前回記事 サッカー専用スタジアム問題の現在地 6
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【考察その1】
理想のスタジアム案の前提となる条件


画像1 中央公園広場に24年春の開業が予定されるサッカースタジアムのイメージ(画像 広島市HPより)

 10月1日からスタートした『サッカースタジアム建設に係る寄附募集』が10月28日の時点で、2,126件、100,320,595円(1億32万円)と目標の1億円を開始より僅か1カ月弱で突破した。5年間で1億円の目標を立てたがこのスピード達成にはブログ主は驚きを禁じ得ない。『オール広島』で事に当たる時の広島人の団結力の強さをまざまざと見せつけた格好だ。ただ、この熱量が通常運転時の集客に即つながると言えば、必ずしもそうではない。サンフレッチェ広島の1試合当たりの観客動員数は、J1初制覇の12年の1万7,221人をピークに、なだらかな右肩下がりを辿り、18年は1万4,346人で約20%下がっている。『サッカースタジアムに係る各建設候補地の比較』(広島市HP)によると、1試合当たりの観客動員数を1万8,500人と見積もっている。約29.0%増(18年比較)がスタジアム移転効果になる。比較もあれだが、カープの場合、旧広島市民球場のラストイヤーの08年が1万9,315人。現マツダスタジアム開場初年度の09年が、2万6,015人で約34.7%の増加だった。甘い観測の批判を覚悟で言うが、サンフレのスタジアムで言えば、現エディオンスタジアムの(イメージも含めた)遠隔立地、臨場感に乏しい陸上競技場である事を鑑みれば、やり方次第では2万人を超える可能性も無きにしも非ず、と考える。他の新スタジアムだとJクラブのコンテンツ力の問題から、新スタジアム効果は限定されるのが常で5年も経てば元の木阿弥になる。広島の場合もその可能性があるが、広島地域の特殊性-高いスポーツコンテンツへの関心度、広島を代表して戦う者への傾注度など-が絶対にあるので同列には語れない。街中スタジアムの実現でより身近な存在となり、目に触れる機会が増えればカープに続く、柳の下の二匹目のどじょうを狙える。さして関心がないブログ主の所感だと、新規層が高く感じるハードルの克服と再びスタジアムに訪れたくなる仕掛けづくりをクラブがどこまでつくれるのか?この辺が、課題に感じる。と同時に、スタジアム自体がJ1試合開催日以外の年340日の稼働率を上げ、施設全体に親近性を持たせることも重要だと考える。


画像2 中央公園広場は広島城横の長方形部分(計7.9㌶)になる(画像 ひろたびより) 

 広島市の現行スタジアム案(上記画像1参照)を見ると、本場欧州の流行りの多機能・複合スタジアムではなく、多機能・単体スタジアム案となっている。前者の方が明らかに大きなにぎわい性を生み出す集客施設の役割を果たすのは明白だが、そうなっていないのは建設地である中央公園自由&芝生広場が都市公園で都市公園法の厳しい縛りを受けているからだ。建設可能なものが他の場所よりも大きく限定される。都市公園法の縛りを受けるものを並べてみる。

都市公園法にて制限を受ける施設
内容によっては認められるもの
商業施設-延床面積1万平方㍍以下 
便益施設であることが条件
宿泊施設(ホテル)-200室以下 
周辺の施設状況や公園の利用実態等に照らして、公園利用
          者目的のもの
温浴施設-保養目的のクアハウスはNG。『
温水利用型健康運動施設』については、運動施設に
     該当するので可

展示施設(MICE)-延床面積1万平方㍍以下。展示内容によりNGの場合あり
アメニティ施設、テーマパーク型施設-遊戯施設に該当するものに関しては可

原則NGの施設
劇場、ホール(歌舞伎座、神楽殿、公会堂、音楽専用ホール、ライブハウス)、観覧場(観客席
のある運動施設など)、
映画館

 結構な縛りで、解釈によって建設可能な範囲も異なりそうだが、複合化のハードルは高いと言わざる負えない。中央公園広場スタジアム案の集客能力は『年間45万人+@』で、内訳はサンフレ主催試合1.85万人×23=42.5万人、大型イベント3万人×1=3万人、+@はアマチュアサッカーやその他スポーツ利用などになっている。利用者数ベースの利用率は90%以上、サンフレ主催試合に依存する構図だ。多機能スペースを活用した多目的利用も、1階-4,825平方㍍、2階-2,075
平方㍍ 計6,900平方㍍と微妙なサイズだ。語弊はあるが、おまけ程度でどう考えても1日で万単位の集客が見込めるイベント利用など不可能だ。現行案だと最大年間50万人程度が関の山と考える。ピッチ内でのイベント利用の手段もあるが、騒音対策で全面屋根方式の採用、瀬戸の夕凪(ゆうなぎ)、日本特有の高温多湿の気象条件などから芝の養生問題が発生することも予測され、下手をすると御崎公園球技場~(芝生問題参照 ウィキペディア)の二の舞になりかねない。ブログ主が察するところだと、広島市的には、同じ中央公園内の旧市民球場跡地に整備される屋根付きイベント広場(広島市HP)にイベント開催機能を持たせ、スタジアムの方はほどほど程度で構わないとの節を感じる次第だ。考え方としては、正しいと思うがせっかく関連整備費も含め約190億円もの巨費をこのご時世につぎ込むのだ。たかだか『45万人+数万人程度』だけでは、実に勿体ないと思う。限りなく年間集客100万人を目指すべきではなかろうか?近年のスタジアム&アリーナのあるべき姿として、コストセンターからプロフィットセンター(利益に責任を持つ部門)への転換が主流になっている。完全黒字化は直線&間接的な波及効果も鑑みるとそこまでこだわる必要はないと思うが、可能な限り収益を上げる努力はなされるべきだろう。前提条件として①都市公園法の制約 ②スタジアム本体、複合施設で年間100万人の集客、この2点を念頭に置き話を進めたい。

【考察その2】
なぜこの地に集客施設が必要なのか?
ひとえに都心部地区の求心力の回復が望まれている・・・

指標1 中国新聞社の広島市広域商圏調査の年度ごと推移
大店立地法(※注1)施行前(※注2)
 92年 
 ○都心部77%(紙41%+八31%+広5%)※注3 
 ○郊外13%(西9%+宇・皆4%+八・緑ー% 府ー% 祇ー% 廿ー%)
 ○その他5%
 02年
 ○都心部75%(紙34%+八34%+広7%) 
 ○郊外20

 (西10%+宇・皆5%+八・緑5%+府ー% 祇ー% 廿ー%)
 ○その他3%
大店立地法施行(2000年~)後
 14年
 ○都心部38.1%(紙16.0%+八18.2%+広3.9%) 
 ○郊外%53.9%
 (西14.0
%+宇・皆11.9%+八・緑5.3%+府16.3%+祇6.4%+廿ー%)
 
○その他6.6%
 18年
 ○都心部36.8%(紙16.0%+八15.4%+広5.4%) 
 ○郊外53.4%
 (西9.2%+宇・皆8.7%+八・緑6.2%+府16.4%+祇7.1%+廿5.8%
  )
 ○その他8.2%
 19年
 ○都心部23.9%(紙9.6%八9.4%広4.9%

 ○郊外53.4%
 (西8.0%+宇・皆8.4%+八・緑7.9%+府11.3%+祇7.2%+廿8.3%
  石2.3%)
 ○その他20.8%(ネット通販など)

※注1 大店立地法(1998年成立、2000年施行~)
 1998年に成立、2000年より施行されたまちづくり3法の1つ。従来の大店法(大規
 模小売店法)は規制が強く、店舗面積などの量的調整機能を持ち合わせていたのに対し、大
 店立地法は量的調整機能を事実上、撤廃した。結果、形式的な届け出だけで自由な出店が可
 能となった。これにより、全国の都市の中心市街地の求心力低下が加速した
 ※注2 1992~2002年は推定値(小数点四捨五入)
 ※注3紙ー紙屋町 八ー八丁堀 広―広島駅周辺 西ー西部商業地区(商工センター)周辺 宇
   ・皆ー宇品・皆実町周辺 八・緑ー八木・緑井周辺 府ー安芸郡府中町周辺 祇ー祇園周
   辺 廿ー廿日市市役所周辺 石-西風新都石内地区


画像3 広島市都心部地区中心地の小売売上高と売り場効率の推移(画像 日本政策投資銀行HPより)

 指標1は中国新聞社による広島市広域商圏調査の各商業地区の支持率推移、画像7は都心部中心(紙・八)地区の
小売売上高と売り場効率の推移だ。圧倒的な支持率低下を裏付けるのが画像7だと思って頂ければ分かりやすいだろう。商業機能中心に求心力の低下が窺える。都心部地区に求められる機能として行政機能、業務機能、スポーツや文化・芸術などのレクレーション機能、飲食機能、会議場や展示施設、宿泊施設などのMICE機能、観光機能、学術・研究機能など様々なものがあるが、その上位にくるのは商業機能だ。数ある中のポピュラーな機能と言っていいだろう。広島市に限らず、東京圏の都市も含め、どの自治体も口裏を合わすかのようににぎわい性の創出を都市課題の第一義に掲げている。90年代半ばのバブル経済~大店立地法(1998年成立、2000年施行~)を経て、都心部地区の停滞~衰退期に入り始めた00年代半ば辺りから、しきりにアナウンスされるようになった。『言われるほど都心部って衰退しているのか?』と疑問を持つ方は、都心部地区への買い物回数や消費金額を振り返ると良いだろう。特に消費の中心の30~50代の家族層の支持を失っている。虫食い状態になっている空き地の増加、雑居ビルの空き室率の上昇、老舗百貨店の撤退、アーケード街のシャッター街化などが如実に語っている。原因は明らかで、大店立地法(ウィキペディア)の一択である(笑)。都市計画に市場原理主義をダイレクトに持ち込み、その弊害が顕著となり高い対価を支払うという間抜けな構図になっている。広島都市圏においては、04年3月のイオンモール広島府中店(下記画像4参照)の開業を皮切りに地元のイズミ(ゆめタウン)を巻き込み、ガチンコバトルが繰り広げられた。日本政策投資銀行の地域レポートによると、広島都市圏の商業施設は完全にオーバーストア状態との事だ。このような状況に陥った理由は、地元資本のイズミの存在、そして民間工場跡地や公有地といった遊休地が多く売却に適していたことが挙げられる。出店し尽し、ある程度落ち着いたら第2の黒船としてネット通販が押し寄せた。アマゾンや楽天市場といったネット通販が侵食し始めたのだ。10年度対比で18年度は市場規模は2.3倍まで拡大し、小売り売上シェアは6.2%にまで伸長した。支持率ベースで見ると、郊外大型商業施設よりも都心部商業施設がその影響を受けている(上記指標1参照)。都心部商業施設の主だった顧客層の10~30代の消費者が多く流れたと思われる。この傾向が今後も続けば、求心力低下が加速する恐れがあるので看過出来ない。


画像4 04年3月に開業したイオンモール広島府中店(画像 ウィキペディアより)

 一見、インバウンド需要の高騰を受け時期的に老朽ビル群の建て替え期も相まってホテル建設、バブル期を彷彿させる都市再開発や跡地利用計画などが活況を呈し、都心部地区が活性化され都市再生が好調な印象を強く持ってしまう。ところがである。多角的な視点で広島市が置かれている状況を俯瞰すると別の姿が見え隠れするのも事実だ。広島駅周辺地区は最たる代表例だが、行政が多額な投資を行い10年前とは都市景観は一変した(そのことは目出度い)。一変したが、そもそもの目的である都心部地区の求心力の向上を図れたかというと、残念ながら図れていない。『ネガティブだ』の『揚げ足取りだ』と批判されようが事実は事実だ。それに現在の建て替えられている各ビル群に大きな集客力に乏しく多少の期待が寄せれるものは、22年頃完成予定の市営基町駐車・駐輪場一帯再開発、同年開業が予定されている
広島東署跡地一帯再開発(ヒルトン広島)、24年度頃開業予定とされる紙屋町サンモール一帯再開発、25年春の新広島駅ビルぐらいだ。増床も含む商業施設比率が比較的高いのは、紙屋町サンモール一帯再開発と新広島駅ビルぐらいだ。都心部地区の商業需要を反映した結果で、全盛期を知る世代としては寂しい限りだ。栄枯盛衰と切り捨てるのは簡単だが、都心部地区は都市の表紙かつ看板で同時に顔でもある。空き地、空き室が多くにぎわい性に乏しく歩行している人間も中年、高齢者ばかりでは大袈裟な表現を借りると都市イメージの低下、ひいては都市ブランド失墜にもつながる。
 

画像5 平和記念資料館を訪れた観光客の次の立ち寄り先一覧(画像 広島市HPより)


画像6 都心部地区広域回遊のイメージ(画像 広島市HPより)


 現在予定されている再開発計画は、ブログ主がかねてから提唱している三段階治療-①対処療法(短期)-再開発や跡地利用などで商業施設やスタジアム&アリーナなどの集客施設の建設、②根本治療(中~長期)-集客施設間を結ぶ回遊路の整備、歩行者中心の都市空間への再配分(自動車利用の一定の制限) ➂体質改善(再発予防、中期)-郊外大型商業施設の立地規制-①に該当するが、残念ながら対処療法にもなっていない。広島市都心部地区の内的課題としては狭い回遊性に尽きる。上記画像5は観光客のものだが回遊範囲が平和公園周辺に限定され広がりを見せていないことを示している。回遊性の拡大はいくつかの大きな集客施設を太い点として、それらの集客施設間を回遊路で結ぶことで大きな線となり広域化が実現する。上記画像はあるべき姿の広域回遊性の理想図だ。4点の集客施設をそれぞれ起点として回遊路を整備することで循環型の広域回遊コースを形成している。平和記念公園以外の集客施設がまだ弱いことや回遊路の未整備もあり、現実には遠い目標となっている。循環型の四隅の左上は広島城で近年、来訪者が観光客中心に増加傾向だが、所詮は年間33.5万人(17年度)でしかない。隣接する中央公園広場にスタジアムが建設され集客力向上が期待されるところだが、前考察でも触れたように『年間45万人+@』程度ではその大きい投資額に見合わないし、集客施設としても弱い。

2へ続く

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