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今日の話題 9月5日新潟日報より引用
新潟市BRT改善 具体像見えず 開業4年 10月にも総括
 
 新潟市が導入したBRT(バス高速輸送システム)は、5日で開業から4年となった。依然として乗り換えへの不満は収まらず、BRTで客足が減ったとの声がある本町・古町地区(新潟市中央区)は衰退が進む。昨年11月に就任した中原八一市長はBRT改善を掲げるが、その具体像は見えない。掛け声倒れになれば『不満の矛先が中原市政に向かう』との指摘も出ている。市が10月にも公表するBRTについての総括の内容に注目が集まる。BRTは2015年、篠田昭前市長の肝いりで開業した。まちなかで重複していた路線を集約し、生じた余力で郊外路線を増強。市全域の利便性と路線網を維持するという計画だ。不採算や運転手不足を理由に、全国的に路線廃止や縮小が相次いでいるが、市によると、市内の路線網は維持されているという。BRT開業以来、7路線が新設され、1日当たり295本増便した。ただ、利用者の乗り換えに対する不満は根強い。市が6~7月に実施したバス利用者アンケート調査では、乗り換えについては『協力は難しい』との回答が42%で最も多かった。

 一方で、『BRTは人の流れを変え、街の姿を変えた』との声がある。本町・古町地区は商業施設や飲食店の閉店が相次ぎ、民間投資の動きも鈍い。20年3月には新潟三越が閉店する。新潟市商店街連盟が毎年実施する歩行者通行量調査によると、同地区の18年の通行量は1日4万5,828人。16年に比べると約1万人減少している。通行量は、郊外型店舗の出店やインターネット通販の台頭などを背景に減少傾向にあったが、BRTによって、乗り換えが生じた地域からの客足が遠のいたとする商店主は多い。8月末で閉店した本町食品センター(本町通6)を管理運営する協同組合の山口龍志理事長(67)は『荷物を持った乗り換えを敬遠し、顔を見せなくなった常連は多い。BRTの影響は大きかった』と漏らした。閉店日に買い物をした東区の会社員男性(64)は『乗り換えはきつい。乗り換えが必要ない地域で用を足すようになった』と打ち明けた。昨秋の市長選で『BRT見直し』を掲げた中原市長は就任後、BRTの改善に向けて精力的に動いた。

 乗り換えを視察し、新潟交通社長とも協議した。市議会2月定例会では20年3月に期限を迎える新潟交通との運行事業協定を念頭に、『BRTについて総括する』と明言。市民の声を聞くとして利用者アンケートを実施した。とはいえ、改善の具体像が見えない。第2会派の共産党市議団、五十嵐完二幹事長は『総括するとして、BRTの改善を先送りにしてきた。具体的な改善策を盛り込んだ総括でなければ、中原市政への不満は高まるだろう』と語った。最大会派で保守系の『翔政会』、皆川英二幹事長は『アンケート調査を実施した以上は、意見をきちんと吸い上げた総括にしなければならない』と指摘した。交通政策は、まちづくりや市の将来像と密接に関わる。中原市長はBRTの総括をどう取りまとめるのか?力か。29日の定例会見では、BRTについて『一挙に廃止したり、大きくかじを切ったりするのではなく、もうしばらく改善しながら、どこまで市民に認められるようになるかを追求していきたい』と述べた。

【考察その1】
『萬代橋ライン』とは?


画像1 公設民営上下分離方式で実現した萬代橋ライン(画像 ウィキペディアより)

 そもそも論としてまずはBRTの説明からしたい。詳しい内容はこちらの記事を参考にしてほしい。『広島市におけるBRTの可能性 1』  さらに専門的な説明はこちらで『BRT』(ウィキペディア)。で、日本も世界的な都市交通の潮流がLRT&BRTに移行し、国の整備制度などが創設された。日本の場合、定義にもよるが、『郊外~都心部地区』『都心部地区の循環路線』といった都市の基幹路線及びそれに準じるものと定義した場合の導入事例は、岐阜市の清流ライナー、名古屋市の基幹バスなどに限定される。これとて交通開発政策研究所(ITDP)が定めるフル規格の定義と照合すると、遠く及ばず『疑似』『日本型~』の前置きが必要となる。2連接バス車両の導入だけでBRTと称するのは僭称でしかなく、疑似にすら値しない。日本も含め、BRTの導入が相次いでいるのは以下の理由からだ。①1㌔当たりの安価な建設コスト-フル規格地下鉄300~400億円、AGT地下線&ミニ地下鉄200~300億円、AGT&モノレール高架線100億円、LRT路面線20億円、BRT5億円 ②階層化した公共交通を構築しやすい ➂都心部のにぎわい性の大きな貢献度 ④導入用途が幅広い-基幹公共交通の補完交通、基幹公共交通、鉄軌道空白地区の解消など-ので、都市規模を選ばない である。日本の場合、都市交通事業が営利事業なので独立採算制が求めれらる。運営コストの運賃カバー率が30%台のアメリカ、フランスやもう少し高いドイツなどと異なり、90%台半ばであるがため、導入都市のハードルは中核都市規模以上である。今回の新潟市も他都市同様にモーターリゼーションに迎合した都市計画の行き詰まりを感じ、今後の縮小社会(超高齢化+大幅人口)を見越し、集約都市構造への転換を果たすべく舵を切り直した。基幹公共交通の導入論議では、08年『にいがた交通戦略プラン』(新潟市HP)をまとめ、モノレール、LRT、BRTを中心に検討されたが、『新たな交通システム導入検討委員会』で、当面は導入ハードルが低いBRTとし、次のステップとしてLRTに移行を旨とする提言案を出した。 ~新たな交通システム導入に関する提言(骨子案) ~(新潟市HP) 新潟市は基幹公共交通の導入に際して、単発的な選定機種の導入案とはせず、導入により公共交通全体の再編と強化策を打ち出した。そして新潟都市圏中心にバス事業を営む新潟交通を選定事業者とした新バスシステム(新潟市HP)を構築し、モーターリゼーションの進行で絶滅寸前にある公共交通を再生しようとした。


画像2 新潟市の日本式(疑似)BRT導入を柱とした新バスシステム導入スケジュール(画像 新潟市HPより)

日本と海外都市の
市内移動に係る各移動手段の分担率 単位:%
【人口30~80万人都市】
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
熊本市     5.9  64.5    15.7  14.1 
岡山市     6.5  59.5    19.6  13.8
新潟市     5.8  71.0    15.0   8.1
ドレスデン  22.0  39.0    27.0  12.0
チューリッヒ 37.0  28.0    28.0   7.0
【人口100万人台以上】
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
仙台市    16.5  44.7    13.7  19.8
広島市    
16.0  47.6    19.0  17.1
福岡市    23.5  42.2    18.6  15.6
ミュンヘン  25.0  36.0    24.0  15.0


 その第1期暫定開業(15年)したのが、日本式(疑似)BRTである『萬代橋ライン』(ウィキペディア)だ。萬代橋ラインにかける新潟市の期待は大きかった。新潟市は人口79.8万人と日本海最大の都市だが上記指標が示すように公共交通分担率はお寒い現状だ。日本は世界に冠たる鉄道王国なのは確かだが、世界最大都市圏である東京圏の鉄道輸送と東西に長い国土故のアドバンテージがある都市間輸送によるところが大きく、地方都市圏の公共交通に関しては、ドイツやフランスの地方都市の後塵を拝している(上記指標参照)。都市交通先進国である欧州の都市と互角なのは精々、地方中枢都市クラスぐらいまでで、それ以下となるとご覧の惨状である。高い自動車分担率はモーターリゼーションの進行(都市のスプロール化)が深刻である裏返しでもあり、公共交通移動中心の集約都市構造への転換の困難度を同時に示している。この悪しき流れに終止符を打ち、
日本式(疑似)BRTの導入を機に新しい流れをつくりたい目論見があった。第1期暫定開業(13~15年)、第1期完全開業(~19年)、第2期(19~22年)の各期間を順調に消化し、段階ごとのステップを踏む算段だったに違いない。で、今回の報道は、尤も重要な第1段階でものの見事にこけてしまったとしている。一体どういうことだろうか?

【考察その2】

萬代橋ラインが失敗だったとするには時期早尚
集約都市建設の失敗の責任を萬代橋ラインだけとするのに違和感が・・・




画像3~5 新潟市のBRTを含めたバス利用者を対象としたアンケート結果(画像 広島市HPより)


画像6 鮮明図 萬代橋BRTを含む新潟市内バス利用者推移(画像 新潟市HPより)

 新潟日報の報道で失敗だと断じる理由として、本町・古町地区の1日の通行人数が18年度4万5,828人で、16年に比べると約1万人減少していること。商業施設や飲食店の閉店が相次ぎ、民間投資の動きも鈍いこと。これまで同地区に乗り入れていた郊外バス路線が萬代橋ラインのフィーダバス化されたこと。以上3点を主なものとしている。そう断じる証左として開業4周年を機にこれまでの総括と、改善に向けた参考意見として大々的な市民アンケートを実施した。 ~『バスを利用されている皆さまへのアンケート調査』<<集計結果>> ~(新潟市HP) 質問内容が簡単過ぎて『もう少し踏み込めよ』と感じた。何となくBRTが導入されたことは知っていたが、その詳細までは知らない市民が多く、郊外バス路線が萬代橋ラインのフィーダバス化については、51%が『同意』『止む無し』、49%が『乗り換えの協力は難しい』『路線維持の必要なし』としている。このアンケートだけを基に、『都心部地区衰退加速の主犯=萬代橋ライン』の結論ありきの論調で、誘導の意図を感じるのはブログ主だけだろうか?公平を期すため、萬代橋BRT開業後のバス全体の利用者数を見てみたい。~市内バス路線バス利用者数の推移(開業3年間)~(新潟市HP)。年間利用者数2291.4万人(1日平均約6.3万人)だったものが、開業3年目には2402.6万人(1日平均約6.6万人)と104.9%増となっており、利用者数全体を見ると萬代橋ライン主犯論は、論理的思考に基づいたものではなく感情的思考に基づいたものと言える。期待が大きい分だけ、期待外れの落胆はそれ以上に感じ、主犯論に行き着いたのではないだろうか?。一部の利用者の不満と利用動向のみを理由とするのは論拠として弱い。


画像7 信濃川左岸に新潟駅(画像左中央)、萬代橋(手前から2番目の橋)付近が万代地区、
半島的な場所は朱雀メッセがある万代島地区、信濃橋右岸に古町、本町地区がある(画像 新潟市HPより)


画像8 新潟市の集約都市建設の概念図。『1都心部地区+6地域拠点』のネットワーク型(画像 新潟市HPより)

 そもそも論となるが、基幹公共交通の導入のみで都心部地区の求心力を上げるのは、無理だ。集約都市(コンパクトシティ)建設の基本手順として次の点がある。①複数の環状道路の整備 ②
都心部地区通過交通の排除-トラフィックセルシステムなど ➂LRT&BRTなど基幹公共交通の整備 ④基幹公共交通の下部カテゴリーの公共交通整備-公共交通の再編と強化 ⑤トランジット-モール&モールなど歩行者専用道路網の整備 ⑥自転車道の整備など になる。最も重要となるのは、都心部地区の求心力上げる施策である。歩行者中心の都市空間に再配分することが一番有効だと思うが、拡散都市化で分散した都市機能の再集約させる政策-インセンティブを与えた業務機能の集約-、商業施設やスタジアム&アリーナなどの集客施設の建設、都心部地区の有効活用されていない都市公園や大通りなどをパークPFIでにぎわい性を創出する都市の装置にするなどの諸施策を立ち止まることなく、実施することが肝要だろう。都心部地区への移動需要は公共交通移動需要とイコールで、手っ取り早い解決策の一つだ。この論に沿うと、『低い公共交通移動需要⇒低い都心部地区の求心力⇒集約都市建設の失敗』の図式が成立する。もう一つ加えると、郊外大型商業施設建設の抑制も必要だ。都心部地区の商業機能の低下は全てこれに尽きる。抑制もしないで都心部地区に官民の投資を集中させても、座礁事故を起こし船底に大穴が開いて浸水し沈没寸前の状態で、大穴を塞がず浸水した水だけ掻き出す行為に等しい。新潟市の話を戻すと、同市の集約都市建設が始まったばかりで、単に上手くいっていないだけではなかろうか?新潟市の集約都市建設計画である『新潟市立地適正化計画』(新潟市HP)の立案は、18年の4月でまだスタートして1年半程度。結果を求めるには早過ぎる。問題の暗雲を全て取り除くには少々力不足だ。期待値が高過ぎるのだ。


画像9 新潟市の骨格(基幹)バス路線と都心部&地域拠点の立地図(画像 新潟市HPより)

 中原市長は、萬代橋ラインの廃止はないと明言しており、当面は改善の努力を続けるとしている。ブログ主はこれが正しい判断と考える。仮に廃止したとしても、現行案を上回る代案などあるのだろうか?第1期完成時の投資額は約30億円。革新系の方々お得意の『税金の無駄遣い』の批判も、この程度規模でそれを持ち出された日には、何も出来ない。それに未だに拡散都市化の弊害が、都心部地区の求心力低下と言う形で続いていることを重く受け止めるべきだ。むしろ、今回のアンケート結果を必要以上に重く受け止め過ぎると、『萬代橋ライン廃止=集約都市建設の実質放棄』にもなりかねない。むしろ臆することなく、改善策を施し、当初予定の2期計画に邁進すべきだ。公共交通分担率が、僅か5.8%のモーターリゼーション街道まっしぐらの新潟市に、公共交通移動中心の都市建設することはそう容易なことではないのだから。本質論で言えば、萬代橋ラインはバス輸送の改善を図った程度の、フル規格BRTには程遠い代物で、段階整備を標榜しているとはいえ、新潟市の都市問題の暗雲を全て取り除くには少々力不足だ。期待値が高過ぎるのだ。それよりも公共交通移動の需要が今以上に高まる政策の推進が、求められているのではなかろうか?痩せた大地の地質改良の取り組みはまだ緒についたばかりだ。今回の件は戦略のミスではなく、戦術のミスでしかないといっても過言ではない。

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