前回記事 都市ブランド力の構築 1
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都心部活性化他都市先進事例


【考察その3】
広島市の都市ブランド力の現状


画像1 『地域ブランド2018』 魅力度上位都市ランキング表

 BRIブランド総合研究所なる団体が、毎年1,047の地域(1,000市区町村、及び47都道府県)を調査対象とし、全国3万人が各地域のブランド力を評価する日本最大規模の消費者調査を行ってい、ランキング形式で結果を公表している。調査項目はそれぞれの地域に対して魅力度、認知度、情報接触度、各地域のイメージ(『歴史・文化のまち』など14項目)、情報接触経路(『旅番組』など16項目)、地域コンテンツの認知(『ご当地キャラクター』などコンテンツ16項目)、観光意欲度、居住意欲度、産品の購入意欲度、地域資源の評価(『街並みや魅力的な建造物がある』など16項目)などを質問し、日本全国からの視点で84項目の設問を設定。また、出身都道府県に対する愛着度、自慢度、自慢できる地域資源など出身者からの評価など26項目を調査。調査項目は全110項目に及び、各地域の現状を多角的に分析し、数値化している。民間機関の調査ではあるが、行政の陳腐な調査よりもある意味、信頼がおける。我が広島市は、17年は22.7㌽で34位。18年は、27.8㌽で23位に急上昇している。各都市能力の潜在能力を考えると分不相応に低いと言える。ただ、この1年間で5.0㌽の上昇は、名古屋市7.4㌽、大阪市6.9㌽に次ぐもので来年以降も大きな期待が持てる。当然、調査対象は国内の3万人なので国内都市としてのブランド力の数値だ。視点を少し変えれば『国内都市-広島市』より、『国際都市-ヒロシマ』の方が強いので海外までに調査すれば、海外の対象人数にもよるが広島市いや『ヒロシマ』は余裕でTOP5に入るものと思われる。調査項目ごとのポイントなどが一斉不明だ。前回の記事でも触れたが、SWOT分析』-trength強味(得意分野)eaknesses-弱み(苦手分野)、pportunities機会(情報接触機会の多寡)hreats-脅威(同コンセプト都市との競合)-により、広島市の場合まだ伸びしろは大きいと思われる。


画像2 広島の都市ブランド構築に欠かせない世界遺産の原爆ドーム(画像 ひろたびより)

 都市ブランドの構築は、都市観光やMICE(マイス)の需要の取り込みに大きな効果があるのは言うまでもないが、大学進学や卒業後の就労といった都市の転入・転出(人口の社会増減)にも大きく左右される。論理的な検証は専門家などの手で行われたわけではないが、日本で最も吸引力が強い東京23区に若年者層がブラックホールのように吸い込まれている様を見るとブログ主の独断では、大きな要素には違いないと思う。皮肉を言う訳ではないが、再開発や跡地利用計画で実現した超高層ビルだけで中国地方のダム機能(中枢都市)を十分果たせるとは到底思えないし、桁一つ以上強い東京圏に対抗出来ないだろう。それに同じ指向の都市開発での都市としての魅力の創造という手法では、広島市よりも上位カテゴリーに属する都市に対しては、通用しない。『他都市との差別化』が全く行われていないからだ。同じ土俵の上で市域・都市圏人口に勝る都市に商業、業務施設の厚みで勝負するのは、戦術的には賢い方法とは言えない。古ぼけた昭和的なオールウェイズな風景が一新され、都市イメージ向上効果こそあるが、それはこの地を訪れた人たちへの印象であって、まだ来ていない人たちには何の関係もない話だ。大学進学に限った話をしたい。大学受験の人気都市を量る指標として分かりやすいのは、その地域を代表する国立大学、文系私大トップ校、理系私大トップ校の偏差値である。ブログ主が受験生だった昭和の末期に比べ現在は、3大学共に落ちている。これは広島の都市としての不人気ぶりをある一面示している事象だ。大学進学は日本の場合、特別な目的があれば別だがまず最初に行きたい街を決め、自分の学力レベルに応じたその範囲で、ステータスの高い大学を受験するのが常道だ。大学そのものに魅力を感じていくケースも中にはあるが、そこまでは多くない。日本の大学の価値など所詮その程度だ。都市ブランドは、あくまでも都市の骨格-おおよその戦略的なもの-をなすもので、産業に反映させるの肉付けは個々の政策-戦術-はまた別の話になる。広島市をはじめとする日本の地方都市は未だに過去の成功事例-高度・安定成長期の経済活力を反映させたまちづくり-に固執しているが、既にそんな時代でもないので、縮小時代(超高齢化+大幅人口減)を見据えた新モデルを模索する段階ではなかろうか?それは、都市ブランド構築一択である。

【考察その4】
個別の地域ブランドの確立に余念はないが全体の戦略に乏しい広島市
県と市の共同作業で都市ブランド構築を急ぐべき


画像3 原爆ドームと平和記念公園を望む。都心部地区のこれだけの河川と河岸緑地、小高い山があり天然のロケーションを形成している都市は日本でも少ない。有効活用がされればまた違った展開も(画像 ひろたびより)

 広島市の現在と過去の政策でブランド構築に係るものを少し探してみた。広島市ではないが、広島県の取り組みで次のようなものがある。~『ひろしまブランドの取り組み』~(広島県HP) 取り組みの主旨は理解出来るし決して悪くはないと思うのだが、広島市目線だとかなりインパクトに欠けたものでとても目指すべきところに行き着くとは思えない。しかも都市ブランドの構築が目指すところではなく、コンセプト不在で何をしたいのかの戦略性にも乏しく、自ら発信してPR活動する発想すら感じなかった。肝心の広島市はと言うと都市ブランドを標榜したものは一切なかった。拡大解釈で見れば、広島観光コンベンションビューロー『観光』(公式HP)とひろしまビジターズ・インダストリー戦略行動計画(広島市HP)もほんの僅かだけ、かすめているのかも知れないが都市観光とMICE(マイス)のPRに過ぎない。都市ブランドの構築には、揺るぎないコンセプト設定と広島市だけではなく都市圏域及び、全県的な一体的な取り組み、一定のメッセージ性を持った都市の統一感を醸し出すことが最低条件なので、個々の政策だけが独り歩きをしている印象が拭えない。PR活動も待ちの姿勢に終始しており攻めには程遠い。インバウンド需要が高騰して追い風が吹ている今だからこそ、広島市だけがではなく『広島200万人都市圏構想』(広島市HP)に加入する自治体と広島県と共に広島都市ブランドの構築について議論するべき時期に来ている。構築されるまで時間こそかかるが、一度構築されれば致命的な失態でも侵さない限り、当分安泰で市の財政を傾けてまでの公共投資もする必要がないので、その点は効率的だ。現在、その都市が保有している様々な資産の再活用が中心で必要とされる都市インフラ設備で足りないものだけを新規及び、類似施設の更新で付加価値を新たに加えれば問題はない。広島市だけで一手に引き受けるのはどうかと考える。広島市の弱い部分があれば、圏域内の都市にその役割を担ってもらえばいいし、東京都のように集客した観光客を地方に再配分する発想もあっていい筈だ。広島市に宿泊するであろうホテルに長期滞在してもらえば、それはそれでいいことだ。


画像4 広島市の大きな都市資産である平和大通り。全国でも3都市にしか実現していない100㍍道路だ。これを活かさない手はないと思うのだが・・・(画像 ひろたびより)

 で、都市ブランドのコンセプトは一にも二にも、『核兵器廃絶と国際紛争がない平和の希求』である。実際にそれが叶う国際情勢なのかはこの際は問題としないとする。それはまた別の話だからだ。他都市との競争に勝つ上では、優位に立てるものや差別化を図れるものに視点を置けばこれしかないし、広島市のアイデンティティでもあるからだ。ブログ主なんぞは、これがない広島市など数多くある地方都市の一つに過ぎないと思っている。河原の小石だ。他都市では絶対に持ちえないものをいかに多く持つのか、これが決め手になると考える。裏を返せば他都市を持っていないものを過剰に捉えて、慌てて持つ必要がないのである。ただし、持たないことで大きな不利にならない限りでは、である。広島市が他都市よりも先んじるものを少し探したい。国際平和に関しては、人類最初の被爆都市なので専売特許みたいなものだ。二つ目は、緑豊かな都心部地区のロケーション挙げたい。広島市の都心部地区には多くの大きな河川が流れ、左右の河岸には遊歩道も兼ね備えた緑地帯が張り付いている。そして比治山、二葉山のような小高い丘陵地もあり自然のロケーションを形成。都市計画の東西の基軸である平和大通りには道路とは思えないほどの緑地スペースがあり、潤いのある空間を演出する。平和記念公園(12.2㌶)、中央公園(42.8㌶)などの大規模な都市公園もあり、広島市は日本の大都市の中では、有数の緑と潤いに溢れた都心部地区を持っている。広島市民の多くは気づいていないが、他都市に勝る都市資産として誇ってもいい。ただ、日本の都市公園法などが有効活用の障害となり、小奇麗な遊休地のイメージを醸成し、『公園・広場=無駄な空間』との間違った認識を植え付けた。京橋川などで一部、オープンカフェなどの利用もされてはいるが孤立した点に留まり、回遊性はなく、線になっておらず大きなにぎわい性演出には至っていない。『パークPFI事業』などを上手く活用すれば、やり方次第では大化けする可能性がある。『緑豊かな公園都市』として平和色を前面に打ち出したブランドコンセプトを強力に後押しするものになるに違いない。


画像5 カープはあくまでも国内向けのコンテンツに過ぎないが、広島人のアイデンティティを主張する存在でもある

 三つ目は『歩いて楽しい都市空間』の創造だ。欧米流で言えば、コンパクトシティ、日本風に訳すと集約都市構造への転換だ。1980年代後半から、欧州都市の多くが都心部地区に限っては、人間性回帰の歩行者中心の都市空間に再配分をして失いつつあった求心力の回復に努めてきた。日本においても周回遅れ以上の遅れで概念が導入されている。少子高齢化が進みに進み、08年度をピークに日本も人口減所局面に入った。国策として集約都市構造への転換へと舵を切り直した。多くの国内都市が標榜こそしているが、本来のそれを兼ね備えた都市はまだ誕生していない。仮に広島市が先駆けて実現すれば日本初になる可能性がある。広島市の場合、集約都市-歩行者中心の都市空間に再配分-に相応しい資質を兼ね備えている。広過ぎず、狭過ぎない都心部地区、苦戦こそしているが多くの利用者数を誇る路面公共交通網(路面電車、バス)など、条件が実は揃っている。他都市が実現していない今こそ、差別化を図る意味合いでも絶好の機会であると考える。人間性重視のキーワードで、『国際平和の希求』=『公園都市』=『集約都市(コンパクトシティ)』の3つは密接にリンクする。日本の都市の多くは、今なお高度・安定成長期の成功モデルである商業・業務施設の集積や『一発逆転ホームラン』と言わんとばかりのハコモノ集客施設を立地させる形の都市開発を続けている。悪手とは思わないが何れは行き詰るだろうと予測する。同じ路線で努力しても、広島市よりも上位都市の中で存在感を発揮するどころか埋没するだろう。だったら、真逆の路線で存在を際立たせるという道もあってもいい筈だ。PRとプロモーション活動については、都市の一体感を醸し出すロゴ・キャッチコピー等の制作、官民一体となった協力、役割分担体制の確立、平和色を前面に打ち出した広島ブランド専用HPの立ち上げ、地域ブランド商品の共通化、広島市を主としながらも都市圏域の周遊観光コースの提案、観光大使よりも上位の広島ブランドアンバサダーの任命、CMとオンライン広告の活用をフル稼働させて、極力攻めの情報発信に努める。まあ、こんな感じだろうか?ブランド浸透度を国内外の民間調査会社に委託させて行い、都市観光客数やその宿泊率、そしてMICE開催件数などの目標設定も行う。目標に届かない場合は、原因を調べ対応策を施し改善させる。これをとにかく繰り返す、で良いだろう。広島市は国内都市としてはありふれた凡庸な都市でしかない。しかし、海外向けの『ヒロシマ』に変換した場合、別の輝きを放つ。東京、京都に匹敵する抜群の知名度を誇りその存在は、他の地方都市の追随を許さない。30年代に入ると大都市部でも本格的な人口減時代に入り、国内市場は縮小の一途を辿る。都市観光やMICEなど外需の取り込みが、21世紀で生き抜く鍵になると確信している。広島市の観光に訪れる多くの人たちは、その都会ぶりを期待して来るのではない。被爆の実相に触れ、深く学ぶという学習観光の要素が強い。市のアンケート調査では2割近い人々がリピート客でもある。その意味合いでは広島市は何もない都市では決してない。インバウンド需要が高騰している今こそ、都市ブランドについて深く議論して確立に向け歩み始めている時期に来ている。悠長に『まあ、他の都市の様子を見ておいおいと』では機会を損失するだけだろう。

終わり