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今日の話題 3月24日中国新聞1~2面より引用
企業誘致『成果なし』76% 地方創生波及弱く


画像1 3月24日中国新聞1面より

【記事詳細】
政府が地方創生の一環に掲げる東京23区からの企業誘致で、雇用増などの成果を全市町村の計76%が感じていないことが24日、共同通信の自治体アンケートで分かった。町村では計84%に達し、さらに波及は弱い。企業にとって取引先の多い東京圏を離れる決断は難しく、移転を促す優遇税制などの効果も限定的となっている。政府は東京23区にある企業に対し、地方の若者が地元で就職する機会を増やすため、本社機能の移転や地方拠点の拡充を呼び掛けている。地方創生は安倍政権の看板政策であり、統一地方選でも論戦となりそうだ。

 企業移転は、就職を契機とした地方からの人口流出を抑え、東京一極集中を抑える狙いがある。政府は企業の取り組みを後押ししようと、東京23区から本社機能を移すか、事務所や研究施設といった地方拠点を拡充した場合に法人税を減税する優遇制度を設けた。ただ、共同通信社のアンケートでは、国の優遇対象となった企業の移転・拡充は287件に留まる。自治体独自の優遇税制などを利用したケースも含めても、7500件の目標には程遠い現況だ。特に国が優遇した本社機能の移転僅か25件(15県)で、うち10件は茨城、栃木、群馬の関東3県に集中。新幹線、民鉄特急、高速道路を利用すれば取引先や中央省庁がある東京まで2時間以内という好立地が評価されたとみられる。

 しかし、本社機能の移転は多額の費用が伴う上、東京から離れることで情報収集が難しくなるデメリットといったマイナス面も大きい。企業側には『海外を視野に入れた営業を展開するには本社が東京に合った方が有利になる』などの声もある。一方、地方拠点の拡充(262件)は42道府県に広がりを見せる。業務拡大に伴う地方支店や事務所の増築、研究開発部門の移転など、費用面で比較的ハードルの低さが功を奏している。政府は引き続き、2020~24年度の第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』を今年度末までに策定し、企業移転の支援を継続していく方針だ。

【考察その1】
そもそも地方創生(ローカルアベノミクス)とは?

地方都市のブランド力強化が早道だと思うが・・・


画像2 2010年国勢調査に基づいた将来人口予測値(黒点線部分) 画像 内閣府HPより

 日本も08年の国内人口1億2,808万人をピークに人口減少局面に入った。少子高齢化はそれよりもずっと以前から指摘されていた。単純な理屈で、足し算(出生数)、引き算(死亡数)の世界でプラスが少子化で少なく、マイナスが多いので人口の自然減少となる。少子高齢化は、ある程度の経済繁栄を極めた先進国では一様に抱えた問題で、先進国病とも言われている。10年国勢調査に基づいた国立社会保障人口問題研究所の試算では上記画像2のように60年人口-8,674万人、2110年人口
-4,286万人(現行の1/3程度)が予測(何も少子化対策を施さなかった場合)されていたが、少子化委対策が多少の功を奏して合計特殊出生率の改善が図られ、15年の国勢調査準拠の試算では、~高齢化の推移と将来推計~ で見るように多少の下がり幅が抑えられた試算となっている。ただ、少子高齢化、人口大幅減の大きな流れを堰き止めるまでには至っていない。歴代政権で、最も人口減少問題に真摯に取り組む安倍政権は、少子化の大きな要因に子育て環境に適していない東京23区をはじめとした東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)や首都圏(東京圏+茨城、群馬、栃木、静岡の一部など)への一極集中にあると分析している。東京圏への転入超過数(下記画像3参照)は11万9,779人にものぼり、大学進学時期と就職時期が全体の80%以上を占めている。結婚をして子どもを産み育て次世代の労働力の担い手を残す、これを生産性の一つと定義した場合、24歳以下の若年層の東京圏への過度の転入超過は、さらなる出生数の低下(少子化)を招きかねないとしている。そこで、東京圏に若年層集中の是正を目指し、地方における就労の機会を増やし(20年までに30万人分)、定着させることで現在の合計特殊出生率1.43人(17年度)を1.80人まで改善させて、60年時点で国人口1億人程度を維持するという
人口減少克服と地方創生(東京一極集中の是正)を合わせて行う政策を打ち出した。 ~まち・ひと・しごと創生総合戦略(2018 改訂版) ~(首相官邸HP)

画像2 東京圏の年齢階層別の転入超過数(人口社会増)推移(画像 首相官邸HPより)

 東京圏への若年者流出の防波堤-ダム機能-強化策として ①国の関係機関の地方移転 ②東京圏に本社・本店機能を持つ企業の同機能の地方移転、企業の地方拠点強化 ⓷地方創生に資する大学改革(魅力あふれる地方大学の創造) などを掲げ、その反対に東京圏に対しては ①東京23区内に本校がある大学の学部新設、定員増を10年間認めない として、膨らみ続ける需要をよそに供給増を課した。要は地方都市の若年者の受け皿となる供給を増やし、東京圏はこれ以上の受け皿を増やさない政策を打ち出し、地方創生(ローカルアベノミクス)実現の足掛かりにしようとしたのである。ところが、上手くはいっていないようだ。今回の共同通信社の報道は、防波堤強化策の②東京圏に本社・本店機能を持つ企業の同機能の地方移転、企業の地方拠点強化で移転を促す飴施策として法人税の減税を与えているが、これをメリットとしてもデメリットである、同業界、許認可官庁がある東京から離れることの方が遥かに大きく、本社・本店機能の地方への本格移転になると情報の孤島化、優秀な人材が確保出来なくなる、社員・行員の生活の質低下、莫大なコスト負担なども加わり現実的な話ではなくなる。国や地方の行政サイドには移転をしてもらう理由はあるが、企業サイドには移転する大きな理由が殆どない。報道だと、本社の移転先の4割が純粋な地方ではなく首都圏内の茨城、栃木、群馬であることを思えば、『笛吹けども踊らず』の典型例のようだ。法人税の減税程度の飴にもならないような餌では、誰も飛びつかないだろう。それこそ経済産業省の地方移転、東京に本社・本店を置く企業への法人税重税化(2倍程度)などの思い切った追い出し策でもしない限り、企業の本社・本店の移転など100%進まないだろう。

 報道でも触れているが、地方拠点強化は首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などの自然災害リスク回避の理由などもあり、さらに飴部分の強化を図れば今後も容易に進むかも知れない。行政サイドと企業サイドの利害が一致しているからだ。そもそも、少子化の原因を東京一極集中のみに求めるのは変な話だ。ブログ主が思うに、少子化の原因は ①先進国有数の高等教育(大学など)コストと高等教育受験までの同コスト ②夫婦共働き時代の子育て環境の悪化 ⓷非正規社員などの経済格差による生涯未婚率の上昇 ④価値観の多様化 などが大きな理由であり、少子化問題と東京一極集中問題をリンクさせるのはいささか無理がある。それぞれ別の大きな問題として取り組むべきものだと考える。現実の需要の東京23区の大学の定員増を認めないなど、机上の空論以上の暴論に過ぎない。東京を全ての価値の源泉とする日本人のメンタルの是正をしたほうが回り道だが結果的に早道になる。大学の価値とは日本の現状では、偏差値でありさらに深堀すれば大学の価値は本校がある都市の人気ランキングである。人気都市内の大学の序列がそのまま反映される。大学自身の努力によるものは微々たるものだ。地方都市の都市ブランド力を向上させれば、優秀な人材も集まる可能性がある。さすれば、業種的に東京圏に少なくとも本社を置く必要がない企業に限り、移転する可能性も無きにしも非ずになるかも知れない。少し、問題の本質の指摘がズレているとしか思えない。ブログ主が考えるところだと、業務機能の地方移転を促すよりも、東京圏の京浜地区の老朽工場の地方への移転・新設、研究開発部門の移転を促す施策の方が高い効果があると思うのだが。要は、雇用の場が今よりも増えればいいのだから。

【考察その2】
地方創生(ロカールアベノミクス)広島市の場合
都市のブランド力向上こそ自立した経済圏を構築する肝に


画像3 広島市の人口移動の分析概要(画像 首相官邸HPより)

 4月7日に広島市長選挙も控え、広島市目線での地方創生(ローカルアベノミクス)について考えたい。広島市には本社機能移転に係る制度はない。~広島市企業立地促進補助制度~(広島市HP) 広島県まで見るとこんな制度がある。 ~
地方活力向上地域特定業務施設整備計画の申請について~(広島県HP) 地方創生(ローカルアベノミクス)の動きと連動し発足した制度だが、残念ながら東京に本社置く企業の移転が決まったという話を聞いたためしがない(笑)。広島県の落ち度というよりは、先の考察で言ったように企業サイドの問題なのでどうしようもない。上記画像3は17年度の広島市の人口移動(転入、転出)の分析だ。この統計には外国人居住は含まれていない。転入582人と辛うじて自称中国地方の中枢都市の面目を保った。一応、東京圏への流出のダム機能を果たしたと言える。ところが、総務省統計による外国人居住者も含めた18年になると、広島市は転出超過に陥り、▲661人になっている。これは中国地方に強力なライバル都市が出現しているのではなく、福山市-▲1,998人▲岡山市-▲1,538人、倉敷市-▲1,136人、下関市-▲1,032人になっており軒並み中国地方の都市群が上位に顔を並べている。広島県は軒並み転出超過の自治体ばかりで、東広島市が192人の転入超過となっている。原因としては、20年の東京五輪を控え東京圏の吸引力がさらに強まっていることが挙げられる。東京圏の転入超過数はさらに増えて、13万5,600人と前年よりも1万6,000人ほど増加している。広島市ではこの数年インバウンド需要の高騰を背景した都市の活況感が並大抵ではない。社会情勢の変化や財政難で滞っていた多くの再開発や跡地利用計画が一気に動き出し、姿を現すようになり都市全体の空気感は、イケイケムードが充満し十数年前の停滞感が満ち溢れた頃がまるで嘘のようである。しかし化けの皮を数枚剥がすと、別の広島市の実情が見え隠れする。まちづくりの本質はそこに住む人たちに幸福感を与えるのが最大目的だが、他には都市の成長をもたらす事も不可欠な要素の一つだ。その観点だと、転出超過(人口の社会減)転落というこの結果は及第点を与えられるものではなく、これまでの再開発などの多大な努力は報われなった、と言えなくもない。転出超過(人口の社会減)など、中四国地方の中枢都市を目指す広島市においてはあってはならないことだからだ。

 
画像4 広島大学本部跡地で進む『hitoto 広島』の様子(画像 アンドビルド広島より)

 今回に新聞記事に話を移すと広島市への本社を移転した企業は皆無と思われる。地方拠点の強化については上場企業の多くの支店があり、全体で262件の数からも詳細こそ不明だがあったと思われる。広島市が市域の転出者数を減らし、同都市圏、広島県内、近隣県(山口、島根)からの転入者数を増やすポイントは、マニュアル通りの都市開発(上物整備)だけではなくイメージ的なものも含めた都市ブランド力の向上が欠かせない。例えば、現行の企業サイドの理屈の東京23区(と言うか霞が関、丸の内、大手町界隈)とのアクセス性で語られた日には、永遠に在京上場企業の移転など広島市には永遠に縁がないものになる。都市経済に特化したものではないが、様々な視点から分析した地域ブランド調査なるものがある。必ずしも都市力の全てを反映させたものではないが、一定の参考意見程度にはなるので紹介したい。 ~地域ブランド調査2018~ この分析によると、広島市の順位は現在24位。まあ普通に考えれば都市力相応と思えないほど低い。上位を見ると大都市も多いが、観光都市としてのイメージが良い都市も規模関係なく上位にランクされている。ただ広島市は、18年度は急上昇して前年の34位から大幅にランクアップしている点に注目したい。


画像5 『地域ブランド2018』 魅力度上位都市ランキング表

 国内的にはカープのプチバブルが貢献して、イメージ向上に大きく寄与していると思われる。都市イメージの力を馬鹿にしてはいけない。実際の姿とは別に憧れを持たせることは、都市としての大きな吸引力になる。その最大なるものが国内においては東京なのだから。さらには住みやすさや多くの就労場所などを提供していけば、東京圏同様に一度転入したら二度と転出しないでこの地で結婚して、家庭を持ち、子どもを産み育ててくれる。広島市の合計特殊出生率-女性が生涯で子どもを産む人数-は、1.49人(17年度)で、政令指定都市20市の中では3位で、全国平均の1.43人よりも高い。広島市の住みやすさを示す指標になるだろう。これは誇ってもいい。都心ブランド力の構築は、国内外に対して大きなセールス力の向上にもなり、若年者を集める求心力にもなり、外需-都市観光、MICE-をも取り込む力になり得るだろう。目に見えない市の大きな財産になる都市ブランド力向上について、幅広く議論する時期に来ていると思う。ブログ主が思うには、その地に住む市民よりも外にいる人間の方が広島市を高く評価している節を感じることがある。広島人の癖として、慎重過ぎる点と自虐視点で物事を捉える点がある。『広島が絶対』と『広島は何をしてもダメ』と両極端に大きな振り子のように、振られている人が実に多い。これは広島の地を13年間離れた経験があるブログ主の率直な意見だ。都市ブランド力とは、非常に抽象的で朧げなものだが一度構築すれば、当分は安泰だ。これについては後日専用記事を書きたい。財政の将来の禍根を残すかも知れない上物整備一辺倒の都市再開発よりも、都市ブランドの構築こそ回り道だが結果的には早道な気がするのはブログ主の思い過ごしだろうか?


画像6 世界遺産の原爆ドームと平和記念公園の様子(画像 ひろたびより)