ノルディック複合ラージヒル。
その後半クロスカントリーのレースが、なんともご褒美のように面白かったのです。終盤ものすごいデッドヒートで、僅か0秒6差。10キロ走ってのコンマ6秒差ですから……競馬でいえば、ずっと逃げて逃げて最後まで粘ったワタベアキトオーがゴール前の壮絶な叩き合いの結果、鼻差、首差かわされての3着、といった感じで……そのまま!そのまま!ぎゃー!とは叫ばなかったものの、いやはや興奮したなぁ。ソチ、平昌と続けて銀メダルだった暁斗ですが、今シーズンはワールドカップでもなかなか思うような結果をあげられず、一週間前のノーマルヒルでも7位。正直今回は厳しいのかなと思ってました。それが、こんな興奮するレースを見せてくれるとは。

前半ジャンプで5位につけた暁斗。1位のリーベルとのタイム差は54秒、そして後に金メダルのグローバクや銀のオフテブロには1分ちょっとの差をつけていました。これがまあ、微妙というか絶妙なタイム差。なんだよ1分も差をつけた選手に抜かれてしまったの?と思う向きもあるかもですが、実はそんな単純なハナシではないのですね。暁斗にとって不運なことに、リーベルはともかくとして、同じグループを形成することになるジャンプ2位〜4位の選手たちに、クロカン得意な人が見当たらず、必然的に暁斗が先頭でずっとずっとグループを引っ張ることになりました。自転車ロードレースと同じで空気抵抗を一手に引き受ける先頭と言うのは後ろについて走る選手よりもずっとずっと疲労をためることになります。対してグローバクやオフテブロは共に自身もクロカンが得意なだけでなく、周囲に追走したいクロカン得意な選手が沢山いましたから、うまく先頭を交代しつつタイム差をつめていけたのです。そしてまあ、リーベル。この人は競馬で言えば差し馬でして、末脚に絶大な自信を持っていますからどんな状況であれ絶対に先頭を走らない。常に誰かを先に走らせて後ろにつく。んでまあゴール前で、というそれはそれは姑息な(笑)選手なのですね。この日も、暁斗らに追いつかれた後、後ろから怖い選手がどんどんタイムを詰めてきているのに全然前を走らない。(正確には最後ちょこっとだけ前に出ましたが)結果として実に4周回のうち3周以上を暁斗が前をひくことになって……今思えばこれでよくラスト近くまで追いつかれなかったものだとすら思うよ。そして、冒頭に書いた通りのゴール前の壮絶な叩き合いで、コンマ6秒差。

解説者の人も言ってましたけど、今回は銅メダルでも実は今までで一番金に近いレースだったと思います。現長野市長の荻原健司さんなど、過去日本の複合の偉大な選手たちも、その勝ち方はジャンプで大差をつけてクロカンは逃げ切って、というものでしたから……こんなレース展開でもクロカンで順位を上げて、しかも最後の最後まで壮絶なメダル争いして……正直、なんだか夢みたいなのですね。2017〜18年のシーズンにワールドカップで総合優勝した暁斗は欧州では立派なキングオブスキー。本当に流石で、すごいなぁと素直に思ったよ。