しゅさいのブログ

コメディ作家で、劇団ZIPANGU Stage主宰の今石のブログです。
稽古日記や、スポーツ観戦記などなど。
お気軽にお立ち寄りくださいませ。

遅ればせながら、新年のご挨拶

皆様、2019年、明けましておめでとうございます。
19劇団年賀状(住所ナシ)


















昨年は劇団にとって、創設25周年の節目の年。思い返せば本当に沢山の方々に支えられた25年でした。そして、26年めの今年、また新たなチャレンジをしたいと思っております。まずは4月に予定している、ラグビーを題材にした新作上演。最近じゃサッカーよりラグビー好きになっちまってるしゅさいは、今年のワールドカップ日本開催もとても楽しみにしておりまして、草の根的(?)にも、盛り上げに一役買えたらと思っているのです。どうぞお楽しみに。


19猫年賀状(住所ナシ)そしてこちらは、恒例(?)の猫親戚限定の猫年賀状(笑)。
猫たちも、今年も健やかに過ごすのだよ。

去り行く2018年に

さて、いつの間にやら、2018年の最後の日です。

今年は、1月に協会公演『シェイクスピアの何か』(これはスタッフ参加でしたが)、5月に劇団の本公演『日の出政府のW杯』(先のブログの通りタイヘンでした(笑))、8月に協会公演『ワラカルト』と、主に三本の公演に参加しました。数は三本ながら、わりかし前半に密集していたため、上半期はなんだかあっと言う間で、せわしなくいろいろしていた印象なのだけど、9月以降は本当に久々に公演の予定も準備もない、まあ言ってみたら数年ぶりの夏休み(笑)みたいな日々でした。充電期間としては十分。てなワケで2019年は初っ端から活動繁忙期になりそうなのですね。

まずは年明け、1月の27日に、夏の協会公演のためのオーディションを開催します。
公演自体は7月9日(火)から14日(日)の日程で、下北沢駅前劇場にて行われる予定でして、海外ファルスと、協会オリジナルの、2時間程度の作品を2本立てで上演することになっております。今石はその、海外ファルスの方の演出を担当する予定。自分にとっても初めての試みになりますし、いろいろと楽しみな公演になりそうなのですね。よろしければこちらをご覧の上、是非オーディションにご参加いただければと思います。
https://stage.corich.jp/bbs/51975

そして来年2019年と言えば、ラグビーワールドカップの日本開催の年になります。ワタシ個人としても盛り上げに一役買いたい気持ちもあって、ラグビーに材を取った公演を春にやる予定です。こちらは近々詳細を発表できると思いますので、どうぞお楽しみに。

改めまして、今年一年、劇団や協会でお世話になった方々に心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
そして来年もどうぞよろしくなのです。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

『日の出政府のW杯』の裏のもう一つのドラマ(最終回)

それから本番初日までの四日間。
当然ですけど、更に過酷な日々でした。ホント、過酷過ぎて記憶には残らないので、よくは覚えていないのですが。

最終稽古の日曜日。通し稽古を観に来られた、音響の田島さんと照明の猿谷さんに、小屋入りしてからのスケジュールについて相談しました。今回はこういう状況なので、小屋入り後もなるべく稽古をさせていただきたい、と。

本番小屋入りしてから、更に稽古する。ワタシも若いころはこれを結構やってましたね。お客様により良いお芝居をお見せするために……最期の最後まで、稽古する。これって、まあそう言ってしまえば免罪符になるのだけれど、今の自分ならわかる。本来はやってはいけないこと、なのです。本番小屋入りして以降は、せいぜい調整のための稽古のみに押さえるべきで、そこから更に役者さんたちを追い込む稽古をするのは……これはもう、そもそも演出家の稽古スケジューリングのミスであって、褒められたコトでもなんでもないです。そういう過酷な稽古は、稽古場で終わらせておくべきで、小屋入りした後は、そこでしかできないことをやる。その方が明らかに本番の出来も良いのですね。そうしないのは、非常事態。

小屋入り後の、建て込みやら音出しやら照明シュートなどなどの必須作業の合間に、隙を見て稽古させてもらいました。場あたりも半分くらいは稽古だったと思う。これ、普通はスタッフさんにはすごく嫌がられることなんだけど、音響さんも照明さんも嫌な顔ひとつせず、その成り行きを見守ってくださってました。ホント、ありがたかったです。相変わらず、分かってるんだか分かってないんだか分からない世古さんは、小屋入りしてからもワタシに当社比20%増し(笑)で怒鳴られておりました。こいつも例の台本改稿でかなりセリフが増えてましたから、過酷ではあったと思う。

貴城さんには、声のみの出演で、出ていただくことにしました。これはホント奇跡的なことなのだけど、改稿前の元々の台本に、声だけの出演キャストの役があったのですね。今回は25周年記念公演でしたので、日替わりゲストというのを各回呼んでいて、その日替わりゲストさんたちに(自分の出演回じゃない回に)適当に声をあててもらおうと企んでいた。
その声のみの役を、貴城さんにお願いしたところ、未だ包帯グルグル巻の状態なのに、快くやっていただけることになりました。元よりナレーションやら声優のお仕事をされている方なので、勘も飲み込みもよくて、カザマ一尉という登場人物は、あっと言う間に貴城さんのモノになりました。録音でも良いと思っていたのだけれど、貴城さんはライブで、つまりは本番中に袖から声をあててくださいました。前述した通り、演出助手的なことやスタッフさん的なことをやっていただきながら、このカザマ一尉の役は、結果的にはワタシの目論見よりもはるかに高みにいったと思う。


公演初日の日。
19時半からは本番。その昼間のゲネで、
なんとか、これならお客様にお見せできるモノになったとワタシは思った。実際それまではセリフが危ういシーンがやはり残ってたり、突貫工事の印象がぬぐえなかったと思う。でも、なんとかここまできた。役者さんたちは死に物狂いだったんじゃないかな。例の、日の出シリーズ名物の観戦シーンも、なんとか形になってきて……

そして迎えた本番。
本当に、ここ10日ほどの間にあったことが思い出されて、感慨深い初日でした。
なんとか間に合った……
そして初日の幕は開け……
ほぼ満員のお客様を劇場に迎え、
いろいろあったけれども、最高の舞台をお客様に……
でも、現実というのは、なかなか難しい。
その回に限って、それまで稽古でも出なかったミスが続出しました。
ゲネ(本番前のリハーサル)の時に達成できたコトが、本番で出来なかったシーンも多々あり、
ワタシの胸に去来したのは、間に合わなかった、という思いでした。それは勿論百パーセント、ワタシの責任なのだけど。

その翌日からも……
千秋楽まで、合間をぬって、稽古しました。役者さんには、本当に過酷な現場だったと思うよ。貴城さんには演出助手としてもプレイヤーとしても最後の最後まで、より面白くを共に追求していただいて、
そして、日を追うごとに実際にお芝居も良くなっていきました。
千秋楽で、本当に楽しそうに笑っていただいているお客様を見ながら、その同じシーンで笑えなかった初日のお客様のことを思う。結果的には、普段のうちのお芝居と同じかそれ以上の評価をもらいながらも、未だに初日のお客様のことを。

改めて振り返れば、ヒロイン役の純ちゃんや、星河さんにも、もっといろいろ、伝えたかったなと、思う。似合わないカリスマ総理の役をやってもらった佐土原さんにも。素敵な官房長官になった重役さんや、ジョーカーのような反則記者の役をやってもらった滝沢さんにも。いっぱいいぱい伝えたいことはあって、でも時間は有限で、どこかを拾えばどこかを捨てざるを得ず、なんだか人生みたい、ですね(笑)。

風のように通り過ぎた、あの一瞬の煌めきが、今では懐かしくもあります。
初日の出来だけは痛恨。これはもう、墓場まで(笑)持っていくしかないでしょうね。
でも、それでも結果的には……
こうなって、よかったんじゃないかと、今にしては思うのです。
貴城さんには今回の座組に参加していただいて、本当にありがとうと言いたいです。これは他の役者さんたちにも勿論そうなのだけど、それだけは偽りなく、心底、そう思うよ。何よりこんなお芝居は今後もう二度と……
二度と出来ないと、思うのです。

『日の出政府のW杯』の裏のもう一つのドラマ(4)

さて、それからの一週間のことは……
過酷過ぎて正直、あまり記憶にないです。断片的には覚えているのだけど。

火曜日に、直した台本を配って読み合わせ。すぐにを立ち稽古しながら、シーンの微調整。修正台本は完成していましたが、当然のことながら、元々いるべき登場人物を一人削っているので、各登場人物の役割が変わっているところを確認しながらの調整作業が必要でした。特に、コヤさん。セリフ自体が大幅に増えた上に、これまでなかった役割も担ってもらうことになったので……机上の計算でうまくいったことが実際に役者さんの身体に落とした時にうまくいくかどうかは、やってみないと分からないことも多くて、まあ、過酷だったと思うよ。
敵役なのにバディ(相棒)。つまりは、ライバルだけど、味方、みたいなモノで、それはまあ、これまでのいろんな物語でもありますね。心憎しと思っているのに、なぜだかつい味方しちゃう、みたいな。ただ、コメディっていうのは分かりやすさもすごく大事なことなので、ある意味曖昧な、複雑系の感情を抱えた登場人物が果たして成立するのかどうかは、ワタシにとっても挑戦でした。実際にやってみて思ったのは……
コヤさん演じる敵役と、主人公との関係性は、これだけは間違いなく、修正前の台本よりも明確に面白くなっていました。それは台本修正後のコヤさんの演技を見ても明らかでした。それまで主人公と反目していたハズのコヤさんが、負けそうになっている主人公を見て、「ふざけんな!まだ終わってねえぞ!」と鼓舞する。そのシーンのコヤさんは……

コヤさんのみならず……
役者さんは本当に大変だったと思うよ。公演まで残り僅か一週間ほどの時期に、台本のおよそ3分の1から半分近くが変更になって、少なくない、既に入れたセリフを入れ直してもらって。日の出シリーズは最後にその要となる、観戦シーンという、まあ役者さにはただでさえ過酷なシーンがあるのです。そこに関してはそれまであまり稽古もできてなくて。でも、本番は待っちゃくれないのです。次の日からは全シーンの段取りを洗い直しながら、同時に役者さんたちにはセリフを入れてもらいました。後は、時間との勝負。

驚いたのは、その翌日、水曜日の稽古場に、貴城さんが現れたコトです。それこそ、顔中包帯をグルグル巻いたような、金田一耕助モノの犯人みたいな(笑)いで立ちで。
ちょっと動いたり笑ったりすると、まだあちこち激痛が走るようなカラダで、でも貴城さんは稽古に来てくれたのです。状況を考えればいろいろ気まずかったり心苦しかったりしただろうに、何か少しでも我々の役に立てないか、と。そこからの貴城さんは、ワタシをフォローしてくれる演出助手であり、役者さんの悩みを聞く役者リーダーであり、衣装や小道具やらメイクまでも、我々を支えてくれるスタッフさんでした。当然アルコールは医者に禁じられていたのですが、その日以降の稽古後の飲み会は、ワタシと貴城さんの、演出会議になりました。どうやれば現状からこのお芝居が少しでも良くなるか……貴城さんは包帯ぐるぐるの身体で、ノンアルコールのビールを飲みながら、いろいろと意見を言ってくださる。この人はどれだけお芝居が好きなんだと、まあ、ありがたくて何度も涙が出そうになりました。

木曜日、役者さんはまだ台本片手にしながらの、初通し稽古。

金曜日、最後の要の、日の出シリーズ名物の観戦シーンの稽古。

土曜日、台本を外しての、初通し稽古。

金田さんや悠人君も、修正台本でかなりセリフが増えていたのだけれど、明らかにスイッチが入ってきて、お芝居がぐっとよくなってきました。過酷な状況は時に役者さんを成長させます。本来なら私がもっと色々とアドバイスをしてあげたかったのだけど、彼、彼女らはそれを待つまでもなく、勝手に面白くなってくれていました。良い稽古をしながら、でも時間は足りず、あと、もう一週間あれば……
それは偽らざる本音でしたけど、もう、翌週の水曜日には本番だったのです。

『日の出政府のW杯』の裏のもう一つのドラマ(3)

こうやって後から連載形式(?)で振り返っていると、その当時、ワタシが随分長いことグルグル悩んでいたように読めるのだけど、悩んだのは実際はほんの僅かな時間です。なにせそんな暇なんて全くなかったですから。本番初日まで、10日。決断したら、もう動き出すしかないのです。それが、どれだけ困難で不可能ギリギリのミッションだったとしても。

貴城さんには電話で、後のことはこっちでなんとかするから、身体を治すことに専念して欲しいと伝えました。申し訳なさそうに、「代役のあてはあるんですか?」と、貴城さん。ワタシはこう言いました。
「譲さんの役を、貴城さん以外の役者さんにやらせる気はないから」

ワタシに最後の決断をさせたのはその部分でした。二か月近く、二人で育ててきた譲さんという登場人物を、他の役者さんがやる姿は想像できなかった。これまで稽古してきて、ここで降板せざるを得なくなった貴城さんがどれだけ無念で忸怩たる思いなのかは想像に難しくなかったですし。

その日のうちに、他の役者さんには、台本を修正する旨を伝えました。緊急事態故に、快く同意してくれた役者さんたち。でもその内心には不安やら焦りやらの計り知れないモノがあったと思います。そりゃそうだ。既に3分の2以上のセリフと段取りは入れてもらってましたから。それが、この時期になって。

翌日月曜日、この日は本番までの最後の稽古休みの日でした。いつもの公演ならば、演出としての準備やら残った制作作業やらをここでやるのだけれど、全て後回しにさせてもらいました。この日のうちに修正台本をあげなければ、実質公演は無理だと思っていました。勝負は一日しかない。

台本上の譲さんには登場人物としての、おおまかに二つ役割がありました。ひとつは主人公のバディ(相棒)役。時にくじけそうな主人公に寄り添い、共に目的に向かう人物。もう一つはそのキャラクター故におかしなコトを喋ったりして、本質的には決して明るくはない状況設定を持ったこのお話を、楽しめるコメディとして明るくする役割でした。それを彼抜きで果たしてどうやるか。そして、他の役者さんの負担を考えるに、既に入れてもらったセリフは極力変更しないでそれを達成することが望ましいのです。更にかつ、これが一番大事なことなのだけど……
台本の改稿は、改稿以前より(台本自体が)面白くなるべきで、改稿してつまらなくなってしまっては全く意味がないのです。それはこんな緊急事態であろうと、そうあるべきだとワタシは思うし、実際そうならなければ、降板した貴城さんにも、他の役者さんたちにも申し訳がたたないとも思う。今、思い返してみても、無茶苦茶なハードルの高さで、不可能ミッションにも思えてしまうのです。自分ごとながら。

2場の、譲さんの最初の登場シーン。ここで彼が登場することで、物語が次の展開を迎えるのだけれど、彼が出てこなくてもそれ以上に、同じ効果を与える出来事を起こさなければならない。3場の中盤の山場で、譲さんが励ますことで主人公が奮い立ったりするのだけれど、それを彼抜きで、かつより鮮明にそのシーンを際立たせなければならない。なにか良い手はないものかと、考えて考えて……

思いついたのが、主人公の敵役だったコヤさんの役を、敵役と同時に、バディにできないかということでした。敵役なのに相棒。なんだそりゃワケわかんねえってなりそうな、強引すぎるやり口なのだけど、その方向性で各シーンを見直してみたら、これが案外……

いける!

そういうコトが起こるのは、ワタシにしては珍しいのだけれど、
それから大急ぎでパソコンのワープロソフトを開いて直しを始めて、ふと気がついたら5時間くらい経過していて(その間の記憶はほとんどない、です)
気がついたら、台本から、譲さんという登場人物はいなくなっていて、
つまりは改稿は全て終わっていたのでした。

『日の出政府のW杯』の裏のもう一つのドラマ(2)

さて、どうすればいいのか、どうすべきなのか……

その日の稽古の、夕方の休憩時間に、事故にあってしまった貴城さんから電話がありました。精密検査の結果、脳や内臓に異常は見られなかったのだけど、外傷、特に顔の裂傷が酷くて(特に目の周りの傷が酷かったようです)とても一週間程度で治るような怪我ではないようだ、と。
その時から、ワタシの頭はぐるぐる回り始めたのです。

もし、本番10日前の段階で役者さんが降板してしまったら……
演出家として取りうる対応はおそらく三通りくらいしかないと思う。

(1)降板した役者さんに代役を立てる
(2)脚本を書き換える
(3)公演自体を中止にする

もしも運良く、降板した役者さんの代わりに本番を努めていただける役者さんが見つかれば……
対処としてはそれが一番スムーズ。台本は現状のままで出来るし、周りの役者さんへの負担も一番少なくて済むのです。ただ、普通はそんな都合よく、翌週に迫った本番スケジュールを全てこじ開けてくれる役者さんが見つかるワケはなくて、よしんば見つかったとしても、本番までひと月もあるならいざしらず、残り10日もない僅かな時間で全てのセリフを入れていただいた上で、他の役者さんとのコンビネーションも磨かねばならないですから……
それはもう、代役の役者さんの能力次第ではあるけれども、ある種の賭けにはなってしまうのですね。

うちの劇団の公演の場合は、座付作家(つまりワタシ)がいるワケなので、脚本を書き換えて、降板した役者さんの、役そのものを削るという選択肢はあります。ただ、今回の場合は貴城さんの役は重要な役でしたので……それをやれば、これまでの稽古で培ってきた台本の、構造やらバランスやらが全て崩れることになります。単純にセリフを他の役者さんにふれば済むのであればさほど難しくはない、と思う。でも、役割をきちん伴った役を削ってしまったら……それはもう、台本を根本から見直すのに等しい作業になってしまうのですね。他の役者さんにしても、改めてセリフを入れ直すことになって、その負担は計り知れないとも思う。

(3)の選択肢は、最初からなかったです。公演直前で、既にお客様の予約も沢山入っていて、つまりは沢山の公演を楽しみにしてくださってる方が、既に予定をこじ開けてくださっていて。ジュリーならいざ知らず(笑)。カリスマでも芸能界のレジェンドでもない私がそれをやったら、それはもうお客様への裏切りでしかないですから。なにより、これまでの決して短くない稽古期間を供にしてくれた役者さんたちに、申し訳が立たないですし。

残された時間は本当に僅かで……
それでも決断せねばならず、本当にワタシはグルグルしていました。
貴城さんと過ごした、これまでの稽古期間のことが思い出されて……

貴城さんは、本当に稽古熱心な人で、そして飲むことが大好きな役者さんです。うちは古い劇団体質の劇団なので、大抵稽古後には飲み会をやるのだけれど、ワタシの記憶が確かなら、稽古後の飲み会を一度も欠かしたことがない方でした。そしてまあ、よく喋る(笑)。時には演出家のワタシの言葉を遮ってでも、自分の言いたいことを喋りまくってました。ただ、その言葉には常に演劇への愛があふれていました。本当にお芝居が大好きな人なんだなぁと……。今回のお芝居の中の、譲(ジョー)さんという、彼が演ずるハズだった役も、サッカー(日の出シリーズですからサッカーに材を取ったお話なのですが)への愛にあふれた役どころでした。彼が参加してくださることを前提に、彼にあてて書いた役でした。彼(ジョー)のサッカー愛故に、物語は転がって、そして思わぬことになって……それは、ワタシという演出家と、貴城さんという役者さんで、共に育ててきた役柄でした。

代役を立てるか、あるいは台本を書き直すか。
その選択を迫られる中で、これまでの稽古がリフレインのようにあふれてきて、
ワタシは、
彼が演ずるハズだった、譲(ジョー)さんという登場人物を、殺す決断をしたのです。

『日の出政府のW杯』の裏のもう一つのドラマ(1)

先日、『彼』が出演するお芝居を観に行ってきたのです。お芝居自体、丁寧に作られた良質の作品だったのだけど、その『彼』はその中で非常に重要なポジションの役どころをいただいて、それがすごく良い効果を生んでいて、なんだか嬉しかったのですね。『彼』はもう、次に進んでいる。そう思えたことがとても嬉しかったのです。

ハナシは半年前にさかのぼります。今年の5月、『日の出政府のW杯』という公演の、その本番小屋入りの僅か一週間前の、出来事です。

その日は、台本が完本して、例によって稽古後に完本祝いもやっていただいた翌日の日曜日でした。いろいろ苦労はあったけれども、無事完本して、これでどうにか本番が迎えられる……私個人的にはちょっとホッとしていて、ホントに久しぶりにゆっくり寝て、稽古開始の午後1時の2時間くらい前に、久々に心静かに目覚めて、その時、ワタシの携帯が鳴ったのでした。

「申し訳ありません。今回の公演、降板せざるを得ないかもしれません」

一瞬は何のハナシかわかりませんでした。携帯電話の向こうからは、なんだかラジオドラマの効果音のように、救急車のサイレンが聴こえていました。

「事故に合ってしまいました。本当に……本当に申し訳ありません!」

最後の方は涙声になっていました。とりあえず詳しい状況を知らせてもらったのですが……ワタシの方の心臓がどんどんバクバクしてきました。『彼』は、その一週間後に小屋入り予定のワタシらの公演の、かなり重要な役柄で出演予定の役者さんでした。そしてその救急車のサイレンが告げる通り、その『彼』は今まさに病院に救急搬送される途中だったのです。

それからしばらく……なにをどうしていたかの記憶がありません。
とりあえず、おそらくは命に別状がないことを知らされ、病院での精密検査の結果が分かったら知らせてくれということだけ伝えて、気がついたらワタシは稽古場にいました。
そこに当然『彼』の姿はなく、
ワタシは、コトの次第を他の役者さんたちに伝えねばならず、伝えようとしていて、
ふと、涙交じりの『彼』の電話の声がよみがえってきて、
ワタシ自身が涙声になっていました。

『彼』、盒教城さんは、おそらく今回の公演を降板することになるだろう、と。

本番初日から、わずか10日ほど前の、まぎれもない実話です。

リーディングのワークショップをやるのだ

さて、方々でご好評いただいたワラカルト2018なのですが、協会のわりあい恒例な行事として、公演後にその上演台本をテキストとしたワークショップを行うのですね。で、10月に私が講師の、リーディングのワークショップを行うことになりました。日程や応募等の詳細は、協会HPにありますので、よろしければご覧になってください。

日本コメディ協会公式HP

ワラカルト ゲネ_180906_0013
さて、そもそも、リーディング、とは何なのでしょう。

舞台の上で演者さんが一人、もしくは複数人で、本を朗読する。時折効果音や音楽が入って……と、まあ基本は『音』のドラマですね。ただ、ラジオドラマ等と違うのは、お客様の目の前に朗読する人がいて、その音を発する姿を見ることはできるのです。表情だったり、ちょっとした所作や雰囲気だったり。つまりはライヴなのです。そしてまあ、個人的にはこの『ライヴ感』というものがリーディングには命だと思っていてます。上手な読み手さんというのは、ただ本を読んでいるだけなのに、そこに生の言葉を生み、時間を流れさせ、お客様の想像力の中でドラマを動かすのですね。

今回は、そのライヴな『音』のドラマを生み出すためのワークショップとなります。普通のお芝居の演技とリーディングの演技にはどんなところに違いがあるのか。これからリーディングをやってみたいという役者さんや演出家さん、あるいは既にリーディングの活動されているのだけれど、どうにもしっくりいかないという方にも、なんらかの参考になるモノになると思っています。また、今回は役者さんに限らず、子供に絵本をうまく読み聞かせられるようになりたいなーってお母さんやお父さんでも参加可能です。ワラカルトをご覧になっていただいた方であればより面白いと思いますが、ご覧になってない方でも十分楽しめるモノにしたいと思っております。どうぞお気軽に……『音』が作るドラマの世界を体験してみてください。ご参加お待ちいたしております。



日本コメディ協会ワラカルト・ご来場御礼編

さて、日本コメディ協会公演『ワ・ラ・カ・ル・ト2018』無事全日程を終了いたしました。ご来場いただきました全てのお客様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

ワラカルト ゲネ_180906_0001トップバッターを務めていただいた、『ある妹とその弟』チーム。いつの協会公演でもそうですけど、最初に出るってのはやっぱりハードル高くて、そりゃそうだよね、既に温まったお客様ではなくて、コメディ協会なんぼのモンじゃい!ってなお客様を、まずは我々の世界に引き込まなきゃならないのだから。毎回、冒頭のイカちゃん(五十嵐)とデラちゃん(小野寺)の会話からクスクスが始まって、嶋田さんの演じるヘンなパパが出てくると笑いが起こって、更に稲岡さんが出てくると……って、時が進むごとに、お客様がコメディの世界に誘われていたのです。かなり強引なキャラと、強引なお話を、毎回ストンとお客様に落としてみせた遠藤会長の手腕がお見事でした。そしてそのかなり強引なキャラを演じた役者さんたちにも、拍手。

ワラカルト ゲネ_180906_0006そしてまあ、景浦さんの落語にはどれだけ助けられたことか。まくら、でお客様を完全につかんでしまう手法がお見事で……あとは古典落語の世界に、どっぷりと。まるで、落語家さん(笑)。いえ、お客様には本当に落語家さんに見えていた、と思う。本職は声優さんの景浦さんの、いつもとはまた違った可能性が存分につまった一席だったと思うのです。その後のチームが、どれだけやりやすかったことか。



ワラカルト ゲネ_180906_0011写真は、小石田純一さんです。すっかりテレビでもお馴染みの小石田さんのネタは、まあ、当たり前っちゃそうなのですが、一番爆笑を誘っておりました。でも、ワタシがビックリしたのは、日替わり芸人さんの、あとの二組でして、二日目の太田トラベルさん、三日目のおしんこきゅうさん。そのネタのクオリティの高いことと言ったら。いやはや……その道のプロの手腕をライブで存分に見せていただいて、一緒にやっているワタシらにしても、贅沢な時間だったと思うよ。


ワラカルト ゲネ_180906_0013そして拙作の『四番目の証言』。コメディ協会の作品としては、ちと反則なのではないかと自分でも思いつつ(笑)。でも、これはこれでコメディだとワタシは思うのですね。人として、弱点も欠点もいっぱい抱えながら、あくせく生きていく人たちの物語。リーディングですから、ストーリーの面白さだけは伝えつつ。まあ、わりと我儘に、好きなことをやらせていただいたと思うのです。遠藤さんにいつ怒られるんじゃないかと、実はワタシひやひやしてました(笑)。今回、本当に声の良い役者さんたちに集まっていただけたので、音のドラマとしては、自分の作品がワンランク上等になったように(笑)も思えて、役者さんたちには感謝の念しかないです。そしてまあ、ここまでのチームが存分にコメディとしての笑いを生み出してくれていたので、そのはざまにはお客様にとっても、こういうのもアリになったとも思う。そういう意味では、みなさんありがとう、の作品でもあるのです。

ワラカルト ゲネ_180906_0019最後は、今をときめくパンチェッタ・一宮さんの『Hana』。実験的な作品でありながら、かくもお客様に受け入れられ、笑っていただけることに、ワタシは感心したのでした。そしてまあ、ここの役者さんたちが、本当に寸暇を惜しんで、それこそ本番直前まで稽古されていて。彼・彼女たちは本当に大変だったと思うよ。でも、観てくださるお客様のために、最期の最後まで。傍で観てたら、ちょっと心配なほどに、役者さんはがんばってましたね。だからこその、客席のあの笑い。なんだかコメディというものの原点を観ているような、そんな複雑な思いもわいたチームなのでした。そうそう、ここに出演されていた野々目さんという女優さんの演技が、ワタシはなんか好きだったぞ。花が枯れる瞬間の変化は(こう書いても観てない方には分からないと思うのですがごめんなさい)凄い、の一言でした。

この企画、たぶんまたやる、かもしれません(笑)。今回、残念ながら見逃された方も、是非次の機会をお待ちいただければ、と。自分としてもいろいろ刺激をいただいた、良い公演だったと思うのです。


今週末、下北沢亭にて、ワ・ラ・カ・ル・ト

さて、もはやまな板の上の鯉(笑)なのです。公演情報のページを劇団HPにもつくりましたので、よろしければご覧くださいませ。
劇団HP

でまあ、先日恒例の全座組の合同通し稽古というヤツがありましたので、これも恒例(?)によって、今石による、コメディ協会公認でもなんでもない、すこぶる個人的な見どころをご紹介。

『ある妹とその弟』
【作】渡邉晋(鉄骨ボレロ)
【演出】遠藤隆之介(ファルスシアター)

ジャンルは、敢えて言えばコントでしょうか。鉄骨ボレロの渡邉さんの作品を、ご存知遠藤会長が存分にご自分の味を添えて演出されております。いつもの協会公演の作品だと、だいたいが作家と演出家が別々の人になるのですが、今回は、(落語を除くと)作と演出が違うのはこの作品だけになってまして、それだけに、違ったテイストの二人の化学変化が醍醐味な作品なのです。渡邉さんの今回のホンは、ちょっと人を食ったようなナンセンスな展開でして、最初は単純にゲラゲラ笑っていたのですけど、徐々に、根底に誰もが一度は味わったコトがあるような感覚が見え隠れしてきます。でたらめな展開、のハズなのに最後には、そのでたらめな人々がどこかせつなくかわいく思えてくるのです。ここらへんは遠藤さんのテイストが滲んでるような気がしますね。あまり詳しく書くとネタばれになっちゃうのでアレですが、家族って、こういうものかもしれないなぁ、てなことを観終わった後に、ふと考えたたりしました。『ある妹』の役に、うちにも去年客演していただいた小野寺佳七子さん。『その弟』役に、これも以前うちに2度ほど客演していただいた五十嵐雅史さん。うちのお芝居を観た方であれば、あの人観たことある、へー、こういう役もやるんだ、てなことに驚かれるかもしれません。お二人ともどこか不思議な役どころに正面から取り組んでらっしゃってて好印象なのです。どうぞお楽しみに。


<落語>
【出演】景浦大輔(パワー・ライズ)

協会公演ではお馴染みの役者さんで、テレビアニメ等の声優さんとしてもご活躍中の景浦大輔さんが、今回は落語をやられます。でまあ、ありがちな、役者さんや声優さんのなんちゃって落語ではなくて、この人の落語は本格派なのです。なにせ本筋の師匠からも、二つ目の実力は十分にあるとお墨付きをいただいた方ですから……何も知らずに観た方には本当の落語家さんと思われるに違いないです。そしてその手法というか演じ方についても、古典を正統にバッサリと。しかも玄人はだしなのです。あれあれ、っと言う間に落語の世界に誘われて、気がついたら声を出して笑っておりました。今回は3日間の8ステージで、いくつか違うネタをご披露していただけるそうなので、それもまた楽しみなのです。


<リーディング>
「四番目の証言」
【作・演出】今石千秋(ZIPANGU Stage)
【出演】滝沢久美(ZIPANGU Stage)/西垣俊作/キム木村(吹澤信子事務所)/盒教城(リベルタ)

とある事件の、四日間の公判を描いた法廷モノです。リーディングですが、ちょいとサスペンスチックなコメディとなります。事件の真実とは何なのか……ちょっとだけネタばれすると、四番目の証言とは果たして……てな部分を追いかけていただけると、より楽しめるかと思います。
リーディングですから当然なのだけど、ストーリーがそれだけでも面白いホンを、と意気込んで書いた作品です。そして、前にも書きましたが演じてくださる役者さんがホントに皆さんお上手なので、まあ、自画自賛でなんですけど(笑)、一番安心して楽しめる作品になっているかと思います。サスペンスなのでゲラゲラ笑うタイプの作品ではないですが、要所要所の仕掛けにクスクス笑っていただければ、ワタシとしてもとても嬉しいのです。
音がつくるドラマって、良質な作品は必ずそうなのだけど、そこにある世界がお客様の想像力の中で無限に広がるのです。その醍醐味を少しでもより多く伝えられるよう、最期までがんばります。


「Hana」
作・演出:一宮周平(パンチェッタ)

過去の協会公演で、『キャンピング・デッド』や『リピートするのに遺産はいらない』の2作品を演出し、『Romeio』の脚本を担当し、そしてまた先日行われたせんがわ劇場演劇コンクールでグランプリとオーディエンス賞と俳優賞をトリプル受賞した、パンチェッタの一宮さんの作品です。今回はご自身のパンチェッタ公演と同じく、短いモチーフのような短編を編み合わせて、それが結果全体として一つの作品となるような、氏のあざやかな手法をお楽しみいただけると思います。
一宮作品って、時にちと難解な芸術のようにもなりがちなのだけど、今回は比較的というか、彼の中ではかなり分かりやすい一連の作品郡になっていると思います。演じる役者さんも、協会公演には欠かせない小久保英明さんを始め、『Romeo』で乳母を好演した轟もよ子さん、以前うちの『笑う数学者』という作品に美貌の未亡人役でご出演していただいた野本蓉子さんなど、出演陣も豪華です。今をときめく一宮さんのワールドに、是非ご期待いただければ、と。


<日替わり芸人>
【出演】小石田純一(ニュースタッフプロダクション/※)(24日のみ)/
太田トラベル(ニュースタッフプロダクション)(25日のみ)/
おしんこきゅう(ニュースタッフプロダクション)(26日のみ)

今回は、協会員の小石田純一さんを始め、人気芸人さんが日替わりで華を添えてくださいます。プロの芸人さんのライブ(贅沢ですね)も、心行くまで味わっていただければと思っております。


さあ、書いていてなんだかワタシ自身がすごく楽しみになってきたぞ(笑)。
ワタシらにできるのは、最後の最後までより面白くを全員で。
皆様のご来場を心よりお待ちいたしております。

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しゅさい

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