さて、もはや明日なのですが、日本コメディ協会主催で、海外コメディを体験するワークショップを開催いたします。おそらくまだ定員には達していないと思いますので、金曜日中のお申込みなら受け付けてもらえるハズ。詳細とお申込みは下記ページからお願いいたします。

日本コメディ協会公式HP

先日上演された『和洋set you』の『洋』の部、ファニー・マネーをテキストに、海外コメディというものをやる上で演者さんにとってのポイントになる部分などを解説しつつ、まあ楽しく体験していただくような内容になります。てなワケで、今日はその予習(?)編。お芝居をやってない人にとってはちと専門的な話題になりますので、演技論とかに興味のない方は読み飛ばしてください。では。

1)読み合わせ〜言葉にするより意味を飛ばすべし

誤解を恐れずに断言しますと、コメディに限らず翻訳されたテキストで使われている日本語というのは、口語ではないです。敢えて言うなら『翻訳語』というべき特殊な日本語でして、チェーホフから演劇入りましたって方ならともかく、最近のすこぶる日常会話に近い口語演劇しかやったことない人にとっては、そこが最初の難関になります。ある程度の力量のある役者さんでもこれに結構悩まされますし、普通に読み合わせをやってるハズなのに、外国映画の吹替を聞いてるかのような読み合わせに、普通になっちまいますね。でもまあ、それはそういうものだという割り切りみたいなモノがある程度は必要かと思います。例えば、

ジーン「そりゃあ、あなたがトイレでしたのと同じ事をしたら、刑事さんの手だって震えたでしょう」

前後の脈絡がないと、なんのことやら分からないとは思うのですが、うまくやれば確実にクスリと笑いをとれてしまうセリフなのですね。でも、これ口語というにはあまりにも……まあ、翻訳語ですよね。普通に読んだら、役者さんにとっては文章を読まされてしまっているような感覚になるんじゃないかと想像します。ただ、こういうセリフは無理やり言葉にしようとしてもあまり得策ではなくて、その意味するところをいかにストンとお客様に落としてやるかで考えた方が早道なのですね。そのセリフの持つ背景というか、シチュエーションをお客様に想像させる。その結果、お客様の笑いをうまくいざなう。そのあたりの勘所みたいなものをお伝えできればいいなと思っております。

2)立ち稽古〜 身振り手振りは効果があるかないかで考えるべし

海外コメディをやるとなると避けられないのが、身振り手振りや激しい動きなどの、いわゆるオーバーアクション、かもしれないです。実際、演出家が指示したワケでもないのに、役者さんが自らこれを始めてしまうことも多々ありました。ただ、これには恐るべきマイナス作用もありまして、まあやりすぎるとお客様は引いてしまう、と思う。実際、私が初めて海外コメディのお芝居観た時も、それが凄くて、ちょっとお話に入りづらかった記憶もあったりします。いわゆる、それっぽい動きとか、外国人らしそうな所作とか。まあ役者さんは入れたくなっちゃうみたいです。なにせ海外コメディですから(笑)。
でまあ、今回の公演の際の稽古でも、いろいろと身振り手振りや動きには試行錯誤があったのですが、極論すれば、なくても構わない、です。日本の普通のコメディやる時にやる動きや所作で十分。外国人の役をやってるのに、身振りが少なくて違和感に思うお客様……って実はあまりいないと思いますし。ただ、なくてよい、が結論だとあんまりなので、身振り手振りの中でも有効なモノとそうでないもの、についての話ができればと思っています。例えば……

ヘンリー「とにかく落ち着こうと思ったんだ。どうすべきか考えるために」
ジーン「地下鉄の遺失物係に届けるべきだ ったに決まってるじゃない」
ヘンリー「そこで、僕は(バーで)ウィスキーのダブルを注文してそれからトイレに行 った」
ジーン「トイレ?」
ヘンリー「これが幻覚じゃないことを確かめる為に。幻覚じゃなかった。僕は便座に座って全部
数えたんだ!」

地下鉄で鞄を間違えて、73万5千ポンド(当時のレートで日本円にして約1憶7千万円)の入ったアタッシュケースを持ち帰ってしまったヘンリー。そのことに気づいた時の衝撃を妻のジーンに話しているシーンなのですが、ここ、まあ、ソファに座っているヘンリーと、立ってそのハナシを聞いているジーン。身振り手振りや動きはなくても、まあ成立はしますよね。普通に静かに話した方が、ヘンリーの衝撃が却って伝わるんじゃないか、といった演出も余裕で成り立つし。では、このシーンの主にヘンリー、どんな動きをすれば、より(普通に座ってただ喋るより)有効なのか。
ここ、実際の公演では、かなりあざとく言葉通りの動きをヘンリー役の役者さんにやっていただきました。「ウイスキーのダブルを注文して」の部分で、一度立ち上がってウイスキーを受け取るようなマイムを入れ、「僕は便座に座って全部数えたんだ」の部分で、ソファを便座に見立てて座り、両手でお金を数えるような所作を入れてもらいました。それは、このシーンでヘンリーが何をやったのか、という情報をお客様に、視覚的に入れておくことが後のシーンにとても重要だったからです。身振り手振りは、日本人にさせるのはとても大変なのですが(だって、普通の日本人ならそういうのやりそうにないからね)、ここは海外コメディの世界。有効であるなら、どんどんやるべきでして、そういうところに醍醐味もあるしね。どんな動きなら有効で、どんななら有効でないのか……そのポイントみたいなところをお話できればいいなと思っています。

3)キャラクターのつけ方は役割で考えるべし

ヘンリーなら、主人公で、物語の回し役。ジーンならヒロインであると同時に、ドラマ上の主人公でもあり、前半は受け役(お客様の感情移入役)でもある。ビルなら端役に見えて実は……等々。実は海外コメディって、今の日本のドラマに比べても、はっきりとしたドラマと構成が台本上ありますから、キャラ付けはストーリー上のその登場人物の役割とかなり密接な関係を持っています。まあ、このあたりは、実際に立ち稽古しつつ、お伝えできれば、と。

今ワークショップで、少しでも、海外コメディに対する興味を持っていただけたら嬉しく思います。ご応募、くどいですけどまだ間に合います。お待ちいたしております。