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今日の話題 3月7日中国新聞29面より引用
民営化3周辺施設も
広島空港 国、5月公募方針

【記事概要】
 広島空港の民営化で、国土交通省は6日、2021年4月開始に向けたスケジュールを示す実施方針をまとめた。運営を民間に委ねる施設には滑走路とターミナルビルだけではなく、広島県営ゲストハウス『フォレストヒルズ』などの周辺3施設も加えた。国交省が民営化で周辺施設を含めるのは全国で初めてで、今年5月の民間事業者の公募を始める。


画像1 3月7日中国新聞29面より(ブログ画像からは全て読めません)

【記事詳細】
 実施方針は対象施設について、国が保有する滑走路と国営駐車場、県出資の第3セクター『広島空港ビルディング』(三原市)が建物を保有するターミナルビルを明記した。加えて、
フォレストヒルズガーデン▽県営駐車場▽広島空港ビルディングの子会社が営む広島エアポートホテル-の3施設も位置づけている。3施設はいずれも、県が『地域の一体的な活性化につながる』として、民営化の対象とするように要望してきた。一方でフォレストヒルガーデンは婚礼や宴会の利用が中心で、空港運営との関連が薄く、一部の事業者からは『採算性の悪化につながりかねない』との声も出ていた。国交省は『地元や事業者の意見を踏まえ、対象に含めるのが妥当と判断した』と説明した。

 運営を委ねる期間は21年4月から1年4月末までの30年間とした。事業者は運営権を得るために国交省に金を払うほか、広島空港ビルディングの株式を購入する必要がある。従業員の雇用は子会社も含めて引き継ぐ。事業者の公募は、国交省が5月に募集要項を公表して手続きが始まる。大学教授や県関係者たちでつくる審査委員会で9月に3者に絞り込む。20年6月に事業者を決め、同8月に契約を交わす。地場大手やゼネコン大手などを含む2つに企業グループが経営参画の経営組織を設けるなど、企業の動きが活発化している。県は民営化で、事業者がより多くの利益を上げるため、ターミナルビルの改装や新築などの設備投資を進めるとにらむ。集客力が高まり、生み出した利益を着陸料の値下げに充てれば、新たな路線の開拓につながると期待する。


画像2(左) 広島空港民営化に向けたスケジュール
画像3(右) 広島空港位置図(画像3と4共に中国新聞より)

【考察その1】
国土交通省公表の広島空港民営化の諸指針
について


画像4 
広島県三原市(本郷地区)にある広島空港(画像 国土交通省大阪航空局HPより)

 まずはうんちくを語る前に、今回の国土交通省の広島空港の民営化で示した概要を書き連ねてみる。

広島空港特定運営事業等実施方針
▼本事業の概要
①目的
 航空輸送の安全性や空港の公共性を確保しつつ、民間の資金・経営能力の活用による空港の一体的かつ機動的な経営を実現し、内外交流人口拡大等による地域の活性化を図る
②事業期間
 30年間(+不可抗力延長で最長35年間)
⓷事業方式
・ 運営権者は、本事業の遂行のみを目的とするSPC(特別目的会社)とし、滑走路等の運営(着陸料の収受等)とターミナルビル等の運営を一体的に実施
・ 運営権者は、国から公共施設等運営権の設定を受けることにより滑走路等の運営を実施、ビル会社の株式を取得することによりターミナルビル等の運営を実施
・ 運営権者は、着陸料その他の収入を設定・収受し、これらの収入により事業実施に要する費用を負担 (※注1独立採算型PFI事業)

④本事業の範囲
・ 空港運営等事業 (滑走路等の維持管理・運営、着陸料等の設定・収受等)
  広島空港滑走路の維持・管理 広島空港運営事業他
・ ビル・駐車場事業 (旅客・貨物ビル施設事業、駐車場施設事業)
  国営駐車場 県営駐車場 ターミナルビルの運営
・ その他 (応募者による提案業務(地域共生事業、空港利用促進事業)等)
  
フォレストヒルズガーデン 広島エアポートホテルの運営

特徴
・ 周辺施設(県営駐車場等)と空港を一体的に活用することを可能とする仕組み
・ 空港の利用促進事業として、二次交通アクセス事業者等との連携を含めた提案を受ける

※注1独立採算型PFI事業とは?
 PFI事業は、事業費回収方法によって( SPCの事業収入)によって、サービス購入型、ジョイントベンチャー型、独立採算型の3つに事業形態に分類される。この中の独立採算型は、事業収益で総事業費をすべて賄う方式で、運営を取り行う民間事業者が公共施設を整備・運営し利用者から徴収する料金収入により民間事業者が運営費用とインフラ部の整備費用を独立採算(基本的には公的補助なし)により回収する類型をいう。

▼運営権者の募集・選定
①国による優先交渉権者選定手続 (19年5月~20年6月)
・ 有識者等で構成する審査委員会により審査 ・ 応募者が一定の参加資格要件を満たしているかを確認の上、提案内容を2段階で採点 (下記画像5-①)
・ 競争的対話等で民間事業者との間での相互理解を醸成 ・ 地域活性化等の実現に資する者を総合的に 判断のうえ優先交渉権者を選定 (下記画像5-②)
・ 優先交渉権者が設立したSPCと実施契約を 締結、所要の引継ぎを実施 ※スケジュールは現時点での想定であり、今後、変更があり得る (国及び広島県の代表各1名を含む数名を選任予定) (運営権対価はゼロ円を上回る金額を提案 (一括払い)) 下記画像5-➂


⇒上記の手続きを経たうえで、21年4月からの運営委託開始を目指す


画像5 広島空港民営化スケジュール表 赤太線が現在位置(画像 国土交通省HPより)

【考察その2】
今回公表のブログ主の所感
独立採算型PFI 二次交通アクセス事業者等との連携 事業期間30年・・・


画像6 拡大図 国管理26空港の2017年度 『航空系事業+非航空系事業』の収支(損益) 画像 国土交通省HPより

 今回の国土交通省公表の諸指針を読み、着目する点が3つあった。独立採算型PFIと二次交通アクセス事業者等との連携、事業期間30年である。まずは現時点の広島空港の経常損益をみてみる。17年度だと、『航空機系事業△227(百万円)+非航空機系事業376(百万円)=150(百万円)』と全体では1.5憶円の黒字となっている。赤字施設の民間への押し付けにも映るが、特に航空機系事業の損益計算に空港建設の減価償却費とその支払利息が含まれていると思われるので、この数字を鵜呑みには出来ない。
運営委託させる民間事業者には当然これらの支払い義務はないので、この2つの額が分からないので断言は出来ないが、ブログ主の予測だと減価償却費とその支払利息がなければ、最悪でも収支トントン、もしくはそこそこの黒字になっているのではなかろうか? そうでないと、独立採算型PFI方式の採用などあり得ない。この方式だと事業の収益を以て、空港インフラ部の改修などを自らの手で行うというハードルが高いタイプのPFI事業だからだ。それ相応の黒字を出せる見込みがなければ成立しない。委託する行政側(国と県)からすると一番美味しいのは言うまでもない。ここで、広島空港における空港経営改革について(16年3月) を見てみたい。議論の過程で『赤字の主要因である基本施設の減価償却費は運営権者に引き継がれない』、『広島空港の航空系事業はEBITDA(償却前利益)では黒字(13年度では2.8億円)であり収益性は高いため、広島空港の場合は航空系事業 の赤字を非航空系事業の黒字で補てんする構図にはならない』と自信満々に述べている。上記のリンクによると、営業費用の約4割が減価償却費が占めており、この点が帳簿上の赤字の要因で運営のみを行う事業者の経営の場合、収益性の高い事業になる、としている。さらに民間ノウハウを上乗せさせて運営に当たれば、収益の伸びしろはまだあるとの認識のようだ。これは行政運営時の設備投資に対する減価償却費の話であり、民営化後発生した設備投資に関しては、委託民間事業者がその分の減価償却費は負担する。  


画像7 全国の空港の航空系事業の収支(EBITDA) 画像 国土交通省HPより

 次の着目点は、『二次交通
アクセス事業者等との連携』だ。二次交通とは、拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通を指すことが多い。広島空港に当てはめると、この理屈だとJR山陽本線の白市駅&西条駅からの公共交通アクセスを指すと考える。昨年、正式に空港に直接乗り入れる鉄・軌道系アクセスを正式に断念した。採算性確保の年間利用者数が1,000~1,070万と1日平均に換算すると、2.4~2.9万人。17年度の広島空港の年間利用者数が288.5万人しかいないので、とても確保可能な数字ではない。結果的には妥当な判断と言えるだろう。陸上アクセスが中心にならざる負えない。県の構想では 主要ルート①/広島高速5号+山陽道 主要ルート 約40分 ②/国道2号東広島・安芸BP+山陽道 約65分 が基幹陸上アクセスと考えられているが、第3のルートとして選択ルート/白市ルート(JR+連絡バス) 約64分 の強化も謳われている。その事を指しているのだろう。速達性では陸上アクセスの主要②ルートと変わらないが、渋滞や天候に左右されないアドバンテージがある。『バス+JR』(広島空港HP)を見ると、日中はほぼ時間当たり4本程度の運行で、断念した鉄・軌道系アクセスの代替え公共交通アクセスとしてそれなりに機能している。『連携』とは、さらなるルートの開拓や片道運賃390円の値下げなのか、その辺がよく分からない。今後、挙手した企業グループの提案書に注視したい。

 最後は、『事業期間30年』だ。
21年4月から1年4月末までを指すが、印象として非常に長過ぎる。公共交通という社会的な公益性を鑑みての処置だということは理解するが、10~15年単位でも良かったように思える。懸念されるのは、経営難に陥った場合の撤退、倒産等の空港機能停止の両リスクだ。ここで持ち出したいのは、JR東海によるリニア中央新幹線計画ウィキペディア)である。27年東京(品川)~名古屋間、37年には名古屋~大阪間が全通して、東京~大阪間が最短で67分で結ばれる。山陽新幹線+中央リニア新幹線の組み合わせだと、東京(品川)~広島間が27年に1時間の短縮で3時間程度、37年には1時間半の短縮で2時間半程度となる。現在でも航空機は新幹線との広島~東京間の競争で劣勢を強いられている。航空機系事業の大半の収益を占める東京便のリニア開通後の利用者大幅減も高い可能性で予測される。多角化経営といっても出来ることは限られる。20年代後半以降、懸念されるリスクが浮上し独立採算型PFI方式が仇となり、よくても事業者の撤退、再枠の場合SPCの倒産になる、と予測する。空港運営という性質上、行政も看過できず財政支援せざる負えない状況になるのではなかろうか?当初の契約内容の事業スキームでの運営は不可能となり、再構築しないと絶対に行き詰る。その辺を考えると事業期間の30年というのは、やはり長過ぎる。中央リニア新幹線の影響は、実際に開業しないと分からない部分もあるが少なくとも開業前の経営状態の維持は無理なのは容易に予測可能だ。現時点では予測しえない事態も今後発生する可能性もあり、事業期間を長期設定するリスクは大きいと言わざる負えない。報道だと2つの企業グループが挙手しそうだが、その辺をどう考えているのか、知りたいところだ。