夜、思いを巡らせ次の策謀を練るのが詩織様の密やかな愉しみ。
伊藤詩織。詩織様。
美貌と頭脳に恵まれながら、SSS隊の一員として不可解なストーキング行為に明け暮れる謎のキャラ。別に謎でも何でもないのかもしれませんが、未だに一番掴めないのが詩織様です。有り体に言えば個人的に一番苦手なキャラかもしれません。
なぜそうなのかをつらつらと考えるに、伊藤さんは弱点を与えられていないからではないかと思い当たりました。弱点でおかしければ、キャラクターへの足がかり。例えば同じSSS隊のおがちんを考えてみるならば、ぱんつを拒絶し、超シスコンの警官の兄を持ち、サンタの存在を信じて疑わない純真さ(幼稚さ?)を持つなど切り口が非常に豊富です。加藤さんもやや地味ながら、鋭敏すぎて心を狂わせる程の嗅覚と、おがちんの股間を守り続ける友情の篤さがあります。加藤さんはしんちゃんよりもおがちんが好きなのではないかという節すらあります。
しかし、詩織様はその腹黒さだけが強調され、何もバックグラウンドが語られていません。もちろんその腹黒さはキャラクターを立てるには十分なのですが、それは感情移入を許すような要素ではないのです。唯一弟がいる事が本人の口から語られていますが、後に続く具体的な描写はありませんでした。しかし何も語られなくても詩織様は常にSSS隊の一員として行動をし続けます。その能力を持ってすれば一人でしんちゃんを追い詰めてねじ伏せる事だって出来そうなものですが、あえてSSS隊のルールを守って歩調は崩しません。ふたばが障害なのも目に見えて明らかですが、しんちゃんを嫌いだと言わせようとした事はあっても、常に目の敵にして排除を図る事もしません。
もしかすると、6年3組の過剰なポジティブさを一人で引き受け、その底知れぬ腹黒さで陰と陽のバランスを保つ事がその存在意義なのかもしれません。だとするとそのポジションは余りに報われ無さすぎます。伊藤さんの知られざる背景が描かれる回を待ち望んでやみません。