2008年10月17日

うーむ…

………、

ええと、
何から話せばいいものやら。

先日、
仕事がお休みの日にネカフェでサーフィンしておりましたら、自分のブログがまだ残っている(≒遺っている)のを発見しまして、
驚愕と絶望と不安と焦り
に駆られました。

何とかその場で削除しようにも、ログインに必要なパスワードは勿論、IDまでもすっかり忘れており、どうにもならない状況でした。
ユーザーサポートセンターに連絡し、程なくIDは判明。しかしパスワードは依然思い出せず、再発行しようにも当時のメルアド(登録時のメルアドらしい)が不明で再発行できず…。
郵便番号は多分広島時代ので合ってると思うんだけどなぁ…。

八方塞がりです。
この生き恥ブログが一生ネット世界に遺り続けるのかと思うと、凹みます(記事を書いたこと自体は後悔してないけど、辞めた後も残り続けてるのが不快です)。

何とかして消滅させたいので、もし詳しい方などおられましたら、ご助力願います。


zendoukaihujioka at 09:45|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年02月28日

さいならっ!!

e76bda2b.jpgえー、ラストです。
…うーん、とは言ってもですな、ブログの代わりにmixiで続いていくので、個人的にはなんかラストって気がしません。

えーっと、たぶん一年三ヶ月にわたってやってきました。
書いて良かったこと。
書かない方が良かったこと。
書いてて自分で笑ってたこと。
衝動的に書いてしまったこと。
泣きそうになりながら書いたこと。
書き終えてから泣いたこと。
何度も何度も書き直したこと。

…振り返るとキリがないッス。でも本当に、このブログをやってきて良かったって思うのは、間違いないです。
ざっと分類してみると…
〈初期〉『頑張り』期
頑張って書くネタを考えてた時期。いつもブログのことばかり考えてた。口調も普通で、暴走もナシ。すごく無難な感じ。
〈中期〉『暴走』期
いい加減普通の更新が飽きてきた+公務員試験の度重なるストレスで、やや暴走気味の記事が目立つ。更新を休むこともしばしば。口調は『オイラ』を多用。
〈後期〉『達観』期
ブログそのものに慣れてきて、気楽で自由な更新を順調に継続。『ゴン太』や『軍&大』など、読者を完全に置き去りにしたコーナーに心血を注ぎ、完全に自己満足の世界へ(故に反応ゼロでも問題なし)。口調は会話と同じ『俺』が現れ始める。

…かな。
あぁ…、初期のおとなしい感じや、中期の暴走っぷりが懐かしいのう。
たぶん、良くも悪くも中期の辺りが一番バランス取れてたんだろうけど、自分では後期…つまり今が一番好きです。
気い遣わなくていいし、気楽で自由でサイコーo(^-^)o(…ただ、あまりに自分勝手に突き進んでしまった結果、他のブログにコメントを書かなくなったのは反省(>_<)
無理してコメント書くのもおかしな話だけど、もうちょっと他のブログもチェックすべきだったかな〜←見てもなかったから…(-.-;)
反省反省m(_ _)m)
mixiでもこのノリで行くんで、宜しくですーm(_ _)m
ゴン太第二章や軍&大もやりたいし、小説も一年に一本くらいは書きたいなぁ(でも小説は書くのがしんどいからな〜。うーん。
…というか、やっぱ小説は縦書きだろ!!)。
…いや、もちろん最初の半年間はそんな余力ないので、やりませんが(つーかやれません)。


頻繁にコメントをくださった方。たまにコメントをくださった方。
頻繁に覗いてくださった方。たまに覗いてくださった方。
みんなみんな、今までありがとうございましたーっm(_ _)mホンマに感謝しております。
自分勝手に突き進んできたこのブログだけど、やっぱり沢山の人に背中を押されてるから、好き放題進めるわけで。
今度は俺の方が、誰かの背中を押せたらいいかなーとか思ってます。
そのためには、自分自身がもっと成長しないとなー。

とりあえず、警察学校で己の心身を鍛えてきます。


ほなっ、

さいならっ(^-^)/


zendoukaihujioka at 13:15|PermalinkComments(11)TrackBack(0)

2007年02月27日

引っ越しラスト&松尾

37cfe440.jpg引っ越しラストスパートです。
掃除してみてわかったこと
_兇僚擦鵑任寝箸蓮△海鵑覆帽かったんだなってこと
(親にも言われたけど)やっぱこまめに掃除しなきゃダメだなってこと
もし嫁さんをもらうなら、キレイ好きな人じゃないと酷いことになるなってこと(別に嫁さんを家政婦のように思ってるわけじゃなく、俺が酷いから、嫁さんも酷いともうどうしようもない事態になるなってだけの話。誤解のなきよう)

…そういえば、この前友人と『嫁さん』について少し語ったんですが、彼は結婚したら嫁さんに財布の紐を預けることに難色を示していました。
俺は…すんなり預けるかも。確かに少し心配な気もするけど、そういう点はしっかりしている嫁さんがいいなー。


…はい、イタい妄想はこの辺にしておいて、明日はいよいよ引っ越し!!そしてブログもラスト!!
まぁ、普通に終わりますよ。もうやりたいことはあらかた全部やったし。

では、今日は早めに寝ますm(_ _)m


追記:松尾教授がゴミの不法投棄で逮捕されました。
松尾って、たぶん知ってる教授です。
びっくりやわ〜。


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2007年02月26日

a short-short(LAST?)

47edc9c5.jpg 愃埜紊侶慮邸
先週の土曜、自分にとって(おそらく)最後の稽古がありました。
その日はちょうど支部長や中村指導員・原先輩たちが来て下さり、寝技などを中心にみっちりと教えていただきました。
お三方、後ればせながら、本当にありがとうございましたm(_ _)m

稽古の後で、かねてから準備していた救急セット(テーピングやコールドスプレー・湿布などを詰め込んだ)を後輩たちにプレゼントしました。喜んでもらえたようで、ホンマに良かった良かったo(^-^)o
これで、次に彼らに会うのは、三月の追い出しコンパです。それが済めば、最低半年はまともに会えなくなります。
いつも当たり前のように集まって、性別も年齢も関係なく気さくに話して、一生懸命稽古に打ち込む…ただそれだけだったけど、それがどれだけ楽しい日々であったかを、今更ながらに痛感してます。
いや〜、寂しいな〜、くそ〜。

…くそ〜。


◆悒▲疋譽皇◆
大学生から社会人へとなるにあたって、ずっとほったらかしていたことを整理しようと思ってます。
それは、アドレス帳の整理!
自分はガスや水道局・区役所など、なんでもアドレス帳に登録してしまい、しかも旧友やもう関わりのない人のアドレスまで残しているので、登録件数がなんかもう凄いことになってます。
まぁ高校時代の剣道部のアドレスまであるのは、やりすぎだよなぁ…(絶対アドレス変更してるだろうし)。
それでピコピコ消しているんですが、なかなかこれが消しづらい(>_<)
しかも思い切って消していくと…なんだか、今の自分の交友関係の狭さを思い知らされます…_| ̄|○

えぇいっ!!量より質やっ!!質なら負けん!!負けんぞーっ!!

…それはそうと、いい加減、もう機種変更しないとなぁ。赤外線通信ができないのは、やっぱ何かと不便です。
学割がきかなくなるので、auのままでいいのか迷ってます。
うーむ…(-.-;)

『車』
なんと、近いうちに車を買うことになりそうです。
四月から警察学校に入ってしまうので乗れなくなるし、廃車にする人すらいるというのに、この時期に買うなんて暴挙なのでは…。
→はい、俺も同感です。
ただ、なぜか親が「四月になったら買えなく&乗れなくなるんだから、三月のうちに買って乗っておかないと、ペーパーのままじゃいかんやろ」と言ってまして、色々説得したんですが、なんか押し切られました。
そりゃ車が手に入るのは嬉しいけど…後悔しそうな気がするなぁ。
ちなみに、買うのは中古で予算は70〜80万程度の予定。
俺は色がピンクとかじゃなくて、MDが聴ければもう何も言いません。

ぁ悵み』
高校時代の友人である上井くんと、飲んできました。とはいっても、基本的にはトークに終始していました。
会うこと自体が五年ぶり位なので、いくら話してもネタが尽きることはありませんでした。上井くんも変わってなくて、妙に嬉しかったな〜。
焼き肉のあとカラオケに行ったんですが、久々に歌ったので、すぐに喉が枯れてしまった…(>_<)
対して上井くんは凄い声量。おまけにギターまでひけるということで、羨ましい限りです。
俺はリコーダーも怪しいなぁ…。
上井くんに出会えたのは、mixiのおかげ。mixiに感謝!!感謝!!です。
海外に留学している瀬尾くんや、広瀬(立命館)、新ちゃん(東大)…まだ登録したい友人はたくさんいるので、三月からは積極的に交流していきたいです。たぶん、探せばまだいるかなー(姉貴はどうすっかなー)。
しっかし、みんなすげーなぁー(遠い目)。

ぼかぁ地味〜に愛媛で頑張ろ〜。


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2007年02月25日

ある小説


〜5〜

「ここでいい。止めてくれ」
「………えっ?」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
「止めてくれって…まだあたしの家じゃないんだけど」
「構わない。どのみち、あそこは俺の家じゃない」人が変わったかのような冷たい言葉。まるで初めて会ったときのように、突き放した態度。
「…………」
運転しながらでは話ができない。あたしはとりあえず、道路脇に車を止めた。
「ねぇ、待って。せめてもう少しゆっくりしたって…あたし、まだあなたに何もお礼してないし」必死に言葉を並べる。だが気持ちの方が先走ってしまい、うまく伝えられない。
「そ、それにあなたのスーツだって家に置きっぱなしじゃない」
「それについては、問題ない」
「え…どういうー」
「とにかく、これ以上施しを受けるつもりはない。道筋を変えたのはあくまで君自身だ。君の言ったように、俺は背中を押したにすぎない」
「でも、あたしはあなたのおかげで変われたの!だから…」
「………」ナナシが無言でドアを開けようとする。
「待って!!」思わず彼の手を掴む。そのときー
(……えっ)
そこに、電流のような痺れは殆ど感じられなくなっていた。
「どうして…」
ナナシはあたしの様子を見て観念したのか、息をついて席に戻った。
「…前に説明したと思うが、右手の電流のような痺れは、俺と君の関係性を示す証だ。同時に、関係性の強弱を測るメーターでもある」
「…えっと、ごめん。よくわからない」
「つまり、道筋を変える出来事を起こせば、関係性は消える。つまりその証である痺れもなくなる。道筋を変えるまでいかなくとも、それに関わる事柄や言動に触れると、痺れが弱まる。
今回は調べるまでもなかったが、普通は痺れを確認しながら、道筋を変える行動が何かを探っていく方法をとる」
なるほど、つまり探知機のような役目を果たしているのか。
「…じゃあ、心置きなく握れるわね」あたしはしっかりとナナシの右手を握った。これにはさすがに驚いたのか、彼は呆気にとられていた。
「…ねぇ、お願い。関係性がなくなったって、あたしはあなたに恩があるの。…あっ、それに強制力があるじゃない!だから私たち…」
「…まだ、」ナナシが冷たい声で言った。「まだ、言ってなかったな。強制力は関係性を保持するためだけに働くんじゃない。対象の道筋が変われば、今度は逆に関係性を絶ち切るために、強制力が働くことになる」
「そんな…!?」
それは、まるで被告に判決文を読み上げる裁判長のような、どこまでも落ち着いた口調だった。
「強制力の威力は言うまでもない。何をしても、必ず俺と君の関係は断ち切られ、二度と交わることはない。そういうルールなんだ」
そんな…そんなことって…
認めたくない事実に、受け入れたくない現実に、視界が潤みそうになる。
ダメだ。ここで泣いちゃダメだ。こいつが言ったじゃないか。泣けるときは泣いた方がいい。泣かないと決めたときに、泣かずにすむようにって。
ここでは泣きたくない。だから泣いちゃダメなんだ。
泣くのは、後でいい。
唇をぐっと噛み、あたしは涙を堪えた。
「すまない。事前に言うべきことだったのかもしれないが、対象と浅い関係のままでは、道筋を変える出来事に関われないと思って…」目を伏せ、すまなそうに言い訳を述べるナナシ。
もう、あなたが悪いわけじゃないのに…
「…しかし、君のケースは出会ってから道筋を変えるまでが非常にスムーズだった。これは君が俺を早くに信用してくれたおかげだ。とても感謝している。それに君自身も…」
ああ、もうっ。
「ナナシっ!」
何だ?と顔を上げたナナシに、あたしは口づけをした。
伝えきれない。抑えきれない。そんな精一杯の想いを込めて。
ナナシは、あたしの口づけに応じてくれた。彼らしい、少し乾いた唇だった。
それは数秒のことだったけど、あたしはこのキスを生涯忘れないと誓った。
強制力なんて知らない。あたしは忘れない。絶対忘れないのだ。

ぶっきらぼうで、
ヨレヨレのスーツで、
ボサボサの髪で、
大食らいで、
変なところがあって、
名無しで。
…でも、不思議と憎めない変なヤツ。
これまでコイツと関わってきた人たち全てが、ナナシのことを忘れてしまっても、
あたしだけは覚えていよう。覚えていたい。

きっとそれが、彼にできる唯一の恩返しになると思うから。

「……ふう」
あたしは衝動的にキスをしてしまったことに、年がいもなく真っ赤になってしまった。
慌てて財布から紙幣を全て抜き取り、ナナシに押し付けた。
「ホラ、これで何か食べて!」
「しかし…」
「ダメ。受け取り拒否はできません。分かったら大人しく受け取りなさい」
あたしの強引さにナナシは複雑な表情をしていたが、やがて「…ああ」と言って紙幣を右ポケットにねじ込んだ。
車のドアを開け、彼がこちらを振り向いた。
「…では、世話になった。さー」
「だめっっ!!」
キョトンとするナナシ。
「…『さよなら』なんて言わせないから。『またな』とか、『see you again』なら言わせてあげる」
「………」渋面で抗議するナナシ。
「他は却下です。言おうとしても大声出して妨害するからそのつもりで」
えっへんと胸を張ったあたしの態度に、彼は困ったような、それでいてどこか嬉しそうな表情を見せた。
「…まったく、最後まで強情な女だな」
あたしは屈託のない笑みを浮かべて言った。
「そうよ。今頃気づいた?」
「…ふぅ、これだから女は…」
「なんですって!?」がぁーと襲いかかる振りをするあたし。
「じゃあ、世話になった。
…“またな”」
「うんっ!」
ナナシはあたしに背を向けると、歩いていった。
その背中が振り返ることをあたしは願ったけど、その前にどうやら自分の方が限界みたいだった。視界は潤み、あいつの姿もよく見えない。
(…もう、いいよね…)
この溢れ出る涙は、あたしだけのものじゃない。泣けないナナシのぶんまで、あたしが泣いてあげるんだ。
肩を震わせ、嗚咽を漏らし、全力で泣いてあげるんだ…。



ナナシは黙々と歩いていたが、ふいに立ち止まった。
振り返ると、視線の彼方に彼女の車が見える。
どうやら“お別れ”の時が来たらしい。
そして自らの右手を、悲しげな表情でじっと見た。

ーーーープツッーーーー

右手から、テレビを切ったときのような音がした…。


「あ…れ…」
あたしが目を覚ましたとき、なぜか車の中だった。何でこんなところにいるのだろう。
…ダメだ。思い出せない。疲れて仮眠でもしていたのだろうか。
時計を見ると、なんと夜中だった。
外を見ると、雨が降っている。豪雨ではないが、どこか静かで悲しい雨だった。
ミラーを見たときに、ふと気づいた。
(あたし…泣いてた…?)
涙の跡が、確かにあった。目も赤い。
もちろん理由は分からない。悪い夢でも見ていたのだろうか。
特に理由もなく、助手席を見た。誰かがいたような気がしたが、まぁ気のせいだろう。あたしにはそんな相手なんかいないし、なにより座席のシートも冷たい。
「…よしっ!早く帰って寝よっ」
明日からは新たに企画を練って、部長に提出するのだ。案は湯水のように沸いてくるし、なぜかやる気に満ちている。これなら、すぐにでも企画部に戻れそうな気がした。
あたしは自信に満ちた表情で、車のエンジンをかけた…。


ただ一点。
夏実の唇に残る、ほんの僅かな感触…それだけは、不思議と消えていなかった。
それは夏実の想いが打ち勝った結果なのか、それとも誰かの気まぐれなのか、
真相を知るものは、誰もいない…



視線の先に止まっていた車が勢いよく走り去っていく光景を、ナナシは黙って眺めていた。
髪はボサボサ、着ているダークスーツはヨレヨレ、無精ひげも伸びており、おまけにずぶ濡れだった。
右ポケットを探ってみる。何もない。
唇に触れてみる。やはり何の余韻もない。
表情も、何ら変わりなく平然としている。自らの心でさえも、さざ波一つ立っていない。
…そのはずだ。
彼女との関係は終わった。自分は“次”に行くだけだ。
だが、そう自分に言い聞かせるたび、なぜか彼女の面影が脳裏に蘇った。
「…これだから女は…」忌々しげにそう呟いた。
いっそ彼女のように、自分も泣くことができたらいいのに。せめて、悔しげな表情で自らの拳を握りしめるくらいのことができたらいいのに。
そうすれば、少しは彼女の気持ちに応えられるのに…。

やがてナナシは煙草を取り出し、降りしきる雨にもかまわず、強引にジッポで火をつけた。
微かに震える心を鎮めるかのように、深く吸った。
そして、車の走り去っていった方向をゆっくりと見やると、幾分かの想いを込めて、静かに告げた…。

「“さよなら”…夏実」

男は煙草を投げ捨て、反対方向へと歩き始めた。
彼が振り返ることは、もう二度となかった………。



〜完〜


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ある小説


〜4〜

ナナシはあたしをまっすぐ見据えて言った。
「男とはきっちりケジメをつけてないんだな」
「え…うん。逃げるようにいなくなったから」
「…俺なら、男の居場所が分かる」その瞳は、自信に満ちていた。とてもハッタリには見えない。
…さてはまた勘か。思うんだけど、ナナシの一番凄いところは、関係性だの強制力だのなんてものじゃなくて、この勘なんじゃないだろうか。
案外、こっちが本当の“力”だったりして…。
「どうする?決めるのは夏実だ」
「…わかった。行くわ。けど待って、準備もあるし」
「準備?何か凶器でも所持していくのか?」真顔で怖いことを言うナナシ。
「なわけないでしょ。化粧直しとかしたいだけ。駐車場に赤のオプティがあるから、そこで待ってて」
ナナシは頷くと、一足先に部屋を出ていった。

準備を終え下に降りると、ナナシがキョロキョロ辺りを見回していた。
「大体の位置はつかめた?」冗談半分で聞いてみる。
「うむ。幸いそれほど遠くには住んでいないようだ。小一時間もあればたどり着くだろう」
…マジっすか。
「あなた、本当に万能人間ね。人間なのかどうかも怪しいけど」素直な感想を述べる。
「何を言う。俺はれっきとした人間だぞ。それに万能でもない。強制力の力も、誰かと関係性を持たなければ使えないからな」
「やっぱりそうなのね。…ああ、じゃああのときの無銭飲食も、あたしといたからできたってこと?だからファミレスに行くとき嬉しそうだったの?」
「うむ。食べれるときに食べておかねばな。タッパーなどがあれば、積めてお持ち帰りができたのだが…」拳を握りしめ、心底悔しそうなナナシ。
タッパーって…。
ああもう、毎度ながら調子が狂う。

あたしは運転しながら、ナナシの「たぶん右」「おそらく左」などといった、およそ適当としか思えない指示に従って、黙々と車を走らせた。自分でもばかげていると思うが、これも彼の力を目の当たりにしたからできることだ。
「…会ってどうするの?」ふと聞いてみた。
「俺はどうもしない。行動を起こすのは、あくまで君自身だ」
「……そう」
クルッとナナシがこちらを振り向いた。「…驚いたな。てっきり噛みついてくると思ったが」
「まぁ、何となくそんな気はしてたから…次は?」
「ああ、その先を左だ」頷き、無言でハンドルを切る。
「ナナシの役割ってさ…」先ほど感じたことを、思い切って口にしてみた。
「ナナシ自身が何らかの力で相手の…道筋?を変えるんじゃなくて、変えたくても変える勇気のない人の側に現れて、そっと背中を押すことなんだよね…」
そう、あたしにしても、興信所なり会社なりに押し掛ければ、彼の居場所を突き止めることはできたのだ。
でも、それができなかった。「もう顔も見たくないから」というありがちな理由を並べ立てて、会おうとしなかった。
…怖かった。彼に会うのも、彼と育んだ思い出に向き合うのも。
「…つまり、あくまでサブに徹する。だからそこに強引さもないし、煩わしさもない。どうせ道筋が変わるまでは、強制力で離れられないし」
「…………」
ナナシの顔が強ばっているのがわかった。たぶん、あたしは口にしてはいけないことを言おうとしている。そんな気がする。
「…ねぇ、あたしが道筋を変えたら、あなたはどうなるの?」
「………」黙秘するナナシ。答えられない故のだんまりなのか、それとも単に答えたくないだけか…。
「…あなたは誰かと関わりさえ持っていれば、何不自由なく生きていける。そういう力なんでしょ?それなら、何であたしの道筋を変えようとするの?何で…」
違う。こんなナナシを責めるようなこと言いたくないのに。
もう少し、あなたといたい。あたしにとってかけがえのない存在となりつつあるあなたに、それを伝えたい。
ただ、それだけなのに…。
「…道筋なんか変えなくていいじゃない。そしたら、ずっと一緒にいられるんでしょ」
「…それはできない」ナナシがようやく発した言葉は、あたしにとって非情なものだった。
「なんでよ。なんで…っ」
「それでは、俺が君に会った理由が分からなくなる」
「………っ!!」
それはナナシの想いが凝縮された、そんな一言だった。
彼の堅い意志を感じて、あたしは何も言えなくなった。

…分かっていた。
ナナシは、流れ続ける存在だ。
その歩みを緩めることはあっても、時に休めることはあっても、歩むこと自体をやめることなど決してない。
これまでもずっとそうして生きてきて、そしてきっとこれからも…。
だからこんなにも自由で、こんなにも孤独なんだ…。


「ここ…なの?」
ナナシの指示通りに走り、あたしたちがたどり着いた場所は、閑静な住宅地だった。
いやな予感が頭をよぎる。外れて欲しい。そう願わずにはいられない、そんな予感だった。
「…やめておくか?」そんなあたしの不安を察したのか、ナナシがそっと声をかけた。
あたしは無言で首を振った。当然だ。ここまで来て逃げ帰るわけにはいかない。
自分の心と身体に鞭打って、歩き続けた。
彼の家は、まもなく見つかった。
そこにはー

『風間冬樹・靖子・勇樹』

とあった。
…ホラ、当たってしまった。今日の自分の冴えっぷりが、今度ばかりは恨めしく思えた。
真新しい一軒家に掲げられた、手作りの表札…本来なら微笑ましいはずのその表札が、あたしにはどうしようもないほど冷たく恐ろしい物に見えた。
冬樹と別れたのは、ほんの二ヶ月前。つまり、はじめから彼には妻と子供がいたことになる。
幾つか想像はつく。たぶんその中のどれかが正解だろう。
低い塀の先、カーテン越しに明かりが見える。あそこに…
「…まるで昼ドラね」湧き上がる黒い感情を押し殺し、自虐的にそう呟いた。ナナシは何も返さない。
本音を言えば、今すぐここを離れたい。道筋なんか変えなくていい。
そうナナシに言おうとしたとき、ふいに声が聞こえた。
「あーっ!おとーさんまたトウモロコシ残してるーっ!!」
幼い声。おそらく勇樹という子供のものだろう。それに何やら弁明する声も聞こえてくる。
(………あ)
それは久方ぶりに耳にする、冬樹の声だった。過去にあたしに向けられ、今は子供に向けられている…その厳しく残酷な事実が、初めて現実のものとしてあたしの中に流れ込んできた気がした。
「…幸せそうだな」
ふいにナナシがいった。そしてなぜだろう、あたしも素直に「…そうね」と返していた。
確かに、絵に描いたような幸せな家庭が、そこにはあった。
同時にそれは、あたしがいつか描こうとしていたものでもあった。
「…この幸せが、憎いか?」ナナシは投げかけるように尋ねた。
あたしは本当に自然と、自分の首を振った。

あれは、あたしの夢だ。
「仕事に生きる」とカッコつけながら、それでもいつかはと描いていた夢だ。
…それが今、あたしの目の前に広がっている。
なのにどうして、その家庭を、そこにある幸せを、あたしが壊すことができよう。
そんなこと、できるわけがない…!!

もちろん、彼への恨みや憎しみが消えたわけではない。それほど冬樹を愛していたし、信頼もしていた。
きっと、それは時間軸とは異なるものだ。風化や劣化はしても、消滅はしない。彼とのことは決して癒えない傷として、死ぬまであたしの身体に残り続けるだろう。
でも、それでもかまわないと思った。そう思えた。
「…あたしには、あの幸せを壊す権利はない。その必要もないし」
諦めでもなく、悟ったわけでもない。
それでも、あたしは素直にそう感じていた。
ナナシは「そうか」とだけ告げて、振り返ろうとした。
そのときーー
ガラッと音がしたかと思うと、冬樹がベランダに出てきた。ナナシは身を屈めたが、あたしはとっさのことで動けなかった。
冬樹がこちらに気づき、小さく「あっ」と声をあげた。手にしていた煙草の箱が、ゆっくりと庭に落ちた。
彼は驚きと不安に満ちた表情をしていた。それも当然だろう。自分が利用した女が、居場所を突き止めて来たのだ。復讐されると思うに違いない。
冬樹はゆっくりと近づき、塀のそばに来た。そしてしゃがんだかと思うと、地面に手をついた。
「ちょっと…」
「頼む。家族には手を出さないでくれ」
それは決して強い口調ではなかったが、心からの言葉であることは十分すぎるほど感じ取れた。
「…バカ。出さないわよ」そういうなり、あたしはひょいと塀を飛び越えた。
「立ちなさい」少し強めの口調で告げると、彼がゆっくりと立ち上がった。
「…お腹に力込めなさい」
「…え?お腹?…がふっ!?」ドスッという重い音がして、あたしの正拳突きが彼のみぞおちにめり込んだ。
たまらずその場にうずくまる冬樹。外の異変に気づいたのか、「あなたー、どうかしたのー?」と妻らしき声が聞こえてきた。それに冬樹はかろうじて「…な、なんでもない。あと一服したら戻る」と返事した。
「…あ〜スッキリした。感謝してよね、顔なら何かあったって気づかれちゃうと思って、お腹にしてあげたんだから」あたしなりの優しさを込めて、そう告げた。
「そ、そうか…」
「…じゃあ、もう行くわ」あたしは再び塀を乗り越え、彼に背を向けた。
「え…」呆然とする彼。
「復讐に来たんじゃないのか?」
あたしは歩みをとめた。
「…復讐して欲しいの?」
「い、いやっ…」
「じゃあ、さよなら…」それだけ告げて、歩みを早めた。背後から何か声が聞こえていたが、もう耳を貸さなかった。
これでいい、これでいいんだ…。


「…おそらく、夏実の道筋は変わった」
帰りの車の中で、ふいにナナシが言った。
「そう…なの?元彼ときっぱりケジメをつけて、一発ぶん殴っただけなんだけど」
「それで変わるはずだ。現に、夏実は今仕事に対して意欲が湧いているだろう?」
「それは…」そうかもしれない。恋愛でたまった鬱憤を、仕事で晴らしたい気分だ。
企画部への復帰も、まだ諦めたわけではない。まだまだやりたい企画は沢山ある。いい案を練って、必ずや…あっ
助手席では、ナナシがこちらに視線を向けている。その目は「…な?」と言っているようだった。
「まぁ、そうかもね…」渋々、あたしは自分の道筋の変化を認めた。ナナシは満足そうに頷くと、落ち着いた声でいった。

「…ここでいい。止めてくれ」


〜5〜に続く。


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ある小説


〜3〜

「…で、どういうことなの?店員さんと話してたみたいだけど、知り合いなの?」
「いや、初対面だ」相も変わらずの無表情で淡々と答えるナナシ。
まぁ、もう慣れてきたけど。
「じゃあどういうことよ。今日びツケが効くわけないし…」
「“強制力”だ」
「きょーせいりょく?」耳慣れないフレーズに、思わずあたしは言葉を返した。
「そうだ。言っただろう、一度関係性を持った相手とは、道筋を変えるまで関わり続けると。これはそのための力。離れようとしても、強制力がそれを許さない」
「許さないって…」
「先ほどの場合は、関わりを断とうとする金銭面を、強制力が排除した。だから問題なく出てこられた」
「ちょ、ちょっと待って!」事態についていけなくなったあたしは、思わず待ったをかけた。
「金銭面を…強制力が排除したぁ!?なにそれ…その力で、無銭飲食を正当化したってこと!?」
「そうだ。断っておくが、強制力は文字通り強制的に働く。止めることはできないし、回避することもできない。どこかのシスコン少年のように、回数制限もない」飄々と答えるナナシ。シスコン少年?回数制限?何のことだろう?
「その力…本当にマジな力なの?」
「もちろんだ。先ほど君が俺から走り去ったときも、強制力により再び出会った」
あたしは目を見開いた。「…じゃあ、走って追いかけてきたんじゃないの!?」
「ああ。俺は適当にフラフラ歩いていただけだ。出くわしたのは偶然だが、それも強制力が偶然性を排除した結果に過ぎない」
「…?偶然性を排除したら、会えないんじゃないの?」
「違うな。偶然性を排除したから、必然性が生じたんだ。仮に君が適当ではなく、真っ直ぐ反対方向に走り続けたとしても、何らかの作用が働いて、必ず出会うことになる」
「そんな…」
そんな冗談みたいなことが起こり得るんだろうか。あたしはこのとき、初めてこの男に恐怖を感じた。
ナナシの話が本当なら、何をしても逃げられないことになる。飛行機に乗っても、エンジントラブルで飛び立てないとでもいうのだろうか。
…ばかばかしい。そんなヨタ話つき合いきれない。
だが、もし本当なら…。ナナシの持つ強制力が本当なら、それはきっと事象の全てを自在に変化させる力だ。
ふと、指先が震えていることに気づいた。慌ててギュッと握りしめる。
「…その……は?」ダメだ。うまく声が出ない。
「ん、何だ?」
「だ…だから、その関係性をなくす方法…は?」
ナナシはやれやれといった素振りを見せた。「さっきもいったと思うが、俺が夏実の道筋を少しだけ変えることーそれが終われば、関係性は消える」
「そ、そう。じゃあ早くその道筋とやらを変えましょ」あたしはナナシと視線を合わせないようにして、足早に歩き出した。
「どこへ行く」
「道筋を変えるんでしょ?じゃあ早く行かないと…」
ナナシは一瞬変な顔をすると、左手であたしの手を取った。
「待て、話をー」
「…っっ!?」
あたしはとっさにその手を払いのけた。まるで薄汚いものにでも触ったかのような、そんな反応だった。
しまったーそう感じたときにはもう遅かった。その場の空気が凍り付いたようになり、時間さえ止まった気がした。いつの間にか降り出していた雨だけが、控えめに雨音を奏でていた。
「…ご、ごめん…」どうしていいのかわからず、あたしはそう謝ることしかできなかった。
「俺が…怖いか」暗澹とした瞳を向けられ、あたしは逃げるように目をそらした。
「そんなことは…」言葉の続きが出てこなかった。「そんなことはない」と言えない自分がいた。
「…すまない。君を怖がらせるつもりはなかった。ただ、説明しようとしただけで…」ナナシの声が小さくなっていった。視界の隅に、強く握りしめた左手が見える。
意を決して、彼を見た。
彼は、泣いてなどいなかった。泣きたいはずなのに、その涙も枯れてしまったかのように、ただ悲痛な表情を浮かべていた。
そんな彼の代わりに、辺りを包む雨粒たちが、泣いてくれているようだった。
そんな彼が、なんだか少しだけ…

あたしはナナシの手を取った。もちろん、左手。
驚く彼に、あたしはいった。
「あーあ、こんなにずぶ濡れになっちゃって。このままじゃ風邪引くわね。うん、ぜったい」
「…ずぶ濡れは夏実も同じだろ」無表情で返すナナシ。そうそう、そうこなくっちゃ。
「しょうがないなー、三回廻ってワンっていえば、あたしの家に入れてあげるわよっ…ってぇ!?ちょっと!なんでホントに廻ってんのよ!!」
「しかし君が廻れとー」
「あ〜もうっ!!いいから早くこっち来てっ!!」
…ホント調子狂うなぁ。

とりあえず、ずぶ濡れのナナシを玄関に待たせて、五分間の待機命令を出した。その間に部屋を片付け、お風呂を沸かす。次にナナシをお風呂に入れてる間に、簡単な食事も作った。温かいスープも用意して、よしっ準備完了!
風呂場から音がする。どうやら出てきたらしい。タオルや下着のある場所を告げる。間もなく、湯気を纏いながらナナシが現れた。
「…服のサイズ丁度いい?」
「ん、ああ。問題ない。感謝する」
「んじゃあたしも入ろっかな。あ、先に食べてていいわよ」それだけ言って、ナナシとすれ違いに風呂場へ駆け込んだ。
「………ふぅ」
大きく息をつく。なんだろ、なんか落ち着かない。
…あいつは何も聞いてこなかった。いくらあいつがバカでも、洗面所の歯ブラシや引き出しの中の下着で気づいたはずだ(今着てるのも、買い置きしてたやつだし)。
そこまで無粋じゃないってことか。なんだ、やっぱりいい奴じゃん。
頬が僅かに紅潮してくるのを感じながら、あたしはお風呂に入った。

リビングに戻ると、ナナシがテレビもつけずに食事をかき込んでいた。信じられない、さっきあれだけ食べたのに…。
「…ホント、名無しで底無しね」
「…む、何か言ったか?」
「何でもない。ていうか、テレビくらい点けなさいよねー」そう言ってリモコンを握る。そんなあたしに、なぜかナナシが非難の目を向ける。
「食事中にテレビを見るのは感心できんな。あと、見るならNHKにするべきだ」
「…………」
どこの生真面目じーさんだ、あんたは。とりあえず無視して、適当にザッピングする。
それからあたしも食事をとって、二人分のコーヒーを淹れた。一口飲んだ後、ナナシが口を開いた。
「料理にも驚いたが、コーヒーはまた一段と驚いたな」
どうやら、誉めてくれているらしい。「驚いた」という辺りがややひっかかるが、まぁ流しておこう。
「そう、ありがと。でもコーヒーはインスタントだけどね」
「いや、インスタントでも温度や入れるタイミングで違いは現れる。このレベルをインスタントで出すのは、容易いことではない」
「…別れた男がコーヒー好きだったから」言って自分で驚いた。
しまった…。自分から言うつもりなんてなかったのに。やっとかさぶたができたと思ったのに。
「…ごめん。忘れて」取り繕うように、そういった。
ナナシは少しの間黙っていた。あたしも次に喋るきっかけが見つからなくて、黙り込んでしまった。本日二度目の沈黙…しんとした部屋の中で、今度はテレビのバラエティ番組だけが、やけにやかましい音を立てていた。
「…忘れていいのか」ふいにナナシが切り出した。
「え…」
「忘れろというのなら、忘れよう。だが夏実は、そのことで苦しんでいるんじゃないのか?」
「…それも、勘なの?」あたしの言葉に、頷くナナシ。
…まいった。この男にはかなわない。
話したところで、何ができるとも思えない。話を聞く限り、ナナシの強制力はその関係性を維持することにのみ効果があるみたいだし。
あたしはテレビを消して、深く息をした。
「…あたし、さ。いわゆるキャリアウーマンってやつだったんだよね。勤めてる化粧品会社でも、最初はBAっていう実演販売みたいな仕事やってたんだけど、業績が認められて企画部の方に転属になった。BAは女ばっかで色々あって辟易してたし、もともと企画に興味があったから、転属が決まったときはめちゃめちゃ嬉しかった…」
そう、今思えば、あのときが幸せの絶頂だった。
「………」ナナシは変わらずこちらを見ている。あたしは話を続けた。
「…もうわかってると思うけど、あたしは当時つき合ってた男と同棲してた。男の名前は風間冬樹。彼は同じ会社の販売部でね、少し頼りないところもあったけど、優しい人だった。企画部に移動が決まったことを話すと、彼も喜んでくれた。…まぁ、結果的には騙された形になっちゃったんだけどね」
「…それは、夏実が企画した商品を彼に盗られたとか、そういうオチか?」
「…ちょっと、なんで先に言うかなぁ」
「…む、すまん」なぜかナナシは、角砂糖を一つあたしのカップに入れた。
…お詫びのつもりだろうか。あたしはブラックで飲むんだけどな。
「…まぁ、そうよ。つまりはそういうこと。あたしが練りに練って考えた新製品の案。この世界は業績をあげてナンボだから、案がまとまるまで誰にも話さなかった。
でも、彼だけには話しちゃったの。まぁ同じ企画部ってわけでもないし、大丈夫だろうってね。
後で知ったことだけど、彼は他の大手の会社にヘッドハンティングが決まってたみたいなの。あたしの案は、さしずめあちらへの手土産ってトコかしらね。一緒に住んでたから、書類も簡単に手に入ったはずだし。
結局その商品は、名前を変えて発売。夏期にしては異例の大ヒット。自分の会社に訴えようとも思ったけど、商品が出まわった以上どうにもならない。会社側もあたしと彼の交際は知ってたみたいでね、結局営業部に逆戻り。今は面白くない雑務を毎日やらされてるってわけ」
「その男には…」
「会ってない。連絡も取れなくなったし、彼の家も知らなかったから。
つまるところ、利用されるだけ利用されて捨てられたのよ、あたしは」
「…そうか」
あたしの長話を終えて、ナナシが漏らしたのはそれだけだった。あまりに、あまりに素っ気ない返事だった。
落胆はしない。話そうと決めたのはあたしだ。優しい言葉をかけて欲しかったわけでも、抱きしめて欲しかったわけでもない。
ただ、聞いて欲しかっただけだ。仕事一筋で友人も離れていったあたしには、そんな存在すらいなかったから。
それまで誰にも心の内を話せず、くすぶり続けてきたあたしの気持ちは、ナナシにうち明けたことにより、もう決壊寸前だった。
「夏実…」ナナシがふいに、あたしの頬に触れた。
「泣けるときは、泣いた方がいい。泣かないと決めたときに、泣かずにすむように…」
それは、今までで一番優しい口調だった。同情でも友情でも、そしておそらく愛情でもない。ただ、純粋な優しさに溢れていた。
それだけに、その一言はあたしの何かを強く揺さぶった。
「…もぅ、何言ってるのかぜんぜんわかんないわよぉ…っ!!」
とうとう、あたしは泣いた。みっともないくらい、わんわん泣いた。
ナナシはそんなあたしの側に、静かにいてくれた。何をするわけでもなく、ただいてくれた。
だからこそ、あたしは泣けたんだ…

ようやくあたしの涙も止まった頃に、ふいにナナシがとんでもないことを言い出した。
それが何かは…あっ

続きは次回っ!!


ナナシ「……へっくし!」


〜4〜へ続く


zendoukaihujioka at 12:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年02月24日

ある小説


〜2〜

「…で?アンタ一体何なの?」
ようやく新しい靴を買い、ぱっかぱっか地獄から抜け出したあたしは、イの一番に男に問いかけた。
「…?意味がよく分からんが」
「だっておかしいでしょ?風貌もおかしいし、妙に馴れ馴れしい態度もおかしいわよ。あとさっきの『やっぱりな』って何?あなたとは初対面だと思うんだけど」
男はあたしの言葉を吟味するように聞いていたが、やがて神妙な面もちで言った。
「…ふむ。それを話すことに問題はないが、話すと長くなる。とりあえず、アンタの家にでも行こう」
「は…はあっ!?」
これにはあたしも目を丸くした。コイツは新手の詐欺師だろうか。それともナンパ?
どちらにせよ、これでコイツが見かけ通りアブナい男だということがはっきりした。武道経験があるとはいえ、私も女だ。初対面で、しかもこんな小汚い男をおいそれと家にあげるつもりは毛頭ない。
きっとさっきのも、わざとぶつかってきたんだろう。そうか、全て仕組まれていたのか…。
そう考えると、途端に冷めていく自分がいた。
「…もういいわ。さよなら」
言葉少なにそう告げると、あたしは身を翻して早足で去ろうとした。男は何か言っていたが、もちろん無視。
てっきり追いかけてくるかと思ったが、男は動かなかった。ただ、最後に男が漏らした一言だけが、妙にハッキリと耳に響いた。
「…やれやれ。結局こうなるのか…」

早足で歩き続けるあたし。いくつも角を曲がったため、男の姿はもちろん見えない。
完全に撒いた。あたしは小さくガッツポーズを決め、少し歩調を緩めた。
それにしても、あの男はなんだったのだろう。よくよく考えてみれば、ナンパや詐欺ならあんな身なりでする筈がない。誰だって綺麗な格好をした男性の方が、心の紐も緩むというものだ。
(まさか、本当にホームレス!?)
可能性はある。だがスーツを着たホームレスというのは、あまり聞いたことがない。
「…ダメだ。さっぱりわからん」
とりあえず、家に帰ろう。そう結論するに至って、駅の方向に振り向いたときーー
「……む」
相変わらずの無表情で、あたしの眼前に例の男が立っていた。
「ななっ…!?あなた、後をつけてきたの!?」
「いや、そういうわけでは…」
「それ以外ないでしょ!!…そうか、やっとわかった。あなたストーカーだったのね!!」
「待て、話をー」
「あなたと話すことなんか何もないわ!!これ以上付きまとうってんなら、警察呼ぶわよ!?」ポケットから携帯を取り出す。少しは怯むかと思ったが、男は警察という言葉に特に臆した様子はなかった。
それどころか、男からはこうなることに慣れているかのような、ある種の落ち着きさえ感じ取れる。
「落ち着け。事態を把握できないアンタが、そう解釈してしまうのも分かる。だが俺は断じてストーカーなんかじゃない」
「じゃあーー」
「ああ、もちろん詐欺師でもナンパでも宗教勧誘の類でもない。アンタと会ったのはさっきが初めてだ。誓ってな」やはり事態に慣れているかのような話しぶり。
「…………」
言われたとおり、あたしは少し冷静になってみることにした。
まず、コイツが言っていることが本当かどうかだ。
これは、正直言って本当な気がする。詐欺師やナンパの線は、やはり身なりからしてないと思う(一応本人も否定してるし)。
ストーカーの線は微妙だけど、ストーカーならもっと周到で陰湿にやってきていいはずだし、無言電話とか、そういうことはこれまで一度もない。
そもそも、雰囲気からしてストーカーって感じじゃない。この男から感じられるのは、荒野のような乾いたものだ。心も身体も枯渇しきって、でもそれを享受しているかのような…。
たぶん、こいつは悪い奴じゃない。なんでかわかんないけど、そんな気がする。
確たる証拠もないし、なんの根拠もない。にもかかわらず、あたしは殆ど確信に近い精度で、そう結論を下した。
「…わかった。とりあえず、話を聞くわ。でもあたしの家はダメ。…そうね、そこのファミレスでどう?」
これが、あたしが提案できるギリギリのライン。いくら悪い奴じゃないと言っても、こいつは友達でも彼氏でもない。それにこれで、この男の真意も少しは掴めるかもしれない。
あたしなりに考えて出した言葉だったが、男の返答はあまりに素っ気ないものだった。
「…うむ、問題ない」
「……へっ?」
「どうした、行くのだろう?」男はもうファミレスへと歩きだしていた。我に返ったあたしは、慌てて男についていった。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ。…どうでもいいけど、なんで嬉しそうなの?」
男は心なしか上機嫌な様子で答えた。
「なに、ちょうど腹も空いていたしな」
……。あぁ、嫌な予感がする…

「…………」
無言でコーヒーを啜るあたし。男はといえば…
「…ふむ。…ふむふむ…ふむ」
この調子でふむふむ頷きながら、ガツガツ食べている。
…なんか犬っぽいなぁ、こいつ。
でもここだけの話、あたしはこの男の無表情で変な素行に、不思議な愛嬌を感じ始めていた。
「…ねぇ」コーヒーのおかわりを頼んだ後、あたしは男に話しかけた。
「…まさかとは思うけど、その食事代、あたしが払うの?」
ピクッと反応して、顔を上げる男。「払ってくれるのかっ!?」
「払うかっ!!…ああでも、あんたお金持ってないんでしょ?」
「それはそうだが、問題ない」そう無表情で答える。
無銭飲食のどこに問題がないのだろう。うーん、やっぱりアブナい奴なのかなぁ。
「…とりあえず、本題に入りたいんだけど」
…と、あたしはあることに気がついた。そういえば、まだこいつの名前も知らないのだ。
「ねぇ、あなた名前は?」
「名前…?」
「そう。いくらそんなナリでも、名前くらいあるでしょ」そう言いつつ、自分の名刺を差し出す。男はあたしの名刺をまじまじと見ていた。
「あさみ…なつみか。宜しく、夏実」
あたしはずっこけそうになった。いや、座ってるんだけど。
本っ当になれなれしいなぁ、こいつ。
「…まぁいいわ。で?」
「俺の名前か。名前は…」
「うんうん…」
「…ない」
「……はっ!?」
思わず男の顔を注視する。だがその表情に変化はない。
「…からかってるの?あたしはちゃんと名乗ったじゃない。なのに自分の名前は明かさないつもり?それって酷くない?」
「違う」
「何が違うってのよ」
男はなにやら辛そうな表情で答えた。
「…明かさないんじゃない。俺には、記憶がないんだ。だから名前も分からない。強いて言えば、名無しーナナシだ」
瞬間、頭痛がした。

詐欺師、ナンパ、ストーカー…
確かに、どれでもなかった。というか、それ以前の問題。むしろ、まだどれかに該当していた方が良かった気がする。
あぁ、逃げたい…。

それからしばらく、ナナシと名乗る男の話が続いた。
どこで目が覚めたか。どんな状況だったか。これまでどう生きてきたか。
そして、なぜ私に関わろうとするのか。
全てを打ち明けている風ではなかったし、拙い言葉ではあったけれど、ナナシは懸命に説明を続けた。

「…“関係性”?」
「ああ。俺が持っている、ほとんど唯一の力だ」そしておもむろに、男は右手を差し出した。
「握ってみてくれ」
よく分からないが、とりあえず言われたとおり握ってみた。
…ビリッ
また電流が走った。慌てて手を引っ込める。
「なんなのよ、それ。静電気?あなた電気ナマズ?」
「いや、俺はれっきとした人間だが」
…待て。そんなマジに返されても。くそう、なんか調子狂うなぁ。
「これは、俺と夏実が関係性を持ったという証だ」
「…意味がよく分からないんだけど」
ナナシは無言で頷いた。「これから説明することは、かなり非現実的な内容になる。どうか落ち着いて聞いてほしい」
あたしは深呼吸を一つした。「……いいわ。続けて」
「…俺の力は、誰かと関わり、その人の道筋を少しだけ変えること。一度に関わる人は一人だけ。判別は俺の右手で握手したとき、電流のような痺れが走ったらビンゴ。それが関わりの始まりであり、その証明になる」
「…今のが、そうだっていうの?」
真顔で頷く。
…ははは、まいった。まさかこんな●チガイなことを言ってくるなんて。どうしてくれよう、この鉄面皮。
まぁこれも何かの縁だ。もう少しだけ妄想話につき合ってやろう。ああ、なんて寛大なあたし。
「…仮に、あなたの言ってることが本当だとして、どうやって相手を捜すの?まさか周りの人に片っ端から握手するわけじゃないでしょうね」
「…そうだ」
うわ、肯定したよ。
「とはいっても、実際に手当たり次第に握手するわけじゃない。うまくいえないが、俺には関係性を持つべき相手が、なんとなく分かる」
ほほぅ。なるほど、そうきたか。
「…で?その関係性とやらを持ったら、どうなるの?」
「相手の道筋を変えるまで、関わり続ける」
…はい決定。こいつ、やっぱストーカーじゃん。
あ〜もういいや。また頭痛がしてきた。
「…む、その顔は信じてないな」
「…あのねぇ、当たり前でしょ。そんなこといきなり言われてハイそうですかって信じるほど、あたしは楽しい性格してないわよ。漫画の読み過ぎ。まったく、何を言うかと思えば…」あたしの抗議は、ナナシの手で遮られた。
「これから関係性を証明する。夏実は一人で店を出てくれ」
「え…でも、あなたお金持ってないんでしょ?」
「ああ。だが問題ない。毎度のことだ」
不審に思いながらも、結局あたしは従った。まあ、このままこの●チガイと離れられるのなら、願ったり叶ったりだ。
「支払いは彼が」と店員に告げ、そそくさと店を出た。
「………さて」
このまま走り去ってしまうのは容易い。あいつが本当に文無しなら、動けるはずがないからだ。
でもそれだけに、あいつがどうするのか気になる。
(………よし)
迷った末、あたしは店の前であいつを待ってみることにした。

「あいつ…まだ食べてる」
ナナシはテーブルを埋め尽くさんばかりの料理を、苦もなくたいらげていく。
やれやれ。名無しの次は底無しか。
そして…
ナナシはようやく食べ終えると、どっこいしょと立ち上がった。
(さぁ、どうするの…!?)
そのまま平然と歩き出した。レジの店員に伝票を渡し、何やら話している。
(…知り合い?)
そしてそのまま、外に出てきた。食事代を支払った様子はない。
(えぇぇ〜っ!?)
驚くあたしに歩み寄ってきたナナシが一言。

「…種明かしは次回っ!!」

…なんじゃそりゃーっ!!


〜3〜へ続く


zendoukaihujioka at 14:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

ある小説(できるだけパソコンで読んでね)


〜1〜

「……はぁ〜」
盛大なため息をつく。そして髪をかき上げ、ゆっくり前を見る。
目の前に、鏡に映ったやぼったい女の顔があった。クマが目立ち、肌にも張りがない。髪も枝毛ばかり。これではどう見ても四十過ぎのおばさんだ。

ここは化粧室。もっと言えば、ブライト化粧品本社4F営業部の側にある化粧室。
時間?えーと、今は4時17分。デスクの仕事が嫌になって、こうして逃げてきたってわけ。たぶん、今ごろ課長が「浅海のバカはどこだ」って叫びながら、自前のバーコードを左右に揺らしてると思う。
すだれじゃあるまいし、切ればいいのになぁ、あれ。
浅海?ああ、あたしの名前。浅海夏実。よく「八月に生まれたでしょ」とか言われるけど、残念でした。あたしが生まれたのは9月。それも21日。
あーあ、お母さんもなんでこんな名前にするかなー。いかにも天真爛漫で疲れ知らずって名前じゃない。どうせなら友人の妙子みたいに、か弱そうな名前にして欲しかったなぁ。そしたらこんなにこき扱われることもないのになぁ。
そしたらあんなことも…。
「夏実ちゃ〜ん、いる〜?」
なんてことを考えていると、当の妙子の声がした。何だろ。まぁ残念ながら見当はつくけど。
まもなく妙子が現れた。肩に掛かる髪に大きめのメガネ、僅かに垂れた眉目。うん、まったく名前に相応しい容姿だ。妙子って名前を元に神さまが人間を創造したら、ちょうどこんな感じだろう。
当の妙子は、あたしの視線の真意が読めないのか、首を傾げている。頭上に疑問符が浮かんでいることだろう。
「…で、なに?」
あたしの声で我に返ったのか、彼女は要件を口にした。
「あぁ、えっとね、課長が呼んでたよ。『浅海はどこだっ!?』って、怒ってたみたい」
はい、あたし正解。偉いぞあたし。冴えてるぞあたし。グレイトだあたし。
まぁ、仕事ほっぽりだして化粧室に一時間も籠もってたら、常識ある上司なら誰でも怒るだろうけど。
男にとって絶対不可侵領域であるこの化粧室には、課長でも部長でも社長でも(たぶん)入れない。だから妙子を使って、引っ張り出そうって寸法だろう。
うん、悪くない作戦だぞ課長。ダテにいつもバーコードを揺らしてないな。
しかーし、残念ながら人選ミス。あたしを引っ張り出す役目を、この妙子に与えた時点で、作戦の成功率は限りなくゼロに近い。
「妙子、悪いけど課長にはしんどいから無理ですって伝えて」あたしはきっぱりと妙子に告げた。
「えぇっ、でも〜」
「いいから、生理とかなんか適当に理由つけて言いくるめといて、宜しく」
ビシッと指差して目で威圧すると、妙子は不安そうな目でこちらを覗き、やがて出ていった。
化粧室に静寂が戻ると、あたしは再び鏡の前に向き合った。そして目の前の不細工な女に言い放った。
「…なんでこうなるのよ」


結局、あたしは五時まで化粧室に籠城した。でもいい加減そこにいるのも嫌になって、ダッシュで自分のデスクに戻って荷物をまとめて出ていった。背後で課長の声がしてたけど、そんなの無視無視。
あのデスク、明日にはたぶんキレイになってるだろうなー。あははー。
…そりゃまぁ、後悔の気持ちが全くないっていったら、たぶん嘘になる。あの会社には愛着もあったし、成功を収めたかった。
あんなことさえなければ…
あんな男に出会わなければ…

あ〜やめやめ。
もうあの会社のことは忘れよう。次だ次。次の会社のことを考えよう。
そんな風に半ばヤケになっていたあたしは、ロクに前も見ないでズカズカ歩いてた。
だからきっと、アイツにぶつかったんだと思う。

「…いたっ!?」
「…ん」

なにか鉄の壁のようなものにぶつかって、あたしは後ろに倒れた。幸い昔武道をやっていたおかげで、どこも怪我することはなかった。
…訂正。ヒールが折れてしまった。ああっ、まだ買って一年しか経ってないのにっ。
「…ちょっと!どこ見て歩いてん…の…よ」
あたしは自分のことを棚に上げて、相手に靴代を弁償させようと食ってかかったけど、その言葉は徐々に立ち消えていった。
目の前にいた男は、なんというか、異様だった。
年は…三十半ばくらいだろうか。身長だけやけに高くて、髪はボサボサ。着ているダークスーツも小汚いし、なによりネクタイも緩めでワイシャツの喉もとも開いている。おまけにタバコまでくゆらせてる。最悪なのは無精ひげ。
顔立ちは悪くない。端正といっていいのだろうが、あまりに身なりが酷すぎる。ハッキリ言って、そこらのホームレスと大差ない。
それだけじゃない。何かこの長身痩躯の男を見たとき、妙な違和感を覚えた。
もちろん見覚えなんかない。こんな変人、一度会ったら忘れるわけない。
引きつけられるような、目を離せないような、不思議な感覚。
(何なんだろう、コイツ…)
あたしがボーっと男を見ていると、男がスッと手を差し出してきた。そっけない態度な上に無表情なため真意は読めないが、どうやら掴まれと言っているらしい。
無言で掴まり、立ち上がろうとする。そのときーー
…ビリッ
電流のような何かが走り、あたしは反射的に手を引っ込めた。
今の…静電気だろうか。男の方も少なからず驚いたようで、自分の手とあたしを交互に見ると、「…やっぱりな」と、心底面倒くさそうに呟いた。
「……???」あたしが怪訝そうな顔をしていると、男がもう一度手を差し出した。今度は左手。
「…とにかく、立てよ。アンタはともかく、俺はいつまでも衆目に晒される趣味はないんでな」
じれったそうな男。はっとして周りを見ると、通行人たちがちらほらとこちらに好奇の視線を向けていた。
そりゃまぁ、通りのど真ん中でいつまでも男女が止まっていたら、何事かと思うだろう。あたしは気恥ずかしいものを感じながら、慌てて立ち上がった。
「まずはぶつかった非礼を詫びる」そう言うなり、男はぺこりと頭を下げた。
「そんな謝罪はいらないから、弁償してくれない?ヒールが片方折れちゃったのよ」
あたしの言葉に、男はやれやれという素振りをしてみせた。
「…おいおい、俺がそんな金を持っているように見えるか?」
「見えないわね」あたしは光の速さで返した。「…もういいわ。前を見てないあたしにも非はあったし、どうせそろそろ買い換えようとしてたところだから」
あたしはそう言いながら、自分の言葉に驚いていた。先ほどまであれほどささくれ立っていた自分の気持ちが、なぜか急速に和らいでいくのを感じていた。
とはいっても、このままではまともに歩くことも難しい。近くの靴屋で買おうか、コンビニに靴があっただろうかとあたしが考えていると…
「そうか。だがそのままでは歩きにくいだろう。近くで靴を買うにしても、そこまでの道のりが苦難な筈だ」まるでこちらの考えを見透かしているかのように、男が告げた。
「まぁ、それはそうだけど…」
「任せておけ。いい案がある」
なんだ…コイツ身なりは酷いけど、結構いい奴じゃない。あたしがそう思っていると、目の前に巨大な靴が現れた。
「………へっ?」
「ホラ、俺の靴を片方貸してやろう。少々大きいかもしれんが、履けないこともあるまい」

あたしの靴のサイズ:22.5
男の靴のサイズ:推定28センチ以上

…前言撤回。コイツ最低だ。てかバカだ。
男はなおも、ありがた迷惑な好意(?)を押しつけてくる。

…結局、あたしはパパの靴を興味本意で履いてみた幼稚園児みたいに、片方の足をぱっかぱっか言わせながら、足早に近所の靴屋に急行したのだった。
ちなみに、男はうんうんと満足そうに頷きながら、私の横を軽快についてきていた(勿論片方は靴下のまま)。

…コイツ、ぜったい確信犯だ…。


〜2〜へ続く


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2007年02月23日

花粉食欲小説

 慍嵎款鼻疎荵伊襦繊
花粉症の皆さーん!今年もこの辛い季節がやってきましたよーっ(>_<)
三年の春に花粉症になって以来、三度目の春…さすがに慣れてきました。幸い自分はそれほど酷くないから、生活に支障が出るほどではありませんが、やっぱポケットティッシュは手放せんなー。
症状が軽い人も重い人も、みんながんばりまっしょいo(^-^)o

◆愎欲』
最近、なんだかあまり食欲がないッス。なんだろう、特に食事をしたいと思わない。
だから、夕方くらいにお腹があまりにもグーグー鳴るからなんでやろーと思ったら、朝のヨーグルト以外何も食べてなかったり。昼食抜いたりバナナ一本だったり。
ん〜健康に悪いのは分かってるんだけど、なんか食べようって気にならないんだよなー。
美味しいものを見たら食べたくなるんだろうけど、普通の食事が面倒に感じてきた。
……はっ!?最近やけに胃が痛むと思ったら、胃液で溶けてるのかっ!?(←昔もあった)
ヤバいっ!食べねばっ(>_<)

結論:食べたくなくても食べましょう。

『小説』
え〜、実は、ブログの最後に何かやりたいな〜と思って、短編小説を書いてみました。思い立ったのは一週間くらい前で、昨日やっとこさ書き終わりました。
短編とはいっても、40000字くらいある内容でして、五回に分けて載せようかと思ったんですが、それでは五回目の時点で終了してしまうので、土:1〜2、日:3〜5で載せたいと思います(一気に載せてもいいんですが、さすがに凄い長さになるので、やめた方がいいかな〜と)。
(先に感想を書いてしまいますが、)携帯で小説を書くのは四〜五年ぶりなので、かなり苦労しました。あまり難しい言葉回しをしないほうがいいんじゃないかとか、書いているうちに人物の暴走を止められなくなって困ったりもしました。
正直、かなり拙いものになってしまった気もしますが、それなりに楽しかったです。あの筆が走るような感覚は、やっぱいいなぁ。

あんなもので良ければ、ご一読下さいm(_ _)m

(言うまでもないことですが、
俺は『ド素人』ですので、
暖かい聖母のような菩薩のような眼差しで読んでねm(_ _)m)


zendoukaihujioka at 19:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)