前回記事 神戸市歩行者中心の都市空間への模索 1

【考察その3】
広島市の歩行者中心の都市空間への取り組み
前市長時代の方が先進的な取り組みをしていた

並木通りを上から見た状況
画像1 10年秋葉市政時代に実施された並木通りを中心とした『まちなかホコテン2010』の様子(画像 広島市HPより)

 さて広島市の都心部地区の歩行者中心の都市空間への転換の取り組みだが、模索自体は前回記事で紹介した神戸市よりも実は早かった。相生通り、鯉城通り、平和大通りなどの主要幹線道路ではないが、並木通り(10~11年)、袋町『裏通り』(10~11年、15年)、中の棚(10~11年)の計3回実施された(上記画像1参照)。10~11年の『まちなかホコテン』では、自動車の乗り入れを一切規制する形で、15年は少し後退し規模縮小され、『歩行者と自動車の共存』を掲げ実験に臨んだ。詳細については次の記事を参考にしてほしい。 ~モール(歩行者専用道路)・トランジットモールについて考える その4~ 3度の社会実験を経て策定されたのが、次の計画である。 ~『紙屋町・八丁堀地区の歩行環境整備計画』の基本方針(案)~(広島市HP) ~楕円形の都心づくりを支える歩行環境整備計画について (広島市HP) 読んで頂くとお分かりになるが、『将来的にはこんな方向にもっていきたい』などイメージは何となく理解出来るが、具体的なものが一切ない(笑)。集約都市の何たるかを深く理解していないと言うか、『都心部地区を歩行者中心に』との言葉が嘘くさく聞こえ、その本気度を疑ってしまう。補助金目当ての集約都市だと責められても言い逃れが出来ないほどだ。広島市の都心部再生策は、都市再生緊急整備地域の指定による老朽ビルの建て替えなど民需の誘導だけに限定されているのがその特徴だ。未だに高度・安定成長期の成功体験による上物整備一辺倒の開発思考に囚われている。


画像2 先月リニュアールオープン本店東西館の様子。ボラードが設置され、敷地一杯に建物が建てられておらず、少し後退させて建設されおり実質的な歩道の拡大が若干図られている(画像 アンドビルド広島より)


画像3 休日の都心部地区の集客の状況。本通は高い数値を示しているが、周辺に広がりを見せていない(画像 広島市HP)

 都心部求心力の低下の最大の要因は、郊外大型商業施設の乱立であることは誰の目にも明らかで、これにより都心部地区の商業機能が著しく低下した。要は消費者に見放されたのである。都心部の再生を図るには、①対処療法-再開発ビル、スタジアム・アリーナなどの集客施設整備 ②根本治療-歩行者専用道路ネットワーク構築など、回遊路の整備(歩行者中心の都市空間への再配分) ➂体質改善-郊外大型商業施設の立地規制 以上3点を根気強くやり続けるしか術はない。ブログ主の定義だと、①だけでは、その集客力の高さに関係なく点で終わってしまいそれ以上の拡大は期待出来ない。上記画像3は都心部地区の集客状況を示している。唯一のアーケード付きモール区間である本通が一番高い数値を稼いでいる。ところが他の回遊路が貧弱であるために、その賑わい性が周辺にすら拡大していないことが数値の上でも確認できる。この画像は、歩行者専用道路(モール)の有用性と回遊路の重要性を余すことなく示しているだろう。課題とその解決策を同時に示しており、非常に興味深い。この種の話を始めるとややもすると左寄り的だとか、机上の空論などと感情的な反応をする人たちが一定数いるが、まちづくりに政治思想の左右など存在せず又どちらでもよく、現実の数字に基づいたものなので机上の空論なのではない。それに、自分教の信者であるブログ主が左寄りと指摘されても失笑するしかない。前回記事で紹介した神戸市の『三宮クロススクエア』をそのまま、広島市の都心部地区に感覚的に当てはめると、『紙屋町交差点~(鯉城通り)~白神社交差点~(平和大通り)~三川町交差点~(中央通り)~八丁堀交差点~(相生通り)~紙屋町交差点』の道路の車線を半分以下にして、公共交通通行区間(バス専用レーンなど)、歩道の大拡幅、自転車専用道路の整備に充当するようなものだ。実現の可能性の議論はさて置き、これぐらいのアドバルーンを打ち上げ、実行しないと都心部再生など10年後も空念仏のように唱え続けているに違いない。


【考察その4】
広島市の回遊性向上策の事例
そろそろ高度・安定成長期の開発思考からの脱却を


画像4 中央公園広場スタジアムのレイアウト。赤点線部分が、紙・八地区への回遊路になるらしい(画像 広島市HPより)


画像5 旧市民球場跡地に整備予定の屋根付きイベント広場のイメージパース。画像左側に東側商業施設と連絡する回遊路となるべく高架連絡橋が整備される(画像 広島市HPより)

 まずは上記画像の5と6をご覧頂きたい。中央公園広場と旧市民球場跡地跡地に建設されるスタジアムと屋根付きイベント広場である。実はこの2つに目に見えない共通点が隠されている。それは、高架建造物による歩道の建設だ。建設理由は回遊路の確保である。回遊性向上をさせる取り組み自体は決して悪くはない。ただ、高架、地下などの立体構図物でのそれはいただけない。そこまで言い切る根拠は、仮にバリアフリー構造であっても、心理的肉体的な負荷が発生して目的がない限り垂直移動は、モールなどの平面移動よりも敬遠されやすい傾向が強い。特に高架建造物は都市美観の観点でも問題がある(と思う)。その証左として01年開業の紙屋町地下街シャレオがある。1日平均8万台の自動車通行と16万人の歩行者(当時)があった同交差点だが、渋滞の解消(歩者分離)、相生通り以北と以南の回遊性の向上、都心部地区-紙屋町地区の求心力の向上などを目的に建設された。立地的にはこれ以上ない最高のものだったにも係わらず、結果的に失敗に終わった。債務超過に陥った運営会社の広島地下街開発、中途半端な規模が災いして集客施設としても機能しない、回遊路としても同交差点が廃止され、エディオン広島本店東館前と本通電停付近の横断歩道の通行量が激増するなど思ったほど機能しない、などの問題が開業後、発生した。回遊路だけに絞って見れば、通行人数全体の減少、歩行者が同交差点を回避し分散するなどの現象が起き、目論見通り機能しなかった。垂直移動を伴う回遊性の限界を端的に示している事例だ。これが例えば、広島駅周辺地区のように河川や山岳地に都市空間が制限されている場所であれば、地下道や高架橋などの立体構造もありだと考える。ただ、そのような制限がない場所で、その愚を屋根付きイベント広場や中央公園広場スタジアムでも繰り返そうとしていることには、違和感を感じざる負えない。


画像6 平日だろうが閑散とした印象の紙屋町地下街シャレオの様子(画像 ひろたびより)

 では、理想の回遊路となるとやはり平面移動の歩行者専用道路(モール)やトランジットモールになる。広島市に限らず、日本の集約都市建設に気になるのは欧州都市のコンパクトシティ建設とは異なり、都心部地区の自動車と歩行者の共存を謳う計画が多いことだ。好意的に見れば、現実迎合策になるのだが、厳しい視線を注げば高いハードルに敗れた骨抜き案でしかない。都市全体での自動車利用は否定もしないし、時代関係なく重要な移動ツールの一つだ。都心部地区に限定すれば ①移動需要を満たす駐車スペースの確保が困難 ②道路のインフラ整備が追い付かない(物理的に不可能)➂高次都市機能が集中立地して高度利用が求められること ④都市空間が(郊外に比べ)限られていること ⑤回遊路確保の大きな支障になる、以上の理由から、経済活動に認可業務車両以外の自動車利用に制限を課すことが最適解だろう。よって、自動車と歩行者の共存はあり得ないと思うのだ。それは回遊性の阻害要因が自動車だからだ。共存が不可能なものに、良い顔をしようとするから無理が生じる。平面移動の回遊路の有用性は、点でしかない集客施設間を結び付けてにぎわい性の範囲を広げる効果の他、モールやトランジットモールなどの回遊路が仕掛け次第では集客施設になることだ(下記画像7参照)。知恵や工夫と規制緩和が不可欠ではあるが・・・。広島市の計画に決定的に欠けている視点でもある。上物整備に偏重した従来からの開発思考では、行き詰ることはこれまでの事例でつとに知られ限界もある事は分かっている筈なのだが、なぜか脱却できないでいる。これまで語った論に沿うと正解は中央公園広場スタジアムについては、城南通りの車線減少による歩道の拡幅、屋根付きイベント広場については東側商業施設方面に高架連絡橋を設けるのではなく、相生通りの以北と以南の回遊性強化の観点から、城南通り同様に相生通りの車線減少による歩道拡幅やバス専用レーン転用などにより、二通りの自動車交通量の削減が、一番効果的かつコストがかからず回遊性を劇的に向上させる方策になる。


画像7 ドイツの都市マンハイムのトランジットモールの様子。厳しい建築規制が敷かれ、美しい街並みの保存が施されオープンカフェなども導入され大きなにぎわいを創出されている
(画像 ツイッターのトランジットモールさんより)

【考察その5】
広島市が持つ集約都市建設の高い可能性


画像8 ドイツ第3の都市ミュンヘンのトランジットモール区間の様子
(画像 MVG公式HPより


画像9 ミュンヘン大聖堂 - ミュンヘンのフラウエン教会の様子(画像 ミュンヘン公式HPより)

 ブログ主の個人的な見解と前置きするが、広島市は集約都市建設に最も適した大都市だと思っている。その理由は、東京圏や関西圏の大都市よりは劣るが、集約都市建設に不可欠な路面電車やバスなどの公共交通のインフラがある程度ストックされ、その利用率も人口70~80万人台の政令指定都市よりも高い。自動車会社の本社とその工場があり(一応府中町だが・・・)、地方都市の割には極端なモーターリゼーションが進んでいない。市域面積の約83%が山岳・丘陵という地形のバリアが幸いして低密度の市街地が郊外にそこまで広がっていない。都心部地区には大きな河川や丘陵地なども多くあり、都心部地区の都市公園も規模が大きいものが複数ある。以上の理由からそう思う次第だ。かって広島市は平野部が少なく、それが都市発展の阻害要因と指摘され続けてきた。低成長期~縮小社会の時代になると短所だったものが逆に幸いして武器になるのでは?と考える。参考事例としてドイツの第三の都市ミュンヘンの事例がある。スぺースの関係で詳しく書くことは控えるが、ミュンヘンは世界最長の約15㌔もの歩行者専用道路(モール)区間を有する(トランジットモール区間も含む)。50~60年代にかけて、欧州でも有数の自動車交通量だったこともありモーターリゼーションに迎合した都市計画に邁進していた。72年のミュンヘンオリンピック開催決定を契機に、人間性重視の都心部再生に舵を切り直した。詳細に書いた記事はこちら⇒『モール(歩行者専用道路)・トランジットモールについて考える その3』 当時の市長が数多くの都心部再生策を打ち出したが、最も反対されたのが歩行者専用道路(モール 下記画像10参照)の導入だった。僅か800㍍と今の規模を考えれば、5%強でしかないが対象商店街主たちの反対が尋常ではなく、政治闘争にまで発展した。しかし、反対多数の中、半ば強制的に導入を決定し、ミュンヘンオリンピック開催の72年に誕生した。すると沿線の来訪者は2倍以上になり、売り上げは導入前よりも飛躍的に伸びた。そうなればお決りの動きだがこれまでの大反対などなかったことにして(笑)、早期整備の要望が相次いだ。


画像10 ミュンヘン都心部地区(旧市街地)の歩行者専用道路ネットワーク図

 他に特筆されることとして都心部地区だけではなく、市域全体に『高さ100㍍以上の建物を建設しない』ことがある。旧市街地である都心部地区は、
古くからの伝統的な建物が往時のままの姿で保存され、眺望景観を含めた都市景観に厳しい規制が敷かれている。これはミュンヘンだけのオリジナルではなく、欧州都市共通のもので別に珍しいことではない。市域全体の建物の高さ規制は、ややもすると市場経済原理の否定につながる都市施策に映るが、ミュンヘン固有のアイデンティティーを守り、独自の都市景観を形成することで都市ブランド力を高め、ドイツ国内だけではなくEU圏内からの投資を呼び込むという正に逆転の発想からの都市開発思考である。ドイツ人的な非合理なものが結果的に合理的なものになるという考えの表れかも知れない。市域人口が約145万人、都市圏人口が約260万人とEU圏有数の大都市圏を形成し、世界の各シンクタンクが選ぶ世界都市ランキングの上位常連都市。自動車の世界的メーカーのBMW、世界の複合メーカーのシーメンスの本社がある事を思えば、経済都市としても大成功している。経済発展と開発の抑制という両立が困難な課題を見事にクリアしている。別に同調とかの話ではないが、三宮 タワマン新設禁止、神戸市の条例が成立 』(日本経済新聞WEB版)によると、三宮駅周辺(22.6㌶)は原則高層住宅(タワーマンション)建設不可で、その外側の山陽新幹線の新神戸駅やJR神戸線の元町駅などを含む292㌶は容積率を900⇒400%に下げられる。この内容の市の条例案を先日可決した。都心部地区の就業人口を増加させる目的があるようだ。同時に業務、商業ビルで超高層ビル建設はないだろうと踏んで、都市景観を整える目的も併せ持つものだとブログ主は理解した。経済至上主義とはあえて真逆の手法を取ることで、都市の価値を高める。ようやく日本でこのような考えが出来たことに驚きを禁じ得ない。同時に相も変わらない高度・安定成長期の何とかの一つ覚え丸出し手法に固執する広島市が残念に映って仕方がない。それに高い所に上って喜び、悦に浸るなど昔から〇〇だけと相場が決まっている(爆)。メンタルの幼稚性が伺え、実に興味深い。広島市は、今こそ集約都市の真の意味を理解して、踏み出す時期に来ていると思う。集約都市としての有り余る資質を持っているのだから非常に勿体ない話だ。広島市の理想の歩行者ちゅしんん都市空間についてはこちらの記事に詳しく書いている。お暇な方は是非どうぞ⇒モール(歩行者専用道路)・トランジットモールについて考える その5その6


画像11 活用方法次第では大きく化ける可能性を秘める平和大通り。広島市にはそんな原資が数多く眠っている(画像 ひろたびより)


終わり

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