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今日の話題 令和元年第2回広島市議会定例会より引用
広島市の経営資源について


動画1 令和元年第2回広島市議会定例会(6月19日(水曜日)一般質問 三宅議員)

三宅議員の質問 

(広島市の経営資源について)2分25秒~
 広島市は03年の財政非常事態宣言以降、僅かな黒字を出す厳しい財政状況が続いている。14年の広島土砂災害や昨年の西日本豪雨は生命と財産を守るインフラ施設の重要性を再認識させた。ハコモノやインフラも広島市の資産として、存在する経営資源で先人たちが市債を発行してつくり続けた。社会保障費が財政を圧迫しているが、その一方で公共施設の維持管理コストもインパクトがある。17年『広島市公共施設等総合管理計画』(広島市HP)を策定した。この計画が策定され数年経ち、現在の取り組み状況は?(質問①)
 計画策定の議論の中で、既存のハコモノを除去する場合、地域の合意形成を得るのは難しいと考えている。計画を進める時、地域ごとに分け地域のまちづくりを見据えた形で進めてはどうだろうか?地域ごとに分ける理由は、ハコモノと一言に言っても、集会所には学区集会所、補完集会所、老人集会所がある。それぞれの担当局は市民局、健康福祉局など異なっている。ハコモノを軸として地域のまちづくりを自ら考えることが地域コミュニティの再生にもつながる。広島市の経営資源は有限である公共施設の維持管理には、今後も莫大なコストを要する。『広島市公共施設等総合管理計画』で書かれている財源不足は、年間で478億円だ。限られた経営資源の中でどのように考えているのか?(質問②) 

企画総務局長の答弁 
(広島市の経営資源について) 22分50秒頃~
質問①の回答
『広島市公共施設等総合管理計画』において、ハコモノ施設の機能、サービスの向上を図ること、財政状況を踏まえ、更新量を調整するなどを基本方針とした。現在、その方針に沿ってハコモノ資産の中で最も数が多い公民館や集会所等の中小施設について施設ごとの更新案の検討を行っている。更新案の検討に当たっては、機能が類似している施設の複合集約化を検討する一方で、使用対象者を決めている規制の撤廃なども検討している。また地元対策や合併引継ぎ、合併建設計画により設置した施設の更新の方向性についても検討を行っている。今後施設の更新を進めていく上では、地域住民の理解が重要なので協議に向け更新案を取りまとめたい。
質問②の回答
『広島市公共施設等総合管理計画』において、更新に関する基本方針の一つに財政状況を踏まえ、更新量を調整することを掲げている。この方針に基づき、改めて機能、サービスを検証した上で、施設数や規模の見直しを行うと共に、県、近隣市町の施設や民間施設の活用も行い、更新費の軽減を図りたい。また、同計画には維持保全に関する3つの方針を掲げている。施設の部位の劣化が及ぼす維持保全の養母的な取り組み。法令等に基づく定期点検に加え、日常点検で部位劣化状況を把握して、修繕を行う適切な点検の実施。建築年度の基本情報、定期点検の情報を基に作成する建物カルテを作成し、効率的な維持保全につなげる維持保全の情報の活用の3点だ。これらの方針により、早めの劣化状況を把握し、修繕費の抑制をすると共に、施設の長寿命化を図ることとしている。

【考察その1】
公共施設の更新コストが問題される理由


画像1 2060年(H72年)までの市人口推移予測(画像 広島市HP)

 まずは言葉の説明から入る。公共施設とはインフラ施設-道路、アストラムライン、水道、下水道、河川、 土砂災害防止施設、農林道、港湾施設など-と、ハコモノ施設-化・教養、コミュニティ、スポーツ・レクリ エーション、子育て・教育・青少年育成、福祉、 病院、住宅、交通、火葬場・墓地などのサービ スを提供するための機能が付与された施設 、の2つから構成される。今回の経営資源云々は、ハコモノ施設だけに絞った話だ。広島市所有のハコモノ施設は3,321施設、延床面積は3,985,239平方㍍である。素人にはイメージが湧かない膨大なものだ。次に、この膨大なハコモノ施設と維持管理と更新がなぜ問題視されるかを説明したい。上記画像1は60年頃までの人口推移の予測だ。薄い青線は、合計特殊出生率が速やかに1.80人まで回復し、その後も維持し続けた場合の希望人口で、その下の紫線は10年の国勢調査結果に基づき、国立社会保障・人口問題研究所(以下 研)が算定した人口予測だ。薄い青線通りに100%進まないと断言する根拠は、合計特殊出生率1.80人の回復など絶対に不可能なことがある。18年度の国のそれは1.42人、広島市は1.49人である。現安部政権が、子育て環境の改善(待機児童問題など)、働き方改革など散々少子化対策に取り組んではいるが、この5~6年殆ど合計特殊出生率が上がらないことがある。ブログ主は、経済格差是正による生涯未婚率の低下、先進国でもトップクラスの教育コスト半減など本気で取り組まない限り希望出生率1.80人までの回復など夢のまた夢だと考える。この水準は、80年代前半の数値で男性は30歳、女性は25歳頃までに結婚しないと変人&奇人扱いされていた時のもので、派遣社員や男女雇用均等法など存在しなかった。この時代の水準にまで押し戻すのは並大抵の努力では難しい。社人研の予測では60年人口は93.3万人が予測されているが、それまで散々少子化対策を打つと思われるので、ここまで落ち込まないとしても100万人前後にはなる。60年の高齢化率(65歳以上人口比率)は、37.8%に達し、当ブログ記事では超高齢化(高齢化率30%以上)、大幅人口減とし『超縮小時代』と銘打っている。年金や医療、介護など社会保障コストなどの社会保障費(扶助費)が天井知らずとなり、こうした義務的経費が上昇すると予算の硬直化構造が進み、政策的経費(公共事業など)の選択肢が狭まる。人口減少と高齢化率の上昇は社会保障制度の支え手、市税の主たる納税者である生産者の人口減少を意味する。この議論の背景にこの点がある事は押さえておきたい。


画像2 ハコモノ施設(建物)の年度別建築状況(延床面積ベース) 画像 広島市HPより

 上記画像2は、ハコモノ施設(建物)の年度別建築状況の棒グラフだが、65~84年の20年間に現行施設の約50%を建設している。築35~54年が経過し、更新期に入っているというか既に過ぎている施設が山のようにある。広島市の試算だと、更新コストは1兆8,981.9億円と19年広島市一般会計予算6,700.5億円の2.83倍となる。年平均474.5億円で12年度決算額271億円を基準にすれば、203.5億円もの不足が生じる。ハコモノ資産だけでこの有様だ。他記事の話になるが、スタジアム問題やMICE施設などで稼働率が低くコストセンターになる可能性が高い単機能・単体施設が絶対にNGで、極力多機能&複合化にするべきだと主張するのもこの問題があるからだ。単機能・単体施設で良しとするなど、木ばかりを見て森全体を見ていない近視眼的思考と言わざる負えない。まあ、これは数少ない新規建設の話だ。このような膨大な更新費用を果たして捻出し続けることが、今後可能なのかと問われると、否と答えるしかない。ただ救いと言うか、この難題を解決する取っ掛かりになりそうな光明も存在する。下記画像3は、設置目的や管理部局こそ異なるが類似する機能とサービスを提供する汎用性施設の例だ。他にも専門性が高い文化・スポーツ施設なども国、県、隣接他の自治体、民間施設まで対象の枠を広げると同様なことが言える。それぞれの立場で、設置目的や規模こそ違えど、類似施設がさして高くない稼働率のまま今なお運営されている。更新コストは1兆8,981.9億円というのは、既存施設に手を加えず、耐用年数を迎えるまで使い続け、そのまま更新場合のそれであり、実際にそこまでのコストが100%の確率で必要となるのかはまた別の話となる。ただ、超縮小社会を迎えるに当たり、大きな頭痛の種であることには変わりはない。もう一つのインフラ施設-道路、上下水道-を見ると、これも今後40年間の更新&維持管理コストが約3兆1810億円と見積もられ(下記画像4参照)、合計5兆791.9億円となり途方に暮れる。次の考察では、企画総務局長の答弁を補足する形で、進める。


画像3 設置目的が異なる同種の諸室を持つ施設例(画像 広島市HPより)


画像4 道路などのインフラ施設の更新コストの予測(画像 広島市HPより)

【考察その2】
超縮小時代下の公共施設の在り方


画像5 西区内の汎用性ハコモノ施設立地図。赤点-集会所、青点-公民館、緑点-老人集会所(画像 広島市HPより)


画像6 汎用性ハコモノ施設の統合・集約のイメージ図(画像 広島市HPより)


画像7 専用性ハコモノ施設の多機能、複合・集約イメージ図(画像 広島市HPより)

 『広島市公共施設等総合管理計画』(広島市HP)によると、以下の方向性が示されている。

1 ハコモノ施設の更新の方向性
① 機能・サービスの提供に専用の施設は必要か否かの検討
② 市が設置主体でなければならないか(民間施設が活用できないか)
③ 配置基準(小学校区に1館、中学校区に1館、1区1館など)は適正か否かの検討(上記
 画像5参照)
④ 多機能、複合・集約化を図れないか(上記画像6と7参照)
⑤ 近隣市町や広島県等の施設を利用できないか
⑥ 民間活力(PFI事業など)を活用できないか

⑦利用対象者を決めている規制の撤廃の検討

2 ハコモノ施設の維持管理の方向性
①施設の部位の劣化が及ぼす維持保全の予防的な取り組み
②法令等に基づく定期点検に加え、日常点検で部位劣化状況を把握して、修繕を行う適切な
 点検の実施
➂建築年度の基本情報、定期点検の情報を基に作成する建物カルテを作成し、効率的な維持
 保全につなげる維持保全の情報の活用


 となっている。お暇な方は、上記リンクを最後まで目を通すことをお勧めする。ここのハコモノ施設の稼働率まで記載されており、市職員の努力の跡が窺える(笑)。ざっくりと言うと、機能が類似するものや低稼働率ものは1施設の複合・集約化でまとめ、需要実態に合わせたものとし、多くの市民が利用しやすい地域拠点、広域拠点に移設(集約都市のまちづくりへの貢献)、県&近隣自治体&民間と連携し役割分担なども進め更新コストを抑える。同時に早めの点検、修繕などで長命化を図り、更新期をずらし更新コストの均等化も図り、財政の負担を軽減させる、といった具合だ。施設の全体数を大幅に減らし、多機能・複合・集約化で地域活動拠点に昇華させる目論見である。この辺を考えると、インフラ施設を含めた公共施設を拡大社会時代のように、後先考えずつくり続けるのは、自らの首を絞める行為に等しい行為だろう。縮小社会時代の身の丈に合ったもの、というのが主旨になるがよくこの手の話を始めると、『時代の流れに迎合したままで、永遠の縮小再生産の繰り返し』などと批判されがちだ。あながち間違えではないと思うが、縮小社会のスタートが少子化-出生数の大幅減少-なので、この部分を堰き止め、多子化に切り直さない限り無理な相談だ。
縮小社会止む無し前提の話だ。『積極的なインフラ投資でストップ・ザ・少子化』もこれは人口の社会増減(転入・転出超過)に係る地租の中枢性に係るものでしかなく、現在問題視されているのは人口の自然増減である。このペースが早く、少々の社会増だけでは埋め合わせは不可能だ。

 
画像8(左) 拡大図 広島市市債残高推移 
画像9(右) 
拡大図 義務的経費の扶助費の推移


画像10(左) 拡大図 義務的経費の市債発行額推移
画像11(右) 拡大図 義務的経費の人件費推移 ※費負担教職員制度に係る包括的な権限移譲で17年(H29年度)は急上昇


画像12(左) 拡大図 投資的経費(公共事業)の推移
画像13(右) 拡大図 財政調整基金残高の推移(画像8~13広島市HPより)

 
話が先の考察と前後するが、市財政に係る話をしたい。上記画像8~13は各指標は全て市財政に係るものだ。市債残高の実質分は、財政非常事態宣言を発動する前年の02年度をピークに下がり続けている。臨時財政対策債残高等控除後の数字だが、これが第2の隠れた市債的な存在で、近年の好調な公共投資を悪い意味で下支えしている指摘もある。注目すべきは義務的経費-扶助費+人件費+公債費-である。19年度当初予算では、全体の策債残高等控除後の数字だが、これが第2の隠れた市債的な存在で、近年の好調な公共投資を悪い意味で下支えしている指摘もある。注目すべきは義務的経費-扶助費+人件費+公債費-である。19年度当初予算では、全体の54.6%も占めている。因みに90年度は35.2%、政令指定都市の昇格した80年度は30%台前半を鑑みれば、財政の硬直化が窺える。これはひとえに少子高齢化の進行の賜物だ。政策的経費(公共事業)は、二度の財政健全化計画で散々カットして17年度では、710億円。80年の水準まで落としている。ピークはアジア大会開催の前年の93年で2,247億円である。話を戻す。インフラ施設とハコモノ施設の公共施設の更新コストが今後40年程度で、5兆791.9億円と書いた。単純に40年で割ると年額1,250億円程度。17年度の投資的経費(公共事業)の予算は、710億円で540億円の穴が開く。仮にこの考察で示した方向性でやりくりしたとして、甘く見て50%の更新コストのカットに成功したとする。それでも約2兆5,000億円。年額625億円で、710億円の88%も占める。新規投資に回せるのは僅か12%。これとて、今後市の社会保障費の扶助費が高騰すれば、一瞬で吹き飛ばされる。放漫財政運営のツケが縮小時代という困った時代に来る。この問題の決定的な解決策は、ブログ主程度の頭脳では出せないが、少なくともブログ主などよりも優秀と思われる方々が、どのような解決策を見だすのかを注視したい。

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