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ピーマンが安い季節である。

「そうだ、懐かしいあれを作ろう!」と急に思い立ち、先日こちらではお馴染みの細長ピーマン(イタリアンピーマンと呼ばれることも)買ってきた。

あれというのはこの細長ピーマンに白チーズ入りの詰め物をしてオーブン焼きしたもので、こちらに来て3年目、1994年の夏に友人を尋ねてブルガリアを訪れたときに何度もご馳走になった料理である。

白チーズというのは本当はスィレネと言って、フェタチーズに似たブルガリアのチーズのこと。

これと卵でフィリングを作るのだが、ちょっと手に入らないのでフェタチーズで代用した。

ここにヨーグルトがちょっと入ったような気がしたようなしないような…もう遥か昔のことで、残念ながら記憶があやふやである。

とにかく元祖ブルガリアヨーグルトの国だけあってこんな料理にもあんな料理にもヨーグルトが使うのね?とびっくりしたことだけはよく覚えているのだが…これには入らなかった気がする。

ヨーグルトと並んでもうひとつ、ブルガリア料理に欠かせないのがハーブのセボリー。

スペインでは全く馴染みのないハーブだが、これをフィリングにひとつまみ加えることで一気にブルガリアっぽさが増して、なんだか本当に懐かしい味に仕上がった。

ワインのお供に良し、ちょっと和風に醤油をたらっと垂らせばご飯のおかずにもなる。

作り方はざっと下記の通り。


❖ブルガリア風 細長ピーマンの白チーズ詰め❖


材料:

細長ピーマン・・・4〜5本
フェタチーズ・・・100g
卵・・・2個
セボリー(なければイタリアンパセリ)・・・少々
薄力粉・・・適宜
水 (トマトのすり卸しを加えてもよい)・・・1カップほど


作り方:

1. ピーマンはヘタを取り種を取り除く。残った種を洗い流し、しっかりと水を切っておく。
2. フェタチーズを卸し金で卸すか細かく砕くかして、溶き卵とハーブを加えてしっかりと混ぜ合わせる。
3. 2をピーマンの半分の高さまで流し入れ、切り口に薄力粉をまぶす。
4.水(+トマトのすり卸し)をはった 天板にフィリングを入れたピーマンを並べ、200℃に予熱したオーブンで途中ひっくり返しながら30分ほど焼いて出来上がり。少し冷ましてからいただく。

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懐かしさついでに…と言っては何だが、もう何年も開いていなかったアルバムを引っ張り出してきて、ブルガリア滞在中に撮った写真を探してみた。
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眺めているうちにいろいろと思い出すことも多く…

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ソフィア中心部の両替所から出てきた所をジプシーの一団に襲われたこともそのひとつである。

いきなりよってたかられ、訳も解らずポコポコ殴られたと思ったら、子供ジプシーに鞄に手をつっこまれて今替えたばかりのお金をむしり取られそうになったので「そうはさせるか!」と阻止しようとした瞬間、紙幣がぱあっと全部宙に舞い、そこら辺に居たジプシー一味と通行人を巻き込んですっかり狂乱の場に。

そんな中、通行人でいきなりヌンチャクを取り出してジプシー相手に戦い始めた人がいて、びっくり仰天、普通そんなもの持ち歩くか?

結果的には多くの心ある人たちの援護のおかげでジプシーたちは逃げ去り、お金も半分ぐらいは回収できてメデタシメデタシ、そしてこの親切なヌンチャク氏のことを同行者だった友人妹と何度も思い出しては大笑いしたのだった。

そういえば、旧共産党本部の建物の天辺(避雷針のようなもの先)についていた超巨大ルビーの赤い星が、体制崩壊と社会の激変のどさくさにまぎれていつの間にか失われてしまったという話もあった。

91年にロシアがヘリコプターでやってきて持ち去ったという説もあるようだが、真相は謎に包まれたままらしく…30㎏もある巨大ルビーに謎の紛失劇と、これ以上シュールな話は無いよねえと感心しましたっけ。

そしてなんといってもブルガリアの思い出といえばこちら、
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 段ボールの車 と呼ばれる TRABANT (トラバント)との出会いである。

はじめ「この車は段ボールで出来ててね…」と説明された時には「うそ!?でも普通に走ってるじゃん???」と全く信じられなかったが、これがまんざら嘘でも無いらしく、シャシー以外は段ボールとプラスチック(あるいは限りなくそれにちかい素材)で出来ているため事故で炎上すると15秒で燃え尽きて跡形も無くなってしまうとか。

恐ろしい…

こんな恐ろしいものは絶対ロシア製だろうと思ったら、旧東ドイツ製とのこと(生産は1991年をもって終了)

西側ドイツでメルセデスやフォルクスワーゲンの名車や高級車がバンバン生産されている間、東側はトラバントなる通称『走る段ボール』をせっせと作っていたんですね。

とはいえ旧体制下の東欧諸国では大変な人気車(ほかに選択肢がなかったからだろうが)だったため、ブルガリアでも申し込んでから10年待たなければ手に入らなかったというから二度びっくりだ。

さて私が訪れた頃のブルガリアといえば、共産主義体制が崩壊して数年が経っていたとはいえ西欧の国々とくらべて市場に出回る物資が極端に少なく、たとえば食料品店ではどの品を買うにも全くといっていいほど選択肢がなかった。

つまり「パンください」というと、バゲットなのか全粒粉入りなのか説明しなくてもそこにあるものを「はいどうぞ」と渡されて終わってしまうわけだ。

卵も牛乳もチーズも然り。

「いろいろなメーカーや種類の中から気に入ったものを選び出すといった楽しみが無いのはつまらない」と、西欧で暮らした経験のあるブルガリア人たちは文句たらたら、しかも常に品薄だからパンも卵も牛乳もほぼ毎日買い足しに行かなければならない。

でもそうやって選択の自由なしに購入したものが、どれも新鮮で良心的につくられたものの味がするというか、とにかく美味しかったし、丁寧に扱われて大切に食べられている感じがした。

あ、こういうのっていいなと思ったから「あれこれ選ぶ余地なんかないほうがいいんじゃない?逆に豊かというか、いろいろ迷って時間とか頭とかをムダに使わなくて済むし」と本気で言ったら、すっかり変人扱いされてしまった。

でもそういうものの考え方は、案外今でも持ち続けているかもしれない。

カルフールなどの超大型スーパーで時々、買おうとしているものの選択肢があまりにも多すぎて棚の前で呆然と立ち尽くしては、あのブルガリアの食品店での買い物のシーンを思い出して一人笑っている。


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