しゅさいのブログ

コメディ作家で、劇団ZIPANGU Stage主宰の今石のブログです。
稽古日記や、スポーツ観戦記などなど。
お気軽にお立ち寄りくださいませ。

日の出荘のW杯2017

日の出2017チラシ仮さて、方々で告知されております通り、来年は劇団創設25周年の記念イヤーということで、年末にそのプレ企画公演を行うこととなりました。

『日の出荘のW杯2017』
(公演の詳細は下記劇団HPをご覧になっていただければと思います)
劇団公式サイト

日の出シリーズというのは、うちの劇団で、4年に一度のワールドカップイヤーに必ず上演している作品群です。それぞれが独立した物語で、サッカーに材を取っていますが、選手や関係者は一切出てきません。それをテレビ観戦している、ごく普通の人々の物語となります。アパート、病院、交番前広場、温泉宿、銀行などなど、作品ごとに場所は違えどその片隅には必ずテレビがあって、本当はサッカーどころじゃないハズの人々がいつの間にやらテレビの向こうのボールの行方に夢中になり……なにやらジンセイの大事な何かを試合の結果に賭けてしまう。そのシリーズの記念すべき第一作が1998年に初演された『日の出荘のW杯』であり、これは時の萬劇場さんのコンクールでグランプリをいただいた、劇団にとっての出世作であり、我々にとっても思い出深い作品でもあります。今回はそれをリーディング用に大幅改稿してお届けしたいと思っております。

期せずして来年はワールドカップイヤーでして、来年5月には旗揚げ20周年記念公演として、日の出シリーズの最新作の上演を予定しております。その前に、そのシリーズの記念すべき第一作を、味わっていただければ、と。リーディングといえど、まるでパブリックビューイングの会場にいるかのような臨場感で、あのジョホールバルの歓喜を味わっていただけると思っています。もちろん、サッカーをまるで知らない方にも安心して楽しんでいただける作品となっております。皆様のご来場を、こころよりお待ちいたしております。

『から・さわぎ』の裏のもう一つのドラマ(最終)

5月も半ばになり……翌週に公演本番を控えた頃に、

くーちゃんは体重が1.7キロくらいまで落ちていて、ある晩、激しい嘔吐に襲われました。それまで、下痢の症状はあっても、嘔吐はなくて……しかもひどく苦しそうで……

翌日午前中に時間を無理やりつくって、獣医さんに連れていきました。いつもの点滴に、嘔吐止めの薬も入れてもらって、家に連れて帰ったのだけど、くーちゃんは、あまり動かない。
その日も夕方からは稽古があったので、ワタシは出かけていきました。
稽古後に、役者さんとハナシがしたくて、少し飲みに行って、お芝居のハナシをしていたら、かみさんから、スマホにメッセージが届きました。
くーちゃん危ないかもしれない、と。

急いで帰宅したのだけれど、
くーちゃんはほとんど動けず、ソファの上に横たわっていました。
名前を呼んでも、少し首を動かす程度で、ソファの上には失禁の跡がありました。
昨日まではまだ自力でトイレに行けていたのに……もはや自力では立ち上がることもできないようでした。私とかみさんは、2階の我々の寝室に連れて行って、かみさんの布団の上にバスタオルを敷いて寝かせました。撫でてあげると、少しだけまた首を動かしました。しばらくはそうして撫でていたのだけれど、私もかみさんも翌朝が早いので、さすがに徹夜するワケにもいかず、午前3時を過ぎた頃に、少しだけ眠ることにしました。

目が覚めたのは、6時ごろで……
かみさんが、泣いていました。
くーちゃんは、昨夜寝かせた時と同じ格好のままで横たわっていて、
それは、本当に、ただ眠っているだけのようにしか見えなかったのです。

ほとんど苦しむこともなく……
私とかみさんが寝ている間に……
それは、私たちに、もういいよ、と言ってくれているようでした。

病気が発覚したのが、稽古開始の前の週で、
亡くなったのが本番の前の週の金曜日の朝です。
なんだか、計ったように、『から・さわぎ』の稽古と共にくーちゃんは駆けて行って、
私とかみさんは、落ち込む暇もなく翌週からの本番の準備に忙殺されていきました。
わずか二か月間の闘病生活でしたけど、
最後は、あがくこともなく、潔く、
なんだか、くーちゃんらしいなぁとも思うのです。

くーちゃんのお墓は、大家さんに相談して、今の借家の庭につくらせていただきました。
もともと、大家さんの娘さんが怪我をしている野良の子猫のくーちゃんを拾ってくれて、
それを縁あって私ら夫婦がいただくことになった経緯があって、
それが、また大家さんの持ち家の庭に眠ることになったのです。
私もかみさんも、そして猫二人、タイムもしーちゃんもここでずっと暮らしていくから、
きっと寂しくはないやね。

タイムとしーちゃんは、どこまで分かってるんだか、分かってないんだか。
特にしーちゃんにとっては、実の母親で、ずっと甘えて甘えて、過ごしてきたワケで、
突然いなくなった、あの日以来、以前にも増して私らに甘えるようになりました。時折、その姿を探しているようにも見えて、それは切ないのです。
私はと言えば……まあ、ハンパなく、泣きましたよ、その時は。
猫を亡くすのって、慣れることなんかできないので。でも、夢中で公演期間を走り抜けているうちに、少しは落ち着いて考えられるようにもなったのです。もしも、その公演期間の最中に、その時がきていたら……最後はたぶん見送ることもできず、心に、もっと深い傷を負ったことになったかもしれません。


今でも時々……
猫のご飯を用意する時、三人分用意しそうになって、あっ、と思う時があります。
最初うちに来た時はまだ子猫で、全然、なついてくれないのが心配で……でも、タイムと子供を二度もつくって、宝物みたいな子猫たちと一緒に過ごして……そうやって、共に生きてきた時は、本当にかけがえのない、ものでした。

そこは、寒くないですか
さみしくは、ないですか
くーちゃん
うちの子になってくれて、本当にありがとう


『から・さわぎ』の裏のもう一つのドラマ(3)

台本も進んで、稽古はどんどん佳境に入っていって……

今年の4月後半くらいのお話です。くーちゃんの体重は、2キロを切るか切らないかくらいまで落ちていました。獣医さんに、ステロイド剤を皮下点滴で入れてもらって、一時的には食欲が戻ったものの……
その翌日には、大変な下痢をしてしまって、おそらくは、食べたモノをほとんど消化することなく出してしまったのです。胃腸が、もはや食べ物を消化できないほどに悪くなっていたのだろうと、今にして思います。

病気が発覚した頃、開腹手術をしないと決断した時に、
ワタシとかみさんが決めたのは、なるべく、くーちゃんを、この家で、今までと変わらず、過ごさせてあげたい、ということでした。
もしも、癌であったとしても、残された時間を、なるべく住み慣れたこの家で過ごさせてあげたい。そして、今まで以上に、沢山愛情を注いで、少しでも長く幸せな時間を一緒に過ごしたい。
でも、くーちゃんはますます食欲を無くし……
薬を飲ませても、胃腸が吸収しなくなりました。獣医さんに連れていって、点滴で薬を入れてもらえば少し元気になるのです。でも、飲み薬をいくら飲ませても、一行によくなる気配がなくて、
ずっと、この頃も朝晩、獣医さんに処方してもらった薬を、飲ませていたのだけれど、なんだか今までみたいに抵抗もしなくなったくーちゃんは、されるがままに薬を飲んでいて、それはそれで悲しいことなのでした。
せめて少しでも食事をとってくれればと、鮭を買って焼いたものを冷やして与えたりしてみました。その時は食べてくれて、もう本当に少しでも食べてくれると嬉しくてしょうがなかったのだけれど、また、翌日になると猫トイレに下痢の跡があったりしたのです。

5月になり、台本が完本して、
通し稽古になる頃、もうくーちゃんはほとんどなにも食べられなくなり、
獣医さんに連れていって、点滴をしてもらって、その栄養素で生きているような状態になりました。
この家で、なるべく一緒に幸せな時間を過ごさせてあげたい、
そう願ったクセに、稽古はますます佳境になり、ワタシも滅多に家にいられなくなって、
少し時間ができると、獣医さんに連れて行って、点滴をしてもらって、それで命をつないでいる。
このころは本当に、もう、何が正しいのか、自分でも分からなくなっていました。

おそらくは、もう、助からない。

分かっていたけど、それを認めるのは難しいことでした。延命治療を否定したクセに、いざそうなると、どうしたって、少しでも長く生きてくれるように、なにかできることがあるならば、少しでもしたくなるのです。人間って愚かだ。
強制給餌という、無理やり猫の口に注射器でペースト状の餌を入れて、少しでも栄養を取るようにする、みたいな治療もやってみました。でもさ、胃腸が吸収しなくなってしまった猫に、注射器で無理やりごはんを喉に流し込んだところで、
吸収してはくれない、のですね。翌日、ひどい下痢が猫トイレに。
全てはただ、苦しませているだけなんじゃないかと自問しながら……
それでも、くーちゃんは、まだ階段を自力で登ったり(すごくゆっくりになったけど)トイレにも自力で入ったり、稽古終わって帰宅した私の膝に乗ってきたりもしてくれていたのです。

いつか来るだろう、その日が、いつになるのか。
その月の下旬には本番があって、本番週は、もうどうあがいても、小屋につきっきりになって、獣医さんに連れていく時間がない。あるワケがない。
なんとか、その翌週までもってくれれば……普段は神頼みなどしないくせに、本当に祈るしかない。せめて本番が終わるまでは……
それがその頃の切なる願いでした。

『から・さわぎ』の裏のもう一つのドラマ(2)

猫に薬を飲ませるというのは……
やったことある人ならわかると思うけど、実はとても大変なのですね。左手で猫の頭をがっしと押さえて上を向かせ、親指と小指をうまく使って、猫の口を開けさせる。そうしておいて右手で用意しておいた薬をつまんで、猫の喉をめがけて落とすのだけど……
まあ、当たり前ですが、猫がそんなおとなしくしてくれるワケはないのです。身体をくねらせて、必死の抵抗をします。運よく、喉にストンと落ちてくれればいいのだけれど、暴れる猫を押さえつけながらの作業ですから……手元が狂って舌に落ちたりすると、薬ってハンパなくマズいみたいなので、これはもう、「何するんだよ〜」とばかりに吐きだします。時には、口から泡を吹いたりもして、こうなったらもうお手上げなのです。食欲のある猫ならば、餌にまぜて食べさせるという方法もあるのだけれど、元来、腸に異変が起こってごはんを食べなくなっている猫には、上記の方法以外はなくて……その頃のワタシら夫婦は、毎日朝と夜の一日二回、文字通り、黒猫のくーちゃんと格闘していました。

ちょうど、から・さわぎの稽古が始まった頃のことです。
その頃の、くーちゃんの体重が、2.6キロくらい。こぶりな猫だけど、それでも普段の体重は3キロを超えていたので……まあ、当たり前ですが病気で食欲が落ちると、みるみる体重は落ちて行きました。それなのに、くーちゃんは、元気でした。しーちゃん(牡8歳)と追いかけっこをしたり、タイム(牡14歳)に、ちょっかいを出したり。病気になったなんて嘘みたいでした。時折、台本を書いているワタシの膝に乗ってきて、スヤスヤ眠っていたりもしました。ただ、どうしても食事を食べてくれない。ご飯をあげると、ちゃんと寄ってきて匂いをかいで、食べようとはするのだけれど、食べ始めると、苦しいのか、げっぷのような息を漏らして、すぐにやめてしまうのです。人間の場合でもそうですけど、食べられているうちはまだ大丈夫で、食べられなくなってしまうと、途端に病魔に負けてしまう。

リンパ腫(癌)か、腸炎か。それを明確に診断するためには、開腹手術をして腸の組織を調べなければならない。でも、体重も減って、体力が落ちている猫には、その手術自体が大きなリスクになってしまう。
かみさんと何度も相談しましたが、結論を出すのは難しいことでした。セカンド・オピニオンが欲しくて、以前住んでいた町にある、くーちゃんが子猫の頃からお世話になっている獣医さんの所に、レンタカーを借りて連れていったりもしました。診断結果は、今の町の、今お世話になっている獣医さんとほぼ同じものでした。
だけど……
どうしても私には、今のくーちゃんに開腹手術を決断することはできなかった。もし、その結果がリンパ腫だったとしたら……
ただでさえ体力の落ちているくーちゃんに、手術をした上で、そこから先の抗がん剤治療だのって、過酷な(おそらくは副作用を伴う)治療をさせることになるのです。何日も入院することにもなると思う。猫って、家につく生き物ですから、普段慣れた場所と違う所に連れていくだけで、とてつもないストレスを感じてしまうのですね。しかも前述した通り、それをやったからといって、完治する可能性は少なくて、おそらくそれは苦しむだけの、延命治療というものになりかねない。果たしてそれは誰のための治療なのか……

イチかバチか……
そんな言葉が適切かどうかは分からないけれど、開腹手術はせずに、両方の病気に効くと思われている薬を処方してもらいました。腸炎なら、治る可能性はある。でもそのためには……
くーちゃんの食欲が戻るかどうかがカギでした。
劇団の稽古はどんどん進んでいて……
かみさんが、忙しい合間をぬって、ペットショップで、ありとあらゆるペットフードを買ってきました。食べてくれればいい。お願いだから、食べてくれと、願うしかなかった。

獣医さんがステロイド剤という薬を、皮下点滴というやりかたで入れてくれて、
元々は、免疫を弱める作用のある薬らしいのだけど、それがいろんな病気に効果があるみたいなのですね。食欲増進の効果もあるらしい。
薬を投与したその日、
くーちゃんは病気が嘘みたいに……それこそ、何日かぶりかで、与えたごはんを、病気になる前の量、完食しました。
私とかみさんは文字通り、手を取り合って………あんな嬉しかったことは、今までになかったかもしれない。きっと、良くなると……

くーちゃんは、いつもに比べればいくらかおとなしい気もしましたけど、でも元気でした。稽古はどんどん進んでいって、それがくーちゃんのお蔭かどうかは分からないのだけれど、台本もいつもよりはずっと順調に進んでいました。この先どんなコトになっても、絶対に公演は中止にできないですから……その思いが、私にいつも以上の集中力を与えていたのかもしれません。

『から・さわぎ』の裏のもう一つのドラマ(1)

さて、久々のブログなのです。
もう三か月以上も前の出来事なのですが、これを書くのに、本当に三か月かかってしまった。ハッピーなドラマではなく、哀しい結末のお話なので、そいういうのが嫌いな方はどうか読み飛ばしてください。私だってコメディライターの端くれなので、読む人を幸せにしない物語を書くのはどうかと思うのだけど……
でも、どうしても、彼女の生きてきた軌跡を私なりに残しておきたかった。長文になります。興味ある方はどうかお付き合いを。

から・さわぎの稽古が始まったのが3月下旬。台本はそのずっと前から構想なり下調べなりするのだけれど、本格的に書き始めるのは3月あたまくらいから。私とかみさんの生活は、そこを境に極端な繁忙期に突入するのだけど、まさにその頃に、黒猫のくーちゃんの様子が、おかしくなったのです。食事を度々残すようになり、まあ、普段もたまにはそういうことがあるので、ちょっと調子が悪いのかなぁくらいに思っていたのだけれど、1日に普段の3分の1くらいしか食べなくなり、どうもこれは本当におかしいってことになって、獣医さんに連れて行ったのが稽古始めの数日前のことでした。

猫の病気って(まあ猫に限らずだと思うけど)、自覚症状を口にしてはくれないから……
人間の場合は、どうも胃のあたりが重いとか、前兆を感じて病院に行ったりして、その結果、早期発見、っていうこともあり得るのだけれど、猫の場合はそれを喋ってくれたりはしませんからね。実際、食欲は落ちてたものの、日々元気に駆け回っていたし、甘えに来てたりはしてたのです。血液検査に異常は見られず、念のためにと、撮ってもらった腹部エコーで、獣医さんの顔が曇り、
診断は「腸炎、もしくはリンパ腫でしょう」というものでした。

黒猫のくーちゃんは、生後5か月くらいに縁あってうちにきた子なのです。
9歳8か月は、人間で言えばワタシよりちょっと若いくらい。以前のブログでも触れたのだけど、うちの先住猫のタイムさんとの間に合計4匹の子猫をもうけて、ちゃんと育てたお母さんでもありました。ワタシらと暮らした9年以上の間、一度も病気にもならず、妊娠期間も子育ての間もその後も、ずっと我が家で最強で一番元気な猫でした。基本的に人間嫌いで、実際、最初はワタシらも嫌われていて、果たして本当にうちの子になってくれるのかが心配で、その様子はブログにも書いています。ただ、一度心を許した相手には、それが人間であっても、べたべたに甘える甘え猫でもありました。

リンパ腫というのは、
ありていに言えば、癌です。そしてまあ、食欲が目に見えて衰えるほどに症状が出てしまった癌は、もしそうであるなら、まず完治は難しい。人間のそれと同じで、抗がん剤治療とか放射線治療の類も、(これは後で調べて分かったことですけど)あるにはあります。ただ、前述のように早期発見の難しい猫の場合は、少しの延命にはなっても、結局は苦しむ期間が長くなるだけ、というケースも珍しくないようなのです。腸炎の場合は、まだ完治する可能性もあるのだけれど、その二つは症状が極めて似ていて、きちんと診断するには開腹手術をして腸の組織を検査しなければならない。でも、その検査だけの手術が必然的に麻酔を伴うワケで……体重が減って体力の落ちた猫には、それだけでかなりのリスクにはなってしまう……

獣医さんからの帰り道すがら、今後どうするかの決断もできず……
これまで全く、そんな日が来るとは思いもしなかったのだけれど、それはただ、考えてなかっただけで、遅かれ早かれ、いつかはこんな日がくるのだと思い知らされて、
気がついたら涙がこぼれていました。出会った瞬間から、いずれは別れの日が来るのだと。人と人でもそうなのだけれど、今というのは、いずれ来るその日までの、長いお別れの途中なのだと。人は日々の生活の中で、つい、そのことを忘れてしまう。小さなキャリーの中で、今までより小さくなってしまったくーちゃんを見て。そしてこれからどうするかの決断も迫られていて……

その数日後、容赦なく、まあ当たり前なのだけど、
公演の稽古も始まったのです。

から・さわぎご来場御礼編

御礼遅くなりましたが、ZIPANGU Stage公演『から・さわぎ』無事終了いたしました。全ステージを通してお客様の笑顔と笑い声の絶えない、本当に幸せな公演となりました。ご来場いただきました全てのお客様に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

空舞台01今回の舞台はお菓子メーカー。ってことで、なるべくシンプルでかわいい美術をとお願いしたのだけれど、本当に素敵ですね。実は会社を舞台にするのって美術的にはとても難しいのです。オフィスっぽさを出そうとすると、どうしても絵としては面白くない、画一的なモノになりがちでして、なのにまあ……。相変わらずセンスバツグンの美術の鎌田さんと、お菓子のポスターや会社のロゴマークを作成してくれた小道具協力の松下さんに多大な感謝を。そして、それをうまく引き立ててくださった猿谷さんの明かりにも。ロゴマークの当てがさりげなくハートになってたりして、こういう遊び心って素敵ですよね。

マダム01マダムという呼び名の、会社に君臨するワンマン女社長を演じた宮坂さんの一枚。物語は、そのマダムの逆鱗に触れてクビになりそうな主人公たちが、彼女に恋をさせようと企むところから始まるのですが、逆に言えば、その怖い怖い女社長に存在感とリアリティを与えられる女優さんあってこその今回のお話しなのでした。どうでしょう、この迫力。すごいよね。

シーン02 (1024x720)今回は、シェークスピアの古典戯曲をモチーフに……まあ、設定は現代日本だし全然シェークスピアっぽくはないのだけれど、『喜劇』というものの原点に立ち返ってみようという企画でした。はかりごと、と、嘘があって、うまく行きそうになっては破綻して、の繰り返し。

企画室01 (1024x683)








まあ、最近のうちの作品と比しても、最も明るくて気軽に笑える、ある意味一番シンプルなコメディ作品になったと思っています。実はそういうのが、やる上では一番難しいんだけど。

松尾&藤01怪優、長野さんが演じた松尾取締役。語り口が一人だけ芝居じみてて、なぜだか無理やり韻を踏む。これ、実はシェークスピアをフューチャーして作ったキャラクターだったんだけど、まあ、そんなこたぁ分からなくてもお客様には大人気キャラでした。最後の方で何故だか普通のセリフがラップになってしまうんだけど、あそこは何度見てもワタシ自身が大笑いしてたなぁ。

全景02 (1024x683)

















あと、今回は『から騒ぎ』のハズなのに、劇中何度も流したのは映画『ロミオとジュリエット』のテーマ曲。まあ、あの有名なフレーズだけを効果音的に編集してもらって使ったのですが、最後このシーンになってその意味が明らかになるのです。音響の田島さん、相変わらず良い仕事をしてくれますね。あの物悲しい名曲がこの悲しそうな場面に流れていて、おそらくはここ、お客様の笑いを一番とれたシーンなんじゃないかな。かつ、ここで感動したり泣いたというお客様も少なからずいらしたりして。専務役の三上さんの名演のお蔭もあって、ここは凄く良いシーンになったとも思うのです。

全景04 (1024x638)















今回も本当に大変な稽古でしたけれど、全てを出し切ってくれた役者さんたちにも心からの感謝を。コメディって、なんだかんだ言ったところで、結局はお客様に楽しんでいただけたかどうかが全てで……
ホントに、とんだ『から・さわぎ』でしたね。

言いまつがいシリーズ

さて、明日は最終稽古。

思う存分稽古できるのも、どうやったらもっと面白くなるのかを突き詰められるのも、実質的には明日で最後。小屋入りしたら、本番環境にアジャストすることに神経を使わざるを得ないので……もちろん、それは千秋楽が終わるまで続けるにしても、明日で最後と思った方がいいのです。

お芝居は日々面白くなってきております。でも、あと一歩。そのあと一歩が実に難しい。コメディってさ、本当にセリフの量も膨大だし、きっかけの数も膨大だから、それをこなすだけでも大変なのだけど、その、あと一歩が踏み出せるかどうかが、ものすごく分かれ目なのですね。どんなにシリアスなシーンだろうと、どこかで役者さんが楽しみながらやらないと、お客様にはその楽しさが伝わらない。どれだけ、余裕と自信を持ってできるかが、最後の勝負。

てなところで、恒例の言いまつがいシリーズ。今回も大変愉快な言いまつがいが稽古場に溢れております。ものすごく良い役者さんでも、なぜか時にはこんな愉快な言いまつがいをしてしまう。なんでなんでしょうね。ではいきます。チャンチャン。

「専務が血便をふるっているんだ!」(by佐土原正紀)

言いまつがいチャンピオンの佐土原氏の、今回の最高傑作。正しいセリフは「専務が熱弁をふるっているんだ!」なのです。なんでこの人は毎回毎回……熱弁をふるうならわかるけど、血便をふるうって、一体どういうコトなんだ? 血便を、ふるうのか。その絵は想像できなくもないけれど、その絵、できれば想像したくないよ、オレは……
大変な稽古の中で、時に言いまつがっちゃうのはわかるけど、なんでこんな面白おかしく言いまつがえるんだろうね。もしかして、狙っているのか、佐土原。


「君らの介護が役員会議で承認された」(by三上さん)

今回専務の役で出演していただく三上さん。もう雰囲気が専務だし、独特の語り口にはものすごく味があるし、存在感のあるステキな役者さんなのですが……正しいセリフは「君らの解雇が役員会議で承認された」なのです。女社長の逆鱗をかってクビにされちゃいそうな主人公。正義の専務はそれに対抗すべく尽力するのだけど、相手は社長なので、力及ばず、苦渋でそれを主人公たちに伝えるセリフなのだけど……役員会議で承認されたの、介護なの? つまり役員会議で介護するかどうか検討してたことになるんで……えーっと、なんか、違いますよ、ね? 解雇と介護。最後の一文字に濁点が入るか入らないかだけなのだけど、それって、ハゲとハケくらい違うと思うのですよ。主人公は20代の若者設定なんで、たぶん、介護は必要ないですよ、三上さん。


「ハトちゃん、気合入りすぎ。気合入れな」(by小野寺さん)

正しいセリフは、「ハトちゃん気合入り過ぎ。思い切りよくやりな」なのです。今回のヒロイン的存在の役どころの小野寺さん。クール&ビューティな先輩社員が、てんぱってる新入社員のハトちゃんをリラックスさせようとするセリフなのだけど……
気合入りすぎ。気合いれな……って言われると……どっちやねん!って突っ込み入れたく、なりますよ、ね? 普段からクール&ビューティの小野寺さんの、痛恨の言いまつがいでした。


「初めて聞きました」(by宮坂さん)

えーっとこれは、正確には言いまつがいではなくて、演出家としてのワタシのダメ出しを聞いた時に宮坂さんが、つい言ってしまう言葉なのです。今回、女社長の役を演じていただく宮坂さんは、もうとてつもない存在感のある役者さんで、宮坂さんが絶好調なら、誰もが比肩できないほどの良い芝居をしてくださるだろうと、私は思っている。でも、この方、なぜだかわからないけれども、演出家のダメ出しをすぐ忘れてしまうのです。3回、4回と同じダメ出しをして、また同じところを同じようにやられるので、「宮坂さん、そこはこうですよ」ってワタシが説明すると、冒頭のセリフが出てくる。いやいや待ってよ、オレ、おんなじこと何度も説明してますよね? って言って初めて、あー!となる。どうやら本当に忘れてしまわれるようです。演出家としては「えー?」となってしまうのだけど、でもそんな宮坂さんが言葉にしてくれる言葉は、もう、オレの想像の範疇をはるかに超えるくらい、良い言葉にしてくださるので……
この宮坂さんの、本当の言葉をどれだけ引き出せるのかが、演出家としてのワタシの使命だと、この頃は思っています。そのためならワタシは、宮坂さんの中でストンと落ちるまで、何回でも何回でも説明しますよ。例えその度に「初めて聞きました」と言われようとも。

他にもいろいろ紹介したいのだけど、今回はこのへんで。今回集まっていただいた役者さんたちは本当に素晴らしい方たちばかりで、それはもう、その潜在能力を発揮してくだされば、公演の成功は約束されたくらいだと思う。その潜在能力を引き出すのが演出家の役目なので……
がんばりますよ、ワタシも。頑張り甲斐のある方たち。本当にそう思えるので。
明日は最終稽古。

完本、からの……

さて、今回もなんとか無事、完本となりました。
まあ、当たり前なんだけどさ。ホンが出来なきゃお芝居は出来ないので……でもまあ、毎度毎度、書いてる途中には思うのですよ。ホンマにこれ、ちゃんと最後まで書けんのかよ?って。ああ、恐ろしい(笑)。

例によっての備忘録。稽古初日の3月23日に16ページ。これ、稽古初日に出した分量としては、過去3番目くらいに多いと思う。前回なんて、稽古初日は5ページくらいでしたもんね。立ち上がりは上々。3月30日で、22ページ、4月5日に28ページ、12日で37ページ。まあミステリィと違って、後半の展開設定がアバウトでも書き進められたコトと、まあわりあい物語の初期イメージとコンセプトがはっきりしていたので、前半部はラクでしたね。本番のひと月前の4月19日に48ページと、ここまでは週毎に10ページ前後の更新で、正直ここまではあまり苦労した覚えがない。まあイケイケで書けるうちに書いとけ! みたいな勢いでした。稽古場での読み合わせも笑いが絶えず、この分なら、自己記録更新でアップしちゃうんじゃないかと錯覚するほどに。もちろん……そんな甘いモノではなかったワケです。そこからが、今回は大変でした。
4月30日、直しを含めて、51ページ。収束部分と結末が見えてこず、書いては書き直しという、まあいつもの苦労(作業?)がここに来て始まりました。最近はわりあい、中盤で苦労して、その分終盤は一気にってことが多かったんだけど、今回はさにあらず。ああなってこうなっての成り行きだけは決まっていたので、先を書き進むこともできたんだけど、あえてそこから中盤の見直し。台本は、難しいやね。まあさんざんあーでもないこーでもないを繰り返した挙句、ようやくしっくりこなかった部分がしっくりし始めて……
5月2日に完本。最終的なページ数は63ページになりました。本番初日の3週間前の完本は前回とほぼ同じで、ページ数的にもほぼ同じなのに、まあ道のりというのは旅の数だけあるのですね。ネタバレになっちゃうので詳しくは書けないのだけれど、たわいもないような男女の喧嘩のシーンが思いのほか膨らんで、それが結果、ラストシーンに至るまでの原動力になったのでした。書いてみなきゃわからんコトって、何本戯曲を書いてもなくならない。なんかヘビーな笑えないシーンになりそうな予感がしていたのに、書いてみたら、それがその後のシーンにまで命を与えてしまう。作家があらすじやらプロットを事前にいくら練っていても、実際書いてみなけりゃわからない部分にこそ、命は、芽生えるのだなぁ。

例によって今週の稽古で大急ぎで最後の部分の立ち位置をあたって、今日(もう昨日だけど)無理くり通し稽古を敢行しました。いろいろ問題点も山積みで、まだまだこれから感満載なのは、いつもの初通し稽古と同じなのだけど、不思議とあっと言う間に時間は過ぎていって……終盤部は、あれ、もう終わりなの?と、なんだか終わるのが惜しいような気になったのです。まだまだもっと直しも入れたい。残り2週間で、台本的にももっともっと面白くなるなぁ、と。現実的には時間との戦いの中での冷静な判断になるのだけれど、少なくともそれを戦う甲斐はある。それはまあ、脚本家として幸せなことなのかな、と。

うむ。本当にエキサイティングだなぁ。あ、今回役者さんもそうとういいです。それについてはまた次回のブログで。

から・さわぎ

からさわぎチラシ表面
チラシ画像は、例によって大河画伯の作品です。いやはや素敵に面白そうですね。こんなチラシを見かけたら、私自身がワクワクしてしまうなぁ(笑)。本編も、これに負けないお芝居にしなくちゃね、って、これも毎回思っていることではありますが。

稽古は順調に進んでおります。来週木曜日(20日)からはチケットも発売開始となりますので、下記をご覧の上、是非ともお早目のご予約をご検討くださいね。
劇団公式サイト

今回のお話のタイトル、実はシェイクスピアによく似た(というか,ほぼ同名の)戯曲がありますが、例によって内容は全く関係なく、それを一部モチーフにしたZIPANGU Stage版『から騒ぎ』という企画となります。

舞台となるのは、お菓子メーカー。社運を賭けた新しいチョコレートの発売のために、役員会議でのプレゼンに臨む商品企画室のメンバーたちが、なぜだか突拍子もない恋の空騒ぎを巻き起こすことになります。ワンマンで怖い女社長や、一癖も二癖もある重役たちを相手に、悪戦苦闘、七転八倒の社員たち。はかりごと、に端を発した、恋騒動の行方や、いかに。

原典の『から騒ぎ』もそうですが、そこにはジェンダー論や結婚論などなど当時の彼の国でも人々が興味津々だったことが、実は深いテーマとして喜劇に盛り込まれています。人生の甘いも辛いも知り尽くした中高年の『から騒ぎ』には、様々な人間模様が浮き彫りになるハズ。新しいチョコレートを作るための、おそらくはただ甘いだけではすまない珍騒動に……
どうぞご期待ください。


今年も春にして……

気がつけば、はや三月。
さすがに暖かい日が増えてきましたね。時折寒の戻りもあるものの、まあ、春なのです。出会いの、季節。ってことで今日は、オーディションとワークショップの情報をひとつづつ。

まずはうちの5月本公演に向けてのオーディション。まだご応募は受けつけておりますので、どうぞ下記劇団HPをご覧のください。
ZIPANGU Stage公式サイト

今回、5月に上演するお芝居は、ZIPANGU版『から騒ぎ』ってことで、老いらく(?)の恋騒動に振り回される会社員たちを描いたコメディになります。いろんな年代の役者さんが必要なお話しなので、オーディションに年齢・経験は問いませんが、現状、特に20代〜30代の女優さんが足りないので大いに募集いたしております。オーディションとは言っても、普段我々がやっている稽古に一日体験参加していただく感じですので、どうぞお気軽に。ご応募お待ちいたしております。


もう一つは、私が劇団とは別に参加している、日本コメディ協会の方で、今月のワークショップを今石が担当いたします。今回は「アクションとリアクション」というタイトルで、コメディ演劇における、役者さんの『動き』や『所作』といったモノに焦点をあてたワークショップとなります。お芝居は初めての方から、もうベテランなんだけど動きの基礎的な部分をさらってみたい方まで、どなたでもご参加いただけます。詳細は下記HPをご覧ください。
日本コメディ協会公式サイト


どちらもHPに応募方法が書いてありますが、今石にメール等で直接ご連絡いただいても構いません。
これからはどんどん暖かくなっていって、やがて桜も芽吹いて……
何かを始めるには、とても良い季節かもしれませんね。
ご応募、お待ちいたしております。

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