「キモい」の一言のためなら百合本だって一冊描けちゃうのでは記念特別カラー
友人をネタにする極悪非道な内容ながら、意外にハートフルなストーリー展開によって好評を得てしまった美玲先輩の想像図です。以前の読み切りもそうでしたが、のりお先生ってギャル好きですよね。
連載当初の強烈な疎外感&ボッチネスはどこへやら、普通にちとせを混ぜてクラスの陽サイドとも談笑できるようになってきたロロッロの主役2人。思えばみつどもえでも初めは3つ子はクラス内部でも断絶的存在だったのが普通に溶け込んでいましたし、「僕ヤバ」でもいつの間にか好きになっちゃった女子と自転車2人乗りですものね。「孤立からの受容」が1つの大きな柱になっているのりお先生作品は、自分も含め陰の者にとっての救いがあるのかも。
そんなまだまだ淡い人間関係に爆弾を放り込んでくる悪い先輩の存在も、また1つの生まれた関係性の産物です。腐女子軍団のリーダーたるミシェル金剛先輩が、なぜか平和な1-B教室に自作の薄い本を持参です。先輩が取り出したのはガチムチ兄貴と美少年が全裸で抱き合う薄い本「オスまみれ」。ご丁寧に18禁マークまで付けてありますが、そもそも描いているミシェル先輩が14そこそこだという…でもクオリティが高そうなオーラが漲っております。
慌ててボディプレスで本を隠すイチカですが、やはり裸体を晒すだけでなく、ちゃんとロボ能力を活かして背景の手伝いをしていたのですね。珍しくイチカの能力が適材適所的に活かされた事例ではないでしょうか。TPOを弁えてくれというイチカを一蹴するミシェル先輩。善男善女の間でエロホモ本を持ち歩くスリルに性的興奮を覚えるのが上級者というご託宣に抗議のイチカ。たしかに美術部での活動が知られるとクラスで居心地が悪くなりますが、既にそんな通過儀礼は済ませてしまっているミシェル先輩。早く次のステージに上がってこいという挑発めいた薄い本の献呈でした。
イチカの心配をよそに、クラスの机で堂々とホモ本を読むちとせ。ロボであるイチカにも驚きの鉄の心臓です。そう言えば腐女子軍団の中で美玲先輩だけがヘテロ漫画を描いていたと思い出すちとせ。自動的に北小路先輩もホモ漫画という事になりますが、女×女なのかもしれません。結構面白そうだったと聞いて早速貰いに出かけるイチカとちとせ。イチカも適応が早すぎます。
勢い込んで来た2年生のフロアはまるで別世界。思えば中学生時代の上級生は何と大人に見えた事か。いかにもなギャルまで闊歩していますが、その後ろには金魚のフンのような美玲先輩が…自分の素性をバラしかねない危険な存在であるイチカ達。扱いは1年生フロアにおけるホモ本と同じです。偽装ウェイである美玲先輩は何とか誤魔化そうとしますが、「空気」のない世界から来たちとせは堂々とヘテロの本を要求します。ギャル的には「ヘテロ→ペテロ?→聖書→文学?」という変換が働き美玲先輩は文学少女としてウェイウエイと受容されます。意外と教養があるギャル先輩達。しかしウェイウェイしながらちゃんと後ろ手でヘテロ本を渡してくれる美玲先輩。ギャルに擬態しながら腐女子の心も忘れない先輩。
そこに現れた腐女子軍団の2人が美玲先輩の深層を解説してくれます。ギャルっぽいアイテム全てが実はアニメ・ゲームのグッズであり、いつバレるかというスリルを快感に変えているのだと。精神的露出狂とでも言うのでしょうか。そんな先輩のお手伝いをしたいと力強く宣言するちとせ。ちなみに美玲先輩の薄いヘテロ本(こちらもしっかり18禁)のタイトルは「初心❤︎リグレット」と読めます。初恋じゃなくて初心なんでしょうか?こちらもクオリティが高そうなオーラが。
教室で談笑する美玲先輩の傍で始まる砂奈先輩とちとせの劇。何とセリフは美玲先輩の本からです。衆人環視の環境でこれは強烈な刺激。きっちり身悶える美玲先輩が大変よろしい感じですね。何とか誤魔化してキモいと言ってみる美玲先輩ですが、ギャルな友たちはガッチリハマってくれてしまっています。意外な展開に美玲先輩も喜び、イチカもホッとしかけるのですが、さすが百戦錬磨のミシェル先輩。腐女子の心の動きを知り尽くしていました。
一般人に理解されると突き放したくなる衝動に突き動かされてしまう腐女子の業。せっかく自分の作品が受け入れられたのに、キモいって言ってと懇願する美玲先輩。実物を読ませてもそれなりに受けて貰えそうなんですが…やはり同類にしか理解されたくないのでしょうか。腐女子の屈折した心理に呆れるイチカですが、自分もロボ顕示欲の塊なので、意外と通じるものもあるのかも。ロボ扱いされ出したら自分は人間だと言いそうな。ロロッロの全員が何らかの歪みと共に生きている、つまりリアルな世界なんだなと感じさせてくれる腐女子先輩回でした。こうなると残り1人の砂奈先輩の作風がメガネの下の素顔と共に気になります。ギャル先輩たちには「男」呼ばわりされてましたしね。