2006年11月24日

なぜ、いま「愛国心」教育なのか−教育基本法「改悪」問題についての小話【アップデート版】

【11/23掲載】

教育基本法「改悪」問題についてさらに一丁。

「国民国家」という枠組みを相対化する議論に「お前は外国に行くときパスポートを使わないのか!」という類の反論をする人がいますね。確かに、私自身を含めパスポートに限らず社会保険制度などなど、「国家」が提供するサービスを利用しているのは事実で、「国家」を批判的に捉えるのは実は難しい面がありますね。好まぬと好まざるに限らず、「国家」無くして日常の生活を送るのは難しい状況に置かれているのですから。

で、「愛国心」教育云々を考える際には、「新自由主義」とも呼ばれる政策の中で国家が提供するセーフティネットが切り下げられ、またグローバリゼーションが進行してヒト・モノ・カネの流れがボーダレスになるなど、「国民」自身が「国家」の有難さを以前ほどには実感し難くある状況の中で、「愛国心」の重要性が強調されているという面を踏まえるべきだと思うんですね。

「国民国家」なる枠組みがなぜ世界中に広まったのかと言えば、端的に言えば人間が近代的な諸活動をするのに「便利」だったからなんでしょう。多くの人達が「国家」という枠組が「有難いもの」と思っている時には、わざわざ「愛国心」を強調せずとも人間は「国民」として統合されたがるという面があったと思うんですよね。

昨今「愛国心」教育が強調される背景には、以前ほどには「国家の有難み」を「国民」に与えることができない「国家」の政権層が、それでも「国家」という枠組みを維持するためにはどうすれば良いのか−という思考が働いている面があると思います。

すなわち、「国民」に「国家」の大切さを意識させるような「思想」を<外部注入>する必要性を保守的政治家層は感じているからこその教育基本法改定の動きなどだと思います。

みなさんは、いかがお考えになりますか?



【11/25追記】

なお、しばしば取り沙汰される「公徳心」だとか「公共の精神」だとかに関しては、

「公共空間を良くするためにみんなで頑張ろう」

という意識さえ個々人が持てばそれで十分OKだと思いますね、私は。

で、国民国家としての「日本国」という枠組も公共空間の構成要素の一つである以上、「日本国を良くするためにみんなで頑張ろう」という意識があれば良い。それが「愛国心」を持つということだと思いますね、敢えて「愛国心」という言葉を使うならば。

そもそも「近代国民国家」というのは歴史的には人為的産物に過ぎず、別に市井の庶民は太古の昔から「われわれは国のために尽くさなければならない」という意識を持っていたわけでは無かった。だから、家族や地域に絡め取られた庶民を「国民」として統合するという<目的>を果たすための道具として、国旗だの国歌だの「国民共有の歴史」だのという<手段>が動員されたという歴史がありました。

しかし、国旗だの国歌だの「国民共有の歴史」だのは飽くまで<手段>であり、<目的>ではありません。国民国家としての「日本国」という枠組に存在意義を与えるならば、それは「この国のために頑張ろう」と思えるような国家を創ることであり、政治が「日の丸や君が代に敬意を表せ」などと押し付けるのは<目的>と<手段>を履き違えていると言わざるを得ません。

もっとも、先述したように私は今や「国民国家」という枠組の存在意義自体が問われていると考えていますから(*注記)、「国家」「国民」「主権」という概念そのものを<相対的>に捉える視座が必要だと考えていますが。

(*注記)この件に関しては、地域などによっても異なるという側面はあります。例えば、今なお異民族などの国家権力によって不当な支配を受けている地域についてはそもそも「国家」自体が無いわけですから、まずは「国民」意識を共有した「国家」を創造するというプロセスが必要な場合もあるでしょう。例えば、「チベット」という「地域」もその一例であると私は考えています。

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20. 「愛国心」問答〜なぜ私は教育基本法の改定に「反対」するのか  [ ある国際人権派の雑食系ブログ。(仮) ]   2006年12月02日 03:09
先日、当ブログに『国家が国民に「愛国心」を涵養させるための教育を行うのはホンマに「当然なこと」なの?』と題した記事をアップしたところ、コメント欄にて複数の方達から反論・質問等のご意見を頂きました。このエントリでは当該コメント欄で私が行った返信投稿を整理し....
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