あまりにも悲しいお知らせなのですが……
長きにわたり私たち劇団ZIPANGU Stageの中心人物であり看板俳優だった新田正継さんが、今月18日、肺炎のため亡くなりました。享年57歳。突然の訃報に驚き、戸惑い、正直未だ信じられないのです。劇団を離れてからも、彼のライフワークである音楽活動は続けられていて、つい先月にもライブの告知をSNSで見て、ああ、ニックは活躍してるんだなあ、と。
それが……あまりにも突然に……
初めて会ったのは25年以上も前。無名で、何物でもなかった我々の、キャスト募集のオーディション会場に、ふと現れたその人は、ド派手な花柄模様のシャツに裾広の派手なパンツ、長くて踵の高いブーツ。我々は一目で度肝を、ごっそりと抜かれたのでした。正直、かなり危ない人かと思ったのですが……本当に驚かされたのは、むしろ、それから、でした。
オーディションを楽々突破した新田さんは、(当時、滝沢さんが「彼を落とす理由は何もない」と断言されてたのを覚えています)その公演『二番目の男』で、なぜかギターと共に現れる駅員さんの役で瞬く間にお客様の心をつかみ、次の公演『お仕事じゃない!』では主演に抜擢されることになります。劇団名物の『ラッキー・ガイ』シリーズの不運なマスター。将棋のハナシなのに、その生き様があまりにロックンロールな父親を描いた『父はろっくんろーら』の芹沢九段。この世の人ではないのに、難事件をたちどころに解決してしまう『幽霊探偵』の幽霊、などなど。主演作、準主演作には枚挙に暇がなく、気が付けば彼は押しも押されぬ劇団の看板俳優になっていました。
基本、恰好つけ、です。そりゃそうだ、彼はロックンローラーですから、恰好はつけます。そしてまあ、あの長身かつ、細身。ウエストは普通サイズの女の人の太ももより細いくらいで。そのスタイルと存在感だけでも役者さんとしての素養は申し分ないです。ですが……彼の本質は、実は純情で、真面目な、心の部分だとワタシは思っています。
ある日……ワタシが、たまたまその日の稽古場に、集合時間の一時間前に通りかかった時、そこに、熱心に台本を読んでいる新田さんの姿がありました。不思議に思ったワタシが、次の稽古の前にさりげなく稽古場に行ってみると、そこにはまた、台本を読み込んでいる新田さんの姿が。思い当たる節はあります。ワタシは稽古と並行して、少しづつ台本を書きながら、書いては稽古して、うまくいかない部分は書き直して、といったスタイルで稽古していたのだけれど、新田さんは、新たに渡された台本の部分を、その翌日の稽古の時には、すっかり全部覚えていたのですね。それもほぼ完璧に。あまりにもセリフの入りが良いので、実は新田さん、自宅の地下に秘密の稽古場があって、秘密特訓しているんだ、なんて都市伝説がまことしやかに囁かれていたくらいでして。
後輩の面倒見の良い人でもありました。劇団員には、「ニッタのアニキ』と慕われていました。そう呼ばれて彼は、くすぐったそうでもあり、満更でもなさそうでもありました。格好つけなのに純情。真面目なのにロックンローラー。ある意味、矛盾とも思える二律背反した部分が、彼の本質、なのかもしれません。そう言えば……うちに客演してくれた女優さんの、なんというか綺麗なお姉さんぽいキャラの人には、たちまち恋をしてしまうようでした。恋をすると……本人はめちゃくちゃ否定するのですけど、顔を見たら分かるよ的な、純愛オーラを出してしまう人でもありました。そしてその恋心を告白したのかと言えば……格好つけの彼ですからね。いつもただニヒルに笑うだけなのでした。なんたる純情!
先月末に……突然意識を失って救急搬送された彼は、その後20日余り集中治療室で……その後一度も意識を取り戻すことなく、旅立ったのだそうです。
誰にもさよならを言わず、誰からもさよならも言われず……
ある意味、新田さんらしい、と思う。最後まで、格好つけのロックンローラーだったね。ワタシは凡人だから、本当には理解できないのかもしれないね。だって、どうしたって、伝えたくなっちゃうから。
ありがとう、ニック。
さよならは告げず、あばよ、と笑って見送るのが、君にとってはベストなのかもしれない。でも、
ごめんよニック。そうはできそうもないよ。
劇団が順調な時も危機な時も、常に君がいて、君が支えてくれたよね。
ありがとうニック。ありがとう。本当に……、ありがとう……
願わくば彼の岸でも、
芝居で人を楽しませ、ロックを歌いながら、綺麗なお姉さんに恋をして欲しいよ。
さよなら、ニック。
長きにわたり私たち劇団ZIPANGU Stageの中心人物であり看板俳優だった新田正継さんが、今月18日、肺炎のため亡くなりました。享年57歳。突然の訃報に驚き、戸惑い、正直未だ信じられないのです。劇団を離れてからも、彼のライフワークである音楽活動は続けられていて、つい先月にもライブの告知をSNSで見て、ああ、ニックは活躍してるんだなあ、と。
それが……あまりにも突然に……
初めて会ったのは25年以上も前。無名で、何物でもなかった我々の、キャスト募集のオーディション会場に、ふと現れたその人は、ド派手な花柄模様のシャツに裾広の派手なパンツ、長くて踵の高いブーツ。我々は一目で度肝を、ごっそりと抜かれたのでした。正直、かなり危ない人かと思ったのですが……本当に驚かされたのは、むしろ、それから、でした。
オーディションを楽々突破した新田さんは、(当時、滝沢さんが「彼を落とす理由は何もない」と断言されてたのを覚えています)その公演『二番目の男』で、なぜかギターと共に現れる駅員さんの役で瞬く間にお客様の心をつかみ、次の公演『お仕事じゃない!』では主演に抜擢されることになります。劇団名物の『ラッキー・ガイ』シリーズの不運なマスター。将棋のハナシなのに、その生き様があまりにロックンロールな父親を描いた『父はろっくんろーら』の芹沢九段。この世の人ではないのに、難事件をたちどころに解決してしまう『幽霊探偵』の幽霊、などなど。主演作、準主演作には枚挙に暇がなく、気が付けば彼は押しも押されぬ劇団の看板俳優になっていました。
基本、恰好つけ、です。そりゃそうだ、彼はロックンローラーですから、恰好はつけます。そしてまあ、あの長身かつ、細身。ウエストは普通サイズの女の人の太ももより細いくらいで。そのスタイルと存在感だけでも役者さんとしての素養は申し分ないです。ですが……彼の本質は、実は純情で、真面目な、心の部分だとワタシは思っています。
ある日……ワタシが、たまたまその日の稽古場に、集合時間の一時間前に通りかかった時、そこに、熱心に台本を読んでいる新田さんの姿がありました。不思議に思ったワタシが、次の稽古の前にさりげなく稽古場に行ってみると、そこにはまた、台本を読み込んでいる新田さんの姿が。思い当たる節はあります。ワタシは稽古と並行して、少しづつ台本を書きながら、書いては稽古して、うまくいかない部分は書き直して、といったスタイルで稽古していたのだけれど、新田さんは、新たに渡された台本の部分を、その翌日の稽古の時には、すっかり全部覚えていたのですね。それもほぼ完璧に。あまりにもセリフの入りが良いので、実は新田さん、自宅の地下に秘密の稽古場があって、秘密特訓しているんだ、なんて都市伝説がまことしやかに囁かれていたくらいでして。
後輩の面倒見の良い人でもありました。劇団員には、「ニッタのアニキ』と慕われていました。そう呼ばれて彼は、くすぐったそうでもあり、満更でもなさそうでもありました。格好つけなのに純情。真面目なのにロックンローラー。ある意味、矛盾とも思える二律背反した部分が、彼の本質、なのかもしれません。そう言えば……うちに客演してくれた女優さんの、なんというか綺麗なお姉さんぽいキャラの人には、たちまち恋をしてしまうようでした。恋をすると……本人はめちゃくちゃ否定するのですけど、顔を見たら分かるよ的な、純愛オーラを出してしまう人でもありました。そしてその恋心を告白したのかと言えば……格好つけの彼ですからね。いつもただニヒルに笑うだけなのでした。なんたる純情!
先月末に……突然意識を失って救急搬送された彼は、その後20日余り集中治療室で……その後一度も意識を取り戻すことなく、旅立ったのだそうです。
誰にもさよならを言わず、誰からもさよならも言われず……
ある意味、新田さんらしい、と思う。最後まで、格好つけのロックンローラーだったね。ワタシは凡人だから、本当には理解できないのかもしれないね。だって、どうしたって、伝えたくなっちゃうから。
ありがとう、ニック。
さよならは告げず、あばよ、と笑って見送るのが、君にとってはベストなのかもしれない。でも、
ごめんよニック。そうはできそうもないよ。
劇団が順調な時も危機な時も、常に君がいて、君が支えてくれたよね。
ありがとうニック。ありがとう。本当に……、ありがとう……
願わくば彼の岸でも、
芝居で人を楽しませ、ロックを歌いながら、綺麗なお姉さんに恋をして欲しいよ。
さよなら、ニック。

