バンクーバー五輪の日本選手団は、金メダルなしという結果に終わった。
かつてお家芸だったジャンプや複合がルール改正で詰んでしまったので
致し方ない面もあるんだが、それにしても国内のウィンタースポーツの
置かれている環境は困窮を極めており、国による支援が必要とのこと。

 4年後のソチ五輪を見据え「スポーツの重要性を国が分かってくれるかに
 かかっている。国の力を借りて競技団体と連携を図ることが競技力向上に
 繋がっていく。今回のメダルを上回る活躍をしないといけない」と話した。

 メダル5個に「頑張った」 橋本団長が大会を総括(中国新聞)

こう言ったのはバンクーバー五輪日本選手団の橋本聖子団長である。
夏冬合わせて7回もの五輪出場は、女子としては世界最多らしい。
今回は国母和宏の謝罪会見に同席したりで、選手よりも目立っていた。
何だかんだで昔から目立つのが得意で、よくテレビで扱われている。

獲得したメダルはアルベールビル冬季大会の銅メダル1個なんだが、
札幌五輪の金メダリスト、笠谷幸生を副団長に差し置いての団長就任。
また知名度を生かして、現役中に自民比例区から参議院議員になった。
おそらく歴代でも日本一要領のいいアマチュア・アスリートだろう。

皆が皆、橋本聖子のように頭脳的なアスリートなら問題はないのだが、
大概は頭の中まで筋肉が詰まっている脳筋なので無理な話である。
とりわけウインタースポーツは年の1/4程度しか活動できないので
アピールポイントが限られている。従って手厚い支援が必要なのだ。

 田畑真紀選手(35)、穂積雅子選手(23)が所属する富山市の
 「ダイチ」は、社員約40人の中小企業。厳しい経営環境の中、
 社長の田中洋一郎さん(46)らが自らの給与を削って
 2人を支援してきた。田中さんは「こんな小さな会社でも
 メダリストを送り出せた。誇りに思う」と目を潤ませた。
 銀メダル田畑、穂積の所属企業 社長が涙(毎日新聞)

 同病院は、昨春信州大を卒業し、進路が未定だった小平を
 一般職員として雇い、長期出張扱いで競技に打ち込める
 環境を整えた。相沢孝夫院長は「地元の選手が困っていると
 聞いて支援を決めた。これほど活躍するとは」と驚いていた。

 進路未定の小平奈緒に救いの手をのべたのは病院だった(スポニチ)

スピードスケート女子団体追い抜きで銀メダルを獲得した3選手も
タニマチの皆さんに支えられて、競技を継続することが出来た模様。
はっきり言って採算度外視というか、馬主の感覚や道楽というか、
雇用主は選手に対して、見返りは求めていなかったように感じる。

対して税金を使って強化するという事になったら、当然何かしらの
責任問題が発生するわけで、五輪で惨敗して帰ってきた選手には
罵詈雑言を浴びせられるような状況を覚悟して貰わないといけない。
果たして橋本聖子団長は腹を据えて支援を要求しているのだろうか。

 バンクーバー冬季五輪で極端な成績不振となったロシアの
 ムトコ・スポーツ観光青年相は二日、批判噴出を受けて
 辞任する意向を表明した。インタファクス通信が伝えた。
 ムトコ氏は同日未明、バンクーバーからロシアに帰国。
 到着した空港で記者団に「私は穏やかに辞める」と明言した。

 ロシアスポーツ相が辞意 五輪不振、批判に反論も(東京新聞)

金メダル3個という旧ソ連時代を含めても最低の成績に終わった
ロシアはスポーツ担当相が更迭される騒動に発展してしまった。
片や金メダルゼロに終わった日本では、誰かが引責辞任をした
というニュースは聞こえて来ない。それどころか橋本団長などは
不振の要因を国の支援不足に摩り替えて責任逃れをしている。

税金を投入するのなら、結果によって生じた責任を誰かが被るような
仕組みを作らないといけない。だが現実は五輪で惨敗してもJOCの
竹田会長の地位が追われることもないし、サッカーW杯で惨敗しても
日本協会の川淵会長は批判を物ともせず、厚顔無恥に続投したわけだ。

 鈴木寛文部科学副大臣は4日の記者会見で、政権交代後の
 スポーツ行政の方向性を示す「スポーツ立国戦略」を策定する
 方針を明らかにした。今後、スポーツ選手や有識者からの
 ヒアリングなどを実施し、夏ごろにまとめたい考え。
 戦略には、スポーツ振興での国の役割を定めた「スポーツ基本法」
 の在り方や、関係省庁の担当部局を一元化した「スポーツ庁」の
 設置などが盛り込まれる見通し。鈴木氏は「日本をスポーツ立国に
 するための施策の全体像を決めたい」と述べた。

 「スポーツ庁」設置など「スポーツ立国戦略」を策定へ(MSN産経)

そんな中で民主党政権がスポーツ庁の設置を検討しているという。
おそらく多くの競技団体や、スポーツ関係の国会議員の要望から
生まれた議案だろうが、彼らに「責任」の2文字が頭にあるだろうか。
悪戯に税金を食いつぶして、利権を得たいだけではないのか。

無闇に税金を投じても、払う側が一方的にリスクを背負い込むことに
なるわけで、それはJリーグへの散財などによって既に証明されている。
「健康増進」「地域の活性化」「感動を与えられる」といった抽象的な
謳い文句に騙されて、多くの自治体が税金を食い潰されてきた。

またスポーツは究極の成果主義であるが故に、国が関わる事によって
デメリットも発生するわけだ。五輪の獲得メダル数によって閣僚が
辞任し、また政権が揺らぐといった事態は先進国として好ましくない。
スポーツはあくまで娯楽であるべきで、生活に関わるものではない。

そもそもアスリートは、趣味が高じて競技生活を続けているわけだ。
スポーツで一流を目指す事も、漫画家や歌手の一流を目指す事と
大差は無いわけで、その努力を国が担保する義理はないだろう。
誰であろうと夢を追うには、リスクを背負わねばならないのである。