バンクーバー五輪の盛り上がりに乗じて、長野五輪の金メダリストの
清水宏保氏が「スポーツにもっと税金を使え」という旨のコラムを寄稿。
長年の競技人生の中で感じた疑問を、率直に記しているようではあるが、
スケート競技が好調な韓国を例に出しながら、「日本も金メダリストに
生涯保証を遣しやがれ」と、ほのめかしているように見えなくも無い。

 例えばお隣の韓国はスポーツ先進国になった。国威発揚という
 特殊な事情があるにせよ、お金の使い方が違う。日本には
 国立スポーツ科学センターがある。韓国にも同じような施設がある。
 韓国ではそこに選手が集められ、招集された時点で、日当が出る。
 日本では利用するのに料金が発生する。韓国ではもしメダルを取れば、
 ほぼ生涯が保証されるのに対し、日本の報奨金は多いとは言えない。

 スポーツ後進国 日本(朝日新聞)

「隣の芝生は青い」という事だろうか。日本のメダリストの報奨金が
少ないという事は前々から言われているのだが、無い袖は振れない。
もし中国や韓国のように、メダリストへの生涯保証を求めるのなら
日本のスポーツプログラムそのものを改変しなければならないだろう。

まず中国や韓国は、勝てる競技に勝てる人員だけを配置してくる。
韓国は12競技で46選手だが、冬季五輪の招致を目指している為、
これでも頑張っている方で、トリノ五輪は9競技しか派遣していない。
日本はバンクーバー五輪でアイスホッケー以外の全14競技94選手を
派遣しているが、そり競技で失格した馬鹿など無駄な人員も多い。

メダル数と選手数のおさらい
2010年バンクーバー         2008年北京
中国 金3銀1銅1 10競技94人  中国 金51銀21銅28 28競技639人
韓国 金5銀4銅1 12競技46人  韓国 金13銀10銅08 25競技267人
日本 金0銀1銅2 14競技94人  日本 金09銀06銅11 28競技332人

2006年トリノ              2004年アテネ
中国 金2銀4銅5 09競技76人  中国 金32銀17銅14 26競技407人
韓国 金6銀3銅2 09競技41人  韓国 金09銀12銅09 25競技264人
日本 金1銀0銅0 14競技110人  日本 金16銀09銅02 27競技312人

2002年ソルトレークシティ      2000年シドニー
中国 金2銀2銅4 07競技66人  中国 金28銀16銅15 28競技271人
韓国 金2銀2銅0 08競技48人  韓国 金08銀10銅10 26競技281人
日本 金0銀1銅1 14競技103人  日本 金05銀08銅05 28競技266人

こうして見ると、いかに日本選手団の効率が悪いか一目瞭然である。
無駄な選手、コーチ、役員が多すぎて報奨金が減るのは必然だ。
更にバンクーバー五輪では、選手数より役員数が上回っているわけだ。
何とアルペンスキーでは、2選手に対して6人の役員を派遣している。

 バンクーバー五輪では、JOCの役員、メンバーが大挙して
 現地入りしている。予算は限られている。そのため、選手を
 手塩にかけて育てたコーチや、トレーナーがはじき出され、
 選手に快適な環境を提供できていない。お金の使い方が逆だろう。


清水氏もこのようにキレているのだが、サッカーの代表チームに
クラブのコーチが帯同出来ないのと同じで、致し方ない面もある。
またJOCが各競技団体からの上納金で運営されているため、
競技団体推薦の役員派遣を、無下に断れない事情もあるようだ。

もちろん競技団体は競技者による登録料などで運営されている。
日本の場合、この市民競技者がネックとなり、アスリートの足を
引っ張っている面がある。花形競技のプロアスリートはともかく
アマチュアアスリートが練習場を独占することは難しいのである。

まず中国や韓国には「市民スポーツ」という概念自体が存在しない。
全てのスポーツ資本がアスリート育成の為に投入されていると
言って良い状態で、ドロップアウトした時点で競技者では無くなる。
日本は市民競技者と競技場を奪い合っているような状況である。

かつて日本は企業が練習場を整備して、アスリートを育成する
手段を取っていたが、合理化の波に追われて立ち行かなくなった。
その代替策として提唱されていたのが、Jリーグが提唱する
地域密着型総合スポーツクラブだったが、現状全く機能していない。

 「1人1ドルスポーツの予算をつければ、医療費が3.12ドル安くなる」
 という統計を見たことがある。ヨーロッパではスポーツ省のある
 国が多い。スポーツを文化としてとらえる発想が根付いているからだ。


清水氏も羨む地域密着型スポーツクラブとは、西欧諸国を手本とした
市民が気軽に参加可能な形態で、インフラ整備に膨大な資本が必要だ。
ドイツなどではスポーツを福祉と捉え、大量の税金が投入されている。
その財源は消費税によって賄われ、実質的に市民が財源を負担する。
日本でそのような形態が受け入れられるかといえば、甚だ疑問である。

Jリーグは顕著に西欧型のスポーツ形態を模倣しているので、
サポーターはクラブに税金が投入される事を恥と思わないわけだ。
むしろもっと負担しろという声も聞こえてくるのだが、それに伴う
自己負担の話になると、彼らは急に黙りこくってしまう。西欧型の
スポーツ形態を維持するには、西欧のように高率の消費税が必要だ。

 仕分けでは「総合型スポーツクラブ育成推進事業はいらない」など
 厳しい意見のほか、サッカーくじ(toto)の助成事業と重なる
 地域スポーツ振興事業の整理見直しを求める意見が出た。

 事業仕分け、スポーツ予算もバッサリ(朝日新聞)

昨年11月に行われた事業仕分けでも、民主党委員の仕分け人に
「総合型スポーツクラブは必要なし」との判断を下されてしまった。
少子高齢化などで福祉予算が幾らあっても足りない状況なのに
スポーツに現を抜かすという思想は、馬鹿に見られても仕方が無い。

清水宏保氏も、中国・韓国のようなアスリート選抜方式の旧東欧型を
羨んだと思ったら、即座に西欧型を羨むというダブルスタンダード。
良いとこ取りが出来るわけがないのに、とんだご都合主義である。
日本のスポーツ界に出来る事は、薄く広く満遍なく競技者を育成する
現行方式から、勝てる競技のみに力を注ぐ「事業仕分け」のみである。

お先真っ暗のサッカー競技は、真っ先に仕分け対象になるべきだろう。
とりわけ拡張を続けるJリーグは、各地方自治体のスポーツ予算を
シロアリのように食い潰しているわけだ。サッカーの競技人口は
国内で指折りだが、勝てないスポーツは競技者のオナニーでしかない。

しかしサッカー協会は、集金組織としては非常に有能な団体である。
多数の競技者による登録料に加え、日本代表事業による収入は
他のマイナー競技団体には到底真似の出来ない領域であろう。
さらにサッカーくじによる助成金の分配で、大きな顔が出来る。

JOCの理事には、サッカー協会は異例の2枠が与えられており
いかにJOCに多額の上納金を納入されているか説明に難くない。
当面はこうした政治力を発揮して、日本のスポーツ界の中で
サッカーの地位は守られていくだろう。だが実力が伴わなければ
ファンも離れていくだろうし、政治力も次第に低下すると思われる。

もちろんマイナー競技団体も、口を開けてエサを待ってはいけない。
情勢の厳しい冬季競技は、ショートトラックやカーリングなどの
公営ギャンブル化で、インフラ確保やレベルの向上に努めるべきだ。
サッカーくじによって下地は確立されたので、後は動くのみである。
清水氏を筆頭とした競技者たちも、置かれた環境に文句を言うより、
自らの手で稼ぎ出す方法を考えて、実行してみてはいかがだろう。