カテゴリー記事 広島の都市問題 郊外・その他

【考察序章】

考察の前に抑えておきたいポイント


画像1 中国地方の中心都市-広島の原爆ドームと平和記念公園の様子。中国州の州都候補でもある(画像 広島市HPより)

 実は記事文頭から大変恐縮だが、現時点では道州制論議はされていない。
自民党道州制推進本部は18年10月を以て廃止され、現安倍政権もそれほど熱心ではない。道州制論議の端緒は、明治期だがその時代の社会情勢により濃淡の差はあれど、90年以上議論され続けてきた古くて新しい問題だ。戦前の時代は別として、統制経済を目的とした戦前の議論以外で、国政レベルで本格議論され始めたのは21世紀になってからだ。近々の議論は以下の通り。

道州制の主な答申と提言(時系列順)

06年2月 第28次地方制度調査会『道州制のあり方に関する答申』(総務省HP)
08年3月 道州制ビジョン懇談会『道州制ビジョン懇談会中間報告』(内閣府HP)
   7月 自民党道州制推進本部『道州制に関する第3次中間報告』(自民党HP)
12年7月 道州制推進知事・指定都市市長連合
      地域主権型道州制の基本的な制度設計と実現に向けた工程(本文)
   9月 自民党道州制推進本部『道州制基本法案(骨子案)』(自民党HP)
   13年4月 全国知事会 道州制の基本法案について

 12年12月の自民党政権復帰後、安倍政権になってから議論は立ち止まりほとんど進んでいない。進まない背景として、平成の大合併の如く市町村の安易な合併のように都道府県の合併感覚で中央主導で議論が進み、州などの区分け先行で議論の大元でである権限と当然付随する財源などの移譲の議論が置き去りになったこと。その流れの中で、地方が猛反発したこと、将来の国民生活を大きく左右する問題で国家百年の体計ありながら、国民の関心が恐ろしく低かったことなどが理由としてあった。ここで確認しておくが、州制度がある連邦制を採用しているアメリカやドイツとは似て非なる制度である。連邦制の場合は、州(地方)が行政権だけでなく、法律をつくる立法権や、法律に基づいて裁く司法権を、州(地方)と中央政府(国)が分割して有することが、憲法で明記されている。日本がこの制度に改編する場合、憲法改正が伴う。道州制には明確な定義はなく、一般的に国が持つ権限や財源を可能な限り道州(地方)に移譲することで、地方分権という目標を達成するための手段であり、全国を道や州という、広域的な自治体に再編する制度になる。道州制の議論の本質は、区割りや州都をどこに置くのかなどは二の次として、国、道・州、市町村の3者の役割分担、国が持つ権限と財源の移譲がどうなるのか?これが第一義となる。内容はともかくとして、21世紀に入り国政レベルで議論が始まった背景には、平成の大合併で自治体規模が大きくなり政令市指定都市などの要件が緩和され増えたりするなど、都道府県の存在が次第に希薄になりつつあることもあった。ただ、『拙速な議論で事を進めるよりは地に足をつけた地方分権改革、広域連携を深めるなどのほうが現実的だ』が現在の潮流だ。


画像2(左) 拡大図 答申にあった区割り3案
画像3(右) 拡大図 道州制のイメージ図(画像 宮城県HPより)

【考察その1】
道州制のメリットとデメリット
実はブログ主は道州制は反対


画像4 拡大図 日本と東京都、及び東京23区の60年までの人口推移(画像 東京都HPより)

 こんな記事を書いておきながらブログ主は基本的には道州制は反対だ。理由は日本全体目線とブログ主が住む広島市目線の2つからだ。画像4は日本、そして東京都、東京23区などの60年までの人口推移の予想だ。東京都は25年の1,398万人、同23区内は30年の979万人をピークに人口減局面に入る。17年の東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の転入超過数(人口の社会増)は11.9万人である。この流入超過水準を以てしても、人口の自然減をそれを上回り全体で減少するのである。何が言いたいのかというと、微々たるものなので大勢には影響はないだろうが、人口減は単純な意味合いで地域の衰退をもたらす。道州制、他の施策もそうだが国策で意図的に東京の活力を削ぐのはどうかと思うのだ。東京は、これからも日本を背負う絶対エースとして、他の世界都市との厳しい競争を闘い外需を取り込み海外の富を誘引して、納税という形でその役割を果たすべきだ。その上がりを以て、家族(他の地方都市)を養ってもらいたいと思うだ。この表現に反発を覚える方も多いと思うが、事実は事実だ。これを道州制にすると、東京が稼いだ富の果実は国には今ほど入らなくなり地方がその恩恵に浴することが減った上、道州制により東京自体の活力も削がれる。広島市目線だと、仮に区分けにあるような『中国州』もしくは『中・四国州』の州都に広島市がなったと仮定する。生産性の高い地域-この場合の生産性とは、税収の稼ぎ頭で労働者人口が多くコスト(社会保障費など)が然程かからないことを意味する-は広島経済圏と岡山・倉敷を中心の東瀬戸経済圏だけとなる。稼ぎ頭が納めた税のみで、足手まといになりそうな生産性の低い過疎地域の面倒を見る羽目となる。現行制度のほうが広島市的には、旨味がある。唯一の利点は州都の誇りだけだ。実益が少ない誇りなど何の意味もない。広島市云々ではなく道州制の一般的なメリットとデメリットをまとめてみる。

道州制のメリット

 ①国から各道州へ様々な権限、的確な財源等を移管すれば、地域活性化、地方経済
  再生、現行よ
適切な競争原理による日本全体の経済の興隆の実現
 ②東京一極集中の抑制、過密化の抑制、過疎化の抑制、また二重行政の解消や国や県
  の出先機関
廃止・縮小が可能
 ③地方と中央の公務員の大幅な削減、地方議員の削減など、行政のスリム化
 ④自然災害、戦争、テロなどで首都機能が停止した場合、道州が首都のバックアップ
  となれば、リスクマネジメントが可能
 ⑤広範囲な交通網の整備が、大局的な見地での実施できる。このため無駄な都市イン
  フラ整備な
がなされなくなる
 都府県単位より大きな資本の選択と集中が可能。地域の実情に応じた政策・事業が
  実行可能
 ⑦自然環境や治山治水に関する事業は、県よりも広い広域自治体を設置した方が処理
  しやすくなる

道州制のデメリット

 ①国債の発行に代わって地方債を発行するため、信用力の低下に拍車がかかる
 ②都府県の廃止(合併)によって州を設置すると、州都とその周辺の声ばかりが重視
  され、合併
で行政権を失った地域の声が軽視される。州内一極集中が進む
 ➂財政の弱い自治体同士が合併しても、財政が強くなるわけではなく、強いところは
  もっと強く
なり、弱いところはさらに弱くなるという道・州間の格差拡大
 ④連邦制のアメリカ合衆国やドイツ連邦共和国と日本の『国民千人当たりの公務員数
  』を比較す
ると日本が最も少なく、道州制によって我が国の公務員が削減されると
  は限らない
 ⑤巨大地震など日本全体で対応しなければならないような大規模災害への対応能力の
  低下

【考察その2】
道州制論議の歴史 その1

道州制は議論の濃淡関係なく、90年間議論され続けてきた。民間レベル(経済団体などの提言など)や地方自治体の要望中心の色合いが濃く、国政レベルで真剣に検討されたのは2度だけだ。その歴史を簡単にまとめてみる。


【戦前の議論】1886~1945年

 1927年 台湾総督府樺太庁朝鮮総督府南洋庁と順に設置されたことで、府
       県の狭小さ
が経済統制の障害と考えられ、内地を統轄する内務省下に、
       郡制廃止とともに複数
の府県を包括する広域行政体の設置が議論され、
       全国を6州に分けて、官選の長を
置く(州庁設置案』を内閣に提案し
       た。しかし、『州庁設置案』は、行政制度審議
会で取り扱われたが成
       案とならず、審議会は277月の田中義一内閣の総辞職と
ともに廃
       止された

    田中義一内閣の行政制度審議会提案の6州案
    仙台州青森 岩手 宮城 福島 秋田 山形
    東京州茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 山梨 長野 新潟
    名古屋州静岡 愛知 岐阜 三重 富山 石川 福井
    大阪州滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 徳島 香川 高知 
    広島州鳥取 島根 岡山 広島 山口 愛媛
    福岡州福岡 佐賀 長崎 大分 宮崎 熊本 鹿児島 沖縄
    東京州茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 山梨 長野 新潟
    名古屋州静岡 愛知 岐阜 三重 富山 石川 福井
    大阪州滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 徳島 香川 高知 
    広島州鳥取 島根 岡山 広島 山口 愛媛
    福岡州福岡 佐賀 長崎 大分 宮崎 熊本 鹿児島 沖縄
  
   36年 廣田内閣で、東北6県の知事から『(国と県の)中間機関設置の要望
       書』が潮内務大臣へ提出された。約10年にわたるこの間の地方長官
      (都道府県知事)による中間行政機関検討案は、政界や内務省と折り合
       えず、地方県行政とその影響下にある周辺地域の衰退をどうするか
       政の分存対立や行政事務の錯綜を招きかねないとも評さ


   
38年 第1次近衛内閣時代に政界に影響を強めた国策研究会が、『道庁及び
       州庁設置案』に関して次なる論評を主に示している。
    1 大蔵、商工、鉄道、逓信、農林を地方官庁に併合することに困難があり
      、行政権限の移譲が望めない
    2 経済圏により区別すべしと云うが、京浜・阪神などの大都市を含む地域
      その他の地域について、経済差異をどう均衡させるのか
 
    3 これを公共団体とした場合に、これまで地方繁栄の基礎をなしてきた府

      行政とその影響下にある周辺地域の衰退をどうするか
行政の分存対立や行
      政事務の錯綜を招きかねないとも評さ


 
【戦後の議論】45~2018年

   48年 太平洋戦争後の占領下で行政改革が進められ、46年に行政運営と行政
       機関の根本的改革を目的として行政調査部が内閣に設置された。地方行
       政機関の規模等を含めた調査が行政調査部で行われ、48年に3案の行
       政組織が提案。しかしこの案は日の目を見なかった

    ①道制案-都道府県を廃止して、日本の地方行政機関として『道』を設置する
    ②州制案-都道府県を廃止して、日本の地方行政機関として『州』を設置する
    ➂地方行政庁案-都道府県を存続させ、広域行政機関として『地方行政庁』を
     設置

   57年 第4次地方制度調査会の答申において、『地方制』の構想が示される。
       内容は、市町村を基礎的自治体とし、現行都道府県を廃止して、国と市
       町村の間に 全国を 7ないし 9 ブロックに区分した「地方」という中
       間団体をおき、『地方』には公選制 の議会と『地方』の議会の同意を
       得て内閣総理大臣が任命する『地方長』を置くというものだった

   65年 第10次地方制度調査会の答申にて都道府県合併特例法案を提案
      
89~93年
 第2次行革審で、『国と地方の関係に関する答申』がまとめられ、
       定の
人口規模以上の市へ都道府県の事務権限を委譲する地域中核市制
       度
あるいは、都道府県連合(道州制の検討)や市町村連合の制度が
       提案された
 
   
06年 第28次地方制度調査会は、『道州制のあり方に関する答申』を行い、
       都道府県の廃止と新設となる道州による道州制導入を打ち出した。道州
       には9・11・13道州の3例である。特に北海道 04年に道州制を
       先行実施する提言をし、それに特区制度をもって政府は応え、道州制特
       区推進法
を公布
   08年 自民党の道州制推進本部(本部長:谷垣禎一)、道州制区割り案を提示
  
これより以降は、【考察前章】を参考の事 

その2へ続く


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