇」?  [ ものぐさ太郎の独り言 ]   2007年03月04日 22:31
拉致問題は依然として解決の糸口が見えてきませんが、あるブログで次のような記事を見かけました。記事自体は昨年11月のものです。「日本側にも非がある」と言っているようにも受け取れます。 (引用開始) >これはビッグニュースですね(引用者注:ブッシュ大統領がノムヒョ...

コメント一欄

1. Posted by DH   2006年11月22日 22:07
こんばんは。早速ですが、

>日本人の「拉致事件」の捉え方が自国中心主義的であることを改めて感じさせられました。

>日本人は「拉致」が南北朝鮮の分断状況の中で起きた「悲劇」であるという視点をもう少し持つべきでは無いかと言う気がしますね。この日本国は半世紀以上に渡る南北分断の形成過程に深く関与し、朝鮮戦争では事実上の日本人「戦死者」も出しているのですから。


「自国中心主義」の意味がよくわかりません。
「日本が朝鮮半島分断に関わったことと関連付けることなしに、(拉致問題で)北朝鮮を一方的に非難するのは公平さに欠ける」というような趣旨なのでしょうか。

「悲劇」と仰っていますが、誰にとっての「悲劇」なのでしょう。
人権の観点に立脚して考えるならば、「国家権力による重大な人権侵害=犯罪行為」ということになるのではありませんか。
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