2007年06月14日

農業

  幸い多くの日本人は賢明なのか、あるいは何も考えていないのか?そんな事
態にはなっていません。が、これから説明する自由貿易は、誤った理論を世界
中が信じて行動してしまったために、もう既に取り返しのつかない事態を引き
起こしてしまっています。 
 
 今、自由貿易は世界中で失業や貧困、環境破壊を引き起こしています。にも
関わらず自由貿易を世界がやめないのは、「比較優位」という経済学の考え方
を信じているためです。18世紀のイギリスの経済学者リカードによって提唱さ
れた理論です。

 比較優位とは、ものすごく簡単に言うと、それぞれの国でそれぞれ得意なも
のを作ればいい。食料を作らなくてもその土地で採れたもので稼いで、輸入す
ればいい」と言う考え方です。

 この考え方を「信じている」というより、自由貿易にした方が儲かる人たち
がいて、そういう人たちによって、世界に経済が動かされているから、みんな
で信じているふりをしていると言った方が適切かも知れません。

 今の世界で、途上国に貧困などの問題を引き起こしている原因は、欧米先進
諸国による穀物の過剰生産です。先進国では、大型機械を使う大規模な農業が
行われ、生産性を上げています。機械化、効率化が進むとともに、生産量が増
大し、自国の需要以上に穀物が生産されるようになりました。

 過剰生産を放っておくと、農産物価格が低下し、農民が失業して都市に流入
するなどして社会不安を引き起こしかねません。そこで、お金のある先進国で
は、補助金をつけて輸出をするようになります。補助金にはいろいろあります
が、自国の農民に所得を保証したうえで、穀物を輸出相手国の国内価格か、そ
れ以下の価格にダンピングして売るのが目的です。

 これにより、先進国の農民は救われます。が、輸出先にも農民はいるわけで
す。先進国の補助金付きの安い穀物が入って来るようになって、アジアやアフ
リカの途上国での主要産業であった農業が立ち行かなくなりました。これらの
貧しい国ぐにでは、自国の農民に補助金を出すことはできません。結果、農民
たちは輸入農産物に対抗するため、生産性を上げようとします。

 先進国のように機械化するのではありません。より高い生産性を得られる土
地を探すことになります。すなわち森林を焼いて畑を作れば、先進国の穀物
に対抗できる価格での生産が可能になります。が、長くは続きません。

 そうした方式の農業は、土地から収奪する農業です。3〜5年で地力が落ち
て養分がなくなり、作物が作れなくなります。そして耕作が放棄され、また別
の場所を探すことになります。捨てられた土地は、すでに周りの森林もなくな
っていて他から養分を供給されることもなく、荒れ果てます。

 日本でもそうですが、耕作放棄された田畑は荒れ果ててしまい、再び回復さ
せるのは困難です。熱帯では気温が高いために土地の有機物の分解が速く、土
地を覆っていた森林がなくなると雨や風によって薄い表土が流れてしまいます
。場所によっては、砂漠化が進むことになります。
 
 こんなことの繰り返しで、途上国では新たに畑にできる場所はどんどん少な
くなります。行き場をなくした農民は、都市に出てスラムに集まります。ある
いは、大地主のもとで小作人になるしかありません。でも、地主もそのうち農
業を機械化するようになり、人がいらなくなります。結局農民は失業して、都
市のスラムに流れこむことになります。

 スラムでは、先進国の食糧援助があるために、貧しくてもとりあえず飢える
ことはありません。が、その援助のための食料は、先進国の余剰農産物のはけ
口になっているという側面もあります。 

 先進国の補助金付きの農産物の輸出は、自国農民の保護のためでした。が、
それはアジアやアフリカの生産性の低い零細農民を失業させ、貧困に陥らせる
原因となりました。生産性が低いというのは、それだけたくさんの人に職が与
えられるということでもあったのに。

 先進国で広く行われている化学肥料や農薬を大量に使い、地下水をくみ上
げ大型機械で耕作する農業は、自然から収奪するものです。こんなことで生産
性を上げても長続きはしません。異常気象にでもなればたちまち収穫が激減し
て、食料の不足を招くことになるでしょう。

 先進国こ援助に回せるだけの食料がなくなれば、世界的な食料不足、飢餓が
引き起こされます。

 かつて途上国で行われてきた農業は、小規模ではあっても定期的に土地を休
ませて行う持続可能な農業でした。とりあえずは飢えたりすることはなく、自
給自足的な生活を送っていました。そこに入ってきたのが今の先進国による植
民地支配です。やっとそこから独立したと思ったら、今度は先進国から入って
くる安い農産物のために貧困と失業、環境破壊がもたらされることになりまし
た。

 途上国の農民が失業したり、貧困に陥ったりする原因には、かつての植民地
支配の影響もあります。植民地支配や今の補助金付き作物の輸出といった、途
上国の人たちにとっては何も良いことのない経済の有り方は、自由貿易の考え
に基づくものです。

 フェアトレードを行う団体は、ずっと「自由貿易より公正貿易(フェアトレ
ード)を」と訴え、活動をしています。では自由貿易の何が問題なのか?
そのあたりのことを、もっと詳しく来週お伝えします。


最新記事
月別アーカイブ
楽天市場