カテゴリー記事 広島市の都市問題 都心部活性化

【考察その1】

広島市の都市観光の現状 その1
飛ぶ鳥も落とす勢いのようだが実際は?


画像1(左) 上空から中央公園一帯を望む姿(画像 広島市HPより)
画像2(右) 平和記念公園一帯の様子(画像 広島市HPより)

 広島市の都市観光が絶好調だ。広島市だけの現象ではないのだが、日本国内へのインバウンド需要-外国人が国内に入ってくることで起きる需要。一般的に外国人観光客の意味合いで使われる-の高騰を受け、その恩恵に浴している。その点では広島市は決して負け組ではない。その需要を反映してか、ホテル建設が老朽ビル建て替え期と重なり合ったことも受け、活況を呈している。観光立国の国策(観光庁HP)やアベノミクスの効果も相まってのことだろう。広島市がアジア大会(94年)後、長らく眠りの期間に入った『広島版失われた20年』から脱して、停滞都市から21世紀型成長都市へ入りつつあることを実感させられる。広島カープの絶好調ぶりや遅れていた都市開発(広島駅周辺)なども、この勢いを加速させている側面がある。まあ何にしても悪いことではない。これはあくまでも広島市の中にいる人間の内向き目線で、反対目線で見ると位置づけはどうなのか少し気になるところだ。ここで民間の面白い指標を持ち出してみる。森記念財団都市戦略研究所が試算した『日本の都市特性評価 2018』(公式HP)である。全国72都市(東京23区は除く)を83指標、26指標グループ、6分野でそれぞれ評価してスコア化したもので、一定の目安にはなる。広島市は12位の931.8㌽だ。順位の高低の議論は置いておいて、ブログ主の心証としては意外と低い。7~8位ぐらいだと思っていた。上位20位(東京23区は除く)を書き足してみる

1 日本の都市特性評価 2018 結果・分析 出典:森記念財団都市戦略研究所より
  1位-京都市1,270.2 2位-福岡市1,155.3 3位-大阪市1,131.8 4位
  -名古屋市1,104.5 5位-横浜市1,086.0 6位-神戸市1,053.6 7位-
  札幌市1,012.9 8位 -仙台市1003.7 9位-つくば市957.7 10位-浜
  松市951.5 11位-金沢市951.4 12位-広島市931.8 13位-松本市

  31.
4 14位-豊田市913.3 15位-静岡市897.1 16位-熊本市888.
  3 17位-長野市884.4 18位-鹿児島市883.1 19位-北九州市865.3
  20位-岡山市857.3
2 分野別スコアの上位3都市と広島市順位
 【経済・ビジネス】
  1位-大阪市254.8 2位-名古屋市199.5 3位-福岡市195.8 22位-広
  市141.4
 【研究・開発】
  1位-名古屋市106.9 2位-京都市103.0 3位-つくば市97.2 8位-広島
 
 48.2
 【文化・交流】
  1位-京都市390.0 2位-大阪市267.6 3位-福岡市249.1 13位-広島
 
 144.7
 【生活・居住】
  1位-福井市350.8 2位-松本市350.7 3位-長野市350.2 広島市不明

 【環境】
  1位-浜松市206.2 2位-松本市196.8 3位-松江市192.6 26位-広島
  165.5
 【交通・アクセス】
  1位-大阪市204.3 2位-名古屋市203.1 3位-福岡市193.3 20位-広
 
 市143.8
3 四地方中枢都市の比較
  2位-福岡市
1,155.3
   
経済・ビジネス-3位 研究・開発-5位 文化・交流-3位 生活・居住-37位 環境
   
57位 交通・アクセス-3位
  7位-札幌市
1,012.9
   経済・ビジネス-11位 研究・開発-9位 文化・交流-6位 生活・居住-54位 
   
-40位 交通・アクセス-15位
  8位-仙台市
1003.7 
  
経済・ビジネス-20位 研究・開発-4位 文化・交流-8位 生活・居住-26位 環境
  -43位 
交通・アクセス-12位
  12位-広島市931.8
  経済・ビジネス-22位 研究・開発-8位 文化・交流-13位 生活・居住-不明 環境
  -26位 
交通・アクセス-20位
4 各ブロック内1位都市と2位都市との比較
  〈北海道〉1位-札幌市1012.9 2位-函館市844.9
  〈東北・上越〉 1位-仙台市1003.7 2位-新潟市842.7
  〈中国〉1位-広島市931.8 2位-岡山市8
7.3
  〈九州〉1位-福岡市1155.3 2位-北九州市865.3

画像3 拡大図(要拡大)【文化・交流】分野の各指標一群(画像 森記念財団都市戦略研究所HPより)

分野別スコアだが、ブログ主的には意外のオンパレードだ。ベスト10に入っていても不思議ではない【経済・ビジネス】が22位と低迷しており、広大の統合移転で弱いと思っていた【研究・開発】がよもやの8位。全体を俯瞰するとその都市力で広島市は中国地方最大都市ではあるが、実態においては中枢都市ではないことや福岡市が国内4位の都市力であることが再確認できた。浜松市や金沢市よりも劣る事実はさすがに驚いた。都市観光に係るもので、『文化・交流』分野があり5指標グループ16指標がある。都市観光だけに特化したものではないが、関連するものを余すことなく網羅しており納得する。いずれにしても現在広島市が勢いに乗り、栄華を極めている感がするのは内向き目線でしかなく、外から眺めるとイメージ先行で、大したことはないのは事実のようだ。広島市も伸びているが他都市はもっと伸びていると自覚したほうがいい。記事タイトルの都市観光に話を戻す。日本も人口減時代に入り、高齢化が本格的に進行している。今後、本格的な大幅人口減と高齢化を上回る超高齢化(65歳人口比率30%以上)が待ち受ける。高度・安定成長時代は定住人口拡大が都市政策の柱だったが、縮小社会時代(超高齢化+大幅人口減)においては、交流人口拡大策でより多くの人間を引き込み、消費活動を喚起してもらう事が肝要となる。そのカギがMICE(マイス)、プロスポーツコンテンツの育成
都市観光だったりする。都市の消費活動の活性化で大きな
経済波及効果が期待される。経済波及効果には『直接効果-宿泊費+交通費+施設入場料+消費額など』『間接効果-直接効果が県内の他の企業や産業に波及していくことで生み出される売上げ』がある。

 MICE(マイス)が都市観光やプロスポーツコンテンツなどよりも上位カテゴリーに置かれる理由は、この2つに比べ参加する人間の所得階層が高く消費額が多いこといった直接効果とその後のビジネス創出といった間接効果も大きいことがある。ただ大きな経済効果が発揮可能な都市が限られ、どの都市でも出来る話ではない。現実的なのは、
都市観光やプロスポーツコンテンツになる。大きな観光集客施設がある都市はWi-Fⅰ環境の整備、多言語表示化、通訳ボランティアの配備、ホテルなどの宿泊施設整備を積極的に進め、さらなる呼び込みやリピーター化に躍起になる。スマホやタブレットなどの爆発的な普及もプロモーション活動が簡易化され、周知の大きな原動力となり一助どころか二助も三助になっている。ただ、国内もしくは世界から集客可能な観光施設も、等しくある訳でもなく乏しい都市はプロスポーツコンテンツに活路を見出し、効果は限定されるが一定の観客動員が見込めるので行政主導で発足させる。各県、サッカーやバスケのプロクラブのうち必ず1つあるのがその証左だろう。広島市には、三大プロスポーツコンテンツがあり、原爆ドームという世界遺産があり、お隣の廿日市市にはもう一つの世界遺産の厳島神社があるので恵まれていると言える。

【考察その2】
広島市の都市観光の現状 その2
数値は決して悪くないが・・・

https://livedoor.blogimg.jp/zono421128/imgs/2/a/2a570abe.png
画像4 広島市の入込観光客の推移(画像 広島市HPより)

上記の都市観光に係る数値を見ると、絶賛したくなる気持ちも十分理解できるが、底意地の悪い指標を含めて並べ立ててみる。

1 四地方中枢都市の都市観光に係る各指標 その1 出典:各市HP統計より
  観光客数単位:万人 宿泊率:単位% 消費額:単位億円
                       
      
入込観光客数   日本人観光客   外国人観光客 宿泊率   消費額
札幌市   1,527.1  1,269.9  257.2  
51.0  ・・・
仙台市   2,200.1    ・・・     ・・・   26.0  
・・・
広島市   1,3
1.4  1,189.5  151.9  40.0 2,314
福岡市   2,050.0  1,752.0  298.0  35.5 4,534
※上記都市以外の宿泊率(13年度)-横浜市13.4%、岡山市16.9%、名古屋市16.7%

2 広島市における各経済波及効果
MICE(マイス)の経済波及効果-
年間約981億円
広島市の都市観光の経済波及効果-
※注1 17年約 2,314億円
カープの経済波及効果-16年約340億円 17年-350億円
サンフレの経済波及効果-15年約70億円

※注1広島市の17年の都市観光の経済波及効果がなかったので、消費総額だけ掲載

 入込観光客数自体は悪い数値ではないと思うが、他の地方中枢都市との比較で見れば、喧伝されるほどのことではないのがお分かりだろう。調べていて仙台市の数値は、かなり驚いた。観光都市のイメージがそこまで強くなかったので、精々広島市と同水準か少し下かと思っていた。イメージでは札幌市が四都市での比較では一番多いと思ったのだが、広島市とはさほど変わらない水準でこれも逆に驚いた。広島市の都市観光のよく指摘される課題で『半日観光都市』がある。見るところが平和記念公園周辺と宮島だけで、それが見終わると、宿泊もせず夕方までには、新幹線にて別の訪問地へ行く、である。宿泊率自体は決して高くはないが、他都市もそう高水準にある訳でもなさそうだ。広島市は、健闘している部類に入るのではなかろうか? 2では、交流人口拡大に係るものの経済波及効果を書いた。まず、プロスポーツコンテンツだが、立派な数字だと思うが都市観光やMICE(マイス)に比べても大したことはないと思ってしまう。MICE(マイス)は、これから需要を創出して伸ばしていかなければならない分野だが、現状でもこの数値で現代の需要を満たすまともな
公的イベント広場や展示場がない割には、健闘していると思っている。福岡市のMICE(マイス)の経済波及効果が約1,466億円だが、その比較でもそう感じる。

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画像5 今年も年間観客動員が200万人を超えたマツダスタジアム。旧市民球場時代にはあり得ない数字だが、伸びしろは殆どなくなっている(画像 まいとさんツイッターより)

 都市観光の経済波及効果は引用するものがなかったので、観光客による消費額だけ掲載した。実際の波及効果は先の考察でも触れたが、直接効果-宿泊費+交通費+施設入場料+消費額など』『間接効果-直接効果が県内の他の企業や産業に波及していくことで生み出される売上げ』の公式に照らし合わせ加味すると、実際には3,000億円程度になるのではと考える。広島市は、06年12月制定の国の観光立国推進基本法』(観光庁HP)に合わせ、当時としてはかなり野心的な『ひろしまビジターズ・インダストリー戦略行動計画~住んでよく、訪ねてよい、千客万来の都市の実現~』(広島市HP)を策定した。ここで触れている都市観光に係る目標と現時点の達成率をみてみる。

3 ビジターズ・インダストリー戦略で掲げた目標と達成率
            目標(20年)    09年     17年(達成率)
入込観光客の増加    1,500   1,004.8   1,341.4(89.2%)
外国人観光客の増加     100      30.4    151.9(151.9%)
観光消費額の増加    2,000   1,330.0   2,314(115.7%)
宿泊数の増加        500     354.5    536.6(107.3%)
 
入込観光客数以外は目標年度待たずして、見事に達成している。当時は現在のインバウンド需要の高騰など予想不可能だったので多少低めの目標値となっているのが幸いした。市もそれなりには努力をしているとは思うが、それとは無関係の外的要因が達成の主たる理由だろう。入込観光客数増加をけん引している外国人観光客の動向をみてみる。

4 来広外国人観光客と訪日外国人観光客の内訳
 広島市(
16年度)
  大陸別比率
  アジア35.3% ヨーロッパ28.3% 南北アメリカ2
1.1% アセアニア12.7%
  国別比率(地域も含む)
  アメリカ15.9% オーストラリア11.9% 中国9.1% 香港8.6% 台湾6.7
  
% イギリス6.3% ドイツ4.4% フランス4.3%
 日本国内(16年度)
  大陸別比率
  アジア85.0%  南北アメリカ6.9% 
ヨーロッパ5.9% オセアニア2.1%
  
国別比率(地域も含む)
  中国26.5% 韓国21.2% 台湾17.3% 香港7.7% アメリカ5.2%

広島市の場合、全国的な傾向とは異なり、アジア比率がかなり低く、バランスが非常に取れている。アジア諸国が稼ぎ頭だが、依存もしていない。アジア比率が全国のそれの半分以下だ。この点は世界景気の動向に大きく左右されにくい強みでもある。この現象を逆説的に見れば、伸長著しい東アジアの経済成長の取り込みが上手くいっていないとも読み取れる。広島市の場合、買い物観光のスタイルではなく学習観光の側面が強く、その点のハンディがあるので他都市のような取り込みが難しい。良し悪しは別にして、この点を改善すればさらなる伸びしろを感じる。福岡を中心とした九州と関西諸都市群との厳しい都市間競争が予想されるが、伸長していると言え需要には自ずと限界がある。外需の奪い合いに勝つまでは無理としても、それなりの勝負をしないと未来に明るい展望を見出せないのも事実だろう。
 
続く

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