前回記事 交通需要マネジメントについて 1
カテゴリー記事 広島の都市交通 

【考察その3】
交通需要マネジメント(TDM)とは?


画像1 交通需要マネジメント(TDM)の緒施策一覧(画像 国土交通省HPより)

 都市交通政策の交通需要マネジメント(TDM)について説明したい。 

1 都市交通需要マネジメント(TDM)とは?
  自動車の効率的利用や公共交通機関への転換など、交通行動の変更を促し、発生交通量の抑
  制や集中の平準化など、『交通需要の調整』を図り、道路交通混雑を緩和し、 環境改善など
  を実現する取組


2 具体的な手法
  ①自動車利用時間の変更-時差出勤、フレックスタイムの導入により一定時間に集中する交
   通量を均等化させる
  ②移動交通手段の変更-パーク&ライドなど主要駅・停留所付近に駐車場を整備して自動車
   利用者を公共交通利用に誘導する
  ➂自動車の効率運用-マイカーやシャトルバスなどの相乗りや共同集配により自動車交通量
   を減少させる
  ④自動車利用経路の変更-道路交通情報の提供により混雑地域の自動車交通量の分散を図る
  ⑤自動車発生源の調整-交通負荷が少ない土地利用や勤務形態などにより自動車交通量の

   少を図る 


3 都市交通需要マネジメント(TDM)導入手順
①現況分析⇒②課題把握⇒⓷施策の提案⇒④需要予測⇒⑤施策の評価⇒⇒⇒⑥施策の実施
                       ⇓                   
                       ⇓               
             試行実験⇒実験からの解析⇒実験からの施設評価⇒〇だと⑥へ
                                    ✖だと➂へ

 都市交通需要マネジメント(以下 TDM)は日本においては90年半ば以降、行政などの実務者レベルでの本格検討が始まった。背景としては、高度・安定成長期の都市交通整備手法-主要幹線道路のBP整備、鉄・軌道系公共交通整備-といった容量拡大策が自然発生する需要に追い付かないことや、バブル経済崩壊などによる税収減で財政上の縛りが強くなったことなどが挙げられる。需要の後追い施策だけでは、『モーターリゼーション・スパイラル』-新道路整備により商業施設や住宅開発が沿線で進み、新たな需要の掘り起こしや整備前の潜在需要が、実際需要になり結局、イタチごっことなる-に陥ることを学んだからだ。この緒施策は、当然日本独自のものではなく、欧米先進国からの輸入品である。諸説あるのだが、米国において70~80年代の石油危機、環境破壊によりエネルギーの節約、環境の改善の観点から生み出された。その方策の具体的な検討の過程で、『ピーク時混雑削減を目指 して1人乗り自動車通勤に対する代替案を提供すべき』との意見が大勢を占めた。TDMの初期施策である自動車の相乗り(カープール)や共同集配の実施、共同集配所の整備、広域物流拠点であるロジックセンターの整備といった都市物流システムの効率化(バンプール)が進んだ。これまでは、容量拡大策一辺倒だったが、効率的利用を図る『交通システム管理(TSM)』が誕生した。TDMとの相違点は、あくまでも朝などのラッシュ時と言ったピーク時での道路の効率的な利用に限定している点だろう。TDMに見られるような需要の調整の概念には乏しく、道路渋滞の緩和や解消を効率利用で解決するものでしかなかった。TDMはTSMの進化・発展形で、対象をピーク時の自働車利用者だけから全移動需要対象者まで拡大させ、緒施策の実施で交通行動の大きな変化、発生交通の均等化などを促すという大規模なものに昇華させている。独立した施策が、容量拡大のハード施策と上手く相互リンクさせることで相乗効果を図るものとして施策の正当性を証明した。別の表現を借りると、狭義=TSM、広義=TDMになる。現在の都市交通問題では、TDMが一般的になっている。


画像2 多種多様な政策からなる交通需要マネジメント(TDM)施策一覧(画像 
 
 欧州に目を向けると、TDMの表現こそないが同施策の有効手段である自動車の都心部地区への乗り入れ制限、歩行者専用道路の整備といった自動車利用の一定制限を60~70年代以降、課している都市が多く、それに代わる移動手段である公共交通整備を進め、交通行動の転換策を実施してきた。TDMの表現を公式に用いた初見の文献は、オランダで86~10年にかけて自動車交通量が70%増となる予測の元、立案された『第二次輸送構造計画』の中で交通増加量を半減させることを目標に掲げ、具体施策として『適正立地施策』であるABCポリシーと種々のTDM施策が盛り込まれた。他国においても、コンパクトシティ建設とLRTが都市交通の潮流となった90年代初頭辺りから、注目され始め自動車利用抑制策の一環として多くの都市でも採用され始めた。全ての都市で大成功を収めているとは決して言えないが、コンパクトシティの建設(都市戦略)~LRT等の基幹公共交通整備(容量拡大策
)~TDM(自動車移動需要の調整)とリンクさせている都市ではほぼ成功を収め、効果を挙げている。失敗している都市では、容量拡大策とリンクさせず財政上の制限からソフト施策でしかないTDMに飛びついた都市が多い。コスト安のみに目がくらみ『安物買いの銭失い』を地でいっている。そんな失敗都市の一つに広島市がある。これについては次の考察で色々と述べたい。一般論となるが、TDMの効果は、以下の通り。①都市の物流機能の回復(経済損失の回復) ②大気汚染など環境の改善 ➂路面公共交通-LRT、BRTなど-の走行環境の改善 ④交通事故など市民の安全の担保 ⑤集約都市(コンパクトシティ)建設への貢献 が挙げられる。現在、日本の都市でTDM施策を導入しようとしているのは、来年に五輪を控えた東京だ。大会期間限定ではあるが、ここまで徹底して行うとある程度の効果がある。 ~最大の難関 交通渋滞は克服できるのか 2020東京五輪大会

【考察その4】 
広島市の交通需要マネジメントについて


画像3 広島市の各計画の位置づけ(画像 広島市HPより)


画像4 新たな交通ビジョン(画像 広島市HPより)

 上記画像3をご覧頂きたい。広島市の各計画の位置づけで都市交通関連に限れば、最上位に広島市総合交通戦略(10年策定 広島市HP)があり、新たな交通ビジョン(上記画像4参照)と交通ビジョンプログラム(同)から構成されている。これからの交通政策の進路の全体像を示したものが『新たな交通ビジョン』、具体的な交通施策を位置づけた『交通ビジョン推進プログラム』となっている。事のついでに説明すると、『公共交通体系づくりの基本計画』(同)は、現状の課題の把握とその解決方策をまとめ、あるべき理想の姿を求める内容で、公共交通の中で最も問題が多いバスは、別枠でそれがあり バス活性化基本計画(同) 、これと類似するものに広島市地域公共交通網形成計画(同 以下形成計画)がある。これは、公共交通体系づくりの基本計画やバス活性化基本計画との差異が明確ではないが、市独自のものと国から策定を求められているものとの違いだけだろう(ブログ主解釈)。形成計画を実施する個別計画が『広島市地域公共交通再編実施計画』(同)になる。この二つは、国土交通省が提唱する集約都市-コンパクトシティ・プラス・ネットワーク-との関連がある。それを実現する立地適正化計画(同)とリンクさせることが多い。素人目だと実にややこしい。で、TDMは新たな交通ビジョンの中でも取り上げらている。実施メニューは ①時差通勤の推進 ②パーク&ライド駐車場の充実 ➂環境にやさしい自動車専用レーンの導入 ④カーシェアリングの促進 ⑤ロードプライシングの導入 ⑥マイカー乗るまぁデーの推進 ⑦モビリティ・マネジメント ⑧アストラムラインに対するブランドイメージの向上 である。 ~広島市総合交通戦略(交通ビジョン推進プログラム)に位置付けた施策等のH29の取組目標について~ メニューはそれなりに揃っているが、全体的に取り組みの甘さというか限界を感じさせる。広島市独力で可能なものが実に少なく、国の計画との連動、官民一体となる取り組みが多いので、民の協力度が鍵を握るがお付き合い程度しか感じられず、従前の計画を何となく消化している感が否めない。結局のところ、官の本気度が民に伝染して『協力可能な範囲で一応、お願いしますね』なんだろうと思う。これで実のある成果を求めるのは難しい。本気で成果を求めるのであれば、民にもある程度痛みを伴うものになるので、メニューや目標設定を巡りひと悶着ぐらいある筈。すんなりとまとまること自体、大きな成果を求めるのは無理なのかも知れない。


画像5 毎月2、12、22日に実施されているマイカー乗るまぁデーの告知(画像 ネット拾い画像より)

 広島市の失敗の原因を探し出すと、取り組みの甘さと同時に先に触れたように財政上の制約から、コスト安のソフト施策に飛びつき、容量拡大策をおざなりにしたことも大きい。ソフト、ハードの両面からほぼ同時期に取り組まない限り、実効の実を挙げるのは困難だろう。ただ、容量拡大策-環状道路、主要幹線道路のBP整備、基幹公共交通整備-などは高額コストと時間を要することから、TDMの取り組み強化を図ることも今後必要になる。次期、広島市総合戦略会議の計画策定の議論が鋭意、進められている。 
広島市総合交通戦略協議会~(広島市HP) これを見ると現市長の意向からなのか、はたまたあまりにも成果が上がらなかったためかは定かではないが、TDMのプランがすっぽりと欠如している。TDM施策自体に問題があるのではなく、取り組みの傾注度に問題があるのだが・・・。日本の社会では法による強制は難しい。取り組む側が飛びつくようなインセンティブを与え、形だけの参加ではなく、自らの意思で行動を起こしたくなるような強い誘導策が求められるだろう。市が採択している施策で、効果が高いと思われるのは、①時差通勤の推進 ②パーク&ライド駐車場の充実 ⑥マイカー乗るまぁデーの推進 ぐらいだ。欧米先進国のコンパクトシティでは、中小都市でも5,000~1万台、大都市だと数万台クラスのパーク&ライド専用駐車場があるが、日本の場合、広島市に限らず、整備のための専用財源もなくあらかた商業施設やマンション開発している現状を考えると現実的ではない。近隣民間駐車場に補助金を与え、転用するのが関の山でこれではまとまった数を確保するのは容易ではない。①と➂が広島市では効果が上がるものと思われる。ただこれだけで、需要の調整機能が十文果たせるかと言うと疑問が残るのも事実だ。次回は、より具体的な方策を考えたい。

その3へ続く

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