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今日の話題 3月25日中国新聞社説より引用
『将来像見据えて議論を』

【記事概要】
 中四国地方最大の119万人都市で、世界に知られる平和都市のかじ取り役を誰に任せるのか。広島市長選が昨日告示され、3選目を目指す現職と新人の計3人が立候補した。まちづくりの方向性が焦点の一つだろう。


画像1 再開発が進む広島駅周辺の様子。見た目の活況感と広島市の実態を冷静に見極める必要がある(画像 アンドビルド広島)

【記事詳細】
 市内のインフラ整備は、民間の開発と相まって着実に進んでいるように映る。JR広島駅周辺は南北自由通路が開通し、周囲の超高層ビルも伴って『陸の玄関口』に相応しい姿になりつつある。市中心部のビルは建て替えが進み、ホテルの建設ラッシュが続く。都市の活況感はあるのは確かだ。インフラ整備により、さらに民間の開発意欲を引き出す。経済の好循環を生み出すことは重要に違いない。とはいえ、市の財政力が規模に見合ったものでなければ、次の世代に重いツケを回すことになりかねない。今後も、路面電車の駅前大橋線の新設を含む広島駅南口の再整備や、アストラムラインの延伸、サッカースタジアム建設など100億円を超す大型事業目白押しである。宙に浮いた旧市民球場の跡地利用といった課題もある。

 一方で、市の財政は厳しさを増している。新年度当初予算では、1980年の政令指定都市への移行後で2番目に多い836憶円の市債を発行した。市債残高は、1兆1,316億円になる見通しだむろん昨年の西日本豪雨災害の復旧・復興事業が含まれていることも要因ではある。この5年で2度のごうう豪雨災害に見舞われた。平地が少ない地理的な特性も踏まえれば、防災・減災対策には一定の財源を投入し続けなければなるまい。ならば、どのように事業の『選択と集中』に取り組み、財政健全化も進めるのか。候補者には道筋を示してもらいたい。市の人口は増え続け、間もなく120万人の大台に乗る。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の推計では来年をピークに減少へと転じる。2045年には8万人減の112万人になる見通しだ。人口減も見据え、過熱する民間の開発とは距離を置く姿勢も必要ではないか。

 広島市長は自治体の長とは別に、もう一つの顔を持つ。世界平和と核兵器のない世界を追求する被爆地のリーダーである。今年は、復興の礎になった『広島平和記念都市建設法』の制定から70年になる。同法は、広島市を『恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴』とし、市長は『不断の活動をしなければならない』と定める。平和都市を完成させるには、基盤整備だけでなく、都市の理念を磨き続ける必要がある。会長を務める平和首長会議で都市連携を進めてきたように、広島市長は、国の論理を超えた立場で平和や核兵器のない世界を目指すのが在るべき姿だろう(以下略)

【考察その1】
現職候補の信任投票でしかない今回の選挙
中国新聞の指摘がブログ主の主張と同じで少し驚いた


画像1 広島市中区国泰寺にある広島市役所(画像 広島市HPより)


画像2 前々回(2011年)までの広島市長選挙の投票率の推移 下記表の1段目-男性投票率、2段目-女性投票率、3段目-平均投票率(画像 広島市HPより)

 別にひろしま村の瓦版でしかない中国新聞の肩を持つわけではないが、最近感じている懸念を代弁していて少々驚いた(笑)。これについては後述したい。前回の15年選挙では、スタジアム問題も絡みから、関心があった人間としては十分堪能できた。前ブログでも選挙期間中は特集記事のオンパレードで過分な批評と批判も数多く頂き、非常に感謝している。お陰様で随分とメンタルのトレーニングにもなり
、見聞も広くなり、今振り返ると深い感謝の気持ちしか残らない。改めて『有難うございました』と言いたい。前回の予想は現職候補者が保守系対立候補に3~4倍差で楽勝する、と予測してほぼその通りとなった。今回だが、予測する必要が全くないほど結果は分かりきっている。家内と月イチペースで様子伺いに来る実母(70代後半)、妹、そして勤務先の労務担当の人間に当り障りがない範囲で今回の広島市長選について聞いてみた。そのうち一人は広島市長選のことを知らず、残り3人は『今の人でいいよ』だった。まあ予測の範囲の回答だった。地方首長選挙でありがちなオール地元体制の現職候補の信任投票で終わるだろう。投票率も前回は、42.78%だったが30%台前半のまで下がるのではなかろうか?ブログ主解釈だと投票率の低さはイコール当選者への消極的支持の裏返しだと捉えている。要は『変える必要がないから投票所まで足を運ばない』である。本当に危機感を抱いているのであれば、少々の悪条件(天候など)であっても、選挙戦も盛り上がり投票所まで出向く筈だ。それをしないということは即ちそういうことでしかない。低い投票率の背景には、候補者の演じる役者ぶりの劣化も理由としてある。上記画像2をご覧いただくとお分かりになると思うが、前市長秋葉氏の場合、中央からの落下傘候補者とそれを良しとせず『秋葉憎し』の地元の保守系候補も立候補して、信任投票のような選挙は一つもなかった。この時代でも『劇場型政治』は流行っていたが、対立保守系候補者云々と言うよりも秋葉氏の主役としての役者ぶりが光り、対立候補者もその土壌で戦えるので引き立っていた側面があった。有権者により多くの選択肢を与える意味合いでは、非常に健全な民主主義を体現していた。現在の松井市長は政治家と言うよりは行政マンでしかなく、劇場型政治の役者ぶりでは前任者よりも劣るのは否定できない。あくまでも主役は現職の市長なのだから。


画像4 
15年4月前回広島市長選直後の有権者の市長に期待する施策アンケート(画像 中国新聞より)

 これは候補者の役者ぶりとか無関係の話になるが、市民の市政への関心低下も理由として大きい。上記画像4は、前回4年前の市長選直後の新市長に期待する施策一覧だ。1位
福祉・医療の充実-35.0%、雇用・経済対策-24.4%、と市の発展とは直接の係わりが少なく、家計の財布に直結するものが約6割を占め、道路などの基盤整備(都市インフラ整備)は僅か2.2%と実質最下位。この点からも市政への関心の低さが伺える。ブログ主の独自解釈だと、アジア大会開催の大失敗を経験し、広島市の発展が必ずしも市民の所得の向上に結び付かないことを学んだ。となると、市政への関心が低下するのは否めず、無関心市民の増加は避けられない。アベノミクスで多少の明るさは見えてきたが閉塞感が漂う現況、歯止めが利かなくなった少子高齢化、それに伴う縮小社会の本格到来、老後の不安、持てない明るい将来展望など、自身のことで手一杯で、住む街のことなど顧みる余裕がない、こんな市民が多数を占めている。市政関心層は、引退世代の高齢者や物好きな趣味的な人たちが中心となっている。広島市だけの現象ではないが、有権者の意識がこの15~20年で大きく変化している。この現状を民主主義の危機と取るか否かは個人の判断に委ねたいが、ブログ主はそう悲観する必要はないと考える。無関心層が増えたと言っても、関心が完全ゼロの市民は少ない。先に触れた理由で、関心が下がっただけの話で市政の危機と感じた場合、普段は寝ていても起きて投票に参加するものと思われる。心の片隅で気にはしている。投票率の低い選挙とは、逆に言えば『今回は行くほどのことはない』と考え行動を起こさないだけだろう。この場合の市政の危機とは、財政の破綻寸前、人口の大幅社会減(転出超過)や異常な高齢化による市の衰退化、市民置き去りの不毛な政治対立による市政の停滞などを指すが、こんなことはそうそう起きない。今回の市長選はかなりの低投票率が予測されるが、この場合もまあ順調で、平穏無事と有権者が判断した証左になるかも知れない。

【考察その2】

非常に気になる財政規律の緩み その1
アジア大会開催の教訓をまるで生かしていない



画像5 賛否はあるが、大失敗に終わった94年開催のアジア大会の開会式の様子(画像 広島市HPより)

 中国新聞記事でも警鐘を鳴らしているが、広島市は平成31(2019)年度当初予算案で政令指定都市移行後、2番目の規模となる市債836億円を発行した。年度末の市債残高は、積もりに積もり1兆1,317憶円となり90年度の
約3倍にまで膨らむ。『喉元過ぎれば熱さを忘れる』の例えではないが、アベノミクスによる好景気、好調なイバウンド需要、黄金期を迎えたカープ人気に浮かれ財政規律のたがが緩み始めている。市の腹積もりでは、現在の活況感を背景に積極的な公共投資をして民の投資を誘導する狙いがある。それは十分理解出来るところだが、投資分を後に市税と言う形で回収できるのか?一抹の負担を感じる。いや、出来ないだろう。40代以上の世代の方は覚えていると思うが、広島市は過去に同じ手法を規模を大きく行い、大失敗した経験がある。広島市は、地方中枢4都市-札・仙・広・福-の中で最も遅れていた都市インフラ整備の遅れを挽回するために、94年にアジア大会を開催した。官民含めての投資総額は約1兆3千億円とも言われ、当時まだ背中ぐらいは見えていた福岡市との差を縮め、あわよくば追いつくことを目標に挽回に必死だった。投資が佳境に入った90年代初頭にバブル経済は無残にも弾け、今更引くことも出来ず、国の全面支援も受けていなかったので民間スポンサーに頼る算段だったがこれも見通せなくなった。下記の市の市債残高の推移をご覧いただくとお分かりだと思うが、90年度と01年度の残高を見比べると、約10年間で2.3倍に膨張している。これはアジア大会開催だけではなく、90年代末の小渕政権時の公共事業の乱発にお付き合いさせられたものも含むので、一概には言えないがそれを差し引いても異常な数字である。膨大な大会開催前の投資の回収も開催時期のタイミングの悪さから不可能となり、財政破綻待ったなしまで追い込まれた市債の山と後活用が難しい身の丈に合わない巨大スポーツ施設のみが残された結果に終わった。アジア大会開催後の90年代半ば~10年代半ばまで『広島版失われた20年』という長い冬眠期に入る。その間に広島市は、二度の財政健全化計画(98~03年、04~07年)を経ることになる。アジア大会開催で得た教訓は『分を弁えない行為は必ず身に災いをなす』、『公共事業最強伝説の崩壊』である。

1 広島市市債残高の変遷                         
           年度末市債残高     
  時財政対策債残高等控除後残高
1990年度      3,762億円          
3,762億円
2001年度      8,755億円          8,351億円
2007年
度      9,548億円          7,856億円
2010年
度      9,818億円          7,422億円
2015年度    1兆1,114億円          7,024億円

2018年度    11,222億円          6,786億円
2019年度    1兆1,317憶円(3.0倍)    6,823億円(1.8倍)

 『公共事業最強伝説』とは、再開発や区画整理事業などを行うと、該当地区及び近隣地区への民間投資も進み、企業立地も促進され地価も上昇して市民の雇用も増え地価上昇による固定資産税、法人市民税などの市税の増収も図られ、企業、行政、市民共に万々歳になることを指す。
『公共事業=善』とされたのはこのためだ。しかし、高度・安定成長期には通用したこの法則もバブル経済崩壊後は、官の投資だけの尻切れトンボ、市債の残高だけ増えるケースが増えた。そのため、費用対効果なる指標が公共事業にも採用されるに至るが、量る公共事業の正当性を証明するために都合の良いデータをのみを羅列して検証するケースが多く、ゼロベースの検証でなくたぶんに儀式的な意味合いが強い。全てを把握してはいないが、前秋葉市政12年のうち9年間は財政健全化計画期間中で、これでは思い切った公共投資など思いも及ばなない。財政運営の面では、身の丈に合った運営をしていた印象が強い。当たり前と言えば当たり前だが、二度目の財政健全化計画の前年には財政非常事態宣言(広島市HP)まで、発令している。他のまちづくりブログなどを読むと、『何でもかんでもつくれ、つくれ』的な論調が目立つ。高齢化や少子化、財政の問題などはネガティブ要因としてタブー視されているかのようで触れない場合が多い。これは100%間違いで、健全な財政があればこそ市活性化余力も生み出されるわけで、この点は絶対に外せない視点だ。家計で例えると、義務的経費-人件費、扶助費(市の社会保障予算)、公債費-などは、食費や通信・光熱費、家賃、ローン支払いに該当し、投資的経費-公共事業など-などは、子どもの学校関係以外の教育コスト(学習塾など)、趣味余暇などの遊興費に当たる。一家の総収入がさして増えず、食費などが増えているのに、『子どもの将来のために〇〇が必要だ』として収入分不相応な教育コストを負担したり、『ご近所の〇〇さんが、〇〇しているからうちも・・・』と言い出し、家のリフォームをしたりして『いずれリターンが絶対にあるから』を理由に、家の借金を盲目的に増やしている行為に似ている(と思う)。要は収支のバランスの問題だが、現在の松井市政は支に重きを置き過ぎている感がどうして拭えない。松井氏の取り巻き(?)である経済界全体の限られた民意を、市民を代表する民意と受け取り市政に反映させている節を感じる。中国新聞の指摘ではないが、意見の一つぐらいに受けとめ取捨選択を割り切るぐらいの距離感もあってもいい筈だ。要は収支のバランスの問題だ。次の考察では、その辺を考えたい。

【考察その3】
非常に気になる財政規律の緩み その2
このままではいつか経てきた道の危険が再び・・・

 
画像6 
14年度の政令指定20市の将来負担率と実質公債費比率による財政状況分布(画像 広島市HPより)

 話が前後するが、19年時点の広島市の財政状況は一時の危機状況を脱したとはいえ、依然良好とはいえない。政令指定都市20市の中ではワースト3位辺りに位置している。上記画像6は14年度の政令指定都市20市の将来負担比率と実質公債費比率である。何となく置かれている状況が分かろうというものだ。中国新聞記事でも触れているが、今後も課題な市負担を伴う大型事業が順番待ちをしている。それらを現段階で分かる範囲でまとめてみる。

2 今後本格化するであろう大型事業
    事業名           事業費     広島市負担額   事業年度
安佐市民病院の移転・建て替え    ・・・      ・・・    18~22年度
市営基町駐車・駐輪場一帯再開発   ・・・      ・・・     未定
屋根付きイベント広場整備      28億円    事業費の50% 19年度~
広島駅南口広場再整備       155億円     ・・・    17~25年度
アストラムライン延伸       
570億円    289億円   19~30年前後
サッカー専用スタジアム建設    190億円     ・・・    19~24年度
国道2号線西広島BP高架延伸   300億円    100億円   20年代後半開通?
広島市東部連続立体交差化事業   915億円    166億円    未定
西広島駅周辺一連開発        ・・・      ・・・    19~30年代半ば
広島市中央卸売市場建て替え    350億円?   276億円?  21~30年代初頭
東広島・安芸BP        1,757憶円   1/3の沿線自   未定
                          治体負担発生
 
3 今後浮上する可能性がある事業
   事業名                     事業時期
広島高速4号(広島西風新都)線           20年代半ば~?
放射線影響研究所移転(比治山公園)跡地利用     20年代半ば~?
中央公園老朽公共施設の建て替え           
20年代半ば~?
市営MICE(展示場)施設               未定
市営基町住宅17号棟建て替え            30年半ば代頃~?

 過去のブログ記事を掘って、書き並べてみた。今後本格化するであろう事業だけでも、『これ本当に財政が持つか?』と疑問を抱くに十分だ。はっきり言うが多過ぎる。半分とまで言わないが2/3ぐらいでいいぐらいだ。市負担の詳細が不明のものもあるので、正確な数字は分からないが、1千億円は余裕で超えそうだ。松井市長は、これまで滞っていたものを、全て自身の任期中に目途をつけたい意図を感じる次第だ。事業ごとの佳境に入る時期をずらすなどの工夫はするのだろうが、これだけあると小手先の手段だけで乗りきれるとは思えない。これで終わりと思いきや、その後も構想、検討中のものも間隙をぬって割り込む可能性が高い。時代が高度・安定成長期にいるかの錯覚に陥りそうだ。30年代に入ると老朽都市インフラ群の耐用年数切れが続出することが予測され、先送りの延命補修では間に合わなくなる。始末が悪いことに30年代に入ると縮小社会(超高齢化+大幅人口減)に本格突入する(下記画像7と8参照)。義務的経費比率がさらに上昇して、政策的経費(公共事業)の捻出が今以上に難しくなる。財政の硬直化が一段と深刻なものになる。どう更新コストを捻出するのか?素人では伺い知れないので、ブログ主が仮に生きていたら回答を見てみたいものだ(笑)。ブログ主は基本的には、県と市ともに現在の為政者を消去法で支持している。ただ、ここ数年の浮かれた様子にも見える公共投資の大盤振る舞いは度を越しているようにも思える。投資額相応の民間の投資にリターンがあるとはとても思えないし、市の財政水準を逸脱しているようにも感じてしまう。別にブログ主はどこかの政党のように『市民の福祉が~』などと野暮なことを言い張るつもりはない。ただ、当てのない根拠に立脚したバラまき戦術かのような公共投資に疑問と不安を感じている。集約都市構造転換に資するものに特化させた戦略的な公共投資が最適解だと思うのだが・・・。活況感がある今こそ、一度立ち止まり真剣に考える時期ではなかろうか?


画像7(左) 広島市の2060年までの人口推移推計
画像8(右) 広島市の2060年までの高齢化率推移推計(画像共に広島市HPより)