2008年06月15日

南ア低所得者層の怒りはどこへ向けられるのか? 2

6d0b9b1f.JPG以前にも書いたように、これらの暴動が起きた 背景はいろいろと推測されている。近年の移民の増加にくわえて、暴動が起きた地区での貧困とインフレといった経済状況が原因だとする意見、来年の大統領選を控え、政党間での争いや派閥 争いが背景にあるとする意見などがある。今回は、南アの貧困について書いてみよう。

南ア都市部の貧困

住民の貧困は、たしかに大きな要因だろう。暴動が起きたのは、低所得者の中でもさらに貧しい住民が、空き地に小屋を建てて住んでいる状況の地区である。 彼らの生活はかなり苦しいから、インフレや移民流入のストレスに真っ向からさらされる。こうした地区は、Informal Settlement(インフォーマル住宅地区)とかSquatter Campとかよばれる。昨年、私は出産を控えて南アに渡来したが、それはジンバブエ経済がどん底の状態にあり、物不足であり、病院にも満足な薬がそろっていないという状態だったからである。このジンバブエと比べると、新聞や人づてに聞く南アフリカは、先進国並みのインフラを整え、店には商品があふれ、南ア人は当時の好景気を満喫している、というイメージであった。しかし実際南アに来て見ると、好景気を満喫しているのは中〜高所得者で、低所得者たちは 、好景気時のジンバブエの低所得者とくらべると、はるかに困難な生活を送っているように見えた。南アはアフリカ大陸の中では経済大国 だが、人口の50%が貧困ライン以下の所得であるという。私は南アの低所得者地区にまだ出かけたことがないため、彼らの生活状況 詳細は知らないが、プレトリア市をざっと観察するだけで、空き地のインフォーマル住宅がめだち、これがジンバブエの比でないくらいに多い。ジンバブエに インフォーマル住宅が目立ち始めたのは2000年の土地改革以降、経済状況が低迷したときで、それ以前は比較的、この手のキャンプは少なかった。しかし、『好景気である』といわれ続けていた南アには、 インフォーマル住宅地区が広がっているのである。

現在わたしは、プレトリア市東部郊外のアパート群のひとつに住んでいるが、この地域には高級住宅がたくさん 建っている。市内でもトップレベルの値段のする住宅が多い中、わたしが住んでいる所は中所得者がたくさん住むアパート群のひとつなのだが、このアパー ト区域の両隣に大きな空き地がある。そこに、小規模なインフォーマル住宅地区がある。空き地の草ボウボウのところへ、掘っ立て小屋を建てて人々が住んでいる。水は近くの水道管が破裂した部分から取っていた(今は破裂が修理されたので、もっと遠くから水を運んでいるようだ)。電気は無いから、夕方になると、料理用に火をたいているのが見える。朝になると、道路沿いにずらっと男たちが座っている。新開発地域なので、建設工事などの日雇い仕事のために 雇われる可能性がある、のかもしれない。道路を高級車がブンブン通るのを彼らはじーっと見ている。空き地の真向かい、ほんの数十メートル先に、高級ショッピングモールがある。そこで、人々 がレストランで食事し、買い物をしているのを想像しながら、キャンプの住民はモールをぼーっと見ている感じがする ので、私は個人的に、このモールに行くのが好きでない。そしてもちろん、スクォッターの住民は彼らの状況にハッピーではない。私のアパートからモールまで数百メートルしか離れていない ため、ここに引越しした当初は、妊娠中の運動のために毎日歩くのだと張り切っていたのだが、モールに行くまでには、キャンプのある空き地の横を通 る必要がある。地元の乗り合いバス運転手さん曰く、「歩いてモール行ったら強盗に遭うか、レイプされるよ。」おお、、、どん底状態のジンバブエより 、南アの低所得者は苦しんでいるぞ と思った。ジンバブエには食べ物とか必需品が無かったが、それは土地改革以後の異常な政治経済状況に影響を受けたのであって、それ以前は仕事さえあればきちんとした家に住むことができたのである。しかし南アでは、好景気であっても失業率が異常に高く、仕事があっても給料が低すぎてか、住宅数が足りないためか、インフォーマル住宅地区に住んで通勤する者は多いのである。

無視された人々の不満

暴動が起きた地区には、南ア国内移民向けのアパートも含まれる。これらはホステルとよばれ、アパルトヘイト時代、地方から出てくる南ア黒人男性労働者 の住まいとなった。現在は無職男性や低所得男性が一部屋に3−4人が、カーテンの仕切りをして住んでいるらしい。ホステルの生活環境はたいへん悪く、下水が破裂し、ほとんどの部屋の窓が割れている。あるホステル住民は、ホステル生活を「豚以下の生活だ」と言い、南ア現地人もホステル住民を軽蔑していると 言う。これらのホステルは政府管理下にあるのだが、民主化以来建物には何の改善もされず、施設が崩壊したままだという。南アでは、こうした低所得住民は、高所得者から同じ人間として見られていないよう である。ジンバブエでも、また他の資本主義国では多かれ少なかれそうなのだが、人間はお金があればかなり高慢になりがちなのだが、南アではその傾向がもっと顕著な感じがする。お金が無ければ、軽蔑され、同じ人間としてみなされない し、それを低所得者は知っていて、そのことについてコンプレックスをもっている。仕事が無い、お金が無いのみならず、住まいも掘っ立て小屋や崩れかけたホステルであれば、自尊心 すら減少 する。低所得者を軽視し、無視する傾向は、南ア政府にもある。スクォッター地区で移民への暴行が勃発したとき、南ア政府はすみやかな対処を怠った。暴動鎮圧要員の派遣、暴動に参加した住民への説得など、遅々として進められ、説得は説得力を欠き、国内外の人権保護団体や各国大使館にかなりプッシュされた後に、ようやく動いたという感じである。現ムベキ政権が人気を失ったため、国内問題を次政権に残してしまえというヤル気のなさも伺えるが、それにしても、暴動が起きたのが中〜高所得住宅地であったら、殺された人々が高所得者であったら、燃やされ破壊された建物がインフォーマル住宅地区の掘っ立て小屋でなかったら、やる気のない政府ももう少し早く対処したのではないか。これでは、スクォッター住民は、今回の暴動をとおして、自らは政府から見放されているのを再確認しただけである。住民の不満は解消されまい。そして、今回はこのストレスが同地区に住む移民に向けられたが、次には、目の前でゆうゆうとお金を使っている高所得者に向けられないだろうか?と思う。南アでは、民主化以来、貧富の差が広がっている 。民主化で生活が改善すると希望を抱いていた低所得住民は、人間らしく生きるすべさえまだ得られていないともいえる。


警察に発砲する国

暴動の鎮圧にやって来た警察官たちに、暴動参加者が発砲した。犯罪者による警察官への発砲、警察官の殺害は、南アでは比較的よく起こることである。ある記事は、暴動参加者の中には、警察官にマシンガンを発砲した者がいたと書いていたが、これでは暴動は簡単におさまらなかったわけで、政府も最終的には軍隊を派遣しなければならなかった。ある記事によれば、昨年南アでは108人の警察官が犯罪鎮圧の際に死亡し、この数は犯罪の多いアメリカの8倍にも及ぶという。住民が警察を恐れないのは、逮捕率が低いためとか、自らも武器をもっているためとか色んな理由があるだろうが、やはりこの国の状況はすさまじいと思う。

こんな国で、2010年にサッカーワールドカップ(FIFA)が開催されるのだろうか、と南ア国内からでさえ疑問の声が上がっている。しかし、FIFA団体は「南ア政府は事態を適切におさめることができると信じている」とコメントしている。暴動に対する政府の対応が遅い!と多くの団体から非難の声が上がっていた時にである。FIFA開催にともない、南アには、スタジアム建設やインフラ整備のために外国投資がかなり入っている。FIFAはこれらの投資を保護したいのだろうか、なんて思ってしまう(ただし、移民への暴行事件は国際世論に大きな衝撃を与え、この事件後に南ア通貨のラントが下落した)。FIFAは、かなりものすごい事件が起きないかぎり、南アで決行されるようである。そうであるならば、FIFAまでに、山積みになった社会問題が解決されてゆかねばならないだろう。アフリカの経済大国である南アは、南ア人自身、そのことについて誇りを持ち、南アはアフリカのリーダー的存在だとみなし、他のアフリカ諸国住民を軽視することもある。が、南ア国内の社会問題が解決しないかぎり、どんなに貧しいアフリカ人も、南アをリーダーとしては見ることはないだろう。

写真は移民排斥のため通りを行進する南ア住民(インフォーマル住宅地区)。青い服は作業服であり、なんらかの形で仕事に就いている、または就いたことがある住民だと思われるが、低い賃金は住民の生活を改善することができない。(Mail&Guardian、2008年5月23−29日)


zimtoday at 23:47│Comments(0)TrackBack(0)clip!

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔