カテゴリー記事 広島の都市問題 都心部活性化

【考察その1】
集客施設として見た場合のマツダスタジアム



画像1 毎試合スタジアムを真っ赤に染め上げるカープファン (画像 アンドビルド広島より)

 今日の記事は集客施設としてのマツダスタジアム(広島市民球場)、広島カープのコンテンツ力について書きたい。09年の開場から丸10年が経過した。計画当初『夢の器』などと称され、当時はそのオーバーな表現を失笑されたものだが、本当に広島人の夢の器になりつつあり今や原爆ドーム、広島城と共に広島市のラウンドマークと言っても差し支えないものにまで成長した。カープの第2次黄金期の到来、かってないほどの観客動員が広島市全体の上げ潮基調に乗せている感すらする。原爆投下後の広島市の復興の歴史共に歩み、広島人の家族でもあるカープは、広島地域の土着信仰的な存在でもある。親から子へ、子から孫へとカープ愛は代々受け継がれる。観客動員数は、開場当初は年間180万人、新設効果が薄れた後は150~160万人ぐらいが想定されていた。旧市民球場時代のラスト10年間(99~08年)は、平均して100万人台前半だったことを踏まえると妥当な予測だった。09~13年まで予測通りに推移したが、14年『広島版カープ女子』、15年『男気』の社会現象が起きて、15年は初の200万人を突破。18年に至っては、223.2万人と限界値にまで達した。使い古されたフレーズだが、プロ野球は大都市興行型、Jリーグは地方都市興行型と言われたがその定説を覆した格好になった。現在のカープは、球団戦略とスタジアム移転のタイミングが絶妙にリンクして地域の潜在需要を掘り起こし、大成功を収めた稀有な例だと言える。カープ球団は、80年代より球団職員をメジャーリーグのスタジアムから国内の地方球場に至るまでくまなく派遣、施設の視察を行わせるなど、広島市民球場(当時)に代わる新球場の研究を精力的に重ねてきた。90年代に入ると、老朽化が著しい市民球場に変わる新市民球場建設の議論が浮上し、行政(平岡市政時代)と地元経済界は旧貨物ヤード跡地(現マツダスタジアム)での人工芝のドーム球場をイメージしていたのに対し、一貫して天然芝のオープンスタジアムを想定していた。


画像2 18年度のマツダスタジアム施設と施設見学の状況(画像 広島市HPより)

 90年代後半~00年代初頭は、
人工芝のドーム球場案が議論の主流だったが、広島市の財政難-ドーム球場案300億円のうち150億円が資金不足と言われていた-、当時の秋葉市長の先進的な政治判断、などの事情も相まって旧貨物ヤード跡地でのオープンスタジアム建設が決まり、現在の隆盛に繋がる道筋が敷かれた。~新球場の推進~(広島市HP) 仮にドーム球場が誕生していれば、メリットは悪天候時の試合開催可能だけで、カープなどの指定管理業者ではなく第3セクター会社による建設、運営となり、閉鎖的で一体感に欠け潜在需要の掘り起こしは限定され、しかもスタジアムビジネスの収益の柱である。飲食、広告収入が第3セクター会社のものとなり、さらには現在よりも高い使用料を徴収され、北海道日本ハムファイタ-ズのようになり、カープ極貧球団のままだっただろう。よくドーム球場のイベント利用のメリットが強調されるが果たしてそうだろうか?地方都市比較で札幌ドームと比較してみる。

札幌ドーム&マツダスタジアムの諸データ
①札幌市-市域人口195.5万人(18年) 1.5%都市圏人口263.3万人(15年)
 札幌ドーム
  総利用者数 304万人 稼働日数 271日 年間稼働率 74.2%
  日本ハム主催試合196.9万人(公式戦のみ)

②広島市-市域人口119.9万人(18年) 1.5%都市圏人口209.7万人(15年)
 マツダスタジアム
  総利用者数 ・・・万人(200万人台後半?) 稼働日数 298日 年間稼働率
81 
  
6%
  広島カープ主催試合223.2万人(公式戦のみ)

 稼働率云々の議論で言えば年間50%を超えれば御の字で、マツダスタジアムの80%超えは、ほどフル稼働に近い。予算では建設時に発行した市債の償還費を2.1億円としているが、実績では3.6億円を返済しており、優良プロフィットセンター(利益を責任を持って生み出す部門)として機能している。よくこうしたスタジアムなどの集客施設建設の議論で稼働率の問題が取りざたされる。単体施設では弱いものを他の商業、宿泊施設などを組み合わ
(複合化)ことで相互補完させて、日常的なにぎわい性を創出させるものだが、多機能単体施設であってもこれだけの稼働率が確保できれば、複合化する必要性はそこまで高くない。多少の距離があるが実質的な複合施設的な存在として、広島駅南口地区などが機能している。広島市の恥部とまで揶揄された広島駅周辺の投資を加速させているのは、マツダスタジアムの存在と言っても過言ではない。これがカープの第2次黄金期を誘引、インバウンド需要の高騰も相まって広島全体の好景気感を醸し出している。実態はそこまで楽観できないのだが、空気感としてはそんな感じだ。マツダスタジアム建設のトータルコストは、本体建設費-90億円、土地取得費54.75億円、プロ野球興行に必要とされる設備費-22億円、その他周辺整備費-15億円、計181.75憶円を要しているが、カープ優勝の経済波及効果(350億円台)、予算よりも高い指定業者の納付金額を鑑みると既に直接、間接的に十分ペイしていると言えるだろう。経済産業省が掲げる『スタジアム・アリーナ改革』(経済産業省HP)のスポーツの成⻑産業化に貢献し、都市活性化にも大きく寄与している。広島市では珍しいまちづくりの先進事例として取り上げられる機会も多い。~国内外のスタジアム・アリーナ事例~(経済産業省HP) マツダスタジアム完成で観客動員数を大きく伸ばしたことから、観客動員を大きく伸ばしたことは各界から注目を集め、13年から17年の5年間で、2020年東京オリンピックパラリンピック組織委員会、プロ野球関係者、Jリーグ各クラブ、全国の官公庁などから延べ200団体以上、約2,900人がスタジアムの視察に訪れている。

【考察その2】
広島カープの顧客層について

アウエーツーリズムを実践しているのは意外にも・・・


画像3 超満員のマツダスタジアムを三塁側から見た姿(画像 アンドビルド広島より)

 次は、広島カープのコンテンツについて考えたい。比較対象としてサンフレッチェ広島を持ち出すが、特に悪意はないのでご了承頂きたい。

広島カープのサンフレッチェ広島の観戦者層の分析
出典:広島市民球場運営協議会資料 Jリーグ スタジアム観戦者調査2018 サマリーレ
   ポートより

①性別 
 広島カープ 男性50.6% 女性49.4%
 サンフレッチェ広島 男性64.0% 女性36.0%
②年齢構成
 広島カープ
 20歳未満16.2% 20代10.8% 30代12.4% 40代22.6% 
 50代19.1% 60代以上18.8%
 サンフレッチェ広島
 20歳未満9.5% 20代16.1% 30代15.0% 40代25.2% 
 50代22.7% 60代以上11.5%

➂来場者住所
 広島カープ
 広島県内71.3%(広島市39.0%) 広島県外28.7%
 サンフレッチェ広島
 広島県内81.7%(広島市45.0%) 広島県外18.3%
④年間観戦来場数
 広島カープ
 今回が初めて32.5% 2~5回45.4% 6~9回8.9% 10回以上13.2%
 
サンフレッチェ広島
 0~1回10.0% 2~7回29.6% 8~14回19.1% 15回以上41.2%
⑤来場交通手段(広島カープのみ)
 自動車26.9% 団体バス2.1% タクシー2.9% 公共交通47.1%
 徒歩&二輪車15.2% その他5.9%
⑥スタジアムの楽しさ雰囲気など(広島カープのみ)
 満足73.5% やや満足22.4% やや不満4.1% 不満0% その他0%

『①性別』だが、かープの方が女性層を取り込んでいる。カープ女子現象の名残だろう。観戦ハードルの問題や一般的なイメージの相違が背景にあると考える。『②年齢構成』については、10~20代の括りだとカープ、サンフレ共に20%台半ばに留まっている。高いか低いかの判断は難しいところだが、双方が奪い合いをしているのではなく、競合相手はもっとも多いと思われるスポーツ無関心層だろう。10代の息子に聞いたところ、カープ人気が高騰している現在でも一定の無関心層が存在し他の年齢層よりも高いようだ。新規層の取り込みに失敗すると、将来的に行き詰るので看過できない。ブログ主はスポーツ無関心層の関心はスマホやタブレットのアプリではないかと考える。ただ、カープだけで言えば、10代の観戦者層が4年前の7.3%よりも2倍以上になっており、そこまで下手を打っていないと言えなくもない。『➂観戦者住所』だが、アウェーツーリズムを売りにしているサンフレの方が低い結果となった。これはスタジアムの立地状況のハンディもあり単純比較は難しい。スタジアムまでかかる平均時間がワースト3位であることを思えば多少差し引く必要がある。カープの場合、サッカー特有のアウェー文化ではなく、単に県外のカープファンが観戦にやって来るだけだろう。サンフレの場合、中央公園広場の街中スタジアムが実現すれば、ある程度は改善するものと思われる。カープの年間観客数のうち約30%が県外からの集客で、数にして約64.1万人。いち施設としては立派な数字だろう。


画像4 19年2月に改修された電光式スコアボード(画像 アンドビルド広島より)

『④年間観戦回数』ではサンフレのリピート率の高さが際立つ。平均10.1回と恐らくカープの平均回数よりもかなり高いと思われる。クラブとの密着度が伺える。コア層の比率が高く、趣味や余暇の範疇を超えているのではなかろうか?カープの場合、チケット入手が容易ではない事情も絡みここまでのリピート率確保は難しい。もっともカープ人気の高騰は現在、MAXで今後下がることを考えるとこの辺は見習う必要があるだろう。『⑤来場交通手段』についてだが、公共交通分担率が意外と低いことに少し驚いた。自動車来場の多さも然りだが近隣に駐車場にでも止めているのだろうか? サンフレのそれを書いていないのはデータがないからだ。アンケート調査ではあるがサンフレについてはこんなものがある。新スタジアム完成後、使う予定の交通手段だ。公共交通74%-JR・アストラムライン2 5.4% JR+バス・路面電車15.5% バス・路面電車33.1%-、自動車14.8%、2輪車5.9%、タクシー&家族の送迎1.6% になるらしい。『⑥スタジアムの楽しさと雰囲気』にマツダスタジアムの全てが凝縮されると言っても過言ではない。一定の満足層が何と、95.9%もいる。殆ど不満がないと言っているのに等しい。4年前の90.7%から毎年増え続けているのが凄いの一言だ。指定管理業者でもあるカープ球団の絶え間ない努力の賜物であろう。これがプロ野球球団でも有数のリピート率を誇る要因だ。いまさら言うことではないが、広島カープの場合、親会社がなくその広告費と言うか仕送りなしで球団経営をしている。いわば営業原資が少ない中、健闘している。毎年マツダスタジアムの手直しを利用者の要望に沿い、出来る範囲で続けている。19年の開幕前に、①電光式スコアボード、②3回コンコース塗膜防水工事 ➂ハートフルシート整備 ④バスタべリア整備 を行った。所有者の広島市とカープ球団の共同作業だが、臨機応変の対応が可能なのもカープ球団が指定管理業者だからだ。直接管理では
千葉ロッテに次ぐ2例目である。その意味合いでは、マツダスタジアムは広島人が育んでいると言える。そして広島市を代表するラウンドマークにまで成長した。24年春にサンフレッチェ広島の新スタジアムが中央公園広場に開場する。行政主導では日本初の街中スタジアムの誕生になる。都市公園法の強い縛りこそあるが、その中でも知恵を絞りマツダスタジアム同様に一定の集客力を誇り、活力を失っている都心部地区の活性化の一助になる施設になることを願ってやまない。


画像5 19年2~3月に改修された部分(画像 広島市HPより)

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