カテゴリー記事 都心部活性化他都市先進事例

【考察その1】
かっての『
株式会社神戸市』の縮小社会を見据えた壮大な実験 その1
脱衰退都市を掲げる神戸市の取り組み


画像1 神戸市の都心部地区を六甲山方面から望む(画像 神戸市設計協力会HPより)

 1970~90年代の半ばぐらいまで、神戸市は全国の自治体の羨望の的だった。市街後背部の山地より削り取った土砂を用いてポートアイランドを代表とする人工島を臨海部に埋立造成し、商工業・住宅・港湾用地として整備するとともに、埋立用土砂採取後の丘陵地を住宅地・産業団地として開発した。この一連の施策は『山、海へ行く』と呼ばれ、都市インフラの拡充・整備が大きく進むことになった。81年のポートアイランド第一期竣工時には、地方博ブームの先駆けとなる『神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア'81)』や『ユニバーシアード神戸大会』を開催して成功させるなど、これらに代表される都市経営手法は、『株式会社神戸市』と称され全国の市町村から自治体経営の手本とされた。95年の阪神淡路大震災で甚大な被害を受け状況が一変した。震災での被害による港湾機能の麻痺や、震災以前からの上海・香港・高雄釜山などに代表されるアジア諸港の追い上げによって、国際貿易港としての相対的地位はかつてと比べると低下した。震災復興政策で一時的に国際貿易港としての地位を持ち直したが、2010年代に入り大阪市への人口流出が顕著となり、18年は人口の社会減(転出超過)人数が、全国5位の1,520人と衰退都市局面に入った。市域人口は、15年福岡市、19年川崎市の追い抜かれ7位に転落している。地方大都市部での本格人口減(人口の自然減、30年代以降)に入る前の、人口の社会減は深刻な問題となっている。


画像2 
ドイツの地方都市カールスルーエ。世界初のトラムトレイン(軌道線と鉄道線の相互乗り入れ)が実現した都市としても名高い(画像 KVV公式HPより)

 神戸市に限らず、一部の巨大都市以外はこれまでのモーターリゼーションに迎合した都市計画の反省と、縮小社会(超高齢化+大幅人口減)への備えとして集約都市建設-ネットワーク型コンパクトシティ-に舵を切り直した。LRTやBRTなどの路面公共交通導入を柱とした公共交通全体の再編と強化、都心部地区の歩行者中心の都市空間の再配分、都市の成長管理の概念の導入など60~70年代のドイツ、オランダ、スウェーデンなどの諸都市の都市再生の取り組みが端緒となり、80年代に入り環境意識への高まりから欧州各国の都市も標榜し始めた。94年のストラスブールのLRT導入の大成功が、契機となりその都市建設がコンパクトシティの概念に昇華し、21世紀の都市計画の潮流に押し上げた。現状容認だけのモーターリゼーションに迎合した都市計画だけでは、都市の本当の活性化、持続的な都市の成長が望めないことに多くの失敗を繰り返して気づいた。そして実践、本来あるべきの都心部地区のにぎわい性を取り戻し、都市の成長を果たした。成功都市は星の数ほどある。同時に失敗した都市も少なからずある。その殆どが、戦略-コンパクトシティ建設-の誤りではなく、戦術-コンパクトシティ実現の数多くの包括メニュー-の失敗が原因であることが多い。例えば歩行者専用道路(モール)ネットワークの構築の際、導入反対勢力に配慮し過ぎて形骸化したとか、新規導入交通機関の選定機種の間違い、ライバルとなる郊外開発を規制しなかったとかである。日本でもコンパクトシティの概念はかなり前から広く知られていたが、実際の国策となったのは10年代に入ってからで欧州先進国よりも一回り以上遅かった。その動機は、郊外大型商業施設の乱立による都心部地区の空洞化、縮小社会の突入などである。神戸市もその中の都市の一つで、先に説明したように近年衰退都市局面に入り、主役都市建設にかける意気込みは尋常ならざるものがある。


【考察その2】
かっての『株式会社神戸市』の縮小社会を見据えた壮大な実験 その2
『三宮クロススクエア』の概要


画像3 神戸市が定める都心部地区の範囲(赤点線内) 画像 神戸市HP


画像4 神戸市最大駅-三宮駅で構想される『三宮クロススクエア』の範囲(画像 神戸市HPより)

 神戸市では集約都市建設の指針となる立地適正化計画-『神戸市都市空間向上計画』(神戸市HP)をの策定作業に入っている。広島市では既に策定され、3月末より運用に入っている(ホント計画策定だけは早い・・・)。その中で求心力を持たせる都心部地区を上記画像3の範囲を定めている。市域最大駅の三宮駅を中心とした半径500㍍の範囲をコア地区にしている。15年9月の策定した『三宮周辺地区の『再整備基本構想』』(神戸市HP)の中で強く打ち出している。18年9月には、『神戸三宮『えき≈まち空間』基本計画』(神戸市HP)を策定した。三宮駅周辺は、神戸市全体を牽引する役割を担っているが、他の大都市同様に様々な課題を抱えている。その課題を羅列すると、①乗り換え動線がわかりにくい ②駅前広場の交通結節機能が弱い ➂駅から周辺のまちへのつながりが弱い ④玄関口にふさわしい特色ある景観がない ⑤広場など人のための空間が少ない ⑥神戸経済を先導する機能集積が十分でない ⑦建物老朽化が進行、小規模建物が密集 以上7点を指摘している。どこかの都市にも当てはまるものが何点かあるのが少し笑える。最も問題視されることは、三宮駅周辺はJR西日本、阪神、阪急、市営地下鉄(2線別駅)、新交通(AGT)の5事業者6駅がバラバラに立地(上記画像4参照)して、お世辞にも乗り継ぎなどの結節機能や動線が十分確保されていない点だ。極論すれば各事業者がそれぞれの利害に基づき、別の方向を向いていると言っても差し支えない。それぞれが別駅名を称しているのはそれを端的に示している。神戸市の集約都市建設まで話を広げると、収拾がつかなくなるので一部割愛する。そこで、バラバラに立地して、結節機能で劣るハンディを都市空間上物理的にほぼ不可能な、統合駅建設ではなく歩行者中心の都市空間への再配分により克服しようと考えた。駅位置を変えないで、結節機能を改善などあり得ないと思うかも知れないが、国道2号線などの幹線道路が東西方向に貼り付きバリアだらけで、自動車の走行に一定の制限を加えた場合、結節改善効果が見込まれるのである。


画像5 現在の
『三宮クロススクエア』付近の様子(画像 神戸市HPより)


画像6 第一段階-25年頃の
『三宮クロススクエア』付近の様子(画像 神戸市HPより)


画像7 
第二段階-30年頃の『三宮クロススクエア』付近の様子(画像 神戸市HPより)


画像8 『三宮クロススクエア』の完成イメージパース(画像 神戸市HPより)

 そこで神戸市は、三宮駅中心とした半径500㍍の範囲をコア地区を『三宮クロススクエア』と銘打って税関線(
フラワーロード)と中央幹線(国道2号線)の一部を、人と公共交通優先の空間とする構想を打ち出した。現在の10車線もある国道2号線の車線を段階的に25年頃-10車線⇒6車線(上記画像6参照)、30年頃-6車線⇒3車線(上記画像7参照)に減らし、歩行者中心の都市空間への再配分を行い同地区の回遊性の大改善、そして分散立地している各事業者の駅間の結節改善を図ることにした。一度で完成形に賛否が相半ばの状態で、誘導するのではなく段階的に整備して完成形に向けた世論醸成を図るという手法を選択した。具体的な完成予定は記載されていないが、何となくの予想だと40年代以降だろうか?神戸市のHPによると、まずは三宮クロススクエアの東西方向の東側をモデルケースとし、数年単位のひとサイクルを段階的に経て市民や同地区の事業者の反応を確認しながら、徐々に整備速度を上げる。まず第一弾として、19年7月より約1カ月にわたり、『三宮クロススクエア』の第一段階(車線数10⇒6車線)の社会実験が行われることになった。モールやトランジットモールの社会実験自体は別に珍しいことではない。過去に数多くの都市で実験があった。姫路市のように実現に至った都市はあるにはあるが、規模縮小や反対意見に過剰配慮した形の実現ですら少なく、大した努力もせず非現実的と断じた立ち消えや今後の検討課題として先延ばしにされたものが殆どだ。その意味合いでは神戸市の社会実験も予断を許さないが、段階ごとの社会実験だと思われるので今後の展開に注視したい。 ~『三宮クロススクエア』の整備に向けて大規模な交通社会実験実施します!~(神戸市HP) 


画像9 『三宮クロススクエア』の段階的整備イメージ(画像 神戸市HPより)

 都心部地区の自動車利用の一定の制限を課し、歩行者中心の都市空間への再配分を行う場合、通過交通対策としていの一番に複数の環状道路整備が必須となる。全国の都市では、大体2~3本都市計画決定されているのが常だが、神戸市の場合、東西に細長く後背地が高地の六甲山が迫るという特殊な地形があってかその環状道路計画がない。 ~神戸市主要幹線道路ネットワーク~(神戸市HP) 都心部地区を東西方向に関西大都市圏の大幹線道路が横断する状況で、流入するであろう通過自動車交通量を如何にして迂回させ捌くのか?この点も、注目したい。大阪湾岸道路西伸部(神戸市HP)の整備だけで事足りるのか?多少の不安も残る。神戸市は都心部再生の大まかな方向性として、次の5点を掲げている。①歩くことが楽しく巡りたくなるまちへ ②誰にでもわかりやすい交通結節点へ ➂いつ来てもときめく出会いと発見を ④人を惹きつけ心に残るまちへ ⑤地域がまちを成長させる である。都心部地区内の回遊性向上強化策として、三宮クロススクエアの他にLRTorBRTの導入を検討していた。これだけ鉄軌道系公共交通が発達した神戸市においても、線的公共交通-郊外都市鉄道・地下鉄・AGTなど-だけでは、需要を拾いきれないとして面的公共交通の側面もあるLRT、BRT導入の検討と相成った。~都心が目指す将来の交通体系イメージ~(神戸市HP) 当初は名古屋市同様にLRTの導入を視野に入れたようだが、BRTに方針転換し社会実験を18年10月に『都心~ウォータフロント間』で行い、現在は連接バス運行事業者を選定(神姫バス)し、20年4月からの運行を目指している。専用レーンやPTPS(公共車両優先システム)など真のBRT要素が殆ど欠け、福岡市同様に疑似BRTですらないが、段階的整備の端緒と思い、今後の発展に期待したいところだ。今回の神戸市の取り組みはまだ構想部分が大きく、目に見える形にはなっていないが仮に実現すれば、今後の日本の集約都市建設のモデルケースになる可能性も十分秘めており、目が離せない。

その2へ続く

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